著者
安藤 花恵
出版者
京都大学
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.386-398, 2006-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。Fields of experts range from fields in which many experts are to fields in which there are few experts. Common findings from many investigations in different fields, as well as specific findings limited to certain fields have been identified. Nevertheless, expertise in art, particularly in acting, has remained relatively unexplored. This study focuses on the expertise of actors. I divided the process of acting into 3 phases: script reading, performance planning, and the actual performance. Anecdotal evidence indicates that highly experienced and good actors assume the viewpoint of the character, the actor, and the audience at the same time while acting. I proposed a model of three acting phases and effects of assuming the three viewpoints on the expertise of actors in each of the three phases. In performance planning, junior expert actors produced more action plans than script interpretations, and thought of them from the viewpoint of the actor and the audience. Thus their plans are full of diversity. In actual performance, they assume the three viewpoints simultaneously. Owing to this, they perform as they planned, and convey their intentions adequately to the audience. And they evaluate not only superficial aspects of their performances, such as voice, facial expressions, and so on, but also non-superficial aspects, such as atmosphere, from the viewpoint of the audience. Finally, implications to other fields are discussed.
著者
福武 剛
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1981-05-23

新制・論文博士
著者
長田 裕也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ポリキノキサリンの不斉らせん誘起・不斉増幅の詳細について明らかにし、触媒的不斉合成へと展開するため、側鎖にアルコキシ基を有するポリキノキサリンを開発し、その主鎖の不斉らせん制御に成功した。また、末端へのキラル小分子修飾によるらせん不斉誘起についても検討し、キラル小分子による主鎖全体のらせん不斉誘起を達成した。さらに、側鎖にピレニル基を有するポリキノキサリンを合成することで、高効率らせん不斉誘起が可能な溶媒を、簡便かつ迅速にスクリーニングすることが可能となった。
著者
三浦 収
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、宿主と寄生生物の相互作用に着目して、進化生態学の重要課題である生物多様化機構を解明することである。本年度は、前年度に得たアメリカ熱帯地方のデータの補強と日本で得た宿主(Cerithidea)と寄生虫(二生吸虫)のデータ解析を行い、太平洋を挟んだアメリカ-アジア間で生じた宿主の種分化が寄生虫の多様化に及ぼす影響を明らかにすることを目標とした。まず初めに、日本のCerithideaに感染している寄生虫相を明らかにするために、日本に生息する5種のCerithideaの解剖実験を行った。その結果、合計32種の寄生虫を得ることができた。これらの寄生虫とアメリカの寄生虫との関連性を分子系統学的な手法を用いて比較したところ、アメリカとアジアの寄生虫は比較的古い時代に分化していたことが明らかになった。特に注目すべき点として、アジアに生息するCerithidea largilliertiはアメリカに生息するCerithideaと近縁な関係にあるにも関わらず、その寄生虫はアジアで見つかった他の巻貝に感染する寄生虫に遺伝的により近縁であることが明らかとなった。このことは、太平洋はこれらの寄生虫にとって越えることの難しい障害であることを示すと共に、C.largilliertiに感染している寄生虫はアジアの他の巻貝から寄主転換をしたことを示している。これらの結果は、地理的に大きく隔てられている集団間では共種分化よりも寄主転換が二生吸虫の多様化に大きな影響を及ぼす可能性を示唆している。
著者
鎌田 元一 吉川 真司
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1)陰影ある古文書原本の調査寺社・図書館・博物館などに所蔵される古文書原本を調査し、詳細な調書を作成した。また調査した古文書については陰影の写真を収集した。これにより東大寺文書・東寺文書・栄山寺文書の大多数の調査を終了した。2)古代官印制度に関する検討律令を中心とする官印制度を検討した。大宝令制の内印が諸国への下達文書、外印がその案文に捺される印章で、養老令制と異なっていたこと、大宝元年に内印の様が諸国に領下されたことなどが明らかとなった。3)諸国印の変遷に関する検討諸国印の印影を広く収集・検討し、その変遷を探った。その結果、天平年間の諸国印が大宝四年鋳造のものと考えられること、大宝四年の国印鋳造が律令制国名表記の公定と一体の作業として行なわれたと見られること、国印の改鋳は八世紀中期を初発とするも国によって差があったこと、などが明らかになった。4)外印請印に関する検討主として儀式書を用い、外印請印の作法を検討した。外印請印は律令の「監印」に淵源したこと、曹司における文書行政の一環として平安時代中期まで政務空間を移すことなく行なわれたこと、などが明らかになった。5)平安時代の倉印に関する検討平安時代の倉印について、文献史料・印影の双方から検討を加えた。10〜11世紀の大和倉印の変遷が明瞭になり、また倉印は畿内近国の受領が京にあって執務する際に用いられたことが推定されるに至った。
著者
東 佳史
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.328-353, 2004-12

In many respects, Cambodia's Disarmament, Demobilisation and Reintegration (DDR) program is uniquein terms of complexity as well as the difficulties involved in project implementation. This study attempts toarticulate the extent to which structural background determines the fate of demobilized combatants. Itexamines the General Health Assessment (GHA) of 15,000 combatants carried out by the InternationalOrganization of Migration (IOM) in 2001–02, as well as the 1998 Cambodian Population Census. OtherCambodian epidemiological data, although very limited in terms of number of studies, are also used as acomparison to the GHA data.The DDR program is a most urgent political priority for Cambodian national development as well asthe reform of national accounts. One legacy of more than twenty years of civil war is the bloated militarysector that consumes a disproportionate share of a very limited budget. Thus, rapid demobilization isneeded to control the budget, and the reintegration of combatants (through vocational training, etc.) iscrucial to increase GDP. However, the empirical data show that most demobilized combatants are chronicallyill, commonly suffering multiple illnesses. Disability, impairment, and psychiatric illnesses are alsoevident. Furthermore, lack of an appropriate medical referral system has directly resulted in the developmentof further vulnerability, especially among elderly combatants. Hence, urgent measures are necessaryto coordinate the social safety net and, with donor support, regulate the referral system.
著者
白土 博通 八木 知己
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

瞬発気流を再現する風洞実験装置の検討,試作を行い,正方形断面柱の揚力を測定した.揚力ピーク発生とカルマン渦による揚力変動周期の間の密接な関係が一部明らかとなったが,両空気力成分の分離に課題を残した.一方,既存の突風風洞を用いて矩形断面や5本円柱の過渡空気力を測定し,前者は上下面の剥離バブルの非対称な成長,後者は円柱間の複雑な流れの生成の重要性を明らかにした.さらに,過渡空気力のLES数値シミュレーションを実施し,カルマン渦との関係を得たほか,竜巻移動時の風速時刻歴シミュレーションにより,風速急変時の鉄道車両の安全性評価を試みた.
著者
山下 義裕
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1994-03-23

本文データは平成22年度国立国会図書館の学位論文(博士)のデジタル化実施により作成された画像ファイルを基にpdf変換したものである
著者
森 直久
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2011-11-24

新制・論文博士
著者
斉藤 学 春山 洋一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

静電型リニアイオントラップを用いて準安定状態にある2価Krイオンの寿命の精密測定を行った。準安定状態の寿命は一般的にイオントラップを用いた分光測定によって決定されてきた。しかし、現状のイオントラップを用いた測定では、残留ガスとの衝突(中性化、散乱)による蓄積イオン数の減少を見積ることが難しい。この見積もりが寿命の測定精度に大きな影響を与える。本研究は、静電型リニアイオントラップを用いることで蓄積イオン数の減少を高精度でモニターし、準安定状態寿命の測定精度を向上させることに成功した。
著者
山室 信一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

明治国家は、欧米からの思想連鎖によって国民国家形成を進めた。しかし、そこでは国民国家としては幼体成熟ともいえる形で植民地領有国家すなわち帝国へと転化していった。しかしながら、これまでの日本のみならず欧米における政治学研究においても、この二重性をもった国家に関しての理論研究は、皆無であるような状況にある。こうした理論状況に鑑みて、本研究は植民地を有するに至った近代日本の統治システムが総体としていかなるものであったのかを史料的・理論的に整理し体系化することによって「国民帝国」という概念を新たに提起すべく、歴史的ならびに理論的に究明してきた。同時に、それによって明治国家の世界史的位相について新たな意味付けを行うとの目的をもって出発し、ウェストファリア体制以降の国際体系のなかにあった日本の近代国家としての二重性をもった国制的性格と法政理論の特徴について明らかにするという課題の下に史料的蒐集と論理的精緻化を図ってきた。ここで国民帝国とは「主権国家体系の下で国民国家の形態を採る本国と異民族・遠隔支配地域から成る複数の政治空間を統合していく統治形態である」と定義した。そのうえで、国民帝国とは(1)世界帝国と国民国家の拡張でありつつ、各々がその否定として現れる矛盾と双面性を持ち、(2)その形成・推進基盤が私的経営体からナショナルなものに転化し、(3)世界体系としては、多数の帝国が同時性をもって争いつつ手を結ぶという競存体制とならざるをえず、(4)その本国と支配地域とが格差原理と統合原理に基づく異法域結合として存在するものである、という4つのテーゼに収斂するものであることを提起した。今後は、王朝家産帝国の崩壊から国民国家が形成されたと見なされてきた中国が、むしろ家産帝国性を残したまま国民国家となったという意味で、日本とは逆方向での国民帝国となったのではないかという仮説を論証していきたい。
著者
倉島 哲
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2004-11-24

新制・課程博士
著者
伊藤 正子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

韓国民主化後、タブーであったベトナム戦争中の韓国軍による民間人残虐事件に関し、進歩的新聞社や市民団体によって事実の掘り起しが行なわれたが、退役軍人会などからは強い反発も出た。本研究では、韓国側の戦争についての多様な語りを検討するとともに、ベトナム側では、当時の韓国軍駐屯地周辺各省において現地調査を行い、ベトナム側における国家から村までの各級の事件に対する語りを分析した。その結果、韓越双方とも、政治体制や外交方針、地域の違いなどによって、戦争の記憶の語り方に様々な相違があることが明らかになった。現ベトナム国家は被害国にもかかわらず、国家間関係を優先するあまり、虐殺の生き残りの人々の記憶の語りを抑圧しているのに対し、韓国の市民団体は世論が分裂する中でも、負の歴史を明るみに出して未来の平和のために生かすための努力を続け、ベトナムでは公定記憶にならない韓国軍の「負の過去」を記憶しようとしている。
著者
田中 崇恵
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2013-03-25

新制・課程博士
著者
影山 龍一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

研究成果の概要(和文):成体脳ニューロン新生の意義を明らかにするために、遺伝子改変マウスを用いて成体脳ニューロン新生を阻害した。嗅覚依存性の行動を調べたところ、天敵臭忌避反応や、オスにおける見知らぬオスに対する攻撃行動とメスに対する性行動が障害され、さらにメスでは妊娠・出産率の低下、母性行動の障害が起こった。以上から、成体脳ニューロン新生は、天敵臭忌避反応、性行動、母性行動といった先天的にプログラムされた嗅覚依存的行動にきわめて重要な役割を担うことが明らかになった。
著者
古谷 寛治
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

DNAチェックポイント機構はDNA損傷の検出にともない細胞周期進行を遅らせるだけの機構ではない。ゲノムDNA複製時に遭遇するDNA損傷に対し、適切な修復経路を誘導する。なかでもチェックポイント因子Rad9タンパク質は、他のチェックポイントタンパク質をDNA損傷部位へと繋ぎ留める事で、チェックポイント機構の発動に寄与する。一方、Rad9を損傷部位から解離させるのも重要である。わたくしたちは酵母を用いた解析から、Rad9の損傷部位からの解離が、Rad9上で起こるリン酸化フィードバックによって引き起こされる事、また、このリン酸化依存的なRad9の結合・解離制御こそがDNA複製時と修復経路の連携を制御することを見出してきた。本研究ではヒト細胞を用いた蛍光標識Rad9の動態解析から損傷部位への集積の速さを計測した。非常にゆっくりとした反応であり、DNA損傷部位に他のタンパク質が作用したのちに集積することが示唆された。また、酵母で見出した損傷部位からの解離に必要なリン酸化部位と相同の部位がヒトRad9にも存在していたためその変異タンパク質における動態解析を試みたところ、野生型に対して速く集積することが明らかとなった。今後はリン酸化フィードバックがDNA損傷への結合を遅らせるのか、解離を促進するのか検討を進める。並行して、解離に必要なリン酸化部位の分子機能を明らかにするためスクリーニングをおこない、Plk1遺伝子をツーハイブリッドにて取得した。また、質量分析の結果Plk1がヒトRad9タンパク質を二箇所リン酸化することを見出し、一方のリン酸化部位がタンパク質分解のためのユビキチン付加酵素を結合するために必要である事を見出した。今後はタンパク質分解による量的制御とダイナミクス変動の相関を見出すべく研究を進めていく。
著者
塩見 淳 岩間 康夫 橋田 久 高山 佳奈子 安田 拓人 齊藤 彰子 古川 伸彦 中森 喜彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

人の死亡・傷害などの結果が発生する事態となっているにもかかわらず、これに気がつかずに救助を行わず、結果を発生させた者は、どの範囲で刑事責任を負うのかについて、また、そのような者が複数存在する場合、誰が責任を負うのかについて考えた。当該の者が結果を予見し回避できたか(注意義務の存在)を検討し、次に結果を回避する地位や権限を有していた者(作為義務の存在)を選び出すこと、その選び出しは特定の者に一定の行為をせよと強制することになるので、十分な根拠づけを必要とすること、情報の開示を怠ることを処罰する特別法の創設も考えられることを明らかにした。
著者
小林 果
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究課題ではもやもや病の多発家系を用いて家族性もやもや病の責任遺伝子を特定すること、細胞生物学的解析と遺伝子改変動物の作成により遺伝子の機能を明らかにすることで発症機構の解明を行うことを目的とする。24年度は、昨年度もやもや病感受性遺伝子として同定したmysterin(RNF213)遺伝子のノックアウトマウスの作成と形質の評価を主に行った。近年のもやもや病と糖尿病の合併性を示す報告より、mysterinの機能を明らかにするために、mysterin欠損が糖尿病モデルマウスに与える影響を検討した。具体的にはmysterinを欠損するノックアウトマウス(mysterin-/-)を作成した後、小胞体ストレスによる糖尿病モデルマウスであるAkitaマウス(Ins2+/C96Y)と交配を行い、mysterin KO/Akitaマウス(mysterin-/-,Ins2+/C96Y)を得て糖尿病に関連する形質の解析を行った。その結果、mysterin欠損はAkitaマウスの血清および膵島インスリン量を増加させることで、摂食量の低下、小胞体ストレスの低下を通じて糖尿病を改善することが示された(Biochem Biophys Res Commun 2013)。小胞体ストレス応答の1つとして、異常タンパク質の分解を促進する小胞体関連分解(ERAD)がよく知られている。Akitaマウスの膵β細胞ではERADにより異常プロインスリンのみならず正常プロインスリンの分解も促進していることが報告されており、mysterin欠損はERADによるプロインスリン分解を抑制する可能性がある。本研究は、mysterinがERADに重要な役割を果たす可能性を示唆しており、今後さらに検討を重ねることでmysterinの機能の一端が明らかにできることが期待できる。