著者
松下 正 佐々木 茂雄
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.17-22, 1980-01-30 (Released:2009-03-31)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

1979年3月に本格運転を開始した新型転換炉原型炉「ふげん」発電所は,わが国で初めての重水減速軽水沸騰冷却型原子炉である。減速材系,すなわち重水系より発生する劣化重水を再使用するために重水濃縮を行う重水精製装置を設置した。重水精製装置は,建屋工事を含めると1977年12月より建設に着手し, 79年4月末に良好な結果をもって完成することができた。装置は無隔膜減容電気分解方式を採用し,年間95W/Oの劣化重水5tを濃縮し, 99.8W/Oの重水を4.4t回収する設備能力を有する。本稿では,装置の設計,建設,運転結果について述べる。
著者
秋山 勝宏
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.499-502, 2011 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

「パラジウム触媒によるクロスカップリングの発展への寄与」の功績により根岸英一,鈴木 章,R. E. Heck先生らが2010年にノーベル化学賞を受賞した。クロスカップリングは1970年代から盛んに研究され,有機合成ではこの分野は日本のお家芸といえるほど,日本人の貢献が大きい。今回はクロスカップリングについて,その基本的な知識や考え方を解説する。まず総論としてクロスカップリングの反応形式や反応機構について説明し,医薬品やエレクトロニクス材料への用途について述べる。各論として代表的な反応である熊田―玉尾カップリング,根岸カップリング,鈴木―宮浦カップリングと溝呂木―Heck反応について反応の特徴や問題点について解説する。最後に,最近の研究として固定化触媒の開発や安価な鉄触媒を使用する研究を紹介する。
著者
酒井 真理 藤本 尚弘 石井 克典 浅野 智之 村田 勲 中村 浩之 李 千萬 金田 安史 粟津 邦男
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.676, 2009

ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)とは腫瘍に取り込ませたホウ素に対して中性子を照射し、そこから放出されるα線やLi線によって腫瘍細胞のみを死滅させることのできる治療法である。現在BNCTは原子炉で行われており、これを加速器中性子源によって行えるようにする必要がある。本研究ではそのための細胞レベルでの基礎検討を行った。
著者
田中 浩基 矢島 暁 筒井 裕士 佐藤 岳実 小野 公二 高田 真志 浅野 智之 櫻井 良憲 丸橋 晃 鈴木 実 増永 慎一郎 菓子野 元郎 劉 勇 木梨 友子 密本 俊典
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.128, 2010

京都大学原子炉実験所では硼素中性子捕捉療法用のサイクロトロン加速器を用いた熱外中性子源の開発を行っている。実機のインストールを平成20年10月に完了し、平成21年3月に施設検査合格、中性子発生試験を開始した。陽子電流は1mAを達成し、熱外中性子強度1×10<SUP>9</SUP>(n/cm<SUP>2</SUP>/s)を実験的に確認した。これまで原子炉で行ってきた臨床試験の中性子強度よりも高い熱外中性子束を得ることができた。
著者
林 勉
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.91-96, 2012 (Released:2019-10-31)
参考文献数
4

わが国の自然エネルギー発電はどれだけ有効かについて,導入目標,導入可能ポテンシャル等から評価したが,最大導入可能量は総発電量の15%ぐらいが限度であることを示した。現実にはこれを達成するためには高いハードルがあることおよび自然エネルギーを導入する上での様々な問題点やドイツの例も踏まえた政策上の問題点についても考察した。電源別構成は当面,原子力,火力,水力が主体であり続けるというのが結論である。
著者
遠藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.561-567, 2014

<p> レーガン政権の下でようやく始まった日米原子力協定交渉は難航した。米側は,日本の原子力活動に包括事前同意方式を認めることには同意したものの,具体的な個々の点については厳しく,また行政府部内でもさまざまな異論が出てきた。何とか正式に署名にこぎつけたものの,その後の議会審議は波乱の連続であった。</p><p> プルトニウム空輸に対するアラスカ州からの反対,核不拡散強硬派からの反対などで審議は予断を許さなかった。この波瀾を何とか乗り切ったのは,レーガン大統領の決断,レーガン・中曽根の信頼関係によるところが大きかった。この協定が発効したのは,1988年7月であり,正式交渉が始まってから6年もの年月が経っていた。</p>
著者
山村 修
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.593, 2006

東海再処理工場がホット試験を始めるにあたり、米国の原子力政策が大きく変更され、核不拡散対応が強く求められた。日米原子力協定8条C項に基づく厳しい交渉の末、1.IAEAの常時査察の適用、2.保障措置技術開発の実施、3.プルトニウム転換施設の建設の延期と混合抽出法の検討実施等の条件の下、日米共同声明で開始を認められた。その後国内保障措置制度も整備され、計量管理規定も改定され、核物質の転用が無いことがIAEA並びに国の査察により厳しく管理されてきた。さらに、TASTEXおよびJASPAS等により開発された、保障措置技術の一部が査察に適用され、その効率的運用に効果を発揮し、これらの成果がアクティブ試験を迎えた六ヶ所再処理工場のフルスコープ保障措置制度に生かされてきた。今回はこの東海再処理工場の核不拡散対応に果たした技術的措置を評価する。
著者
吉元 勝起
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.107-111, 2011 (Released:2019-09-06)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

1977年の日米再処理交渉を機に,基本設計まで終えていたシュウ酸沈殿法によるプルトニウム単体転換プロセスは,日米再処理交渉によって断念を余儀なくされたことから,核不拡散上の観点から,プルトニウムとウランの混合溶液を転換する新たな方法の開発が必要となった。 日本が独自に開発したマイクロ波加熱直接脱硝法は,電子レンジと同じ原理を応用した日本独自の技術である。マイクロ波加熱直接脱硝法を核拡散抵抗性に優れたプルトニウム・ウラン混合転換プロセスの中核技術として採用し,東海再処理工場に隣接してプルトニウム転換技術開発施設を建設し,1986年より開発運転を行っている。この技術を短期間にいかに育み,開花させるに至った経緯について,その歴史的背景等を交えながら解説する。
著者
早野 龍五 澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.566-572, 2017 (Released:2020-02-19)

事実の解明は科学者の発した素朴なツイートから始まった。あっという間に多数の協力者が協力を申し出てボランティアとクラウドファンディングの輪が広まり,それを学術論文4本で世に問うた。陰膳調査,BABYSCAN,D-シャトルが明らかにしたこととは何か。
著者
小林 卓也 川村 英之 印 貞治 島 茂樹
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.965, 2010

海洋中における放射性物質等の移行過程を詳細にモデル化するため、海水中放射性核種移行予測コードに排水拡散過程を追加し、青森県六ヶ所村沖における流動場の再解析値と、再処理施設からの放出情報を用いて適用計算を実施した。
著者
青柳 征夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.49-53, 2014 (Released:2019-10-31)
参考文献数
3

チェルノブイリNPP4号炉では約200tの核燃料の溶解によって発生したコリウムaとコンクリートの反応によって炉下区画bの鉄筋コンクリート床版が1,600℃に達する高温によって侵食された。しかし,これらが崩壊することなく,コアキャッチャーのような役割を果たし,溶岩状燃料含有物質を受け止め,更なる事故の拡大を未然に防ぐことができた。本稿では,コリウム・コンクリート反応の経緯とコンクリート構造物の損傷の状況をロシアで出版された報告をもとに解説した。
著者
落合 兼寛 片山 光夫 新野 毅
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.163, 2004

鋼製ライナーの代替として樹脂を使用し、コストの上昇を低減しながら原子炉格納容器を大型化して、運転員の安心感を高めるコンセプトについて、単純化BWRをモデルとして検討した。
著者
浅野 和仁
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.139-140, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
3

当社では,燃料無交換型ナトリウム冷却小型高速炉「4S」(10MWe,50MWe)1)での経験や知見を活用・反映し,300MWeクラスの高温ガス炉と3MWe級の超小型炉(MoveluXTM:Mobile-Very-small reactor for Local Utility in X-mark)2)の開発を進めている。高温ガス炉は蓄熱システムを組み合わせることで,再生可能エネルギーの電力需給変動に対応可能なベースロード電源としての600MWt級の発電プラントを指向し,国内技術として確立した技術をベースとした開発を進めている。並行して原子力イノベーションを追求した新たな概念として10MWt級の超小型炉(MoveluXTM)の概念設計を進めている。本稿ではそれぞれの特徴について紹介し,今後の取組み方針ならびに課題について概観する。
著者
吉田 至孝
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.296, 2003

PWRプラントの格納容器防護の観点から整備されたAMについて、人的過誤および設備故障が格納容器破損リスクに与える影響を考察した。その結果、AMの人的過誤は、操作過誤に比べて意思決定過誤が支配的であり、そのうち緊急時組織内における客観的なチェック機能の有無が、格納容器破損リスクを20%程度変化させた。従属性の強さを変化させた場合のリスク変化は4%程度であった。AMの設備故障は、低圧注入設備の影響が最も大きく、全てのAM設備の復旧要する平均修理時間を3倍にすると、格納容器破損リスクを13%程度増加させた。