著者
木村 博 寺岡 文雄 斉藤 隆裕
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.205-208, 1985-05-25

重合過程の加熱重合レジンと常温重合レジンの内部に生じる応力について検討し, さらに重合後のレジンを120℃まで加熱後, 室温まで冷却したときのレジン内部に生じる応力についても検討した.重合終了後はレジン内部に圧縮応力が生じ, 加熱重合レジンが176kgf/cm^2で最も少なく, 常温重合レジンを50℃で重合したときは251kgf/cm^2で, 23℃で重合したときは338kgf/cm^2であった.重合後のレジンを加熱すると, 加熱重合レジンは約120℃で内部応力は0となり, 常温重合レジンは約60℃で応力は0になった.
著者
二瓶 智太郎 倉田 茂昭 近藤 行成 楳本 貢三 好野 則夫 寺中 敏夫
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.104-115, 2002-03-01
被引用文献数
10

シリカ/レジン界面のポリシロキサン層の耐水性を高めるために,3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-MPS)と3- {[1'-(ペルフルオロ-5-メチルヘキシル)メチル-2'-(メタクリロイルオキシ)]エトキシ}プロピルトリメトキシシラン(MA 7 bF)のような疎水性のフルオロアルキル基と重合性基を含む新規シランカップリング剤の混合シランの処理効果を調べた.各シラン溶液の濃度は,MAnbF(n=5, 7, 9, 11)を3-MPSに対し,10, 20, 30, 50, 70, 100質量%の割合で混合したもので,2質量%エタノール溶液として調整した.それら混合シランで処理したガラス面に対するレジンの引張接着強さやガラス面に対する混合レジンモノマー(50%Bis-GMA,50% TEGDMA)の接触角を測定した.その結果,MA 5 bFはすべての処理濃度で,MA 7 bF,MA 9 bF,MA 11 bFでは10〜30質量%混合のとき,3-MPS単独処理に比べ,高い接着強さと耐水性をもつカップリング層の生成に有効であった.
著者
葦沢 元春 渡辺 功 中林 宣男
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.860-865, 1992-09-25
被引用文献数
6

象牙質への接着メカニズムをより明確にするために象牙質ではなくゾウゲ棒へのMMA-TBBレジンの接着を再検討した.研削ゾウゲへのMMA-TBBレジンの接着強さは14MPaであったが研削象牙質へのそれは5MPa以下である.研削ゾウゲに拡散したMMAを重合して得られる樹脂含浸層の幅は50μmであったが, 象牙質へはMMAは拡散できない.このことから, 象牙質よりもゾウゲの方がモノマーの透過性が格段に高いといえる.従ってMMAの拡散能を向上させる4-METAはゾウゲへの接着には不要であるが, 象牙質の接着には必須である.被着体内へのモノマー透過性とモノマーの拡散能の2つの因子がモノマーの拡散に関係する.歯への接着には, 被着体の中へモノマーを拡散させ重合させることが不可欠であると結論された.
著者
藤森 伸也
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.155-168, 1995-01-25
被引用文献数
21

チタンの表面を方向性のない凹凸面, あるいは方向性のある平滑面になるように準備した.方向性のない凹凸面はワイヤ放電加工(Wire-EDM)およびプラズマコーティング(Plasma)で作製した.平滑面は#1500のエメリー研磨紙で研磨することにより作製した(Emery).チタンの表面性状を, 表面粗さの測定, SEM観察, XPS分析およびX線回折分析により表面分析した.マウス由来の骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)を各チタン試験片上に播種し, 15日間培養した.細胞増殖のマーカーとしてDNA量を, 細胞分化のマーカーとしてアルカリフォスファターゼ(ALP)活性およびCaとPの生成量を測定した.コントロールとして培養用のガラス板(TCP)を用いた.Wire-EDM, Plasma, Emeryの表面粗さ(Rmax)はそれぞれ20.5, 31.4, 0.80μmであった.Wire-EDMは多数の小さな凹凸の集合した不規則形状を有していたが, くぼみの深さは比較的均一にそろっていた.一方Plasmaは凹凸がより不規則であり, 多孔質形状を有していた.Wire-EDM表面にはPlasmaやEmeryよりも有意に厚い酸化皮膜が生成しており, それらは表層から内部へ向かってTiO_2, TiO, Ti_2Oで構成されていた.細胞のDNA量は全ての試験片上で経時的に増加したが, 9日目以降はWire-EDMとPlasmaでEmeryおよびTCPよりも有意に増加した.今回用いた細胞は増殖および分化することによりALP活性を発現することが認められている.DNA 1μm当たりのALP活性は, 9日目以降Wire-EDMとPlasmaでEmeryおよびTCPよりも有意に増加した.15日目のWire-EDMおよびPlasma上の細胞が生成したCa/P比は1.26, 1.28であり, EmeryおよびTCPよりも有意に上昇していた.以上の所見より今回用いた骨芽細胞様細胞は, 同じチタン試験片上でも方向性のある平滑面よりも方向性のない凹凸面上で増殖が加速され, 細胞分化も活発になっていることが認められた.細胞の形態観察によると, Wire-EDMやPlasmaでは, 細胞は凹凸の縁に橋渡しをするように突起を成長させながら伸展していくことが認められた.従って細胞の形態の変化が分化を誘導したものと考えられる.今回の実験結果より, インプラントの骨接触面には方向性のない凹凸面が好ましいことが示唆されたが, 最適なミクロ形状を付与するためにさらに研究が必要である.
著者
二階堂 徹 江 芳美 佐藤 暢昭 高倉 ひな子 猪越 重久 高津 寿夫 細田 裕康
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.655-661, 1993-11-25
被引用文献数
6

インレー修復においては, 窩洞の仮封時の歯髄保護が問題となる.すなわち仮封材による封鎖性が悪いと細菌侵入を招き, 歯髄に為害作用を起こす可能性があるからである.ライナーボンドシステム(クラレ)は, ボンディング材と低粘性レジンであるプロテクトライナーによって象牙質表面に強固な被膜を形成させるユニークな材料である.このボンディングシステムを利用して窩洞形成直後に形成面をシールすれば, 印象採得や仮封中の機械的, 熱的, 細菌学的な刺激から歯髄を保護することが可能である.本研究では, 5種類の仮封材が, レジンセメントとプロテクトライナーとの接着に及ぼす影響について検討した.その結果, 水硬性材料であるCavit-G(ESPE)は, レジンセメントのプロテクトライナーに対する接着強さを有意に向上させた.またユージノール系, 非ユージノール系材料では, 接着に悪影響を及ぼさなかった.しかし, レジン系仮封材では, 仮封材がライナー表面に強固に付着し, レジンセメントの接着力を低下させた.さらに仮封材と接触したプロテクトライナー表面は, 形態学的に様々な変化が観察され, 表面の硬さも低下していた.このことから, プロテクトライナーと仮封材との間になんらかの相互作用が生じていたことが示唆された.
著者
若松 宣一 後藤 隆泰 足立 正徳 井村 清一 林 憲司 亀水 秀男 飯島 まゆみ 行徳 智義 柴田 俊一 堀口 敬司 金 昇考 土井 豊 森脇 豊
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.165-177, 1990-03-25
被引用文献数
2

金属表面にコーティングする場合と同様な方法で作製したハイドロキシアパタイト(HAP)セラミックスの破壊応力に与える水の効果を評価するために, 四点曲げ試験を0.5mm/minの条件で空気中(20℃, 相対湿度73%)と蒸留水中(37℃)で行った。そして得られた強度データを2-パラメータワイブル統計を用いて解析した。各条件において, 曲げ強さのデータは単一モードのワイブル分布に従った.このデータの表面欠陥モデルを仮定したワイブル解析は, 空気中でワイブルパラメータm=7.8, σ_0=26.2MPaと蒸留水中でm=8.1, σ_0=18.5MPaを与えた.曲げ強さの平均値は空気中で27.3MPaと蒸留水中で18.2MPaであった.この結果より, 水のような腐食性環境が定応力速度で測定される破壊応力に影響を与えることは明らかである.この影響は試料が破壊するよりも低い応力レベルで起こるサブクリィティカルなクラックの成長が原因であると考えられる.また, 本研究で推定したワイブル分布関数を用いて, 試料の寸法と試料中の応力分布が破壊応力の平均値に与える影響を予測した.
著者
川中 正雄
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.660-664, 1991-09-25
被引用文献数
7

試料の上下反転に際し, クラウン上面とアンダーカット部との加工には, CADデータベースの点分布構造を利用して冠外面形態データ(=今回はCADデータベースを使用)を最大豊隆部で上下2分割して使用した.初期加工時および試料反転時の位置決定は切削加工試料である直方体ワックスブロックの角部に工具先端を設定して行った.上面加工時の初期原点はワックスブロックの底面に, 反転時の原点は同一平面である反転後の試料上面に設定することによって, 反転に伴う高さ方向(Z方向)のデータ結合を可能にした.ただし, 反転後に使用するアンダーカット部データはCADデータベースの分割後, Z座標値を正負変換して使用しなければならない.X, ZY方向の位置合わせはワックスブロックの有する対面の並行性, 隣接面の垂直性を利用し, ワックスブロック左側前上方の角部に工具先端を近接させた状態で加工機の零点設定をした.また反転操作によってCADデータベースの座標系すなわち計測時座標系(=左手系)と加工機座標系(=右手系)とが鏡面対称となるため, 新たにY座標値にも正負変換を加えて鏡面体加工(ミラーイメージ)の発生を防いだ.工具は冠上面加工時と同一のボールエンドミルを使用し, 加工方法についても概形の円筒状加工の後に要求形状加工を行う多段階加工とした.アンダーカット部も冠外面の一部であるため, 工具オフセットに関しては咬合面部加工時と同一の考え方, すなわち冠表面の2本の接線ベクトルの外積を利用し, 表面よりも外側にオフセットを求めた.このように試料反転時の位置決め方法を確立することによって, X, Y, Z軸制御の3軸加工機を使用したクラウン外面加工に関し, 咬合面を中心とした冠上面の加工とアンダーカット部の加工との統合が図れ, 切削加工によって数値データからクラウン外面形態の再現が可能となった.さらに冠外面形態の上面の加工および支台歯の計測データを使用しての冠内面の加工との統合によってここに切削加工によるワックスクラウンの完成を見た.
著者
渡辺 功
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.955-973, 1992-11-25
被引用文献数
21

スメアー層が付着したままの研削象牙質への光重合型レジンの接着を目的として研究を行ってきた.拡散力の高いPhenyl-Pを含むボンディング剤を用いると6MPaの接着強さが得られた.しかし長期水中浸漬すると1年後に接着強さは3MPaに低下し長期接着安定性に欠けることが解った.これは十分量のモノマーが拡散できなかったためにスメアー層との樹脂含浸層が弱くなったためである.より多くのモノマーを拡散させるために研削象牙質の物質透過性を向上させる方法を検討したところ, 5, 10%Phenyl-Pと30%HEMAを溶解した水溶液で処理しても1μm以下の樹脂含浸層は形成されるが, 接着強さは向上しなかった.しかし20, 30, 40%Phenyl-Pと30%HEMAを溶解した水溶液で研削面を処理すると, 接着強さは1.5倍の10MPaに向上し, SEM, TME観察により2μmの樹脂含浸層の生成を確認することができた.研削象牙質に強固な接着強さを得るためには, 健全象牙質まで十分にモノマーを拡散させなければならないことが解った.
著者
二階堂 徹 高田 恒彦 バロー マイケル 佐藤 暢昭 細田 裕康
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.910-915, 1992-11-25
被引用文献数
19

コンポジットレジンインレー等に用いられる各種デュアルキュア型レジンセメントの歯質に対する初期接着強さについて検討した.エナメル質に対する初期接着強さは, ほぼ満足できる値であったが, 象牙質に対する接着強さは極めて低く, 改善する必要があった.そこで直接充〓用コンポジットレジンでその有効性が認められた前処理剤, プライマー, ボンディング剤等の併用について検討したところ, ボンディングシステムを併用することによって初期接着強さを改善できることが判明した.さらに窩洞形成後, ボンディングシステムによって窩洞をシールし, 接着を完了した上で印象採得し, レジンインレーを合着すると, さらに安定した高い接着性が得られることが示唆された.
著者
倉持 健一
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.485-495, 2003-10-25
被引用文献数
10

本研究では,酸性フッ素リン酸溶液の塗布がフッ素徐放性修復材料に及ぼす影響について検討を行った.実験にはグラスアイオノマー系材料の計3種類を使用した.各材料について円盤状試料を作製した.練和あるいは重合開始1時間後に,各試料を37℃イオン交換水中に21週間まで浸漬した.フッ素のリチャージングは,イオン交換水浸潰3, 6, 9, 12, 15, 18週後に酸性フッ素リン酸溶液を用いて行った.間接引張強さはイオン交換水浸漬24時間後に測定(ベースライン値)し,その後3週間ごとに測定した.実験に使用した各材料について,酸性フッ素リン酸溶液によるフッ素のリチャージングを繰り返し行うことによっても間接引張強さの測定値はコントロール値と比較して有意な差は認められなかった(p>0.05).本実験条件ではフッ素徐放性修復材料に対するフッ素によるリチャージングは表層に限局して侵襲を与えるが,材料自体の本質的な強さを劣化させないことが推察された.
著者
宮崎 隆 玉置 幸道 鈴木 暎 宮治 俊幸
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.917-922, 1987-11-25
被引用文献数
16

通常の技工用ホイールを用いた場合のチタンの機械研削, 研磨特性を検討した.チタンの研磨ではCo-Cr系合金の研磨に比べて技工用ホイールの消耗が非常に大きく, 研削比が著しく小さいことが判明した.周速と荷重を大きくするとチタンの研削量は増加するが, 同時にホイールの消耗量も増加するので研削比は改善しなかった.ダイヤモンドペーストを用いたバフ研磨による最終仕上げにより容易に光沢のある研磨面が得られた.
著者
平野 進 平沢 忠
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.93-99, 124-125, 1989-06-25
被引用文献数
5

コンポジットレジンの圧縮クリープを4種の異なる応力(圧縮応力0∼3.5 kg/mm^2)で水中浸漬下で500時間にわたり行なった。得られた4種のクリープ曲線から,一定時間経過したときの各クリープひずみと圧縮応力との間には一次回帰式が成立した。そのためコンポジットレジンの500時間後の吸水飽和状態になったときのクリープひずみは圧縮応力が分かれば予測可能となった。またこの回帰式を使い,各時間における吸水膨張応力を求めた。最大吸水膨張応力はコンポジットレジンが吸水飽和したときに得られ,その値は0.74 kg/mm^2であった。各応力下で得られたクリープ曲線をひずみ一対数時間曲線で表すと,初期の数十時間は直線となった。
著者
SHIMURA Rena NIKAIDO Toru YAMAUTI Monica IKEDA Masaomi TAGAMI Junji
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental materials journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.70-75, 2005-03
被引用文献数
8 33

This study evaluated the influence of curing method and storage condition on the microhardness of dual-cure resin cements : Panavia F 2.0 (PF) and Nexus 2 (NX). The specimens were either light-cured (LC) or chemically cured in darkness (CC). After 24 hours of storage in dry chamber (Dry) or distilled water (DW), the specimens were sectioned and polished. The microhardness of resin cement matrix was measured using a nanoindentation tester (ENT-1100). The data (n=6) were statistically analyzed with t-test, two-way ANOVA (p<0.05), and Tukey HSD test (α=.05). It was found that the factors of curing method and storage condition had significant effect on microhardness. For both PF and NX, LC presented higher microhardness than CC, while DW showed higher microhardness than Dry. In conclusion, dual-cure resin cements could achieve high degree of cure when light-cured. In addition, the microhardness of the resin cements evaluated did not decrease when kept in water.
著者
菅原 明喜 草間 薫 西村 敏 西山 實 茂呂 周 工藤 逸郎 高木 章三 CHOW Laurence C.
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.691-698, 1993-11-25
被引用文献数
7

Calcium Phosphate Cement(CPC)は, 生体内環境下で短時間のうちに硬化しHydroxyapatite(HPp)に転化することから, 極めて良好な生体親和性を示すことが知られている.このような特性から, CPCは根管充〓, 象牙質知覚過敏症, 歯の再石灰化, 齲蝕抵抗性の向上等様々な分野に応用が可能であり, 臨床にも応用されるようになってきている.本実験はCPCの骨補〓への応用の可能性について動物実験を行い, 特に組織反応と骨伝導性の観点から検討を行った.成犬の下顎骨に形成したポケットにCPCとApaceram(HPp系顆粒)を〓入した際の病理組織変化は以下に示すとおりである.術後2週間では, CPCとApaceramともに隣接組織の炎症の反応は見られなかった.また, 両者とも密な線維性結合組織でポケット上部が覆われていた.術後2ヵ月では, CPCを〓入したポケットは完全に骨膜と骨組織によって覆われており, HApとなっているCPCの〓入物自体が, 部分的に新生骨によって置き換わっている像が認められた.Apaceramのポケットは, 密な線維性結合組織で覆われているものの, 顆粒が〓入時と同じように固定しているものは見られず, 特にポケットが浅い症例では顆粒が移動してしまい結合組織のみが残存しているものも見られた.術後6ヵ月においては, CPCのポケットは骨膜と厚い皮質骨によって完全に覆われ, CPC自体がほとんど骨によって置き換えられているのが認められた.Apaceramにおいては, ポケットが骨膜と骨組織によって被覆されてはいるが, その状態は完全ではなく顆粒の移動により骨組織の見られない所もあった.2ヵ月の所見と同様に, 深いポケットにおいてもApaceramの顆粒の消失および移動が見られ, 新生した組織によってポケット内に十分に固定されているようには見えなかった.以上のことより, CPCは臨床的に種々のタイプの骨補〓に十分に応用し得るものであると判断された.
著者
鈴木 一臣 中井 宏之
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.34-44, 1993-01-25
被引用文献数
19

歯質と修復用レジンの接着性の改良を目的に, 象牙質の表面処理効果と作用機序について検討した.コラーゲンおよび酸処理象牙質を2-Hydroxyethyl methacrylate(HEMA)水溶液によって表面処理を行い, FT-IR分析, SEM観察および接着試験の結果から次のような結果を得た.即ち, コラーゲン線維へHEMAが吸着するためには水が必要である.コラーゲンの処理に用いた処理液のHEMA濃度とHEMA吸着量の関係においてHEMAが6〜60%の範囲でコラーゲンにHEMAがもっとも多く吸着した.HEMAの吸着したコラーゲンは, 形態変化(SEM写真)から推定して硬直化していた.接着強さは, リン酸-30%HEMA水溶液処理12.07MPa, クエン酸-30%HEMA処理10.09MPaおよびEDTA-30%HEMA処理7.04MPaであった.
著者
KANNO Tama OGATA Miwako FOXTON Richard Mark NAKAJIMA Masatoshi TAGAMI Junji MIURA Hiroyuki
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental materials journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.550-556, 2004-12
被引用文献数
13 14

The purpose of this study was to measure the bond strength of dual-cure resin cement at different regions of root canal dentin using three kinds of curing method. Thirty-six extracted bovine teeth were used. Each root was sectioned vertically into halves. Their pulpal dentin walls were polished flat and then applied with two dual-cure resin cements (Bistite II, Panavia F), and divided into three curing strategy groups : multi-direction light, one-direction light and no-light. The bonded specimens were sectioned perpendicularly to the long axis of the root into approximately 0.7 mm thick slabs within two-third of the root from the coronal end, and prepared for microtensile bond strength (μTBS) test. Knoop hardness of the cements was also measured. Within each curing strategy for both dual-cure resin cements, there were no significant differences between the μTBS values at the coronal third and mid third regions. The effect of curing method on bond strength and KHN was found to be dependent on the material.
著者
三浦 康伸 武田 昭二
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.253-264, 1995-03-25
被引用文献数
7

動的抽出法による細胞毒性試験を確立するため, 10種類の金属材料を用いて, 細胞生存率に対する抽出条件の検討を行った.抽出条件としては, 試料の重さ(1.5gと2.0g), 旋回速度(200rpmと240rpm), 抽出期間(1, 3および5日間)および旋回時に用いる加速抽出(アルミナ球あるいはジルコニア球上での抽出)の各条件であった.さらに, 得られた抽出液を0.22μmのメンブランフィルタにて濾過した濾液についても, L-929細胞に72時間作用後の細胞生存率に及ぼす影響ならびに溶出金属量の測定を行った.その結果, 細胞生存率に対する試料の重さの影響は少なかった.旋回速度および抽出期間については, それぞれ増加に伴って細胞生存率は低下した.また, 加速抽出条件に関しては, アルミナ球上での抽出のほうが, ジルコニア球上より細胞生存率の低下は顕著であった.以上の抽出条件の中で, 10種類の金属材料をアルミナ球上にて240rpmで旋回抽出した場合, それらが細胞生存率に及ぼす影響は異なっていた.その影響の程度からして4つのグループに分けられた.すなわち, チタンおよびチタン(Ti-6Al-4V)合金のグループ, コバルトクロム合金, ニッケルチタン合金および316Lステンレス鋼のグループ, タイプIV金合金および金銀パラジウム合金のグループとニッケルクロム合金, 銀インジウム合金および銀スズ合金のグループであった.また, 濾液の細胞生存率に及ぼす影響は抽出液より小さく, 濾過による細胞毒性の減弱化が認められた.一方, 溶出金属量については, アルミナ球上にて240rpmで5日間抽出した濾液中には, タイプIV金合金と金銀パラジウム合金では, 選択的な銅の溶出が認められた.銀インジウム合金と銀スズ合金では, 亜鉛の溶出が認められた.ニッケルクロム合金, ニッケルチタン合金および316Lステンレス鋼ではニッケルの溶出が, コバルトクロム合金ではコバルトの溶出が認められた.一方, チタンおよびチタン合金からの溶出は認められなかった.以上の結果から, 動的抽出による加速抽出の効果が得られる条件は, 試料の重さを1.5gとして, アルミナ球上にて240rpmで旋回抽出する方法であることが分かった.
著者
宮崎 光治 高田 十志和 遠藤 剛 稲永 昭彦
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-18, 123, 1994-06-25
被引用文献数
1 13

スピロオルトエステルを側鎖に持つアクリレート(ASOE)およびメタクリレート(MASOR)を合成し,その重合と得られた重合体の性質について検討した.スピロオルトエステルはイオン重合開始剤(BSS, HPSS)による加熱重合によって良く開環重合した.しかし,得られた重合体には少量の未反応の二重結合が見られた.また,ラジカル重合開始剤(BPO, AIBN, DTBおよびCQ)による重合ではビニール基の重合のみならず開環重合も低調であった.BSS ,AIBNおよびBPO/BSSによる加熱重合によって得られたMASOE重合体はプラスチックス状であった.ASOEおよびMASOEのイオン重合開始剤による加熱重合や紫外線重合における重合収縮は汎用のモノメタクリレートに比べて有意に小さかった.