著者
崎田 嘉寛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.72_1, 2018 (Released:2019-01-18)

1943年2月に『国有鉄道体操教範草案』(鉄道省)で制定された、いわゆる国鉄体操は、職種を問わず40~50万人を対象として実施されている。そのため、戦前期に乱立した体操の中でも、モデルケースの一つとして評価されている。この組織的な展開が可能となった背景には、各局・工場・教習所が、それぞれの職場で創案・実践してきたニルス・ブック由来のデンマーク体操方式を、集約・統合して国鉄体操が完成したという経緯がある。そして、1930年代後半からの現業部門を基盤とした国鉄体操の拡充と指導体制が、敗戦後直ちに国鉄体操の再開を可能にした要因の一つとなっている。本研究では、1940年代を中心とした国鉄体操の動向について、既存研究を新資料で再構成しながら記述することを目的とする。具体的には次の課題を複合的に考察する。①国鉄体操の制度的変遷を概観し、教範制定に至る現場等での取り組みを通覧し把握する。②国鉄体操とはどのような動きの体操であったのかを記録映画から分析し、どのように実施されていたかを個人資料を含めて事例的に検証する。③齋藤由理男、GHQ体育担当官、森田徳之助の果たした役割と影響について検討する。
著者
松本 孝朗 山下 直之 伊藤 僚 樊 孟 稲葉 泰嗣 渡辺 新大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.130_1, 2018

<p> 2020東京オリンピックとパラリンピックが開催される真夏の東京の「高温・多湿」の暑さは、選手はもちろん、観客、スタッフやボランティアにとっても大きな問題であり、熱中症の大量発生も危惧される。【方法】2017年7・8月、東京オリ・パラのマラソンコース(国立競技場⇔浅草雷門)1km毎の21地点に、携帯型WBGT計(黒球式熱中症指数計、タニタ)を設置し、1分毎のWBGTを記録した。時間を横軸に、スタートからの距離を縦軸にとり、18℃~23℃(黄色)、23℃~28℃(褐色)、28℃~31℃(赤色)、31℃以上(黒色)の色スケールでWBGTを表し、「WBGT(時間×位置)マッピング」を作成した。【結果・考察】2017年の東京は涼夏であったが、実測した6日間のうち暑い方の2日においては、午前7時半(スタート予定時刻)~10時のコースほぼ全体が、WBGT28℃~31℃(赤色:熱中症リスク極めて高い、市民マラソン競技を行なってはならない)、31℃以上(黒色:原則運動中止)であった。スタート時刻を1時間繰り上げることで、大きく緩和できることが示された。【結語】スタート時刻の繰り上げを提言したい。</p>
著者
荒川 勝彦
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.70_1, 2019

<p> 本研究の目的は、1896年第1回アテネ大会から2016年第31回リオデジャネイロ大会までの、陸上競技トラック種目、マラソン、競歩における男女の優勝記録の変遷を調査することであった。トラック種目は、100m、200m、400m、男子110m障害、女子100m障害、400m障害、400mリレー、1600mリレー、800m、1500m、3000m障害、5000m、10000m、マラソン、20km競歩、男子50km競歩であった。陸上競技トラック種目では、日本選手の優勝者はいなかった。マラソンの優勝者は、1936年第11回ベルリン大会孫基礎禎、2000年第27回シドニー大会高橋尚子、2004年第28回アテネ大会野口みずきの3名であった。競歩でも日本選手の優勝者はいなかった。4年毎の優勝記録は経年的に短縮して行く傾向を示した。優勝記録の変遷には、2,3大会連続優勝を果たすことができるような突出した才能や身体能力を持つ選手の出現。技術、トレーニング、用具、施設の進化。スポーツ医科学、情報のマルチサポート等が関係していると考えられる。</p>
著者
菊池 章人 征矢 英昭
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.155_2, 2016

<p> 【背景】小学校の教科は、2020年から英語やプログラミングの導入が展望され、児童の運動条件が頭打ちないし劣化することが懸念される。今後、体育時間の拡大は望めないため、児童の一層の体力向上を図る上では工夫が求められるが、全体として教諭の負担が大きくなる方向は容易ではない。体育の学習指導要領を妨げない短時間の活用が注目される。【目的】体育時間に、中高強度運動を、週1回、2分半だけ行う無理のない方法によって、児童の持久力、跳躍力の有意な向上をはかる。【方法】高崎市のN小学校で、2016年1月から3月の2か月間、6年生59人に「2分半スタミナ体操」を週1回だけ体育時に介入した。対照は5年生63人(通常の体育)。体操は、動作を円滑に支える楽しい音楽を制作し使用した。全体を96bpm~165bpmにテンポアップさせ、動作指示は進行中に行い、歩く、スクワットなどのウォームアップから、走る、ケンケン、前跳び、ギャロップ、垂直跳びなどの高強度インターバル(HIT)を行った。【結果】2か月後、対照5年生(通常体育)に比べ、「2分半体操」を介入した6年生は、持久力(20mシャトルラン)、跳躍力(立幅跳び)のいずれも、有意に大きく向上した。</p>
著者
湯 海鵬 笹原 英夫 紀 仲秋
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.380-388, 1997

This study was designed to analyze a world class and a Japanese middle-distance runners in women's 800 m finals of the international athletic games based on kinematic data, and to get insight into the basic middle-distance running technique. The performances of Qu yunxia, the world record holder of female 1,500 m and Kumiko Okamoto, the Japan record holder of female 800 m were video-taped with a video camera operating at 60 Hz with exposure time of 1/500 and 1/1000 s. Selected kinematic variables of the center of gravity (C.G), the segment endpoints and rotational energy of the lower limbs were investigated. Some differences of performance were found between Qu and Kumiko in running form. The C.G of Kumiko's up-down motion on vertical direction was about 14% larger; her deceleration in horizontal direction was 48% larger and her up-down motion of C.G of the feet was about 26% than Qu. The larger action of the foot breaking contact with the ground of Kumiko caused a greater loss of horizontal velocity of C.G. The larger flexion of the knee-joint of Kumiko consumes the greater rotational energy than Qu during the recovery phase.
著者
生野 勝彦
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.135_2, 2019

<p> トレーニング頻度は、「チーム練習のみ」が41.9%を占め運動する機会となっている一方、「チーム練習以外にも運動をしている人」の割合が58.1%と運動習慣が根付いていることが伺える。社会人でプレイを始めた動機は、「仲間がいたから」37.1%が高い割合を示した。また、プレイする目的は、「体力・健康づくりのため」25.0%、次に「ストレス解消のため」19.6%であった。プレイによる効果は、「気分転換になる」21.8%、「友人ができた」17.1%、「体力が向上し、維持できている」13.7%であった。プレイの継続を阻害する要因としては、トップが「仕事が忙しく時間がない」37.1%、次に「腰痛・膝痛など関節痛がある」20.6%が続いた。スポーツ・健康にかける費用については、「3千円未満」40.3%が一番多く、次に「5千円未満」25.8%という結果になり、スポーツを楽しみ健康維持のため多くはないが一定の費用をかけている。健康のために取り組んでいる行動は、「運動やスポーツをするようにしている」35.1%、次に「食事・栄養に気を配っている」23.1%、「過労に注意し睡眠・休養を十分とるよう心がけている」20.1%と続いた。</p>
著者
木村 吉次
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.91_1, 2016

<p> 学校運動会の歴史的変遷を明らかにする上において学校運動会がアジア・太平洋戦争の戦前と戦後においてどのような変容を遂げたのかということがひとつの重要な関心事である。運動会は昭和の15年戦争の敗戦を境にして日本の政治的経済的社会的変化と教育体制の再編を経験する中で一時的には中断したこともあるが種々の課題をかかえながらも生きのびて今日にいたっている。本研究は、愛知県南設楽郡千郷(ちさと)尋常高等小学校の昭和6(1931)年から同30(1955)年までの運動会について考察した事例研究である。学校運動会の歴史は学校により地域によりさまざまな差異をもって展開しているので、これを単純に概括して把握することはできない。ここに事例研究をつかさねなければならない理由がある。本研究では千郷尋常高等小学校が「大運動会記録」綴に残した資料を分析し、それをさきに研究した愛知県大野尋常高等小学校や茨城県菅間小学校の事例と比較しながら小学校運動会の戦前と戦後の変容を考察した結果を報告する。</p>
著者
鈴木 楓太
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.253-272, 2020
被引用文献数
1

This paper clarifies some of the representations of female athletes at the dawn of women's sports in Japan through an analysis of contemporary discourses regarding Kinue Hitomi, the first Japanese female Olympian. Previous studies have focused on Hitomi's image as a deviator from the normative female image, differing from the representation of other "sports girls" associated with the image of ryosaikenbo ("good wife, wise mother"). However, the present paper focuses on Hitomi's representation as the embodiment of the normative female image. What can be read from the aspect of "femininity" in the context of Hitomi, who was not included in the image of ryosaikenbo?<br> The "prone episode" at the 1928 Summer Olympic Games is an anecdote that allegedly represents her "femininity": Shortly after the runners finished in the women's 800 meters, only Hitomi fell prone modestly while the other foreign runners lay on their back. This paper focuses on the episode and explores the significance given to it.<br> Hitomi was represented positively as embodying mainly 2 types of female image: the healthy robust woman and the feminine graceful woman. The first image contrasted with the traditional one of the Japanese woman as a small, weak individual and was considered symbolic of the nationalism associated with Japanese modernization. <br> When people viewed Hitomi in terms of the second image, they were clearly opposed to the concept that she was masculine, thus differing from the image of other "sports girls" who were casually associated with the ryosaikenbo concept in terms of their daily lives and careers.<br> Hitomi's achievement at the 1928 Summer Olympics had been widely admired for enhancing the national prestige of Japan. However, although her physique was praised at the time, its perceived meaning saw a transition from the "strong body" as a metaphor of modern Japan to the lady-like image represented by the prone episode. Through this process, multiple meanings assigned at first was transformed into a simple anecdote to illustrate that Japanese women are superior to Western women in terms of their "femininity". It is ironic that Hitomi, whose gender had always been questioned because of her eminent athletic talent, came to be regarded as a typical Japanese "feminine" woman as a result of the prone episode, which had completely no relation to the arena of sport. Furthermore, after the war, as this contradiction between the feminine and the athletic physique faded, the prone episode turned into a casual representation of "femininity", like the earlier representation of "sports girls".
著者
林 直樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.222_1-222_1, 2016

<p> バドミントン競技の国際競技力は、非常に高まってきており、世界水準のプレイヤーも多く輩出している。スーパーシリーズ成績上位者同士の試合の分析から、トレーニング強度を探ることは有意義であると考えた。全英選手権の女子シングルス決勝(奥原希望-ワン・シーシャン)の映像から、エース-エラー分析、配球分析、時間分析(1ストロークにかかる時間の測定、ならびにワークとレストの比率測定)を行った。ラリーにおけるストローク時間(一打にかける時間)が非常に短くなっており、なおかつワークに対するレストの比率が非常に高くなっている。スピードのある展開でラリーが形成されており、ラリー自体の強度が以前と比べて高くなっている。そのため、レストも長くなっていると考えられる。つまり、ATP-CP系や乳酸系のトレーニングを重要視することが今まで以上に必要となる。</p>
著者
岩佐 直樹 來田 享子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.92_3, 2016

<p> 日本の公務員制度は、GHQ民政局の意向を踏まえ、対日合衆国人事行政顧問団(以下、顧問団)が主導し、国家公務員法(以下、国公法)制定議論の中で確立された。1947年10月に制定された同法とこれに基づく公務員制度の形成過程を検討した研究は多岐にわたるが、同法第73条に記された能率増進の1つであるレクリエーション活動に着目した研究はみられない。本研究ではこの点に着目し、国公法制定過程におけるレクリエーション活動に関する方針について、GHQ民政局及びそこでの方針を引き継いだ顧問団における議論を検討する。検討の結果、(1)47年1月以降、顧問団の第4委員会は、公務員に対する個人の尊重の観点からレクリエーション活動を推奨し、もって職務遂行の効率を高める必要性を指摘したこと、(2)同委員会はレクリエーション活動の実施体制等を提言したことが明らかになった。GHQ民政局及び顧問団が国公法にレクリエーション活動を含めた背景には、公務員個人が社会的承認を得て職務にあたるという民主的な公務員制度の確立と「公務員を含むすべての労働者の雇用条件の改善」(竹前、1974)というGHQの労働政策があったと考えられる。</p>
著者
住野 幾哉 山口 香 小林 好信 橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.285_2, 2016

<p> 近年、水泳の萩野公介が北島康介の、「ありのままでいいんだ」との言葉で蘇生し、リオオリンピック出場を決めた。言葉によるエンパワーメントの重要性が再確認された出来事である。スポーツ選手に対する言葉掛けには大きな意味がある。キックボクシングは相手と対峙し打撃を主とする競技であり、心理面へのアプローチが競技パフォーマンスに及ぼす影響は非常に大きいと推察される。本研究は、キックボクシング選手がエンパワーメントされる言葉についての知見を得ることを目的に、選手が励まされた言葉は何であったのかに着目してインタビュー調査を行った。対象は学生キックボクシング選手10名である。分析方法は、ジョナサン・スミス(Smith J. 1997)の解釈学的現象学的分析を参考にスーパーバイザーの指示の下で分析を行った。その結果、彼らが励まされたと感じた言葉は大きく「賞賛」「教示」「励まし」「受容」というカテゴリーに分類された。なかでも「励まし」「受容」に分類されたものが多かった。また、指導者が与える言葉だけではなく、家族、先輩、チームメイトなどといった重要他者から発せられる言葉が選手に与える影響が大きいこともわかった。</p>
著者
野口 雄慶 横谷 智久 杉浦 宏季 野尻 奈央子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.229_3, 2019

<p> カヌースプリント競技にはカヤックとカナディアン種目があり、湖や流れのない川(兵水面)で200m、500m、1000mといった一定の直線距離を最大スピードで進む際の着順を競い合う。中でも200m競技では大きな力でパドルの両サイドにあるブレードで水をキャッチし、35秒程度の時間で漕ぎ切る必要があるため、後半疲労で失速しないよう、レースペースは極めて重要となる。本研究では、トップレベルの日本人男子カヤック選手を対象に、200mのレース展開の特徴を検討した。2015カヌースプリント海外派遣選手最終記録会の200m男子カヤック決勝進出者9名を対象とした。決勝レースを3台のビデオカメラで撮影し、前半局面(0-100m通過タイム)と後半局面(100-200m通過タイム)の比較より、各選手のレースペースの比較を実施した。日本代表に選出された優勝選手と2位の選手の前半局面と後半局面のタイム差は0.1秒以下であり、イーブンペースであったが、3位、4位の選手はそれぞれ0.9秒、0.5秒以上の差があり、後半局面でペースを落としていた。5位~9位の選手のうち3名は、前半局面より後半局面の方がタイムが早く、残り2名の選手はほぼイーブンペースであった。</p>
著者
堀口 文 本谷 聡 高橋 靖彦
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.216_3, 2018

<p> ラート競技は、実施される運動の難しさと、その出来映えを競う評定競技である。直転、斜転、跳躍の3種目が実施され、主に技の難しさを示す「難度点」と、演技の出来映えを示す「実施点」から最終得点が決定される。それらの採点基準にはIRV国際競技規則(IRV Code of Points)が適用されるが、体操競技などの評定競技と同様に、審判団の判断により採点傾向が異なることが報告されている(本谷ら、2011)。そのため、選手は競技規則を理解するだけではなく、国際審判団の採点傾向を把握することが重要と考えられる。本研究では、2018年5月にスイス(Magglingen)で開催された第13回世界ラート競技選手権大会において、決勝進出した女子選手の演技構成と各採点項目の結果を調査及び分析することによって、今後の練習計画に役立つ実践的な示唆を得ることを目的とした。その結果、決勝進出選手の競技動向や国際審判団の採点傾向が明らかになった。これらは国際大会で勝つための練習計画や演技構成の際に有用な基礎資料となる。また、2020年には競技規則の大幅な改訂が予定されているため、今後も継続的な調査が必要である。</p>