著者
楽木 正実 小村 隆志 大土 努 祖父江 鎮雄
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.100-105, 1988-01-25
被引用文献数
7

本研究では, リン酸カルシウム系の4CPセメントおよびα-TCPセメントの物理化学的性質について, 硬化液を45%クエン酸水溶液, 粉液比を1.5の条件で比較検討し, 以下のような結果を得た.セメントの酸性度を調べるために, セメント表面に滴下した蒸留水0.5mlのpHを測定した.4CPセメント, α-TCPセメント, リン酸セメントおよびカルボキシレートセメントの中で, セメント練和泥表面のpHは, 4CPセメントが最も高かった(pH4.75〜5.23).α-TCPのpH(pH4.02〜4.22)は, 最もpHの低かったリン酸セメント(pH3.29〜3.62)より高く, カルボキシレートセメント(pH4.14〜4.62)よりやや低かった.このことから, 4CPセメントは歯髄をほとんど刺激しないことが推察された.4CPおよびα-TCPセメントの破砕抗力は, 各々50.0と74.9MPaであり, カルボキシレートセメントのADA規格No.61を満たしたが, 崩壊率は, 1.8と4.0%であり規格を満たさなかった.生体内でのセメントの経時的変化を推察するために, リン酸緩衝塩類溶液中にセメント硬化体を浸漬した場合, 崩壊率は蒸留水中よりやや大きかったが, 浸漬期間中破砕抗力の低下はなかった.
著者
工藤 貴也
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.525-544, 1988-07-25
被引用文献数
5 2

歯科材料により細胞増殖に影響を受けた細胞の回復の観点から細胞毒性をしらべるべく, 歯科用非貴金属合金の6組成金属元素(Co, Cr, Ni, Ti, Cu, Fe)について4種類の細胞を培養した.細胞増殖度, 浸漬液のpH値および溶出金属量をしらべると共に, SEMによる細胞形態観察もあわせて行い, 以下の結論を得た.1)Eagle MEMならびにDulbecco's modified Eagle mediumでは, 最も多量にCuの溶出が認められた(100ppm以上).ついで溶出量はCo, Ni, Fe, Crの順に少なくなり, Tiは検出できなかった.2)L-929細胞, HeLa S3細胞, HEp-2細胞, Gin-1細胞の細胞増殖度実験の結果から, Cu, Co, Niの順に細胞毒性は低減し, Cr, Fe, Tiではほとんど細胞毒性が認められなかった.3)L-929細胞, HeLa S3細胞, HEp-2細胞の細胞回復度実験の結果から, 6種類の金属とも細胞増殖度実験と同様の結果を示したが, これに反してGin-1細胞ではCoならびにNiで強い細胞毒性が認められた.4)SEM観察では, Cu, Co, Niは細胞に対して強い障害像を示した.これに反して, Cr, Fe, Tiでは細胞形態観察でもほとんど障害は認められなかった.以上の実験結果から, 細胞回復度からみたデータが歯科材料を含むバイオマテリアルの細胞毒性に関して多面的な情報提供の可能性が示唆された.
著者
西村 文夫 岡崎 邦夫 中村 英雄 野本 直
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.71-77, 1986-01-25
被引用文献数
16

10歳台の女子から抜去した新鮮な第3大臼歯から, 直径0.8〜1.0mm, 高さ0.8〜2.2mmのエナメル質と象牙質の円柱状試片を作製した.純銅製中空ドリルとアルミナペーストを併用し, 回転速度2, 000rpm, 負荷1N(100gf)で切削する方法を開発し, 圧縮試験によって比例限, 耐力, 破断強さ, 弾性係数, 歪などを測定した.試験片は, エナメル小柱や象牙細管などの方向や部位に留意して作製し, 圧縮試験は毎分0.1mmのクロスヘッドスピードで行った.次のような結果がえられた.1.エナメル質の圧縮特性は, 小柱の方向に強く影響を受けるが, 象牙質は影響を受けない.2.エナメル小柱の長軸方向と平行に圧縮した場合の圧縮特性は最小となり, 小柱の鍵穴型の頭から尾を通る軸と平行に圧縮した場合は中間の値となり, 鍵穴型を真横から圧縮した場合が最大の値を示した.3.エナメル質の圧縮耐力は測定できなかったが, 破断強さは270〜440MPaであり, 象牙質の圧縮耐力は210〜220MPaであった.
著者
齋藤 仁弘 金子 和幸 堀江 康夫 小泉 寛恭 大谷 一紀 五十嵐 孝義 塩田 陽二 吉橋 和江 廣瀬 英晴 西山 實
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.124-130, 2001-03-25
被引用文献数
12

フィラー含有量の多い歯冠用硬質レジン(高フィラー型硬質レジン)の4製品, エステニア(EE, ED), アートグラス(AE, AD), ベルグラスHP(BE, BD), グラディア(GE, GD)のそれぞれ2種類(エナメル用, デンチン用)について, それらの曲げ強さ, 曲げ弾性率, ヌープ硬さ, 吸水量および溶解量を測定した. 試験体の作製は, 製造者指示に従い, 測定結果はt-検定(危険率5%)で統計処理を行った. 曲げ強さは96.2〜210.6MPaを示し, エナメル用ではEE>BE>AE>GE, デンチン用では, BD,ED>AD>GDの順に大きな値であった. 曲げ弾性率は6,8〜24.6GPaを示し, エナメル用ではEE>AE, BE>GE, デンチン用ではBD>ED>AD>GDの順に大きな値であった. ヌープ硬さは42.7〜163.8を示し, エナメル用ではEE>BE>AE, GE, デンチン用ではBD>ED>AD, GDの順に大きな値であった. 吸水量は9.7〜28.1μg/mm3を示し, エナメル用ではGE>AE, BE>EE, デンチン用ではGD>AD>BD>EDの順に大きな値であった. 溶解量は0.2〜0.6μg/mm^3を示し, エナメル用およびデンチン用の両者で有意差は認められなかった. 以上の結果から, 高フィラー型硬質レジンは製品ごとの性質を理解した上で, 適切な症例や応用部位に用いるべきであることが示唆された.
著者
赤尾剛 中村 隆志 丸山 剛郎 高橋 純造 荘村 泰治 木村 博
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯材器 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.685-691, 1992
被引用文献数
4

ラミネートベニア修復物の仕上りは, 一連の複雑な工程や技工士の熟練度によって影響を受ける.この問題点の解決法のひとつとして, コンピュータ技術を応用したラミネートベニア修復用CAD/CAMシステムの開発を試みた.その第一段階として, レーザ変位計とコンピュータ制御3軸走査モデリングマシンCAMM-3を組合せた歯牙模型形状自動計測システムを開発し, その計測精度を検討した.その結果, 模型の色調を灰色に決定にし, レーザ変位計と模型表面の距離を常に一定に保ちながら走査する追随式計測法をとることによって, 最も精度良く計測することができようになった.このシステムを使用して, 上顎前歯模型表面の形状を計測し, 精度の高い三次元形状データを得ることができた.
著者
有働 公一 久恒 邦博 安田 克廣 太田 道雄
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.253-261, 333, 1984-12-25
被引用文献数
25

パラジウムを含有する市販歯科用14K,16K金合金の等温時効による硬さの変化とその原因機構について,電気抵抗測定,硬さ試験,X線回折,電子顕微鏡直接観察,制限視野電子線回折によって検討した。時効硬化は準安定相であるAuCu I'規則格子の形成に伴う整合ひずみによって生ずる。AuCu I'規則相は反応の進行とともにひずみを解散するため双晶化するが,これによる過時効軟化は顕著ではない。過時効軟化は平衡相AuCu I規則格子とAg-rich α_2相の二相分離が結晶粒界から起こることによって生じ,その原因はこれら二相によって形成されたラメラ構造の界面が非整合になるためであることが解った。
著者
渡津 章 井汲 憲治 野浪 亨
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.243-248, 2001-07-25
被引用文献数
2

人間の口腔内で破損したBranemark人工歯根を調べ, 破断プロセスを検討した.この試料は歯根として機能していたが, 歯槽骨の吸収が起こった後, 破折したものである.破断部ではフィクスチャーの内側のネジ山の谷部に沿った形で外側の谷部が形成されており, 大きい荷重を受ける機械的強度の低い部分から破壊したことが分かった.また, フィクスチャーの破断面では, 破断時に生じる細かい起伏形状がなくなっていた.一方, 中央のネジには細かい波状の構造があった.つまり, このネジが繰り返し応力を受けて破断したことが分かった.これらのことから, まずフィクスチャー部のネジ山谷部に沿って亀裂が生じた後, 破断面が塑性変形を起こし, 最後に中央のネジが繰り返し応力により破断したことが分かった.
著者
菊井 徹哉 島野 偉礎轄 岡崎 美穂 泉 俊郎 長山 克也
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械. Special issue, 日本歯科理工学会学術講演会講演集 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.25, pp.110-111, 1995-03-31

試作光重合型硬質レジンの物性ついて、市販の光重合型硬質レジンを対照とし比較検討した。圧縮強さは、6時間37度程度に加温すると圧縮強さが向上し、抗折強さでは、初期値においても試作硬質レジンが上回っていた。接着強さおよび耐久性は、対照に比べやや劣っていたがズズ電析を行わなくても対照に近い値がえられ、技工操作を一段階省略できる可能性が示唆された。また、サーマルサイクルによる接着強さの低下は少なく、一般的に前歯部咀嚼による咬合力を考えると、十分臨床応用が可能であると考えられる。
著者
[タカ]橋 俊幸 菊地 聖史 [タカ]田 雄京 奥野 攻
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.126-139, 1998-03-25
被引用文献数
3

近年, 生体材料の安全性が重要視されるようになり, 歯科用金合金にもより高い安全性が求められるようになってきた.金に少量のチタンを添加するとわずかに固溶するため, 生体安全性が高く, 審美性や機械的性質に優れた新しいタイプの金合金を開発できる可能性がある.そこで, チタン添加量を0.5〜2.0%とした金-チタン合金を作製し, 熱処理条件, 機械的性質, 組織, 色調を調べ, 歯科鋳造用金合金としての可能性を検討した.その結果, 歯科用合金として, 溶体化処理条件は1, 000℃, 10分間, 時効処理条件は600℃, 10分間が適当と考えられた.また, チタン添加量は1.0〜1.8%が適切と考えられた.金-チタン合金は, チタン添加あるいは熱処理を行うことで, 軟質から超硬質までの機械的性質が得られることが分かり, 歯科鋳造用金合金として多目的な応用の可能性が考えられた.
著者
宮崎 隆 玉置 幸道 鈴木 暎 宮治 俊幸
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.450-456, 1988-05-25
被引用文献数
2

ポーセレン(リブデント, ビタVMK), キャスタブルセラミックス(ダイコア)及びマシナブルセラミックス(マコール)を用いて光沢のある仕上げ面を得る目的で超音波ラップ研磨を行ない, 研磨能率と研磨面性状を検討した.超音波ランプ研磨は市販の超音波研磨機(周波数28.5KHz, 10W)を用いて, 木材のラップ棒と試料の間にアルミナ, セラニア, ジルコニア, 酸化クロム, ダイヤモンドなどの遊離砥粒を介在させて行なった.ポーセレンはダイヤモンド以外の砥粒では能率が悪かったが, ダイヤモンドを用いるとグレーズ面のような良好な仕上げ面が得られた.マコールやダイコアはポーセレンよりも研磨性が良く, ダイヤモンドは勿論, アルミナやセラニアでも良好な仕上げ面が得られた.
著者
塙 隆夫 大川 昭治 近藤 清一郎 小林 紘孝 菅原 敏 太田 守
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.39-44, 1985-01-25

歯科遠心鋳造法によって得られた等軸晶組織を示すNi-Cr合金の凝固機構を定性的に考察した.鋳造物の凝固を調べるために幾つかの実験を行ったところ, 次の結果が得られた.すなわち, 鋳造組織内の結晶粒は遠心力方向にあるものほど, また, スプルー直下の結晶粒はスプルー直径が大きいほど, 微細であり, 鋳型内に棚を付けると棚より下では結晶粒は比較的粗大であった.これらの結果は, 結晶が溶湯の流入による機械的対流と温度差による熱的対流とによって鋳壁から離れ, 遠心力によって溶湯内を移動して鋳型底部に堆積するという理論で説明できる.特に, スプルー部分の凝固は結晶粒がスプルー上部に堆積して詰まることによるものであると推察した.
著者
滝本 知彦 武田 昭二
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.431-442, 1991-07-25
被引用文献数
11

抽出法による細胞毒性試験において, 初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法が細胞毒性に与える影響について検討した.すなわち, 種々な濃度に調整した8種類の金属塩をマウス結合織由来のL-929細胞に1日, 3日および5日間作用させ, 金属イオン濃度と細胞生存率の関係についてしらべた.その結果, 初期細胞数が多いほど, 金属イオンの細胞阻止濃度は高くなった.また, 金属イオンの作用時間が長くなるほど, 金属イオンの細胞阻止濃度は低くなった.ニュートラルレッド法, MTT法, クリスタルバイオレット法およびタンパク定量法の4種類の判定法を比較すると, 金属イオンの種類によって各判定法間で細胞阻止濃度にわずかな差が認められた.とくに, BeイオンとCuイオンにおいて, MTT法と他の判定法との間における差が顕著であった.20%と80%の細胞阻止濃度から求めた濃度-反応曲線の傾きは, 金属イオンの種類, 初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法によって異なっていた.以上の実験結果から, 抽出法による細胞毒性試験において初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法が細胞毒性評価に大きな影響を及ぼすことが明らかとなり, 今後, 歯科材料の細胞毒性試験実施に当たって有益な示唆を与えるものと思われる.
著者
日景 盛 熱田 充 佐藤 温重
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.642-647, 1989-09-25
被引用文献数
1

鶏胚大腿骨の器官培養を応用して接着性レジンの細胞への影響を明らかにすると共に, 生体材料の安全性評価における器官培養法の有用性について検討した.スーパーボンドC&BとパナビアEXを直径0.35mm, 長さ2mmに整形して試料とした.試料を鶏胚大腿骨の骨端部に挿入し, 37℃7日間回転培養後, 相対成長率と相対湿/乾燥重量比(W/D), 組織像を調べた.その結果, 相対成長率に関してはスーパーボンドC&BもパナピアEXも影響はなかった.しかしW/DにおいてパナビアEXは対照より大きな値を示し, 組織所見では隣接する組織に幼弱な軟骨細胞の存在と軟骨基質形成不全を認めた.これらの結果から, パナビアEXは軽度の組織障害性を有していることが示唆された.
著者
小島 克則 門磨 義則 山内 淳一
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.316-321, 1997-07-25
被引用文献数
9

アセトンに6-〔N-(ビニルベンジル)プロピルアミノ〕-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオン(VBATDT)を単独あるいは10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)とともに溶解させた歯科用金属接着性プライマーを試作した.試作プライマーで表面処理した金属にコンポジット系レジンセメントのパナビア21を接着させ, 接着強さを調べた.その結果, VBATDT単独よりMDPと併用することにより貴金属のAg, Pt, Pdや卑金属のCr, Tiでは接着増強効果が認められた.VBATDTとMDPを併用したプライマーを塗布し, 乾燥させる処理では, MDP濃度が1.0wt%の場合, VBATDT濃度が5.0wt%よりも0.1または0.5wt%の方が高い接着強さが得られた.さらに, VBATDTを0.5wt%としてMDP濃度を変化させた結果からは, 好ましいMDP濃度は0.2〜0.5wt%程度であることが示唆された.
著者
土生 博義 平口 久子 中川 久美
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.65-72, 1999-03-25
被引用文献数
2

新しく開発された水中で長時間寸法が安定とされるアルジネート印象材について,塩素系消毒剤溶液中への長時間(3時間)の浸漬が可能か否かを検討した. 次亜塩素酸ナトリウム2製品の0.1%溶液中および塩素化インシアヌル酸ナトリウムの1,000ppm溶液中に印象を1,2および3時間浸漬し,印象体の寸法変化,模型の細線再現性,模型の表面粗さとうねりおよび顎堤模型の三次元的再現性を計測した. その結果,本アルジネート印象材は,水中および消毒剤溶液中で寸法が安定であった.そして,得られた模型の表面性状への影響が小さかった.また,顎堤模型の再現性も良好であった.以上の基礎実験結果から,本アルジネート印象材の塩素系消毒剤0.1%溶液中への長時間浸漬の可能性が示唆された.
著者
藤森 拓人 中野 文夫 高橋 英和 岩崎 直彦 西村 文夫 早川 巖
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.368-375, 2002-11-25
被引用文献数
6

本研究の目的は義歯安定剤の引張接合力に及ぼす被着体の影響を検討することである.被着体として口腔粘膜を擬似した寒天,金属床を擬似した金属板,アクリル板を用意した.市販の義歯安定剤である,粉末タイプ4製品,クリームタイプ4製品,テープタイプ2製品,クッションタイプ4製品の14製品について試験した.粉末タイプではアクリル,金属と比較して寒天との接合力は有意に小さい値を示した.クリームタイプでは被着体による接合力の違いは認められなかった.クッションタイプでは寒天<金属<アクリルと接合力が有意に大きくなった.テープタイプの接合力はクッションタイプと同じ傾向を示した.以上の結果より義歯安定剤の接合力は被着体によって異なることが明らかとなった.
著者
坪田 有史 西村 康 大祢 貴俊 深川 菜穂 橋本 興 小林 和弘 野本 理恵 平野 進 福島 俊士
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.225-235, 2004-07-25
被引用文献数
4

レジン支台築造において,間接法を採用することによりレジン築造体を装着前に加熱処理を行うことが可能となる.そこでクリアフィルDCコア(DC)およびクリアフィルフォトコア(PC)の支台築造用コンポジットレジンに対して,各種加熱処理による物性の影響を検討した結果,以下の結論を得た.1.DCにおいて,100℃30分の加熱処理により圧縮強さ,圧縮比例限,ダイアメトラル引張強さ,3点曲げ強さ,曲げ弾性係数が有意に向上した.2.DCにおいて,加熱処理によりヌープ硬さは増加しなかった.3.DCにおいて,化学重合のみと化学重合と光重合で硬化させた試料間では吸水量以外の物性に有意な差は認められなかった.4.PCは,DCと比較すると加熱処理による影響が少ないことが示唆された.したがって,DCで製作したレジン築造体を加熱処理することによって,いくつかの物性が向上し,臨床的意義があることが分かった.
著者
平林 茂 平澤 忠 奈須 郁代 中西 敏 三宅 裕昭
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.665-679, 1984-09-25
被引用文献数
29

可視光線重合型コンポジットレジンの硬化体内部のかたさの変化および残留モノマー量の変化を測定し, その重合の不均一性を検討した.その結果, 試料の深さ方向では, レジンの重合率は, 光照射面直下でやや低く, 表面下0.5mm付近で最大となり, 以後深くなるに従い低下する傾向が認められた.また, 試料の水平方向では, 中心部が最も高く, 中心部から離れるに従い低下する傾向が認められた.この重合の不均一性は, 照射時間の延長, および光源をできる限り近づけて照射することによりある程度改善された.化学重合型コンポジットレジンのかたさ(レジンの重合率)を基準とした可視光線重合型コンポジットレジンの臨床的に有効な硬化深さは, 一般に言われる見かけの硬化深さの約30〜40%程度と推察された.光透過性の良い無機質フィラーの含有量の多いコンポジットレジンほど, 残留モノマー量は少なかった.