著者
佐々木 節 DOUKAS JASONANDREW DOUKAS Jason
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

昨年度までに高次元時空の回転パラメーターが一つの回転ブラックホールに関する性質がほぼ解明できた。そこで、今年度は複数の回転パラメーターを持つ高次元時空の回転ブラックホールの分析を集中的に行った。この解析は、現在稼働し始めているLHCなどの高エネルギー加速器実験での高次元時空理論に基づくブラックホール生成理論の検証にとって、極めて重要な意味を持つ。まず、5次元時空におけるde Sitter(またはanti-deSitter)空間中の回転ブラックホール上のスカラー場の波動方程式の一般表式を導いた。そして、それを変数分離し、その角度成分が角運動量は2つの自由度があるにも関わらず、1つの回転楕円波動方程式で表されることを示した。そして、回転パラメーターに関して摂動の6次までを解き、連分数法による数値解と比較し、摂動計算の精度を検証した。次に、漸近的逐次法によるブラックホールの準固有振動を求める方法の有効性について、とれまでの成果をまとめ、より統一した論議を展開した。特に、この方法が回転ブラックホールや電荷をもつブラックホールのどちらにも統一的に適用できることを示し、具体的にスピンが0, 1/2, 2を持つそれぞれの波動に対する回転ブラックホールの準固有振動をこの方法で求め、それらが以前に別の方法で求められた4次元回転ブラックホールの答えと一致することを確かめた。これにより、この方法の妥当性とその高次元回転ブラックホールに対する有用性を確認できたことは重要な成果である。以上の2つの成果は現在、それぞれ査読付き学術誌に投稿中である。
著者
吉田 和男 井堀 利宏 石黒 馨 竹内 俊隆 鈴木 基史 依田 高典 江頭 進 橋本 敬 瀬島 誠 藤本 茂 遊喜 一洋 秋山 英三 八横 博史 山本 和也 中川 真太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

テロや紛争、環境破壊、通商摩擦、金融危機といった今日の世界の秩序を脅かす諸問題は、相互に複雑に関連しあっているため、その解決には従来の個別対応的な方法では不十分である。本研究は、これら諸問題を総合的に分析し処方箋を提示するため、グローバル公共財(GPG)概念に依拠したシミュレータ(GPGSiM)を構築し、世界規模での秩序形成に必要なメカニズムを理論的・実験的に解明して、政策提言に役立てることを目指した。
著者
小森 悟 黒瀬 良一 高垣 直尚 伊藤 靖仁 鈴木 直弥 鈴木 直弥 伊藤 靖仁
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

上部に降雨装置を取り付けた風波水槽を用いた実験により,風波気液界面を通しての物質移動が降雨により促進されること,また,降雨およびウインドシアーが共存する場合の物質移動量がそれぞれ単独の物質移動量の足し合わせにより概ね予測可能であることを明らかにした.さらに,単一液滴の気液界面衝突現象に着目した実験と数値計算により,液滴の界面衝突が液側の表面更新渦を生成し,気液界面を通しての物質移動を促進することを明らかにした.
著者
作田 裕美 坂口 桃子 佐藤 美幸 新井 龍
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

上肢リンパ浮腫は、リンパ節郭清を行った乳がん患者にしばしば発症する。リンパ浮腫の有効な治療手段が確立されていない中、国際リンパ学会において標準治療として認められている「複合的理学療法」を各施設で施行しつつある。しかしながら、標準化には至っていない(複合的理学療法とは、スキンケア、リンパドレナージ、圧迫療法、圧迫下での運動療法の併用を指す)。複合的理学療法の効果を「リンパ浮腫発症予測指標」を用いて検証した結果、有用であることが示唆された。
著者
西矢 貴文
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

近代日本の「国家神道」期における神道家の内実を聞明するために、明治末期から昭和戦前期に活動した神道人の一人である葦津耕次郎に焦点を当てて研究を遂行した。とりわけ、強烈な神道信仰をもつ宗教的人間として、その信仰に導かれて形成される国体観、天皇観などに基づいだ諸活動とともに、葦津の事業家としての側面も明らかにすることを目的とした。如上の目的を達成するために、今年度は、国立国会図書館、国立公文書館、外交史料館、國學院大学図書館、関西大学図書館などにおいて未見資料の調査と蒐集を行った。その成果として結実した研究論文が、「事業家としての葦津耕次郎」(『明治聖徳記念学会紀要』復刊第43号)と「大正期の葦津耕次郎」(『神道宗教』205号掲載予定)である。「事業家としての葦津耕次郎」では、葦津耕次郎が関わった事業として、満洲における鉱山業・博多湾築港事業・社寺建設業を扱い、その事業の経緯を検討することを通じて、筥崎八幡の神威高揚と天皇の皇威発揚、そして国威向上を目的とするという自らが語る事業観が、そのまま経営のありかたに反映されていることを論じた。また、「大正期の葦津耕次郎」では、明治末期から大衆社会化が進行する一方で、第一次世界大戦やロシア革命を経て日本国内でも思想悪化、共産主義の脅威が喧伝されるなか、あるべき国の姿を実現することを鋭く追求するようになってゆく葦津の思想と活動を考察した。葦津は、大正初年に出会った川面凡児の神道教学に多大な影響を受けて自らの信仰を語る言葉を得た。大正期における敬神護国団の結成と純正普選運動への関わりを通じて、そのなかで葦津が川面教学から得たタームを使用しながら語った天皇観や国体観は、危殆に瀕する国体を救済するための政治的言説に直結し、この後の葦津による神道的昭和維新案へと結実してゆく前提となることが明らかになった。
著者
石田 憲二 松田 祐司 佐藤 憲昭 神戸 振作 井澤 公一 古川 はづき 西田 信彦
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究班では、主に、強相関電子系超伝導体における超伝導対状態、発現機構解明を目指して研究を行った。また重い電子系における量子臨界現象も研究した。主な成果を以下に挙げる。(1)人工超格子による二次元重い電子状態の創製と、人工超格子の手法による量子臨界の制御とそこでの強結合超伝導(2)強磁性超伝導UCoGeにおける(1)強磁性と超伝導の共存、(2)自己誘導渦糸状態の発見、(3)イジング型の異方性を持つ強磁性ゆらぎにより引き起こされる超伝導(3)熱伝送率の角度回転によるUPt3の超伝導ギャップ構造の決定(4)Uru_2Si_2の「隠れた秩序」における対称性の低下(5)準結晶Au-Al-Ybに見られる量子臨界現象(6)磁気励起の解析から明らかになったUsn_3における磁気異常の起源(7)二次元構造を持つ重い電子系Ce(Ru_<1-x>Fe_x)POにおける強磁性量子臨界現象
著者
丸山 真史
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2011-03-23

新制・課程博士
著者
王 柳蘭
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、中国出身のムスリム越境者(雲南系ムスリム)に着目し、政治的経済的なマクロな諸要因によって生活様式が大きく影響されつつも、民族独自の宗教、言語や諸文化にもとづく多元的なネットワークを用いて、東アジアと東南アジアを結ぶ移民の生活圏を確立していく姿を捉え、移民の視点からみた地域像を浮き彫りにする点にある。最終年度において代表者は、アメリカ・サンフランシスコで行われたAmerican Anthropological Associationの年次集会にて"The Negotiation of Chinese Ethnicity, Islam and the Making of Trans-Regional Network Among Yunnanese Muslims in the Thai-Myanmar Borderland"と題して、本研究で得られた越境とネットワーク、宗教の動態に関する最新の知見にもとづき、研究発表を行った。また、宗教の再構築というテーマのもと、日本文化人類学会においても、「中国ムスリムの越境と宗教の再構築」と題して口頭発表を行い、地域を越えた比較の視点から議論を行った。また、台湾のキリスト教組織によるタイ北部雲南系ムスリム移民支援に関する資料収集を行い、文献資料をもとに越境と宗教空間の再構築に関する理論的検討も行った。これらの研究と成果発表にもとづいて、越境と宗教動態とネットワークに関する中国系ムスリムの独自性と地域的特徴を把握し、越境プロセスにおいて宗教の果たす役割、民族・宗教を超えた共生の在り方についてあらたな知見を得ることができた。
著者
林 美里
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトにもっとも近縁なチンパンジーを対象とした比較発達研究をおこなった。物を操作する行動を指標として、チンパンジーとヒトの発達過程を直接比較した。形の異なる積木をつむという物理的な特性の理解などの項目では、チンパンジーとヒト幼児の類似性が示された。一方で、社会的・恣意的な要因がかかわる課題はチンパンジーにとって獲得が困難だった。物を介した社会的な他者とのかかわりが、ヒトの発達に影響を与えている可能性が示唆された。
著者
小野原 教子
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2004-09-24

新制・課程博士

1 0 0 0 OA 様式と構造

著者
吉岡 健二郎
出版者
京都大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:03897508)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-24, 1980
著者
ブランチャード フランソワ
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的はTHz電磁波を用いて、様々な生体物質の化学組成・特性を非破壊で評価可能、生体活動に伴う物質移動をリアルタイムで可視化可能な手法を構築することである。これまでに構築してきたTHz近接場顕微鏡を改良し、共同研究先であるオリンパスの顕微鏡を組み合わせて、より使い勝手の良い顕微鏡システムを構築した。この顕微鏡ではビデオレートで370×740μm^2と広範囲の画像を分解能10μm以下(THz電磁波の波長は数百μmなので、波長/100以上の分解能)で得ることが可能である。また、様々な環境下で測定が可能なように、この顕微鏡専用のインキュベータや、パージボックスも同時に設計、作成した。この顕微鏡を用いて、本年度(最終年度)行ったことは以下の通りである。1.電場増強のための大口径リング共振器の評価をおこない、リング共振器内での電場増強効果(3倍)を確認した。リング内にサンプルを設置することで、より高強度THz電磁場による高感度な評価が可能となると予想される。2.この共振器のデモンストレーションとして、微少量(~10ng)の機能性物質(porous coordination polymers(PCPs))の特性評価を行った。THz近接場顕微鏡で共振器内にPCPのあるものと、共振器内に無いもののTHz応答を空間分解して同時測定することで、長時間でもS/Nの良い測定が可能となる。この研究期間内に6本のレビューを含む論文、および1本の特許出願を行った。レビュー論文では本研究課題を含むこれまでの成果をまとめるとともに、最近の成果についても述べている。最近の成果であるメタマテリアル近傍の電場、放射電場の観測についてはこの8月に論文が掲載された。機能分子PCPのにおける分光イメージの結果については論文化する予定である。
著者
古賀 章彦
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

大規模なヘテロクロマチンが短期間(種分化が起こる程度の時間)に増幅(生成を含む)あるいは縮小(消失を含む)する現象が、ヒト科やテナガザル科など、霊長類の多数のグループでみられる。その機構の解明につなげることを目指し、増幅や縮小を起こしたヘテロクロマチンの特性を調べた。反復配列が転移などでセントロメアやテロメアに入り込んだ際にこれが起こること、および増幅や縮小の効率は塩基配列に依存することが判明した。
著者
宇佐美 覚
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本申請研究では、rho依存性転写共役因子MRTF-Aの病的心筋リモデリングにおける役割とその分子機構に関する研究を行った。まずMRTF-Aが心筋肥大刺激により心筋細胞において細胞質から核内にrho-actin dynamics依存性に移行することを確認し、MRTF-Aノックアウトマウスを用いて、MRTF-Aが心肥大に重要な役割を果たしている結果を得た。さらに心臓ホルモンであるBNP遺伝子の発現制御領域に新たにMRTF-Aに反応するSRF結合部位を同定することに成功し、BNPが新たなMRTF-A-SRF経路の直接的な標的遺伝子であることを明らかにした。
著者
村山 留美子 内山 巖雄 中畝 菜穂子 岸川 洋紀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

全国の成人を対象とし,一般市民のリスクや科学技術に関する認知レベルとその構造の把握のための調査を行った。その結果,1)17の項目について,それぞれの項目が持つ特徴的な認知構造について明らかにした。日常良く使用するものや科学技術では,必要性や恩恵を感じている場合,危険度の認知が低くなる傾向が示された。2)東日本大震災一年前の市民の地震へのリスク認知は非常に高かった。特に京浜,東海地域で意識が高く,一方で東北地方はやや低くなっていた。また,原子力発電所については,生活への必要性が高いと認知されている項目であった。半数以上が危険であると認知し,安全性がないとの意識を持っていたが,他の項目から相対的に見た場合,その意識はそれ程高くなかった。東日本大震災とそれに伴う原子力発電所の事故を鑑み,大地震や原子力発電所等の電力供給源については東日本大震災以後大きく認知構造が変わる可能性があり,今後もその変動を検討する必要がある。
著者
河野 允宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

前年度は、3次元波動伝播理論と理論的震源関数を用いた地震動モデルを作成し、この地震動モデルの有効性の検証を、兵庫県南部地震で測定された神戸大学、新神戸変電所、松村組の技術研究所の3ヶ所の地震記録を対象に行うと共に、これらの地震動特性の構成についての考察を行っている。地震動モデル作成において、断層面での滑り分布は、Sekiguchi et al.(1995)の結果を考慮したが、震源関数を規定する断層破壊に関するパラメータは、神戸大学記録のNS成分1つのみと地震動モデルの対応する成分と合致させることから決定した。このようにして、一つの震源関数を定めた。神戸大学のEW成分、新神戸変電所および松村組技術研究所のNS、EW成分の地震動は、それぞれの地盤モデルから評価されたグリーン関数と上記の一つの震源から作成した。神戸大学、新神戸変電所、松村組技術研究所の加速度記録のNS、EW成分と地震動モデルの波形、速度応答スペクトラムの比較により、地震動モデルと観測地震動は全体的に良く合致していることが示された。しかし、3次元地盤での地震動を波動伝播理論を用いて計算すると莫大な時間を必要とする。そこで今年度は、前年度の研究成果を更に発展させ、上記の3つの観測点の震源から地震基盤までの地震動は従来と同じ3次元地盤波動伝播理論を用いて計算し、1次元の地盤で置換された表層地盤の基盤に、その地震動を入射し、表層地盤での任意の位置での地震動を評価する方法を示した。この様にして作成された地震動モデルにより、神戸大学、新神戸変電所、松村組の技術研究所の3ヶ所の地震記録のシミュレーションを行なった結果、3次元地盤の波動伝播理論を用いて作成した前年度の地震動と殆ど同じ程度のシミュレーション結果が得られた。この研究によって、兵庫県南部地震の様な直下型地震動に対しては、今年度示した方法で、将来発生する兵庫県南部地震の様な直下型地震動を極めて短時間に予測出来る可能性を充分に示した。
著者
安田 憲二
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2004-01-23

新制・論文博士
著者
岡田 有司 鳥居 朋子
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.15-26, 2011-12-01
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate students' learning mechanisms based on learning outcomes assessment of a Japanese private university in the era of universal access. Concretely speaking, relations among student demographics, classroom experiences and commitments to learning were revealed, and determinants of learning outcomes were explored according to an assumed model which referred to Astin's IEO model. A self-report questionnaire survey was administered to students of X private university, and 2,074 students responded (response rate, 58.6%). Covariance structure analysis showed that classroom experiences, commitments to learning and learning outcomes differed according to student demographics (gender, grade, major and admission type). It suggests that universities need to consider a more appropriate educational policy which suits each student with diverse background in the era of universal access. It was also shown that commitment to learning had a significant role in student learning outcomes, and classroom experiences had significant effects on commitment to learning and learning outcomes. These results imply a possibility that universities can directly or indirectly intervene in student learning outcomes by reconsidering current classroom settings. Based on these findings, agendas in university curriculum, class design, and student support were discussed.
著者
長田 尚子 村田 信行
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.39-51, 2011-12-01

To develop a practical vocational program in a junior college, this study specifically examined previous research on service-learning that demonstrated effective results in linking the classroom and the community and which improved the learners' autonomous activities in the academic field and the social field. The activities' basic structure and design guidelines were developed in reference to those service-learning findings. The targeted course exploited the activities and guidelines to improve a project in which students produce papers for public relations. The reported levels of reflection by the students were used to evaluate the course design. Results show that course design based on service-learning for a vocational context is effective to promote reflection and continuing learning activities. Results of this study are expected to contribute to higher education focused on vocational and career education.
著者
村中 孝史 西村 健一郎 水島 郁子 荒山 裕行 皆川 宏之 高畠 淳子 岩永 昌晃 木南 直之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

労働法や社会保障法の分野においては、労働者又は国民の生活利益に着目した法規制が数多く見られ、そこでは労働者等が「家族」の一員であることから生じる様々な利益が考慮される。そのような考慮は社会保障法において顕著であるが、労働法においても近年は拡大傾向にある。しかしながら、家族の多様化は、そのような考慮に対し様々な問題を投げかけており、それに対して法が対応すべき分野が増加している。