著者
松浦 司
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2011-03-23

新制・課程博士
著者
松田 知成
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

飲酒による発がんメカニズムとしてアルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドがDNA損傷を介して、がん遺伝子や癌抑制遺伝子に突然変異を誘発すると考えられている。この説の根拠は、1)アセトアルデヒドはin vitroでDNA損傷を誘発したり、細胞に突然変異を誘発する、2)アセトアルデヒドの主要な代謝酵素であるALDH2の遺伝子多型が食道がんの発生リスクに大きく影響する、の2点である。この仮説を検証するため、アセトアルデヒドがひきおこすDNA付加体、N2-ethyl-2'-deoxyguanosine (N2-Et-dG)、α-S- and α-R-methyl-γ-hydroxy-1,N2-propano-2'-deoxyguanosine (α-S-Me-γ-OH-PdG and α-R-Me-γ-OH-PdG)、N2-(2,6-Dimethyl-1,3-dioxan-4-y1)-deoxyguanosine (N2-Dio-dG)を高感度に測定する手法を開発した。付加体の検出には高速液体クロマトグラフタンデム質量分析器を用いた。この手法で、約20μgのDNAサンプルからこれらの付加体を10の8乗塩基に数個の感度で測定できるようになった。アルコール依存症患者のアセトアルデヒド誘発DNA付加体を測定した結果、N2-Et-dGおよびα-Me-γ-OH-PdGのレベルは、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)欠損型において、正常型よりも有意に高いことがあきらかとなった。この結果は、アセトアルデヒドが飲酒による発がんのイニシエーターとして働くという説明に良く合う。さらに、α-Me-γ-OH-PdGのDNA修復機構について検討した結果、この付加体はメチルアデニンDNAグリコシラーゼによって修復されることを示唆するデータが得られた。
著者
小松原 哲太
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2012-03-26

本論文の目的は、多様な修辞現象を認知過程の観点から記述し、その相互関係の一部を明らかにすることである。研究方法は、基本的に認知文法のアプローチを採用する。研究対象は修辞学で分類されてきた多様な修辞現象であり、言語データとしては、主に日本文学の古典的テクストから採集した修辞表現を用いた。本論文の内容は、以下のように要約される。第1章では、研究の問題意識と本論文の構成について述べた。第2章では、これまでの比喩研究の中から数十をとりあげ、比喩の性質を考察した。また、比喩の認知過程をもとに、転義現象の一般的な修辞過程について述べ、修辞作用モデルとして提示した。第3章では、本論文の理論的背景となる認知文法の理論を概説し、スキーマの定義をおこなった。また、修辞現象を適切に規定していくために、修辞作用のスキーマと、カテゴリーの地形モデルを提案した。第4章では、修辞作用モデルにしたがって修辞性を分類した。つづいて、隠喩、直喩、比喩くびき、異義兼用、異義反復、類音語接近、かすり、誇張、緩叙、対比、対義結合、換喩、提喩、転喩、省略、黙説、転換、意味構文、破格くびき、代換、限定語反転、交差呼応、転移修飾という23の修辞をとりあげ、百数十の具体事例とともに、その認知的なスキーマを記述し、相互関係をネットワークのかたちで明示した。第5章では、比喩表現の理解と身体経験的基盤について、いくつかの複合的な修辞現象の具体事例をもとに、考察をおこなった。6章では本論文の結論と、研究の展望について述べた。
著者
上谷 芳昭 外山 義 三浦 研 外山 義
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、新設および既存のユニット改修の事例を取り上げ、以下を明らかにした。入居者、職員、敷地が同一のまま、六床室を主体とする従来型の特別養護老人ホームから、全室個室のユニットケアへ建替えられた特別養護老人ホームJ苑の建替え事例を取り上げ、全室個室ユニットケアを導入した場合、入居者のQOLがどのように変化するのか、また職員の介護負荷が増加するのか、時系列的な非参与行動観察調査を行い、1)全室個室としても入居者のリビング滞在率が向上することで、個室化が直接引きこもりに結びつかないこと、2)トイレが分散配置された結果、排泄の自立度が向上するケースが見られるなど、ADLの改善に寄与すること、3)職員の介護時における身体活動量を時系列的に調べた結果、ユニット化により一時的に介護職員の身体活動量は大幅に増加するが、建て替え後5ヶ月で建て替え前に近い水準に近づくこと、4)重度の高齢者を想定したユニットの空間構成を検討する際には、いたずらに多様なセミプライベートおよびセミパブリックな空間を設けず、むしろコンパクトな移動動線計画を念頭に置くことの重要性、また、5)既存の特別養護老人ホームにユニットケアを取り入れた施設を対象とした調査からは、ユニットケアに伴う事務およびミーティング方式の見直しが介護職員のユニット滞在時間を増やし、その結果、入居者と関わる時間が増加することが示された。
著者
秋谷 直矩
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、加齢に伴うコミュニケーション障害に対する援助実践を分析する。そこでは、相互行為の構造の解明を目的とする。高齢者介護施設でのケアワーク場面をビデオ撮影し、そこで得られた映像データを対象に、エスノメソドロジーの観点から分析を行なった。また、比較として、視覚障害者の歩行訓練場面の調査・分析も並行して行い、高齢者介護のケアワークの固有性についても検討を行なった。分析では、高齢者の「能力を推し量る」という探索的行為に注目した。結果として、それは「能力の回復または現状維持の可能性」の理解可能性に指向して組み立てられ、その結果に基づいて、援助行為が「フォローアップ」として組織されていた。
著者
野田 又夫
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.105-140, 1956-11-20

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。In his tutorial period Hegel was occupied with a personal interpretation of Christianity, or more exactly, of the "religion of Jesus" in contradistinction to the "Christian religion." He presents Jesus as a "belle ame" teaching a pantheistic philosophy of life. But the question arises whether or not Jesus' destiny itself can be interpreted in terms of the same philosophy. Rejecting the common Christian solution, Hegel would rather regard Jesus as hero in a tragedy, but difficulties come up which lead him to reflect anew on politics. During his professorship at Jena he conceives first an ideal ethical state (Sittlichkeitsstaat) which is totalitarian and absorbs religion into politics. But later he admits more of the liberty of individuals into his state ( Moralitatsstaat), where the Christian religion comes to be allowed a spiritual authority. It seems that he then had a strong personal motive to go beyond politics and seek truth in religion. Over against the French revolution and its fruits being reaped by Napoleon, politics becomes for Hegel no more than politics. The model of reality he transfers from the political society to a community of "belles ames," where no legal and moral laws supervise, but all members are reconciled with each other by mutual confession and remission of sins. This idea of religious community serves Hegel as criterion and ideal of the truth of religion. And its nearest approximation he finds in Christian communion. Hence the characteristic features of Christianity as Hegel conceives it. The God transcendent is no true God. The redemption by Christ is only metaphorically true. Also the famous dictum that philosophy changes into "concept" what religion conceives in the form of "imagination" means that philosophy emancipates members of the Christian communion from transcendental faith and eschatolological hope so that they may attain here and now perfect reconciliation with God the Spirit.
著者
尾谷 昌則
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2005-03-23

新制・課程博士
著者
林 春吟
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2012-03-26

新制・課程博士
著者
田添 篤史
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2012-03-26

新制・課程博士
著者
増田 皓子 (2009 2011) 渡邉 皓子 (2010)
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は太陽黒点微細構造の分光的性質の時間変化を知るということを目的に解析を行なった。アンブラルドットはサイズが小さく寿命も短いため、その分光性質の時間発展を求めるには現在の観測技術では限界に近い程の高い時間・空間分解能が必要となる。スペインのLuis Bellot Rubio教授から提供を受けたデータは、黒点を撮影した世界最高級のデータであり、このデータを得た事で、アンブラルドットの時間発展の統計的調査に世界で初めて取り組むことができた。その結果、「背景磁場の弱い所では、アンブラルドットに伴ったローカルな磁場強度の減少と磁力線の傾斜が観測されたが、背景磁場の強い所では、逆にローカルな磁場強度の増加と磁力線が垂直に近づく様子が観測された」といった、これまでに報告されていなかった結果を得た。申請者は理論モデルとして、黒点の太陽表面上での位置とスペクトル線の形成領域の変化を取り入れた新しいモデルを提案した。これらの結果をまとめた論文は、The Astrophysical Journalに2011年12月に提出され、2012年1月にレフェリーレポートを受け取った。レフェリーのコメントは非常に好意的であり、現在改訂論文を準備中である。また、博士課程で行なった研究の集大成として博士論文を執筆、提出した。内容は、太陽黒点に関するイントロダクションの他に三章立てで[1]移動速度の速いアンブラルドットの時間変化[2]アンブラルドットの背景磁場への特徴依存性[3]アンブラルドットの速度場・磁場の時間変化という構成にした。[1]と[2]の内容は、それぞれ2010年、2009年に申請者が主著で査読論文として出版された内容に基づいている。黒点暗部微細構造についての観測的性質をほぼ全て網羅した包括的な論文に仕上がったと思う。博士論文は無事に受理され、2012年3月に博士号を取得した。
著者
戸田 圭一 石垣 泰輔 宇野 伸宏 米山 望 川池 健司 馬場 康之 小谷 賢太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

実物大の階段・通路模型、車模型を用いて水害時の避難限界指標を作成した。統合型の都市水害モデルを用いて内水氾濫時の地下浸水解析を行い、避難限界指標を援用して地下空間の避難困難度ゾーンマップを作成した。小・中規模地下空間の浸水時の危険性も明らかにした。また内水氾濫解析と交通量解析を結びつけ、内水氾濫時の道路交通障害を評価できる手法を開発した。さらに都市水害対策として、地下空間を有効活用した治水施設の有効性を確認した。
著者
岩本 武和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、国際資本移動が、実体経済に対して、順循環的(pro-cyclical)に及ぼすメカニズムを理論的・実証的に分析し、前者が後者に対して反循環的(counter-cyclical)に作用するような制度的枠組みを提言することにある。近年における国際資本移動に関する諸研究において、プロシクリカリティという分析ツールは頻出するが、必ずしも確固たる経済学的基礎付けや実証分析がなされているわけではない。そこで本研究の成果は、以下の4点にまとめられる。(1)まず、「なぜ資本は豊かな国から貧しい国に流れないのか」という「ルーカスの逆説」(1990)に答える理論的仮説と実証研究をフォローし、本研究の理論的枠組みを提示し、(2)次に、標準的な資本移動モデルで等閑視されてきた「貸し手と借り手の情報の非対称性」(マッキノン等による「オーバーボローイング・シンドローム・モデル」)と「対外債務がいかなる通貨建てであるか」(アイケングリーン等による「原罪仮説」)という2つの視点を入れながら、東アジアの新興市場諸国を対象にした資本移動モデルの理論的研究を行った。(3)また、カミンスキー等(2004)によって、厳密に定義され実証された資本移動のプロシクリカリティに関する「4つの定型化された事実」に関して、上記(1)(2)の理論モデルに依拠しながら、「アジア債券市場」の育成ついて若干の政策提言を行った。(4)さらに、本研究のテーマにとって欠くことができない「世界的不均衡の持続可能性」について考察対象を拡大し、アメリカの経常収支赤字のファイナンスについて、オブズフェルドとロゴフ(2005)の「ドルの実質実効為替レートの33%減価」というベースライン・シナリオについて、価格の硬直性(パススルーの不完全性)を導入したモデルを考察した。
著者
藤重 悟 岩田 覚 牧野 和久 来嶋 秀治 平井 広志
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大規模離散最適化問題の有する劣モジュラ的な離散構造に注目し, 効率的なアルゴリズムの構築のために有効な離散構造を研究した.個別には,ネットワーク・フロー, マッチング,多品種フロー, 施設配置問題, 資源配分問題, グラフ連結度,通信網設計,待ち行列ネットワークに関わる離散構造,双対貪欲アルゴリズムに関わる離散構造(双対貪欲多面体, ゾノトープ) ,ホーン論理関数や安定マッチングの離散凸構造,などであり,個別の劣モジュラ的な離散構造の解明に基づき,それらの知見を横断的に総合する基礎理論の構築と高速アルゴリズムの開発を行った.
著者
前田 忠直 富永 讓 柳沢 和彦 水上 優 朽木 順綱
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,建築家の遺した図面,草案,言葉,さらに作品成立を基底づける敷地の特性分析を方法として遂行された。これらの分析を通して,20世紀の諸作品の個々の成立契機が明らかになるだけでなく,これらを包括する普遍的な建築的世界の成立様態や,さらにはこうした世界を具現化する建築家自身の実存のありようなど,作品成立において重層的な生成の構造が見出されることが明らかとなった。このことにより,本研究の独自性を裏付ける「生きられた構成のロゴス(人間的実)」への実証的・存在論的な問いの有効性,可能性が改めて確認された。