著者
稲垣 均 松井 隆則 小島 宏 加藤 潤二 小島 泰樹 藤光 康信 黒川 剛 坂本 純一 野浪 敏明
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.692-696, 2004-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
17

症例は62歳の女性で,2000年1月直腸癌にて低位前方直腸切除術の既往がある.2000年11月より血清CEAの上昇傾向を認めていたが,画像診断上再発所見を認めず,経過観察されていた.その後も血清CEAは上昇を認め,2001年8月CTにて膵体部に腫瘤を認めた.2001年10月当科を紹介された.孤立性膵腫瘍であり,他に転移を認めないことから,膵体尾部脾合併切除術を施行した.腫瘍は7×4cm大で,組織学的に中分化腺癌の像を呈し,直腸癌の転移と診断した.術後,5-FUとisovorinの化学療法を開始し,2003年7月現在,血清CEAの軽度上昇を認めるが,画像上明らかな再発所見を認めず,外来通院中である.大腸癌膵転移は極めてまれであり,その切除の報告例は検索しえた範囲内で,自験例を含めて14例に過ぎない.長期生存例の報告もあり,孤立性で他に転移巣を認めない場合には,積極的に手術を行うべきと考えられた.
著者
眞次 康弘 中塚 博文 豊田 和広 小川 尚之 大城 久司
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1452-1456, 2001-09-01
被引用文献数
26

原発性虫垂癌5例を経験した.当院における虫垂癌の頻度は切除虫垂の2.02%(247例中)切除大腸癌の1.39%(361例中)であった.(1986年7月〜2000年3月)内訳は男性3例, 女性2例, 平均年齢59.2歳.術前診断は虫垂炎4例, 虫垂粘液瘤1例, 組織診断は通常型腺癌3例, 嚢胞型腺癌2例であった.術式は回盲部切除3例, 結腸右半切除2例, 虫垂切除後2期的手術が3例であった.虫垂癌の早期発見には虫垂炎症例に対し術前画像検査, 術中の注意深い検索, 術後の病理組織学的検索を行うことが重要である.術式では浸潤癌にリンパ節郭清を伴う根治手術を, 術前診断の困難な早期虫垂癌に対して虫垂切除を行うことは矛盾はないと考えられた.追加手術としてsm癌は浸潤癌に準ずる手術を, m癌は断端陰性かつ断端処理が可能であれば虫垂切除術でよいと考えられたが, まだ症例数が少なく今後さらなる症例の蓄積と予後調査が必要である.
著者
藤本 平祐 高 済峯 内藤 彰彦 武内 拓 中島 祥介
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.12, pp.1839-1842, 2002-11-25
被引用文献数
13

症例は初回手術時59歳の男性で,腹部腫瘤を主訴に当院を受診.1996年S状結腸原発消化管間葉系腫瘍と診断し切除したが,転移・再発を繰り返し,約5年間で合計10回腫瘍摘出術を行った後,腫瘍の再発を来した.摘出標本の病理組織学的所見,免疫染色でc-kit陽性のgastrointestinal stromal tumor(GIST)であった.手術不能のため,慢性骨髄性白血病に対する新しい治療薬であるSTI571(Imatinib mesylate)を2001年7月から投与した(400mg/日).CTで再発巣,肝転移巣ともに著明な腫瘍縮小効果が見られ,新たな病変は出現しなかった.副作用は軽微であり,臨床症状は劇的に改善した.STI571治療開始後9か月後の現在,元気に通院中である.
著者
鈴村 潔 山口 晃弘 磯谷 正敏 原田 徹 金岡 祐次 鈴木 正彦 芥川 篤史 菅原 元 臼井 達哉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1665-1669, 2001-11-01
被引用文献数
21

上行結腸癌に対する結腸右半切除後16か月目に十二指腸と横行結腸に瘻孔を形成した膵頭部転移巣の1切除例を経験した.症例は嘔気, 嘔吐を主訴とした45歳の女性で, 上部消化管造影X線検査で十二指腸の狭窄像を認めた.CTでは膵頭部から十二指腸第2部にかけ, 中心壊死を伴った腫瘤性病変を認めた.血管造影では上腸間膜静脈に腫瘍による圧排所見を認めた.大腸癌膵転移と診断し回腸横行結腸吻合部切除, 膵頭十二指腸切除, 肝転移巣切除, 上腸間膜静脈部分切除を行った.病理組織学的所見では, 膵鉤部に直径約3cmの中心壊死を伴った転移性病変を認め, 中心壊死部を介して十二指腸と横行結腸に瘻孔を形成していた.術後36病日に退院したが, 肝転移により術後第192病日に死亡した.
著者
間宮 俊太 阿部 恭久 笹川 真一 指山 浩志 立石 順久 落合 武徳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.1385-1389, 2003-10-01
参考文献数
10
被引用文献数
8

症例は82歳の男性.全身倦怠感を主訴に2002年4月近医を受診.高度貧血を指摘され,5月23日当科紹介受診,同日精査目的で入院となった.上部消化管内視鏡検査にて胃体部に潰瘍を有する巨大粘膜下腫瘍を認め,腫瘍の生検結果はGIST,uncommitted typeであった.CTでは胃体部に巨大なtumorを,肝臓に巨大な転移性腫瘍,腹腔内に腹膜播種と思われるmassを広範囲に認め,手術不能と考え,在宅中心静脈栄養を行っていた.生検組織を再評価するとc-kit陽性であったため,2002年9月24日よりメシル酸イマチニブの投与を開始した(300mg/日).投与約4週後のCTでは主病巣,すべての転移巣にて著明な縮小を認め(縮小率90%),新たな病変の出現も認められずPRと判断した.副作用として同質性肺炎が出現し,いったん投与を中止したが,ステロイドパルス療法にて速やかに改善したため,ステロイドを併用しつつ投与を再開,現在も外来にて投与継続中である.
著者
海堀 昌樹 松井 康輔 斎藤 隆道 岩本 慈能 吉岡 和彦 上山 泰男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.1655-1660, 2008-08-01
被引用文献数
2

症例は53歳の女性で,2006年3月大腸癌術後両葉多発性転移性肝癌にて当科入院となった.患者はエホバの証人であり,教義上の理由により同種血輸血やアルブミン製剤使用は拒否された.転移性肝癌5か所に対して肝切除術を行った.手術時は術前希釈式自己血輸血650ml,術中回収式自己血輸血500ml行った.手術時間8時間43分,出血量は1,015mlであった.ヘモグロビン濃度,血清アルブミン値はそれぞれ術前12.2g/dl,4.1mg/dlであったが,手術直後8.9g/dl,2.0mg/dlまで低下した.術後13日目に軽快退院となった.エホバの証人患者に対する術前インフォームド・コンセントにおいては担当外科医,麻酔科医が患者と無輸血手術の契約を行い免責証明を交わさなければならない.その際,医師は安全な手術を行うため,患者またはその家族へ手術での推定される出血量を述べ,術前希釈式や術中回収式自己血輸血,またアルブミン製剤の必要性を説得し,その使用の許可をとる必要があるものと考えられた.
著者
俵藤 正信 関口 忠司 塚原 宗俊 永井 秀雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.1839-1843, 2000-11-01
被引用文献数
15

症例は70歳の男性.脾彎曲部の横行結腸進行癌によるイレウスにて入院した.経鼻イレウス管での減圧が不十分なため, 経肛門イレウス管を挿入し口側腸管減圧を行った.挿入時は何ら問題なかったが, 挿入後4日目に発熱と腹痛が出現し, 腹部レントゲンとCTで経肛門イレウス管による小腸腸間膜への穿通と診断した.持続吸引を中止し抗生物質の投与を行い, 経肛門イレウス管挿入後19日目に一期的根治術を施行しえた.穿通の原因は, 急速な減圧による口側結腸粘膜へのイレウス管先端の接触と持続吸引が考えられた.経肛門イレウス管は閉塞性大腸癌の術前の腸閉塞管理に非常に有効な方法であるが, その挿入時だけでなく, 挿入後においてもチューブトラブルのないように注意深い管理が必要と考える.
著者
木下 博明 酒井 克治 広橋 一裕 街 保敏 井川 澄人 山崎 修 鄭 徳豪 福嶋 康臣 久保 正二 松岡 利幸 中塚 春樹 中村 健治
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.2329-2335, 1985-11-01
被引用文献数
2

肝細胞癌の元凶ともいえる門脈内腫瘍栓の対策として経皮経肝門脈枝塞栓術(percutaneous transhepatic portal vein embolization以下PTPE)を考案し,それを肝細胞癌17症例の術前に行ったのでその手技と成績を報告した.PTPE後門脈圧の亢進と多少の肝機能障害の出現をみたが,PTPEは動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization以下TAE)に比べ安全であった.また切除標本の塞栓状態と組織学的所見からみて塞栓物質としてリピオドール混入フィブリン糊が現在最も適していると考えられた.肝切除前に行われるPTPEはTAEの抗腫瘍効果を増強させ,肝内転移の防止や肝切除後の肝再生ひいては手術適応の拡大にも有用であると考えられた.
著者
長山 正義 バーカーン ロナルド ヒューゴ
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.1087-1092, 1987-05-01
被引用文献数
4

雄ラットの低栄養状態下で,結腸を切除,吻合し,種々の濃度(5%,10%,15%,20%)でモノアセトアセチン(Ma群)およびブドウ糖(G群)を用いたTPNの効果を比較検討した.術後5日目の体重はG群,Ma群で,投与カロリー量が同じ群ではほぼ同様の値を示した.血清Acetoacetate,β-hydroxybutyrateは5%Maを用いたM5群を除いてMa群で高値を示した.NバランスはMa群が全体的に良好な傾向を示し,特にM5群と5%Gを用いたG5群で統計的に有意差がみられた.吻合部腸管耐圧力はMa群ではほぼ一定の値を示し,M5群とG5群の比較ではM5群が有意に高値を示した.以上の成績からMaは低栄養,ストレス下のラットにおいては,有効なエネルギー源であることが示唆された.
著者
飯田 辰美 佐久間 正幸 芹沢 淳 福地 貴彦 雑賀 俊夫 松原 長樹
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.1924-1927, 1990-07-01
被引用文献数
12

症例は56歳男性.右下腹部痛,同部の腫瘤を主訴として来院された.右下腹部に硬い鶏卵大腫瘤が触れ,超音波検査,注腸造影,大腸ファイバースコープ,computed tomographyなどの検査により原発性虫垂癌が最も疑われた.開腹,切除標本所見より,この虫垂腫瘤は虫垂で穿孔した魚骨をとりまくように存在する炎症性肉芽腫であり,悪性像は認められなかった.このような腫瘤はきわめてまれで,検索しえた範囲では,本邦第1例目と考えられる.
著者
金子 猛 磯部 潔 笠原 正男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.46-50, 2003-01-01
参考文献数
9
被引用文献数
4

術前腹部CTで石灰化を伴う小腸腫瘤性病変を認め,開腹手術で小腸間膜に異所性膵組織を認めた1例を報告する.症例は54歳の男性.1996年9月25日より腹痛出現し,入院精査で小腸に石灰化を伴う腫瘤性病変をCTで認めた.保存的治療で腹痛軽快するが,2週間後のCTでも縮小した腫瘤性病変を小腸に認めた.小腸造影では異常所見を認めなかった.1996年11月7日,再び腹痛が出現し救急外来受診・CTでは前回と同様に小腸壁の肥厚と石灰化病変を認めた.開腹手術を施行し,トライツ靱帯より50cm直肛門側に,小腸に接する小腸間膜内に4cm大の腫瘤性病変を認めた・小腸とともに切除した.H.E染色および特殊染色において腺房.1組織,導管とランゲルハンス島を検索され,HeinrichI型の異所性膵組織と診断された.好酸球浸潤を認め,異所性膵組織が膵炎を引き起こしたものと考えられた.