著者
中村 佳正 今井 潤 中山 功 代田 典久 近藤 弘一 岡崎 龍太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

Caratheodoryの補間問題などに登場するPerronの連分数についてはChebyshev連分数のqdアルゴリズムに相当する計算量O(N^2)の連分数展開算法は知られていなかった.これに対して,まず,単位円周上の直交多項式の理論を基礎として,直交多項式の3項漸化式をLax表示とする新しい可積分系Schurフローを導出し,その差分化によって離散時間Schurフローの漸化式を与えた.さらに,離散時間SchurフローによるO(N^2)の計算量のPerron連分数展開アルゴリズムと代数方程式の零点計算アルゴリズムを定式化した.これにより,1)古典直交多項式-Chebyshev連分数-Toda方程式,2)単位円周上の直交多項式-Perronの連分数-Schurフローという対応図式が完成した.Thronの連分数の計算アルゴリズムの開発にも取り組んだ.まず,双直交多項式の3項間漸化式をLax表示とする可積分系である相対論戸田方程式に注目し,その可積分な離散化によって離散時間相対論戸田方程式のタウ関数解を見い出した.さらに,このタウ関数解の漸化式を用いて,Thronの連分数をO(N^3)の計算量で計算する連分数展開アルゴリズムを定式化した.従来,Thronの連分数については離散可積分系に基づく算法は知られていなかった.通常のFGアルゴリズムでは分母が零となり計算できない場合でも本アルゴリズムによって連分数が求められることもわかった.また,第2種Painleve方程式PIIの解のBacklund変換をLax対の両立条件としで表し,さらに,Lax対のひとつを直交多項式の3項間漸化式とみて,直交多項式に関連した連分数の係数がBacklund変換により相互に代数的に結ばれることを示した.この連分数がAiry関数のLaplace変換の連分数展開を与えることを証明した.
著者
新庄 雅斗
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

近年,可積分系理論の数値計算への応用が見出され,可積分な離散戸田方程式と数学的に等価なquotient-differenceアルゴリズムは3重対角行列の固有値計算アルゴリズムとして国際標準となっている.最終年度は,離散戸田方程式の拡張と見なせる離散ハングリー戸田方程式及びその非自励版に対して,一般解の構造や関連する固有値問題を明らかにし,正値性が崩れる場合でも,解の一部が離散時間極限において帯行列の固有値に収束することを示した.これは可積分系由来の固有値計算アルゴリズムの広範な実用化には欠かせない進展である.これらの成果については,国際会議発表を経て, 離散ハングリー戸田方程式については平成29年5月にEast Asian Journal on Applied Mathematics誌に,非自励版については平成30年1月にJournal of integrable Systems誌においてそれぞれ採録された.また,非自励な離散ハングリー戸田方程式に現れるシフトパラメータの連続極限で得られる力学系が,帯行列に関するラックス表示をもつことを明らかにした.これは離散可積分系由来の固有値計算アルゴリズムの背景には,保存量をもつラックス型力学系が存在することを意味しており,ラックス表示の観点から新しい固有値計算アルゴリズムへの応用が期待される.この結果は現在,学会発表を経て,海外の専門誌に投稿中である.
著者
中村 佳正 江口 真透 辻本 諭 小原 敦美 太田 泰広 広田 良吾
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

中村は正定値行列の空間上の算術平均演算と調和平均演算の繰り返しによって,与えられた正定値行列の平方根行列に2次収束する算術調和平均のアルゴリズムを定式化した.このアルゴリズムは情報幾何学的には空間の2点間の互いに双対な測地線上の中点をたどる算法という意味をもつ.小原は算術調和平均のアルゴリズムが定義される正定値行列空間を対称錘の空間上に拡張し,これらの平均演算が測地線の中点を定めるなど対称錘の空間の情報幾何構造を解明した.正定値が成り立たない場合,算術調和平均のアルゴリズムは一般に収束しない.近藤と中村は,算術調和平均のアルゴリズムの漸化式の一般項が行列式表示されることを発見した.可解なロジスティックマップについても同様な表示が見つかった.さらに,この表本式と系の可解性に基づいて,不変測度と積分計算によらずに,系のLyapunov指数が正となることを示した.さらに,中村と辻本はアルゴリズム機能をもつ離散時間可積分系のプロトタイプである離散時間戸田方程式(qdアルゴリズム)の並列化の研究を開始した.まず,2個のプロセッサーによる分散メモリ型並列計算機システムを構築し,qd表を左右に2分割してそれぞれのプロセッサーで並列に計算させることに成功した.この並列化によって3重対角行列の固有値計算時間が約60%に減少した.さらに,qd表の特性に注目して一部を斜め45度に分割することでさらに並列化効率が改善されることを確認した.以上の研究は可積分によるアルゴリズム開発の今後の研究において有用になるものと考えられる.
著者
榊原 由貴
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

一般相対論は宇宙論的観測をよく説明するが、この際暗黒物質や暗黒エネルギーといった未知の構成要素の存在を仮定する必要がある。これらの起源を理解するには、長スケールで重力自体の変更が必要になるのではないかという見方がある。長スケールでの重力の変更として自然なものに、重力子に質量を持たせる方法がある。それが、有質量重力子理論である。近年の研究で、有質量重力子理論が一般相対論と同様に時空の計量だけ含んでいる場合は安定な一様等方膨張宇宙解の構成が困難だが、もう一つ計量を導入した双計量重力理論ではそのような問題を回避できることがわかっている。我々は、双計量重力理論を重力として採用した時に標準的な宇宙論を再現でき、精密化が進む宇宙背景放射や宇宙の大規模構造などの観測と無矛盾でありうるかを確認することを目標として、特にビッグバン以前の宇宙を記述するインフレーションシナリオに注目して研究を行った。初年度には、双計量重力理論におけるインフレーション解の構成を実現しうるミニマルなモデルについて行い、その安定性を明らかにした。さらに、構成したインフレーション時空上で生成される重力波のスペクトルを求めた。次年度では、これらの解析を一般の双計量重力理論に拡張し、インフレーション中に重力波と同様に生成される曲率ゆらぎも求めた。結果、インフレーションシナリオに対する宇宙背景放射観測からの制限は、一般相対論の場合に比べ一般の双計量重力理論において厳しくなることが明らかになった。このことから、本研究の結果を利用し観測的に双計量重力理論をモデルを制限できると期待される。
著者
安冨 歩
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1)基礎資料の収集と整理日本銀行金融関係資料・満洲重工業開発社報・満洲中央銀行営業報告書・満洲興業銀行営業報告書財務諸表のコピー作成と収集を行った。2)「満洲国」関係者への聞き取り調査元満洲中央銀行職員への聞き取り調査を行った。特に永島勝介氏より貴重な情報と資料の提供を受けることができた。3)経済データの整備本研究で収集した資料を解析し、金融機関・主要企業の財務データや経済活動に関する数値を抽出した。これにこれまでの研究で既に整理していたデータを統合し、コンピュータに入力した。満洲国経済史を研究する上で基礎となすデータベースの構築ができたものと考える。4)戦時インフレーションの解明上記データと資料の解析により、全く明らかとなっていなかった満洲国の農業金融の研究を行い、戦時インフレーションと農業金融との深い関連を明らかにした。既に行っていた鉱工業方面の研究と接合することで、戦時インフレ下の満洲国の実態の再構成に一応成功したものと考える。
著者
古屋 哲夫 安冨 歩 山室 信一 山本 有造
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

研究実施計画に従い次の様な研究活動を行なった。(1)基礎資料の収集整理(イ)法制関係文献については、満洲国六法をはじめとする諸法制についての法令集のほか、コンメンタールや司法官会議について会議録および旧慣調査についての史料を収集した。(ロ)経済関係文献については、日本銀行所蔵満洲・中国金融関係資料のマイクロフィルム化を重点的に行なった。(ハ)東アジア全体における満洲国の位置づけを明らかにするために、朝鮮や台湾、南洋庁さらに中国内に作られた傀儡政権の人事的リクルートの問題、あるいは物資動員の実態などを明らかにするための史料ないし回顧録などの収集を行なった。(2)研究会活動上記の収集資料の整理・解読を中心にほぼ月1度の共同研究会を開催し、日本の東アジア進出過程における「満洲国」の政治・法制・経済・金融的位置について討論を行なった。(3)その他当初予定した「聞取り調査」は都合により実施しえなかったが、専門研究者をゲストとしてまねき、報告・討論会を開いた。
著者
曽我部 真裕 井上 武史 堀口 悟郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

曽我部は、研究全体のとりまとめを行うとともに、「基本的情報の提供・流通の体制のうち公共放送のあり方」に関して、報道の任務について論じ(「任務は権力監視、独立性が生命線」Journalism328号(2017年))、また、関連して判例の検討等を行った(「2017年マスコミ関係判例回顧」新聞研究799号(2018年))。また、「補完的に民意を表明・調達する手法」として、デモ規制のあり方について検討した(「市民の表現の自由」宍戸常寿・林知更(編)『総点検 日本国憲法の70年』(岩波書店、2018年))。井上は、分担テーマである「民主政に関与するアクターの規律」について、民主政に関するフランスの憲法規定の変遷を統計的、網羅的に検討し、かつ民主政のあり方を問い直す最近の改憲議論を取り上げて、その動向を探る研究を行った(「フランス第5共和政における憲法改正:最近の改憲論議も含めて」辻村みよ子編集代表、講座政治・社会の変動と憲法:フランス憲法からの展望第Ⅱ巻『社会変動と人権の現代的保障』、信山社、2017年)。堀口は、昨年度に引き続き、分担テーマである「専門的知識を創出・供出する制度」として、学術の中心をなす機関である大学に関する検討を行った。具体的には、①高等教育の無償化が大学に与える影響(斎藤一久=安原陽平=堀口悟郎「高等教育の無償化に向けての憲法改正の是非」季刊教育法195号(2017年))、②大学運営に対する学生の参加が大学教員の学問活動に与える影響(堀口悟郎「(学会報告)学生の参加と教授の独立」比較憲法学会、2017年10月28日、同志社大学)について考察した。
著者
永尾 雅哉
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Marrubium vulgareという植物の抽出液中に6-octadecynoic acid (6-ODA)という三重結合を有する珍しい脂肪酸見いだしたため、その機能について解析した。まず合成により量を確保した上で、核内受容体のPPARγのアゴニストとして機能し、前駆脂肪細胞の分化系を用いて、脂肪蓄積促進活性があることを確認した。また、GPR40という別の細胞膜に存在する受容体を介して、膵臓β細胞株であるMIN6において用量依存的にインスリンの分泌を促進することを見いだした。また、飽和脂肪酸であるパルミチン酸の脂肪毒性による小胞体ストレスの誘導に対して保護的な効果を示すことを見いだした。
著者
森 泰生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

活性酸素種ROSや親電子分子種は生命体にストレスを与えるが、細胞シグナル分子としても注目されている。私たちは、複数のTransient Receptor Potential (TRP) Ca2+透過カチオンチャネルがレドックス感受性を有し、細胞死、細胞化学遊走等の生体応答を惹起することを示した。本研究はレドックス感受性TRP群が果たす炎症における役割を明らかにした。特に、TRPM2は多様な炎症性細胞応答の鍵シグナル調節因子であることが分かった。O2をも感知するTRPA1の高酸化感受性も示した。レドックス感受性TRP群の生理学的意義の解明は、TRPの臨床医学上の治療標的としての重要性を示唆する。
著者
清水 亜紀子
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2011

教博第112号
著者
岡本 三夫
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2000

論文博第396号
著者
大西 俊一
出版者
京都大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

受容体を仲介するエンドサイトーシスにおいて、エンドソーム内での酸性条件下でのプロセシングが重要である。我々はインフルエンザウイルスの細胞内侵入において、エンドソームの酸性条件下での膜融合が、そのゲノムを細胞質に移すのに必須であることを明らかにしてきた。本研究では、エンベロープをもたないウイルスとしてアデノウイルスを取り上げ、細胞内侵入の機構をエンベロープをもつウイルスのそれと比較研究した。1.アデノウイルスによって引き起こされる高分子のエンドソームから細胞質への放出の増加FITCで蛍光標識したデキストランをアデノウイルスと共存させると、KB培養細胞に取り込まれたデキストランは、ウイルスなしの時に較べて2〜3倍に増加し、蛍光顕微鏡で調べるとデキストランは細胞質中に放出されていた。ウイルス感染後20分経ってからではこのような効果は著るしく減少していた。また酸性小胞のpHを上げるアンモニア等の弱塩基化合物を加えるとウイルスの効果は抑制された。2.ウイルス核酸の標的細胞内の輸送【^(32)P】で標識したアデノウイルスを用い、KB細胞の核分画への輸送を測定した。アンモニア等の弱塩基は、この輸送を部分的に阻害しウイルスに特異的なたん白質の合成も阻害した。以上のことから、エンベロープを持たないアデノウイルスでも酸性化したエンドソーム内でプロセシングがおこり、細胞質内への侵入がおこること、またその時に、一緒に取り込まれたデキストラン等の高分子も細胞質中へ放出されることが示された。またこのプロセシングがインフルエンザウイルスの時に比して弱い酸性条件下でもおこるので、アンモニア等の弱塩基の効果が弱いのであろう。
著者
板倉 昭二
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

経験は、知覚システムの発達に大きな影響を与える。発達初期には、知覚情報の弁別は、広くチューニングされているが、経験とともに選択的に狭小化されることがわかっている。これを知覚狭小化(perceptual narrowing)といい、初期知覚発達の重要な特徴である。この現象は、顔の知覚や言語の知覚の発達においてよく知られている。本研究課題では、1)このような知覚狭小化が領域に関わらず、共通なものであるか(領域一般性:domain general)、または、領域に固有なものであるか(領域固有:domain specific)を実験的に検証すること、また、2)知覚狭小化の可塑性を、幼児、児童、成人を対象に検討することを主要な目的とする。本年度は、これまで取りためていた、乳児における知覚狭小化のデータを再分析し、まとめた。異なる領域における狭小化が、相互に関係するのか否かを、被験者間デザイン(N=72)を用いて、自人種の顔と他人種の顔の弁別、および、母語と非母語の弁別が可能かどうかを調べた。対象となったのは、3カ月児、6カ月児、9ヵ月児、そして12カ月児であったその結果、3カ月児は、自人種顔と他人種顔の弁別および母語と非母語の弁別ができたが、6,9,12カ月児ではその限りではなかった。2つの領域の関係は、12カ月齢までに変化するらしいことが示された。分析は、弁別スコアと2つの変数(顔と言語)の相関を再分析したもにおである。本結果をまとめ、国際学術誌のJournal of Experimental Child Psychologyの投稿し、近々に採択されると思われる。また、乳児、成人、サルのフィールドワーカーを対象として、チアック狭小化の観点から、サルの顔認知テストを開始した。
著者
高橋 知之 福谷 哲 藤原 慶子 木野内 忠稔 服部 友紀 高橋 千太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東京電力福島第一原子力発電所の事故では大量の放射性核種が環境中に放出された。このうちTe-127mの半減期は約109日と比較的長く、IAEAの報告書に記載された土壌ー農作物移行係数を用いて評価すると、特に福島第一原発から南方向では、放射性テルルの内部被ばくへの寄与が放射性セシウムに比べて無視できるレベルではない可能性があった。よって、安定テルルと安定セシウムを同時に添加した土壌を用いて植物栽培実験を行い、それぞれの移行係数を求めた。その結果、テルルの移行係数は既報値よりも低く、実際の放射性テルルの線量の寄与は既報値を用いた評価よりも十分に低くなる可能性があることが明らかとなった。
著者
岡本 祐之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

ヒトおよびラット皮膚においてiNOSが誘導されNOが産生されることが明らかとなった。乾癬をはじめ、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、水疱症、膠原病などの炎症性皮膚病変においてiNOSが表皮ケラチノサイトに発現されていることが認められたが、iNOSの発現様式は疾患によって異なっていた。乾癬ならびにアトピー性皮膚炎の表皮におけるiNOS発現の推移を調べると、ステロイド外用剤による治療によって皮膚症状の改善とともにiNOS発現の低下が観察された。2種類の実験的接触皮膚炎、すなわちアレルギー性および一次刺激性皮膚炎では、表皮におけるiNOS発現に明らかな差は観察されなかった。紫外線皮膚炎におけるNO関与では、少量の紫外線(UVB)照射によりケラチノサイトはNOの産生上昇を示した。マウスに紫外線照射を行い、照射前または照射後にNOSの阻害剤であるL-NAMEを腹腔投与し耳介腫脹を日焼け細胞数を測定すると、腫脹の程度および日焼け細胞数ともL-NAMEの投与により抑制された。一方、紫外線のマウス接触アレルギー反応抑制作用に対する効果を検討すると、L-NAME投与は紫外線の抑制作用に影響を示さなかった。今回の研究において、NOは紫外線の皮膚に対する直接障害に関与するものの、紫外線が及ぼす免疫反応には効果が認められないことが示された。アトピー性皮膚炎患者よりリンパ球を採取し、ケラチノサイトと混合培養しそのNO産生への影響を調べると、ケラチノサイトからのNO産生がアトピー性皮膚炎患者リンパ球では正常人リンパ球に比べて有意に増強することが認められた。以上の実験結果より、紫外線をはじめとする種々の起炎刺激に対して生じる皮膚炎や炎症性皮膚疾患にNOが関与していることが示唆された。
著者
潮見 佳男
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1993

博士論文
著者
山内 裕
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2016

本基金を利用して滞在したコペンハーゲンビジネススクールの研究者との共同研究が進んでいる。まず、代表者のこれまでの鮨屋の研究を発展させ、教授の一人と工芸についての研究を始め、日本とヨーロッパの国際比較を行うと同時に、初期的な結果を本の1章として発表することが決まっている。またもう一人の教授とは料理のデザインに関する研究で協業しており、5月の国際会議で発表すると共に、ジャーナルに投稿すべく準備を行っている。また、これらの研究者との連携がより強化され、2017年度には2度日本に滞在し、今後も交流が計画されている。さらに共同で申請したデンマークの研究費を利用して、コペンハーゲンビジネススクールと京都大学の共同ワークショップを、6月に京都で9月にコペンハーゲンで実施した。またこの連携により、代表者の指導する博士課程の学生がコペンハーゲンビジネススクールに長期滞在し研究指導をうけるなど、その成果は着実に広がりつつある。南洋理工大学の研究者との連携も進み、2月に来日しワークショップを実施した。フランスの研究者との連携も拡大し、11月には新しい研究費を利用して、リヨン郊外のレストランでデータを収集することに成功した。このように、本基金での活動が国際共同研究のネットワークの拡大に大きく寄与している。米国滞在で進めたネットワーキングを利用し、これまで日本語で発表してきた独自の理論を、英語で発表する準備をすることができた。サービス科学の中心的なHandbookの一つのチャプターとして収録されることが決まっており、すでに最終稿を提出している。また、この研究の成果を組込む形で、従来から配信していたMOOC(大規模オープンオンライン授業)を大幅に改訂し配信している。
著者
松田 一希
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

テングザルの食物選択においては、同様の消化機構を有するが反芻行動が観察されていない他の霊長類種と大きな違いは見られなかった。一方で、糞の粒度の比較からは、テングザルが夜間にコンスタントに反芻行動をしている可能性を示唆する有力な結果が得られた。事実、夜間により高頻度で反芻行動を行っていることが、夜間行動をビデオ録画することにより明らかになった。また、野生下のテングザルは飼育下のテングザルに比べて、夜間により頻繁に覚醒と睡眠を繰り返しており、これは野生下のサルがより高い捕食圧に曝されている結果の行動であると解釈できた。