著者
藤田 大雪
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成21年度は、問答法の中でも特に「自己論駁」という議論形式に的を絞って考察を進めてきた。まずは、(i)プロタゴラスの人間尺度説が自己論駁に陥ることを示す『テアイテトス』169-171の有名な議論を取り上げ、証明の構造を再構成して議論の理解を深めることに努めた。次に、(ii)アリストテレスが矛盾律の疑いえなさを論証した『形而上学』Γ巻第3章の議論を取り上げ、従来の解釈に反して当該の箇所が自己論駁批判として読めることを示した。研究の結論は概ね以下のようなものである。(i)プラトンによって理解された人間尺度説は、いかなる現れも互いに矛盾することはないとするきわめてラジカルな相対主義だった。この尺度説の信奉者を名乗るプロタゴラスには、それゆえ、他の前提との矛盾を指摘するという通常の論駁方法は通用しない。尺度説にしたがえば、それらは実際には矛盾しないことになってしまうからである。ところで、他の前提によって尺度説の誤りを証明できないのなら、尺度説の肯定そのものからその否定を引き出すしかないだろう。もし尺度説を信じているなら尺度説を信じていない。このような論証方式は、それゆえ、ラジカルな尺度説を主張する論者に対してとりうる唯一可能な対処方法であったと推定できる。(ii)矛盾律の否定を信じるなら,矛盾律の肯定も信じなければならない。しかし,もし矛盾律の肯定を信じるのなら,その否定を同時に信じることは不可能となる。アリストテレスは、矛盾律の否定がこのように自己論駁へと帰着するために、矛盾律がそれ自体としてそれについて間違うことが不可能な原理であり、またもっとも強固な原理であると論定している。
著者
高折 修二 赤池 昭紀 笹 征史
出版者
京都大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1986

A/Dコンバーターを装備したミニ・コンピュータを用い中枢神経系における電気生理学的研究によってえられたデータを自動解析するためのソフトウェアを開発した. プログラムはUNI×オペレーティング・システムの下でC言語により記述したので, 実験の目的に応じてソフトウェアを容易に変えることができた. 三次元表示による監視システム, ならびに活動電位, 細胞内記録時の興奮性シナプス後電位(EPSP)およびパッチクランプ記録時の単一チャンネル電流のためのプログラムを作製し, データの迅速かつ正確な解析を行った. 局所刺激によってえられたEPSPはコンピューターに接続したA/Dコンバータを用いてデジタル化した. デジタル化したデータをグラフィック・ターミナル上に表示し, EPSP上昇相および下降相の各点の対数を時間軸に対しプロットした. データ解析用のこのコンピューター・システムを用いて, 次の実験を行った. 第1にラットの尾状核ニューロンに対するドーパミンの効果を, スライス標本において細胞内記録法を用いて検討した. 低濃度(1μM)のドーパミンによる水槽の灌流は脱分極をおこし, 自発性発火の増加と, 細胞内に与えた脱分極パルスにより誘発される活動電位数の増加を伴った. これに対し, 高濃度(100μM)のドーパミンは静止電位に明らかな効果をもたらすことなしに, 自発性および電流誘発による発火を抑制した. 次いで, 尾状核におけるコリン作動系の主要な役割を解明するために, コリン作動薬および拮抗薬の効果をラット尾状核のスライス標本を用いて研究した. その結果, 尾状核ニューロンのシナプス前およびシナプス後部に局在するムスカリン性受容体は, それぞれコリン作動性の抑制および興奮に関連していること, およびこのシナプス前抑制か興奮よりも優位であることを明らかにした.
著者
安岡 かがり (四方 かがり)
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成24年4月より12月の期間は,フランス・モンペリエ市に滞在して研究活動を遂行した。文献・資料収集,およびこれまでの調査で収集したデータの整理をすすめ,学会発表と論文執筆作業をおこなった。平成24年5月に,モンペリエで開催された第13回国際民族生物学会(13th Congress of the International Society of Ethnobiology)の分科会"Histodcal ecology and legitimacy of customary rights to forest resources"において,"Abandonment of Cacao Agrofbrest : Integrating commercial cacao farming into traditional shifyting cultivation in southeastern Cameroon"のタイトルで発表した。発表では,カメルーン東南部熱帯雨林地域におけるカカオ栽培の実践をとりあげ,農民が従来の焼畑システムにどのようにカカオ栽培を取り込んだのかについて論じた。従来,庇蔭樹が多く観察されるカメルーンのカカオ畑の景観は,カカオ・アグロフォレストと呼ばれ,多様性の高い景観として評価されてきた。調査地域においても多様な樹木が残るカカオ畑が観察されるが,本発表ではそれをアグロフォレストリーとして評価するのではなく,焼畑のバリエーション,すなわち動態的な土地利用のなかで創出される景観のひとつとして位置づけ,農民の生活全体のなかでの役割を明らかにした。また,平成23年11月に提出した学位論文をもとに,これまでの研究の成果を日本語の単行本としてまとめる作業をおこない,『焼畑の潜在力-アフリカ熱帯雨林の農業生態誌』のタイトルで出版した。本書では,カメルーン東南部の熱帯雨林地域において焼畑を主たる生業としているバンガンドゥ社会を対象とし,かれらの農業実践についての記述・分析を通じて,焼畑が,人びとが森と共存しながら生活していく基盤としての潜在力をもっていることを明らかにした。とくに,商品作物であるカカオ生産の拡大というグローバルな市場経済との接合にさいして,バンガンドゥが従来の焼畑の営みをどのように改変・調整することで対応したのかに着目しながら,焼畑に関わる人びとの知識や技術,そしてその生態基盤としての熱帯雨林のもつ潜在力について総合的に論じた。
著者
伊藤 壽一 中川 隆之 平海 晴一 山本 典生 坂本 達則 小島 憲 田浦 晶子 北尻 真一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究によって内耳発生に重要な因子が内耳再生医療に有用であることを発見した。細胞増殖制御因子p27Kip1を生後マウス蝸牛で抑制すると、増殖能がないとされていた生後哺乳類の蝸牛支持細胞が増殖した。HGFやEP4アゴニストが内耳障害の予防や治療に有用であることを発見し、そのメカニズムを解明した。Notchシグナルが、内耳内の細胞運命決定だけでなく感覚上皮前駆細胞の分化タイミングの制御や維持を担うことを発見した。
著者
杉山 淳司 馬場 啓一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

低温ホルダが納入されたことによって、水溶液を直接顕微鏡に持ち込み、観察することができるようになった。予備実験では、酵素分解の相乗効果に加えて、セルロースそのものの構造が、分解プロセスに影響与えることが示唆された。そこで分解過程のセルロース懸濁液を経時的にサンプリングし、高い分解能で観察することを試みた。ところが、低温ホルダと同時に納入された試料汚染防止装置のギャップ間の距離が、既存の電子顕微鏡のポールピースの磁極間距離にあわないことや、その電源から低周波の振動が冷却フィンに伝わることで、まともに高解像度の画像が取れない等の不具合が生じた。このような問題点を克服するためにかなりの時間を浪費し、いまだに未解決の問題もあるものの、現段階では試料ホルダを40度近く傾斜でき、低温の実験に用いることができるようになった。像室については未だに未解決の問題があるが、電子回折を得るには最高の試料観察条件を整えることができた。そこで当初の研究プロジェクトを一部修正して、セルロースが還元末端あるいは非還元末端のいずれから合成されるかを決定するテーマに取り組むこととした。これまでの研究で大きな進展がみられ、セルロースの分子鎖の還元末端が生体の外側に向くように、つまりできあがった分子鎖の非還元末端に、モノマーが付加重合されることを、実験的に初めて証明することができた。
著者
加藤 幹郎 田代 真
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

21世紀の日常生活は、ヴァーチュアル・リアリティ化され、それがインタラクティヴィティと呼ばれる、主体と客体との間の「柔らかい」相互干渉性である。この環境は、人間の身体/精神になんらかの回復不可能な傷痕を残し、新たな身体/精神機制を構築することになる。そこではデカルト的二元論によって規定されてきた近代心身二元論がきわめて希薄化される。
著者
佐々木 隆 YOUNG Charles
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

Youngおよび佐々木は,可解低次元物理系のいくつかの側面について研究し,多くのめざましい結果を得た.Youngは,simply-lacedアファイン量子群の基本表現のq-指標と,戸田場の理論の相互作用を規定するDoreyの規則の間に簡単な関係のあることを明らかにした(CMP掲載決定),また,弦理論に関係した問題として,AdS_5xS^5背景を大きい角運動量を持って最大の巨大重力子にまで伝播する自由開弦を記述する散乱理論を,入れ子のベーテ仮説を用いて解いた.弦のスペクトルと,対応する場の異常次元を見つけた(J. Phys. A).更に,標準的なアファインsl(2)量子代数のカルタン部分代数の構造の決定,q,t指標の構造を明らかにした.量子アファイン代数の有限次元表現に関連して,極小アファイン化を含む新しい完全系列を見つけた.佐々木は,可解1次元量子力学系の無限個の新しい例を提出した.対応する固有関数は,ラゲール多項式およびジャコビ多項式を変形した,4種類の無限個の例外直交多項式になっている.更に,1次元「離散」量子力学系の変形から,連続ハーン,ウィルソン,アスキー・ウィルソン多項式の変形に対応する,無限個の可解系を見つけた.対応する固有関数は,例外型連続ハーン,ウィルソン,アスキー・ウィルソン多項式になっている.対応するフックス型の方程式の特徴,解空間の構造,形状不変性の証明,ボホナーの定理との関係などを明らかにした.ダルブー・クラム変換を通じての,変形の方法により,見やすい結果を示した.
著者
高岡 昌輝 大下 和徹 朱 芬芬
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

セメント産業の焼却残渣受入れ容量および受入れ基準に注目し、焼却残渣をセメント原料として用いることを想定した省エネルギー・省コストな廃棄物処理の技術的システムの開発を試みた。排ガス処理における薬剤をナトリウム系に変更することで飛灰の洗浄およびその後の焼成において塩素が容易に除去でき、飛灰量および最終残渣中の塩素量を削減できることおよびナトリウム系薬剤の使用時のダイオキシン類生成抑制メカニズムを明らかにした。
著者
宮田 仁美
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

TLR4は、最近肝線維化に関与していることが示され、水腎症モデルマウスにおける腎線維化にも関与しているのではないかと仮定し研究をすすめた。野生型、欠損、低発現マウスに分けて、片側尿管結紮にて水腎症マウスを誘導し血行動態的な変化、ならびに組織学的、分子生物学的な変化について比較を行った。欠損マウスならび低発現マウスにおいては、線維化の進行が有為に遅れたがその作用は早期に限られた。
著者
田中 朋之 KHAN NADAR KHAN Nadar
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

コメは全世界の約半数以上の人々が主食とする重要な食糧であり、特にアジアの発展途上国では貴重なタンパク源でもある。そこで、パキスタンで収集された約300種類のイネ在来品種・系統における種子貯蔵タンパク質の種内変異を評価した。その結果、主要な貯蔵タンパク質グルテリンのα鎖に関して、ポリペプチドの数と蓄積量に関し大きな変異があることが認められた。特に、リジン含有率の高いグルテリンサブユニットGluB4を認識するanti-B4(No.4b)抗体に対する反応性が品種・系統ごとに大きく異なり、その反応性の違いから、3つのグループに分類できた。その変異パターンと収集地域(N.W.F.P,Punjab,Balochistan,Sind,Azad Jamu Kashmir)ごとに特徴的な農業生態系との間には関連性は認められなかった。一方、グルテリンα鎖における変異の他に、グルテリン前駆体を高蓄積する品種・系統が多く見出された。グルテリン前駆体を高蓄積する品種・系統の出現頻度は、5つの農業生態系により異なり、Punjab由来の品種・系統で最も出現頻度が高く(22%)、次いでSind由来の品種・系統(13%)、Balochistan由来の品種・系統(3%)であり、N.W.F.PとAzad Jammu Kashmir由来の品種・系統には認められなかった。パキスタン由来のイネ遺伝資源におけるそれらの出現頻度は、世界のイネ・コアコレクション約60種類の中で見出された頻度に比べ著しく高かった。世界のイネ・コアコレクションで見出されたグルテリン前駆体を高蓄積する品種・系統が、インド由来の良食味系統local basmati(collection number 40)であったことから、南アジア地域における良食味系統の分布と、グルテリン前駆体を高蓄積する系統の分布との間に関連があることが推察された。
著者
近江 崇宏
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は、空間的に広がったシステムが示す協調的なダイナミクスのモデルリングを目的としている。主な対象として神経細胞集団のスパイク発火を想定している。しかしながら近年、神経細胞のスパイク発火と地震発生の現象論的な類似性が指摘されており、より発展的な観点から地震時系列についても対象として、研究を行ってきた。本研究課題1、2年目においては、主に成果の出ていた地震の時系列解析の研究について報告した。本年度の報告では、本課題の中心テーマである神経細胞集団のスパイク発火についての解析の研究についての詳細な報告を行う。まず単一の神経細胞のスパイク列の発生率をヒストグラムを用いて精度よく推定する手法の開発を行った。既存の手法はスパイクがポアソン過程に従って生成されているという想定に従っているが、実験で観察されるスパイク列はポアソンではないことがわかっている。そこで本研究では現実のデータに適用可能なように、既存の手法をより一般の場合への拡張を行った。そして、数値実験、実データを用いて、提案手法の有効性を示した。スパイクデータからの発生率推定は神経科学では実験データ解析の標準的手続きである。さらに本手法は簡潔であり、統計解析の基礎知識を持たない研究者でも容易に実装が可能になっている。そのため今後本提案手法が多くの研究者に使われると考えられる。また本研究は理論神経科学の一流紙Neural Computation誌から出版され、2011年度の神経回路学会において大会奨励賞を与えられた。二つ目の研では神経細胞集団のスパイク列から動物が将来起こす行動のタイミングを予測する研究を東北大学医学部のグループと共同で行った。24個の補足運動野の神経細胞のスパイク列から約1秒のタイミングで行動タイミングの予測が可能であることを明らかにした。この結果は脳信号を用いた外部機器の操作(BMI)への応用においても重要な結果であると考えられる。
著者
分藤 大翼
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、アフリカ狩猟採集社会における文化変容を、仮面儀礼や音楽舞踊の実践といった人々の社会的相互行為の実態に即して解明することである。また調査地域の現状を記録し、後年、文化変容の比較研究がおこなえるようにビデオによる撮影を行い、民族誌映画(記録映画)を作成することも目的としている。本年度は、カメルーン共和国において仮面儀礼や音楽舞踊、集落の人口動態や歴史に関する聞き取り調査をおこない、あわせて撮影もおこなった。また、映像による記録とその活用について知見を深めるため、ニューヨーク(USA)で開催された世界屈指の民族誌映画祭(Margaret Mead Film and Video Festival)に参加し、情報の収集と関係者との情報交換をおこなった。また、報告者の制作した民族誌映画を国内外の上映会、映画祭で上映し、専門家、一般の観衆とともに討議を重ねた。本年度の成果としては、「カメルーン東部州、バカ・ピグミー社会における音楽の実践と継承」という題目で、ポスト狩猟採集社会の文化変容の一面を仮面儀礼や音楽舞踊の実践の分析から明らかにした論文を発表した。また、バカ・ピグミー社会において最も重要視されている「ジェンギ」という精霊儀礼と音楽舞踊に関する民族誌映画『Jengi』を制作し、日本アフリカ学会、日本文化人類学会の学術大会において上映し討議した。同作品は、2008年3月に沖縄大学で開催された日本映像民俗学の会でも上映され、5月にはドイツのゲッティンゲンで開催される国際民族誌映画祭でも上映されることになっている。また、その後ヨーロッパ諸国で上映される予定である。
著者
玉川 安騎男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の主目的は、3名の海外共同研究者(C.Rasmussen(米)、A.Cadoret(仏)、M.Saidi(英))との、代数曲線の被覆の数論幾何に関する3つの共同研究(「ガロア表現」、「フルビッツ空間」、「正標数」)の進展だった。実際、3氏の訪日、玉川の渡仏・渡英などを通じて共同研究を進め、伊原の問題に関連するアーベル多様体のある有限性予想、フルビッツ空間の有理点に関するモジュラータワー予想、ガロア表現像の普遍下界性問題、正標数及びp進の遠アーベル幾何、などについて、大きな成果を上げた。
著者
太田 麻衣子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

1.各国から越研究者が参加した中国柯橋・越国文化高峰論壇にて「越都琅〓新考:兼論越在淮北地区的発展」を口頭発表、改訂稿「越〓都琅〓新考」を『中国柯橋・越国文化高峰論壇文集』に掲載した。本論文は越研究において長年の懸案である越の琅〓遷都および准北進出について、近年の考古調査に基づきながら新説を提示したものであり、以下の事を明らかにした。(1)従来『史記』は越の准北進出を否定しており、越の琅〓遷都を伝える『越絶書』等の記述とは矛盾すると考えられてきたが、実際には『史記』は越の淮北進出を否定してはおらず、『越絶書』等の記述とも矛盾しない(2)越の准北進出は考古学的証拠からも裏付けられる(3)ただし琅〓遷都自体は虚構である可能性が高く、少なくとも従来最も有力視されてきた山東省〓南市の琅〓山一帯に遷都したという説は、考古学的証拠より否定される(4)張志立氏らの考古調査により、准北における越に拠点は江蘇省連雲港市錦屏山九龍口古城にあった可能性が最も高い(5)准北に進出したあとの越は、無彊死後も淮北に存在し続け、最終的には戦国後期、考烈王期の楚に併呑される。2.指導委託により上海・復旦大学歴史地理研究中心の李暁傑教授に師事し、歴史地理学を学ぶと同時に、独自に各地でおもに楚・越にかんする史料調査を行なった。調査した博物館・遺跡・研究機関は以下のとおり。湖南省博物館・馬王堆漢墓三号墓坑・長沙簡牘博物館・湖北省博物館・武漢博物館・武漢大学・随州博物館・曾公乙墓遺址・襄樊市博物館・荊州博物館・楚紀南故城・荊門市博物館・宜昌博物館・南京博物院・上海博物館・蘇州博物館・蘇州科技学院・印山越王陵・越国文化博物館・紹興博物館越王城分館・良渚博物館・浙江省博物館
著者
加藤 幹郎 田代 真
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

芸術テクストの歴史に一貫した認識論的パラダイムなどありえない以上、個々の 芸術のテクスト分析をとおして芸術とイデオロギーの不連続かつ連続する複数のコンテクスト(文脈)を構築考察する以外、芸術と人間の関係をさぐる方法はない。
著者
陳 全
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

高分子量域のPI、PtBS試料の相溶性ブレンド系の絡み合い状態が誘電緩和、粘弾性緩和、流動光学などの手法で検討されている。高温においては、化学的には均一で分子量のみが異なるPI同士のブレンド系と同様の2段階の長時間粘弾性緩和が観察され、1段目の緩和はPIのA型双極子に由来する誘電緩和を伴うのに対して.2段目の緩和は誘電緩和を伴わないことが見出された。この結果から、PI/PtBSブレンド系においてPIが速い成分、PtBSが遅い成分であることが確認され、また、1段目の粘弾性緩和が全成分鎖の間の絡み合い緩和であり、2段目の緩和がPI鎖の緩和後に発現するPtBS鎖同士の絡み合い緩和であることが結論された。この結論は、流動光学データからも支持された。また、1段目の緩和に付随する絡み合い長は、成分鎖のKuhnセグメントの数分率と純状態における絡み合い長に基づく一次混合則で良く記述されることを示した。さらに、この混合則は、絡み合いをパッキング長と対応付ける現在の分子描像と良く対応することも明らかにした。一方、低温では、1段目の絡み合い緩和が平坦部を伴わないRouse型のベキ乗緩和となることを見出した。粘弾性、誘電、および流動光学データの対比から、遅い成分であるPtBS鎖による拘束が絡み合い長にわたるPI鎖のRouse平衡化を遅延して平坦部をマスクするために1段目の緩和が平坦部を伴わないことを明らかにし、この分子描像に基づくモデルを構築した。さらに、流動光学データなどに基づき、このモデルの妥当性を実証した。
著者
吉田 竜司
出版者
京都大学
雑誌
京都社会学年報 : KJS
巻号頁・発行日
vol.4, pp.21-40, 1996-12-25

This article aims to reconsider controversies over Turner and Killian's "emergent norm approach" and point out their implication to the empirical study of crowd behavior. Over the past few decades, most studies of crowd behavior have shared a similar view called "no-real-difference approach". This approach asserts the continuity between crowd and institutional behavior. Among this line of studies, Turner and Killian's "emergent norm approach" has been placed at the forefront. At the same time, Turner and Killian's theoretical explanation has been the subject of some criticisms. They may be divided into four types : 1) the arbitrariness of their explanation of crowd member's motive, 2) theoretical discontinuity between micro-macro level, 3) unfalsifiability of their definition of crowd behavior, and 4) unclearness of the emergent norm concept. The core of all the questions about Turner and Killian's theorization existed in the meaning they attached to the term "emergent" : they tended to use this term with the connotation of "spontaneously novel". Because of this connotation, "emergent norm" concept served as a cure-all in explaining seemingly novel phenomena (crowd behavior). To quote D. Bloor's term, this concept was "asymmetrical". Instead of their emphasis on empirical reality of crowd behavior, this concept made their theory both tautological and reality detached. In response to these criticisms, they modified the term "emergent norm" to "an emergent (revised) definition of the situation". This modification makes clear that the term "emergent" means "reorganized" conditions. Now we can estimate this modification makes their central concept symmetrical. And securing the symmetrical continuity between crowd and institutional behavior is the ethos of the "no-real-difference approach". So with this revised interpretation of emergent norm, this approach could secure the symmetrical continuity at the conceptual level and we could use this concept to empirical study of crowd behavior.
著者
岩田 直也
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度(2010年度)の主な研究成果は、8月に東京で開催された「国際プラトン学会」にて口頭発表を行った、プラトン『国家』第五巻末の議論での「対象」の意味の再検討である。プラトンは、ここでの議論において、「知識」と「思わく」を「能力」と定義し、そのそれぞれに「あるもの」と「ありかつあらぬもの」という異なる「対象」を振り分け、両者の心的状態を明確に区別した。しかしながら、多くの解釈者たちは、この「あるもの」と「ありかつあらぬもの」をそれぞれ「真実在」(イデア)と「感覚物」と伝統的にみなしてきた。その考えに従うならば、プラトンによるこの区別は「私たちが知りうるのはイデアのみで、自分たちの身の回りの世界については何も知りえない」といういわゆる「二世界説」に帰着する他はない。しかしながら、この「二世界説」は、われわれ現代の認識論的立場から到底受け入れられないばかりでなく、プラトン自身の他の対話篇、さらには『国家』における彼の哲人王のプログラム自体とも重大な齪齬をきたすため、それがプラトンの真意であったかどうかは慎重に判断する必要がある。私は今回の発表で、この「二世界説」問題に取り組む多くの論者の中でも、とりわけ影響力のあるファインとゴンザレスの解釈を詳細に分析し、両者の見解もまた伝統的解釈と同様に「対象」を「外延的」に捉えているために、問題解決に向けて不十分であることを指摘した。対して、私自身は「能力」の「対象」をその「仕事」と決して切り離すことができない「内包的対象」と捉えることで「二世界説」問題を根本的に解決することを試みた。この見解は、学会のProceedingsの形式で紙媒体としてすでに発表されている。なお、口頭発表での議論を踏まえた正式な論文は、本学会のSelected Papersに投稿し、現在はその査読結果を待っているところである。
著者
山中 優
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2008-03-24

新制・論文博士