- 著者
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小西 昭
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特定研究
- 巻号頁・発行日
- 1985
運動ニューロンの変性機序を解明するために、その変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)で選択的に病変を免れるオヌフ核の入力線維の特異性を標識法により検索した。1.ネコの脳室内にコルヒチンを投与後、灌流固定し、脊髄の切片を作製して各種神経ペプチドに対する免疫活性をABC法で調べた2.下部腰髄と上部仙髄前角では、オヌフ核に、エンケファリン(ENK)陽性終末の密な分布を認めた。ENK陽性ニューロンは、後角とオヌフ核レベルの中心管周辺領域(第十層)に存在した。3.電顕でオヌフ核内のENK陽性終末を観察した結果、1)、多形性シナプス小胞を含み樹状突起と対称性シナプス結合をする終末70-80%、2)、球形シナプス小胞を含み樹状突起と非対称性シナプス結合する終末20-30%、3)、扁平シナプス小胞を含む終末0%、4)、クレストシナプスを形成する終末は約1%であった。4.オヌフ核へのENK陽性終末の起始ニューロンを同定するために、上部腰髄または下部仙髄の半切、後角の破壞実験を行ないENK免疫反応を調べたが、オヌフ核のENK陽性終末は減少しなかった。5.第十層にWGA-HRPを注入し、順行性に標識された終末の仙髄前角での分布を調べると、ENK陽性終末の分布と酷似していた。上記の実験結果から、オヌフ核への主要な入力線維終末はENK免疫活性を有し、その起始ニューロンは主に第十層に存在することが判明した。第十層には陰部神経に含まれる求心性終末が終止しており、第十層のENK陽性ニューロンはオヌフ核ニューロンを密に支配する。このような脊髄内神経回路は腰・仙髄の他の運動神経核では見られなかった。したがって、オヌフ核へのENK陽性脊髄内入力線維の存在が、ALSで他の運動核の変性にもかかわらず、オヌフ核が選択的に保存される機構の一因をなす可能性が高い。