著者
川口 義弥
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では膵細胞分化における転写因子ptfla発現量の役割を明らかにする目的で、Ptfla遺伝子下流領域を欠失したptfla cbllアリルとptflaにcreをノックインしたptfla creアリルを用い、ptfla (wt/wt), ptfla (cre/wt), ptfla (cbll/cbll), ptfla (cre/cbll)マウスを解析した。胎生12.5日のptfla発現量はそれぞれ1:0.55:0.32:0.14であった。出生時の膵サイズはwt/wtとcre/wtでは差がなかったが、cbll/cbllとcre/cbllは小さく、生後はその順番で発育遅延を生じた。ptflaはdose dependentに膵上皮の増殖を促進し、低発現マウスでは胎生期の膵管様上皮のbranchingと外分泌細胞分化が遅延したが、内分泌細胞分化は正常のタイミングで起こった。lineage tracingでは、一部のptfla低発現細胞は十二指腸上皮細胞と胆管上皮細胞へと運命変更していた。以上で、ptfla発現量が、(1)膵前駆細胞と胆管・十二指腸前駆細胞のレベルと(2)膵内分泌・外分泌細胞分化のレベルで、2段階の運命選択を担う事を示した。興味深いことに、内分泌細胞分化が正常のタイミングで起こるにもかかわらず、cbll/cbllとcre/cbllマウスではインシュリン産生細胞数が少なく、生後糖尿病を発症した。インシュリン産生を開始する時点でptflaの発現は無くなることから、前駆細胞プールの減少が原因と考えられる。この事は、ptflaのSNIPがヒト新生児糖尿病の原因となり得ることを示唆している(論文投稿済・revise中)。
著者
M・A Huffman
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

アフリカ・アジアの大型類人猿(チンパンジー、オランウータン)、旧世界ザル(ニホンザル等)と原猿類(ワオキツネザル、ヴェローシファカ)の植物性食物の採食部位およびヒトの民間薬或いは実際に有効な天然化合物として用いられている植物を網羅し、主要な霊長類の潜在的薬用植物のデータベース作成を継続して行っている。この研究は、霊長類の採食生態学的観点から、栄養成分とそれ以外の健康管理に役立つ薬理効果をもつ成分の存在の可能性を探ることを目標としている。作成されるデータベースに基づいて今後の研究対象とすべき霊長類と植物を明らかにし、霊長類における自己治療研究に必要な領野と重点的研究項目を明確にする。本計画の2年間の成果として以下の主な実績を報告する。1)16年度の基盤C研究費でまとめた論文集「A study of primate self-medication」(1989年から2004年の間に申請者の研究グループ(CHIMPP)によって出版された48の論文等)70冊ほどを世界各地の専門家や図書館に配り、共同研究を呼びかけている。2)この出版物の内容を中心に、ウェブサイトを作成した。CHIMPPグループの設立経緯、研究の意義や目標等をまとめて、現在6カ国語(和、中、独、伊、シンハラ、英)に訳されたものを載せた(htt://www.pri.kyoto-u.ac.jp/shakai-seitai/seitai/huffman/index.html)。2006.03.22現在、既に1563ヒットを受けている。3)各霊長類種の食物データベース作成を継続している。昨年入力が終わったチンパンジー(N=550植物種)、オランウータン(N=551)、ニホンザル(N=515)、シファカ(N=242)、ホエザル(N=109)に関して、それぞれの採食植物品目に対応する民間薬・生薬・天然化合物の文献収集が進んでいる。本年度中に完成したのはチンパンジー(文献12件、36/550薬用とされた植物種)とニホンザル(文献81件、薬用とされた植物287/515種)のである。4)2度スリランカを訪問し、現地生息の野生霊長類のトクザルとハヌマンラングルを10カ所で調査し、現地の共同研究者らとの情報交換、研究打ち合わせを行った。
著者
前川 修
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1999-09-24

新制・課程博士
著者
川口 朋子
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2011-03-23

新制・課程博士
著者
根立 研介 中村 俊春 平川 佳世 安田 篤生 稲本 泰生 深谷 訓子 劔持 あずさ 松岡 久美子 宮崎 もも 中尾 優衣 田中 健一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

美術史の転換期の問題は、何を強調するかで、美術史の語り方が大きく変わってくることもある。本研究は、従来美術史で語られてきた枠組みを再検討するための試みである。特に、大きな成果は、通常日本の古代末期に登場したとされてきた彫刻の和様の問題である。近年の日本史学の成果を取り入れると和様の成立は、中世初期とすることが可能かと思われ、和様は日本の中世期を貫く重要な様式であったことなどを明らかにした。また、この和様の成立には、中国の唐から宋への転換期の問題も深く関わることを明らかにした。
著者
宮田 秀介
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

フラッシュフラッドが発生しやすい山岳流域において現地水文観測および流出シミュレーションを行い,フラッシュフラッドに関連する各種発生要因の影響を検討し,現象把握と発生機構の解明を行った。試験流域は早い流出特性をもち,短時間に集中する降雨では特定の谷(支流)に集中した降雨だけでなく土壌層の薄い高標高地帯からの流出も急激な河川水位上昇をもたらすことが明らかとなった。火山流域において土砂濃度の高いフラッシュフラッドである土石流に流出シミュレーションを応用することで,流出過程を考慮した土石流発生基準を設けられる可能性を示した。
著者
塩塚 秀一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

最近二十年ほどのフランス文学を特徴づける潮流のひとつとして、都市生活の中でふだん着目されることのない「日常」に着目し記録しようとする、一群のルポルタージュ的作品がある。フランソワ・マスペロの『ロワシー・エクスプレスの乗客』(一九九〇)、フランソワ・ボンの『鉄路の風景』(二〇〇〇)、フィリップ・ヴァセによる『白い本』(二〇〇七)などである。これらはいずれも誰の注意も引かない日常の風景を書きとめようとする実験的試みである。本研究では、これらの著者たちが風景をいかに記録しているかを具体的な記述に即して論じ、それを通じた現代社会批判の射程について考察した。
著者
中野 秀一郎
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.55-72, 1968-06

社会体系の成立・存続を合法的政権の存立を基準にして把えた理由は最初に述べたが, それはむしろ「構造」の在り方に対するタテマエに準じてのことであった。しかし, 現実には, 1957年以前と以後では, 特に「政府」の役割(その「能率性」と「正当性」)をめぐって顕著な差異が存する。consolidationの作業を中心とした初期のI・L次元での機能要件の充足は, 特に米国の強力な後押し, ジェムの民族主義者としてのイメージの斬新さ, 反仏・反封建・民族主義の一般感情など, favorableな諸条件にめぐまれていちおう成功的であった。もっとも, 政府・行政レベルにおけるkinship particularismの傾向はすでに1955年5月のジェム内閣の組閣にも顕著に現われているが, 1956年初頭の政治-宗教集団の掃討と政府軍の確立・強化とにみられる成功は, いちおう新政権が期待しうる成果としては上出来のものであった。しかし, 一方では主要な機能要件が対ゲリラ戦への諸活動となり, 他方, 行政の日常化(routinization)過程で権力の恣意性と権威主義(特に, ゴー一族の国政における私的干渉, 例, 1957年の"家族法")が増大し, 体系機能の全体的遂行という視角が消えてしまう。こうした体系機能要件遂行の阻害は, 組織論的には, particularismの進行に伴う, 命令統一・ライン組織の秘密警察組織による破壊が致命的であるが, これらはすべて「政策」施行のフィード・バック機構を閉ざすことになり, 権力の孤立化と独善化を招いた。特に, これが人的資源(忠誠と能力)の動員という社会構造の中心的要素を破壊するものであったことはここに詳らかにする必要もあるまい。(こうした行政的欠陥を如実に暴露しているのは, 1961年から始まった"戦略村"計画であった。)中央権力の機能喪失と正当性の失墜は, particularismの多元化として体系下位集団への「資源」配分の傾斜を招くが, それが伝統的な<kinship-oriented>の価値観を中核として, さらには第一次および文化的・派生的な機能をも充足させうる自足性の高い社会単位の生成を促す(もっとも, こうした状況自体を可能にするものは, 後進型社会に特徴的な社会的・機能的分化の未発達である)。こうして, 社会の四つの機能的下位領域で「政府」による「資源」動員の体制が空洞化し, 体系の崩壊が必然となるのである。
著者
田中 雅一 江田 憲治 小池 郁子 高嶋 航 上杉 妙子 金 柄徹 田辺 明生 福浦 厚子 森田 真也
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究プロジェクトの目的は、ナショナリズムや国民国家創出との関係で論じられてきた軍隊をトランスナショナルな視点から分析することにある。対象は、在日・在韓米軍を含むアジアの軍隊に限り、歴史・人類学的なアプローチをとる。自衛隊のイラク派兵の影響から在韓米軍の再編による地域への影響に至るまで、その研究成果は多岐にわたる。基地反対運動や平和運動もまたトランスナショナル化していることが明らかになった。
著者
山室 信一 菊地 暁 坂本 優一郎 谷川 穣 藤原 辰史 早瀬 晋三 早瀬 晋三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

専ら時間軸上で構築されてきた従来の学的パラダイムを空間軸に沿って見直し、これまでの空間把握の営みの成果を取捨選択しつつ、人文・社会科学における諸概念を再構成していくための基底的研究を進めた。文献会読、フィールドワーク、個別研究を通じて、政治学・経済学・農政学・地政学や、景観・海域・宗教・戦争で問題とされた空間に関する思想や実践のありかたを明らかにしつつ、従来前提とされていた諸概念を再検討した。
著者
雨森 聡 松田 岳士 森 朋子
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-10, 2012-12-01

This paper argues institutional research's possibilities for expansion, and addresses related issues. One of the issues of institutional research concerns the development of suitable analytical methods. This paper addresses that issue by using decision tree analysis. As a conclusion, decision tree analysis is a usable technique for institutional research. Moreover it is able to analyze multiple aspects, for example checking secular change, the effect of educational improvements, and so on. There are currently three issues: 1. database construction and introduction of the analytical system; 2. development of analytical methods; 3. training of institutional researchers in faculty development. We make a beginning in handling the challenges of these issues.