著者
田村 謙太郎
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2004

理博第2808号
著者
岡村 秀典 稲葉 穣 船山 徹 向井 佑介 菱田 哲郎 今井 晃樹 稲本 泰生 廣川 守
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

雲岡石窟の研究に関連して、480年前後に北魏王朝が造営した方山思遠寺址などの仏教寺院址とその出土遺物を調査し、北魏仏教寺院址の全体像を明らかにした。また、北魏孝文帝が481年に奉納した舎利文物が河北省定州市で発見され、そこから出土した金属器とガラス器について蛍光X線分析をふくむ考古学的・理化学的調査を実施した。その結果、仏教文化の東伝にともなって新しい青銅器やガラス器の制作技術が西から伝わったことを明らかにした
著者
赤松 俊秀
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1962

博士論文
著者
清水 慶子
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

いわゆる「環境ホルモン」、内分泌撹乱物質による生殖能力や次世代への影響は、人類を含めた数多くの生物の存続を危ぶむ問題であり、基礎的な研究の必要性が高まっている。これらの原因として考えられているものは主に人工の化学物質であるが、これ以外にも約20種類の植物由来のエストロゲン様物質(Phytoestorogen)がその作用を持つといわれている。本研究では、これらの植物由来のエストロゲン様物質のサルの生殖内分泌系に及ぼす影響を、発生生物学的、内分泌学的に調べた。カニクイザルに植物由来のエストロゲン様物質を30日間連続投与した。これらのサルにおいて、経時的に採尿を行い、ステロイドホルモンの代謝産物である尿中E1C,PdGおよび尿中FSHについて酵素免疫測定法を用いて測定した。その結果、生殖関連ホルモン動態の変化や月経周期の遅延、卵胞期の延長、LHサージの抑制が観察された。これらにより、ダイゼイン投与後、これらのサルは発情持続状態となり、結果として排卵が抑制されることが分かった。また、妊娠マカクザルにイソフラボン50mg含有飼料を妊娠初期から90日間連続給餌した。これらのサルから得られた児を、4%パラホルムアルデヒドにて潅流固定し、組織切片を作成した。これらの切片を用いて免疫組織化学法により、エストロゲンレセプター(ERαおよびERβ)の局在を調べた。同時に、妊娠ザルから経時的に採血、採尿をおこない、血液イソフラボン濃度および血中、尿中生殖関連ホルモン濃度を測定した。その結果、ERαおよびERβはいずれも、オス、メス新生児ともに、視床下部の腹内側核に発現していた。これらにより、植物由来のエストロゲン様物質がマカクザルの性周期に変化を及ぼす可能性、および、視床下部におけるエストロゲンレセプターの発現が胎生期における植物由来のエストロゲン様物質により影響を受ける可能性が示唆された。
著者
山根 実紀
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

おもに公立夜間中学をとりまく教育政策の具体的状況をみることによって、不就学・非識字者の社会的位置を外側から理論化する作業を行った。近畿圏および東京の夜間中学で、とくに「全国夜間中学校研究大会」(1954年から毎年度開催)の記録誌とその付随資料、一部の学校の沿革史を中心に資料調査をし、夜間中学の不安定な制度的な状況を各学校で把握するとともに、夜間中学がフォーカスしてきた問題の変遷から、1970年代半ばから在日朝鮮人教育に焦点を当てることになる資料的裏付けの第一歩となった。さらに、日本教職員組合の機関紙等を創刊から1980年前後まで約30年分にわたって網羅的に調査し、日教組の夜間中学および在日朝鮮人教育についての認識を確認したところ、ちょうど1971年に日教組が「教育新聞」の中で、「夜間中学を無視しつづけてきた」と自己反省している重要な事実を確認した。戦後、夜間中学は「日本人」の学齢期の年少労働者の未就学「救済」という目的、教師側の権利闘争の背景、さらには朝鮮半島の政情不安なども相まって不可視にされてきた在日朝鮮人女性非識字者が、1970年代前後の夜間中学生の教師や教育行政への「告発」を契機に、1970年代の在目朝鮮人女性生徒の増加の思いがけない可視化を促したことの制度的・社会的条件の重層的構造の存在を明確化した。以上のように夜間中学に関して基礎的な事実を解明するとともに、在日朝鮮人集住地域の京都市南区東九条の教会で行われていた自主的な識字教室「東九条オモニ学校」(1978年開設)の設立と運営にかかわってきた日本人および在日朝鮮人2世の教師側のインタビューと関連史料の整理をすることで、地域的特有性、生徒である「オモニ」と日本人教師の関係性、日本人教師と在日朝鮮人教師との葛藤などは、夜間中学ともまた違う学習空間を持ち合わせていた可能性がわかった。さらに、韓国調査では、70年代の「成人学校」事情をソウル大学図書館、延世大学図書館で史料調査し、また済州島の道庁と済州大学図書館および「在日済州人センターの史料調査では在日ネットワークを確認し、釜山では社会教育学術交流会に参加した。
著者
伊藤 正子 下條 尚志 小田 なら
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年度はハノイ、フエ、メコンデルタで華人と明郷についての調査を行った。まずハノイでは旧市街の元華人街を中心にインタビューを実施、短期間ではあったがしつこく何度も通ったかいがあり、水面下に残る華人ネットワークをたどって、1978年の中越関係悪化時に中国に戻らず、ベトナムに残っている人たちの証言を得ることができた。その結果、ベトナム人男性と結婚していた華人女性はベトナムに残ることができたが、それ以外の人々はほとんど残ることができず、ほぼ中国へ渡っていることがわかった。中部・南部からも難民となってベトナムから脱出した中国系住民は多いが、ハノイほど徹底して追い出されてはおらず、政治都市ハノイの厳格さと、北部から華人人口の大部分が出国したとされていた通説を確認することにもなった。さらに以前の教育状況や今は政府に接収されてしまっている会館の活動、華僑・華人大量出国の前後の状況など歴史を具体的に明らかにできた。ハノイに残った華人についての調査はこれまでないので貴重な資料を収集できたと言える。通常外部者は入れない、接収され小学校にされている元広東会館の建物内部も見ることができ幸運にも恵まれた。12月にはハノイ大のチン教授と分担者とともに、フエでインタビュー調査、フエ大学で華人に詳しい研究者と交流し文献資料収集を行った。フエは観光客で賑わうホイアンと同様、華人会館などの施設が揃っているにも関わらず、全く観光開発されていない。ホイアンやホーチミン市に比べ華人社会が衰退しつつあり、観光開発に関わるような人材も少ないことがわかった。行政側もフエには王宮関係の施設がたくさんあるために、ベトナム的でない華人施設に注目する必要がないと捉えているようだ。また阮朝に高官として仕えていた明郷の子孫が残っているのも古都の特徴で、抽象的にしか言われていない明郷のかつての活躍ぶりを具体的に明らかにできた。
著者
安藤 仁介 位田 隆一 西井 正弘 杉原 高嶺
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、冷戦構造崩壊後の国際秩序の再編と安定の時代における国際連合の機能変化と役割について、全体的に分析検討することを目的とした。安藤は、設立後50周年を迎えた国連の活動の全般的な再検討を行った上で、日本との関係にも目を配りつつ、人権分野を中心に研究を進めた。とくに人権の実効的保護に視点をおいて、B規約人権委員会で実践する傍ら、人権条約に対する保留の問題を検討し、また国際人権規約全般についてまとめた作業を発表した。杉原は、同じく国連50年をふりかえりつつ、紛争解決の分野、とくに国際司法裁判所の機能について、個別の判例研究をつづけ、また政治的紛争の司法的解決可能性について理論的検討を加えた他、最終年度に国際司法裁判制度全般について研究を集大成することができた。西井は、これまでの国際環境問題の展開を跡付けつつ、国際環境法の発展をたどるかたちで国連のこの分野での活動を捉らえようとしてきた。特に、単に自然環境のみでなく社会環境の視点で人権を捉えて、国際機構による人権保障制度の枠組みを検討した。位田は、一方で、リオ宣言や平和維持、開発協力、人権、海洋法などの諸分野を見渡して、国連の持つ国際法形成機構に着目して理論的研究を進め、他方で、国際機構による発展途上国問題の解決に焦点をあてて、資源国有化紛争の実効的解決や地域協力システムにおける持続的発展を検討した。本研究計画の全体のまとめとして統合した研究成果をまとめて発表するにはまだ至っていないが、安藤を中心とする研究体制は継続しており、機会を捉えて近い将来に総合的に21世紀の国連の役割を示唆できるであろう。
著者
平野 俊二 塩坪 いく子 山口 正弘 苧阪 直行 室伏 靖子 清水 御代明
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究は人および動物の環境への適応機制に関する心理学的研究である。入力情報の処理から高次の概念獲得、目標定位行動に至る諸側面について、比較的・発達的要因を含めた検討を重ねた。1.視覚入力情報処理(1)乾はパタンの表現と構造化に関して強調と競合による可塑的神経回路網の計算理論を提案した。与えられた2次元画像強度デ-タから画像生成過程を産出する並列多段階モデルである。(2)苧阪は空間周波数パタンの感受性に及ぼす中心・周辺視処理システムの促進と抑制の効果、および、漢字、かなの読書における有効視野面に相互作用が働くことを明らかにした。2.概念の獲得(1)清水は言語文脈による概念の獲得を検討した。母語にない概念を言語文脈のみによって獲得することの困難をはじめ、既知の概念をあてはめようとする傾向、反証事例は必ずしも有効に用いられないが、定義を与えられると獲得可能となることが示された。(2)室伏はチンパンジ-に図形パタンと数字による物、色、数の符号化訓練後に、さまざまな対象について般化テストを行い、高次力デゴリ-としての概念の形成が色、物、数の順に難かしくなることが分った。3.目標定位(1)塩坪は目標定位に及ぼす発達的要因を調べた。10ヶ月乳児に手伸ばしと這行による対象選択を求め、反応は異なっても共通の特徴がみられること、対象の空間的配置や呈示順序が選択に影響することが見出された。(2)山口は目標定位と選択行動に関わる神経機構について、上丘損傷ラットの回りこみ行動を解析した。走行中の目標定位は損傷後も保持されるが間隙により再定位を要するとき、損傷の阻害効果が顕著となることが示された。(3)平野はラットの音刺激継時非見本合せで海馬損傷の影響を検討し、刺激差小、刺激間間隔大のときに障害が認められることを示した。
著者
飯沼 二郎
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1961

博士論文
著者
大串 隆之 内海 俊介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

セイタカアワダチソウの成長パタンの季節動態が、日米両国間および各国の地域間でも大きく異なることがわかった。日本の圃場では日本産のセイタカの方が米国産のセイタカよりも植物サイズと葉数がいずれも3倍以上であった。さらに、植物の成長期間は滋賀と佐賀の圃場では8月中旬には完了したが、北海道の圃場では9月以降まで続いた。主な植食者の個体群動態は、日米両国間および各国の地域間でも大きく異なることがわかった。セイタカヒゲナガアブラムシの出現パタンと密度は圃場間で異なった。佐賀と滋賀の圃場ではアブラムシの密度のピークは6月上旬であったのに対し、北海道では9月下旬から10月上旬にかけてピークを迎えた。さらに、北海道では他の地域に比べて、密度は10倍以上も高かった。アワダチソウグンバイは佐賀と滋賀では高い密度であったが、北海道では全く見られなかった。滋賀では9月上旬にかけて密度のピークが見られたが、佐賀では6月下旬から10月上旬にかけて同程度の密度で推移した。グンバイの食害を受けた葉の割合は、滋賀では6月から7月下旬にかけて急激に増加し80%に達した。一方、佐賀では6月下旬に早くも食害率は100%に達した。食害率が高くなると植物の枯死が見られ、グンバイによる食害はセイタカの定着後の最大の死亡要因であることが示唆された。グンバイ以外の葉食者の食害は、滋賀では6月上旬から増加し、10月中旬にはピークに達したが、その時点でも食害率は12%程度であった。これに対して北海道では季節が進むにつれて食害率は増加し、最終的に40%近くになった。日米の比較によって、米国のミネソタとカンサスでは植食生昆虫の種多様性は日本に比べて高く、逆に南部のフロリダでは植食生昆虫の種多様性と密度は米国北部および日本に較べて低かった。
著者
近藤 滋
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

免疫グロブリン遺伝子のスイッチ組み換えを制御する分子機構を解明するため、我々の研究室で樹立した高頻度SS組み換えB細胞株(CH12. F3)を用い、まず組み換えに必要な遺伝子配列の詳細な同定を進めている。当初はV領域とCm, Ca領域の全体を細胞に導入して解析を行っていたが、それだと導入するDNAが長すぎ、DNAの制作、細胞への導入に時間がかかることがわかったため、特に重要と考えられる部分だけをつないだミニコンストラクトを使うやり方に変更し、現在種々の変異ミニコンストラクトを制作中である。それと平行して、変異を導入すべき配列の目星をつけるためS配列の上流で、SS組み替えが誘導されたときにどのような変化が起きるかを詳細に解析し、ふたつの重要な発見をした。(International Immunology, 1996, vol8に掲載)種々の実験系でgermline transcriptの量と組み替えの率の間に相関関係が認められており、germline transcriptの重要性が指摘されている。しかし我々の系では、IL-4はgermline transcriptを減らすのに、組み替えは誘導することがわかった。この発見は、germline transcriptの役割を考える上で今後重要な要素になると考えられる。第2は、リガンドの刺激により、I領域に一過性にメチレーションが入ることの発見である。CH12F3のIa領域は、刺激以前より脱メチル化されており、このことが組み替え先がIgAに定まっている理由と考えられる。しかし、組み替えを誘導する刺激により、一過性にメチレーションが入るという事実は報告された例がなく、きわめて興味深い。おそらく組み替えの分子機構に直接に関係した現象と考え、現在解析を進めている。
著者
近藤 滋 COHN Melvin 本庶 佑
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

複雑な生命現象を分子レベルで解析する場合、in vitroのシステムを確立することが重要である。クラススイッチを起こす細胞株はいくつか報告されているが、いずれもその効率はかなり低く、詳しい分子的解析には不向きであった。そこで我々は、高い効率で、安定してクラススイッチを起こす細胞を得る目的で、CH12.LX細胞に繰り返しシングルセルアイソレーションを行った結果、従来の約10倍の効率でクラススイッチを安定して誘導できる極めて優れた実験系を開発することができた。従来、ミエローマ等をつかって組み替え部位の解析が行われていたが、その場合、二次的な組み替えが関与している可能性があったため、正確な部位の特定ができているとは言い難かった。組み替え部位の特定は分子機構を探る上で再重要な情報である。CH12細胞をつかって組み替え部位の解析を行えば、組み替えの誘導から短時間でDNAの解析が行えるため、正確な(2次的組み替えの可能性のない)情報が収集できる。この考えに基づき、組み替え部位のDNAを200以上単離した。その結果、以下の意外な事実が判明した。1)遺伝子の組み替えは、従来考えられていたS領域以外の周辺領域でも、かなり活発におこっている。2)組み替えの起きる位置の上流の上限はgermline transcriptのスプライシング部位あたりであった。この2つの情報は従来のモデルの妥当性に関し、強く疑問を投げかけるとともに、新しいモデル構築の基礎となる可能性が大きい。
著者
松田 文彦 リットマン ギャリー 近藤 滋 LITMAN Gary
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

ヒト免疫グロブリンH鎖遺伝子領域の物理地図を作成し全塩基配列を決定することを最終目標に領域の単離、解析を酵母人工染色体(YAC)を用いて試み、約1Mbの領域の全体を単離し詳細な物理地図を作成し、この領域の全貌を明らかにすることに成功した。さらに、得られた物理地図の情報をもとに、全領域の全塩基配列の決定を試み、現在までに2箇所のギャップ(約10kb)を除き、J_H遺伝子群から14qテロメアまでの約1Mbの領域の塩基配列決定に成功し、以下の結果を得た。1)V_H断片の総数得られた塩基配列を用いてコンピューターによる相同性検索を行った結果、V_H断片の総数は82個であることが明らかになった。またこのうち半数以上の42個が何らかの原因で機能を失った偽遺伝子であった。2)V_H断片のpolarityV_HのJ_H断片に対する相対的転写方向はすべてJ_Hに対して順向きで、逆位は存在しないことが明らかになった。3)反復配列の同定領域中に分布するヒトの高頻度反復配列Alu及びL1反復配列の同定を行った。その結果、105個のAlu配列と25個のL1配列が見い出された。それぞれの反復配列の頻度はゲノム全体の平均とはそれほど大きく異なっておらず、またその分布に関しても特定の傾向は見い出されなかった。4)D遺伝子群の構造ヒトD遺伝子群はD_M、D_<LR>、D_<XP>、D_A、D_K、D_Nの6つのファミリーのD断片で構成され、V6-1とJH断片群の間の領域にこれら6つの断片が組になって4回重複したかたちで存在していることが推測されている。塩基配列の詳細な解析より今回合計25個のD断片を同定した。
著者
本庶 佑 近藤 滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

in vitroの培養細胞株CH12F3細胞は試験管内でIL-4、TGFβ、CD40Lを加えることによって50%以上の細胞がIgMからIgAにクラススイッチすることを明らかにし、この細胞のクラススイッチによってSμ-Sa組み換えが起こり遺伝子の欠失が起こることを証明した。さらにこの細胞の遺伝子組み換えの部位頻度分布を詳細に検討したところ遺伝子組み換え点はS領域を中心に前後に広く広がっていること、またI領域内には極めて低頻度でしか組み換えが起こらないことを明らかにした。この結果は、S領域の役割が組み換えの引き金としての役割と実際に切断、つなぎ戻しを行われる場であるのと二つの可能性の内、前者の可能性を強く示唆するものである。ついでCH12F3細胞に人工的に作製したSμとSαをもつプラスミドを導入し、染色体外で遺伝子組み換えの発現誘導を試み、低頻度ではあるが実際にクラススイッチ組み換えが行われることを確認した。現在これをさらに高頻度の組み換えが起こるようにプラスミドを改変中である。新しいクラススイッチ制御遺伝子を単離するためにクラススイッチ刺激を加えたものと加えないものとの間でsubtraction hybridization法を行った。このために酵素分解を加味した新しいsubtraction法を確立し、特異的に誘導される2種類の遺伝子を単離し現在この意義を解析中である。また先天的にリンパ節及びジャーミナルセンターの形成不能マウスaly/alyマウスの病態を解析し、このネズミにおいてはクラススイッチが極めて起こりにくいことを明らかにした。すなわちクラススイッチが起こるためにはジャーミナルセンターにおけるT、B細胞の協調的制御が必要であることを明らかにした。
著者
近藤 滋
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1988

博士論文