著者
山川 勝史
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は,強毒性鳥インフルエンザパンデミック時の被害を最小限に抑えるため,その主となる感染ルートである飛沫核感染において,感染メカニズムの解明と予防策を流体力学的観点から追究することを目的としてる.具体的には気流計算にウイルス学に基づくパラメータおよび周辺環境の詳細な情報を取り込むことで,高い精度でのウイルスの振る舞いを捉えてきた.本研究では室内気流を制御することでその感染率の低下を狙う流体工学ワクチンの開発に注力した.さらに室内流と気道流を連続的に計算する手法については,境界部の接続も含め概ね完成させることができた.
著者
羽藤 由美 神澤 克徳 光永 悠彦 清水 裕子 坪田 康 桝田 秀夫 永井 孝幸 ヒーリ サンドラ 竹井 智子 山本 以和子 森 真幸 内村 浩 伊藤 薫
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

学校・大学等が入試や定期考査において,それぞれのアドミッション・ポリシー,教育目標,受検環境などに応じた英語スピーキングテストを開発・実施するためのガイドライン策定を目標として,以下の(1)~(5)を完遂した。(1)京都工芸繊維大学が独自に開発し,学内で定期実施しているコンピュータ方式の英語スピーキングテストシステム(毎年約700名が受験)について,リンガフランカ(共通語)としての英語運用能力を測るテストとしての妥当性を高めるために,評定基準と採点者訓練およびオンライン採点システムを改善した。(2)上記スピーキングテストを京都工芸繊維大学の平成30年度ダビンチAO入試に導入した実績に基づき,同じ仕様のテストを学内で能力診断テストとして実施する際と入学試験の一環として運営する際の違い(公正性・公平性の担保,システムの安定性維持,リスクマネージメント,情報セキュリティーのレベル等の違い)や,入試利用の際のこれらの点に関する留意点を明らかにした。(3)京都市立工学院高校の定期考査(「英語表現II」の1,3学期末試験)において,生徒とフィリピン在住の面接・採点者をスカイプで結ぶスピーキングテストを実施した。昨年度実施分から,テスト内容の改訂(ディベートとロールプレイの組み込み),採点基準・採点者訓練の改善,効果的なフィードバックのためのマニュアル作成を行った。(4)上記(1)~(3)の遂行状況をプロジェクトのホームページを通して広く社会に公表するとともに,実践報告や,実践を通して得たデータの分析に基づくリンガフランカとしての英語能力評価(特に,採点基準と採点方法)に関する研究成果を関連学会で発表した。(5)これまでのスピーキングテスト開発・運営の実績に基づいて,2020年度から始まる民間試験の入試利用(共通テストとしての活用)の問題点を明らかにし,関連のシンポジウムやブログ,twitterで発表した。
著者
都丸 雅敏
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

精子間競争は性淘汰において重要と考えられている。体内受精を行う動物では、精子が運動能を維持しながら雌体内に一定期間留まり(貯精)、精子間競争に大きく関わると考えられる。また、ショウジョウバエでは、貯精は、雌の再交尾を抑制し、はじめに交尾した雄の精子が他の個体との精子間競争を避けるように働く。そこで、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いて、貯精器官の数に変異のある系統や貯精に異常のある雄不妊突然変異ms(3)236を用い、精子間競争における貯精の影響を明らかにすることにした。精子間競争:ショウジョウバエの雌には貯精器官が2種類(管状受精嚢および2個1組の受精嚢)あるが、当研究室では受精嚢が3個あるショウジョウバエ系統が選抜され維持されている。受精嚢が3個あるショウジョウバエ系統を雌として、精子の尾部が蛍光を発する改変遺伝子(di-GFP)を導入したms(3)236雄と持たない野生型の雄と順に(または、逆順に)交配し、第1回目と第2回目のどちらの交配による子であるかを判定した。その結果、受精嚢の数と精子間競争の間には明確な相関は見られなかった。ms(3)236の遺伝学的解析:昨年度の解析により、ms(3)236は第3染色体の右腕95Fの領域の31.3kbの範囲に位置づけられた。そこで、この領域の一部を欠失する染色体を持つ系統を利用して欠失マッピングを行ったところ、ms(3)236は23.9kbの範囲に位置づけられた。次に、23.9kbの範囲にある2つの遺伝子(CG6364またはCG13610)に挿入したP因子を再転移させ、系統を確立したが、ms(3)236突然変異を相補しない系統を得ることはできなかった。したがって、ms(3)236はCG6364およびCG13610ではない可能性が高いと考えられた。
著者
村本 真 矢ヶ崎 善太郎
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,文化財数寄屋建築を対象に現場診断結果を用いた耐震性能評価技術を開発する.本研究の目的は,合理的で信頼性の高い評価情報を得るべく,数寄屋建築を損傷させずに土壁と構造木材の材料特性を推定できる要素技術を提供することである.現地調査において,壁土と木材の材料特性が評価できれば,建物の性能評価に直接有益な情報とすることができる.さらに,薄い壁厚の土壁を有する架構の性能評価実験を通して,数寄屋建築のシミュレーション技術を構築する.数寄屋建築の地震時挙動のシミュレーションにより,効果的な耐震補強法を提案する.これらの要素技術を組み合わせて文化財数寄屋建築の保存設計に直接活用できる基盤を整える.
著者
永井 隆則 Takanori Nagai
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
京都工芸繊維大学工芸学部研究報告 人文 (ISSN:03895076)
巻号頁・発行日
no.54, pp.79-112, 2005

セザンヌの絵画を日本美術との類似から評価し受容する形式を、ここで「日本主義」のセザンヌ受容と規定すると、1910-20年代においては、有島生馬(1882-1974)の最初の指摘に続いて、セザンヌの絵画と南画、文人画との類似を指摘する形で頻繁に語られていった。 開国後の近代化に於いて、「日本主義」は、常に西欧化を批判するイデオロギーとして存在し続けてきたと思われるが、美術の領域、さらにはセザンヌ受容の領域に於いても事情は同じで、30-41年代と軍国化が進む中で、はっきりと一つの思想水脈となって、立ち現れてきた「写実」や「造型」といった西洋から学んだセザンヌ受容を駆逐する形で、この時代、それは、もう一つのセザンヌ受容となって形を取る事となった。 本稿では、この日本主義のセザンヌ受容の系譜を追跡し、その思想環境を明らかにする事を目的とする。京都工芸繊維大学 工芸学部研究報告 第54巻 人文(2005) pp.79-112
著者
酒井 謙一
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
京都工芸繊維大学繊維学部学術報告 (ISSN:03685896)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-10, 2006-03

ナチ統治下でのハウプトマンとナチとの関係を資料に基づいて検証しながら、彼の最後の傑作『アトレウス家四部作』、とりわけ『デルフォイのイフィゲーニエ』における最後の主人公の自殺について考察した。京都工芸繊維大学 繊維学部学術報告(2005) 第30巻
著者
吉田 敦也 堀尾 裕幸 山口 隆美
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究では、交流共感型先端VR遠隔医療システムとしてのハイパーホスピタル(超病院)の一部として、ISDNを経由した遠隔2点間で、医師と患者が、それぞれの3次元VR映像のエージェントを用いて面接を行なう電子問診システムのプロトタイプを試作した。平成6年度においては、シリコングラフィックス社のワークステーション「インディ」を中心とした(1)双方向映像通信システムを試作し、ISDN回線とEhtemetを用いた実験的な利用を試みた。平成7年度においては、(2) 3Dグラフィックエージェントを人間様の形状と非人間様(野菜など)の形状をベースに試作し、対話場面に必要な表情表出や動作を利用できるようにインターフェースを開発した。平成8年度においては、上記に構築したシステムとグラフィックエージェントなどを用いて、(3)模擬的な電子問診実験を行い、話し易さ、緊張感、行動の反響など対話におけるコミュニケーション特性について測定・評価した。本研究の全体的な成果としては、グラフィックエージェントなどの視覚的、聴覚的なリアリティが高いほど、コミュニケーション効果は低下する可能性が認められたことである。すなわち、高忠実な現実再生型の描画や音声合成は必ずしも、対話を促進する方向へでは機能しない傾向にあり、むしろ精細度を低下させた描画や電子音声の方が人間関係をメディエ-トしやすいのではないかと思われる結果を得た。また、動作レベルでは、電子面接中にグラフィックエージェントが表現する手足や体の動きが被面接者に反響することが明らかとなった。このことは、電子面接を行う際のグラフィックエージェントの非言語的行動が、被面接者に対して心理的影響を与える要因となることを示唆するものである。音声レベルでは、面接者の発話音声の周波数に非面接者に対して好印象を与える値があることを見いだした。特に、第一フォルマント周波数が平均的な成人の値よりも低い場合に、被面接者はその音声による質問に答えやすいと感じる傾向が認められた。このことはグラフィックエージェントの発話音声の特性が面接効果に影響を与えることを示唆するものである。以上の結果をもとに診察場面など医療環境における電子問診システムのヒューマンインターフェース設計について総合的な考察を試みた。
著者
神田 和幸 木村 勉
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

聾者の言語である手話は学校教育が始まる以前から存在した。手話の歴史は聾者の歴史と同じ長さである。現在から手話の源流を探るには未就学聾者の手話を採集し研究するしかないが、離島や僻地などに人知れず居住し高齢化により絶滅に近い状態にある。未就学聾者の手話は数手話、色名手話、親族名称がないなどの特徴があり、指さしが多いのが特徴的である。一方、生活に密着した語彙は現代の手話よりも描写力があることがわかった。個人方言性が強いが共通性もみられる。
著者
笠原 一人
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

今年度は、まず昨年度から行っている資料調査の一環として、「日本インターナショナル建築会」(以下、「建築会」とする)の「外国会員」の資料が残されたヨーロッパの資料館(ベルリンのAKADEMIE DERKUNST、ウィーンのOsterreichisches Museum fur angewandte Kunst、ロッテルダムのNetherlands Architectural Instituteなど)を訪問し、「建築会」から送られた「外国会員」への書簡などを確認した。その結果、「建築会」が外国会員を募集する際、東京で「建築会」主催の国際建築展を開催すること(実現せず)を目的として会員になるよう呼びかけていたことが明らかとなった。また、本野精吾が設計した旧鶴巻邸および旧大橋邸に残された、本野のデザインによる室内デザインや家具についての現物調査を行った。その結果、建築はモダニズムの方法を実現しているが、室内デザインや家具においては、ウィーン分離派やアールデコ、古典主義などの影響を受けた、装飾を伴ったやや古風な意匠が展開されていることを確認した。最後に2年間の本研究についてのまとめの考察を行った。戦前の関西のモダニズム建築の伝播には、建築運動団体が大きな役割を果たしたと言える。「建築会」は、ヨーロッパの建築運動との直接的な関わりを持ち、会員として高等教育機関の教員や官公庁に在籍する技師などが数多く在籍していたため、その影響は大きかった。また東京の「分離派」や「創宇社」、あるいは「デザム」を率いた西山卯三らの影響を受けて、京都に「白路社」や「鉄扉社」という無名の技術者による建築運動団体も存在した。こうした建築運動団体は、独自の雑誌や展覧会などのメディアを駆使した。それによって「建築会」は海外との直接的な関わりを可能にし、「建築会」の機関誌となっていた雑誌『デザイン』から「鉄扉社」が誕生するなど、複数の建築運動が関連することにもなった。関西の内外で複数の建築運動団体の活動が、互いに関連し合いながらモダニズム建築の伝播に貢献したことを確認できた。
著者
松本 裕司
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、オフィスにおける感性価値が経営面、活動面に及ぼす影響について研究した。具体的には、①オフィスに求める場所選択の多様性及び選択要因、②デザインが組織戦略の浸透に及ぼす影響、③役立たないコミュニケーションの価値、④集団凝集力とオフィス環境との関係、⑤特別感と働きたいの関係、⑥コワーキングスペースの環境要件、⑦組織横断型ワークスタイルに求められる環境因子、⑧フューチャーセッションに適した環境印象調査、を通して、多面的な知見を得た。
著者
古田 潤
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

65nmのFD-SOIプロセスを用いて設計した非冗長フリップフロップの放射線起因のエラーの測定を中性子を照射する加速試験により行った。提案回路であるSLCCFFは通常のFFよりも耐性が高く、特に0.4Vと低い動作電圧では約30倍のソフトエラー耐性を持つことを確認した。この値は従来の放射線耐性回路であるstacked FFと等しい値である。SLCCFFは動作速度の点で従来回路よりも優れている。
著者
高木 真人 阪田 弘一 永田 恵子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

こどもの外遊びを回復させるために、日本の伝統的空間である縁側に着目した。そして、縁側のある保育施設で観察調査し分析することにより、「外遊びに展開しやすい縁側」について提案した。縁側が活発に使われている保育園では、幅が広く(約2m以上)、通行しやすく、室内と広くつなげられていた。また、保育室面積の大小に関わらず、こどもたちは自ら縁側に出て遊んでいた。滞留が多い縁側ほど保育室や園庭との出入りも多くなる。また、縁側の回遊性や園庭と積極的につなげるような形状も、縁側における滞留や通行を促すので外遊びへの展開に寄与するといえる。
著者
伊藤 徹 荻野 雄 昆野 伸幸 平子 友長 長妻 三佐雄 笠原 一人 平芳 幸浩 松隈 洋 西川 貴子 日比 嘉高 若林 雅哉 秋富 克哉 宮野 真生子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本語としての「主体性」の概念の成立と使用の歴史を、哲学、社会思想、文学、美術、演劇、建築など多様な分野において、追跡したものである。それによって、日本が近代化に伴って経験した人間理解の変化を、多様なアスペクトにおいて解明することができた。また海外の日本文化研究者との共同研究および出版事業を通じて、日本におけるテクノロジーの発展と文化との関係についての知見を国際的に発信することができた。
著者
鋤柄 佐千子 與倉 弘子 松平 光男 北口 紗織
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

布の新しい価値を提案するために、布から得られる,視て触って感じる情報に関係する有効な特性値の抽出を進めた。主な試料は、西陣織物,絹、綿のちりめんである。その結果、視感では西陣織物の中に挿入される金糸の効果や織柄の特徴を識別できる評価方法をみつけた。この方法は、特定の光の当たる角度/見る角度の組み合わせで、布を回転させながら測定する。触感では、絹のちりめんの特に厚さを変えることで、適したシルエットが設計可能なことを示した。またちりめんのしぼ形状と綿素材の吸湿性能に及ぼす強い撚り糸の効果がわかり、それがさらっとした触感に寄与している。
著者
浅岡 定幸
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

親・疎水鎖の連結点にポルフィリンまたはレニウム錯体を導入した両親媒性液晶ブロック共重合体を用いることによって、薄膜中で生ずる完全垂直配向シリンダー型のミクロ相分離界面をテンプレートとして、これらの色素分子が環状に集積化された構造体がスメクチック層状構造に従って一定の距離をもって周期配列した構造体を形成することに成功した。これらの共重合体を混合製膜したブレンド薄膜では、同様の垂直配向シリンダー型のミクロ相分離構造が維持されており、犠牲剤を含む二酸化炭素飽和溶液中でポルフィリンからレニウム錯体への光誘起電子移動に基づく光反応が進行することが示唆された。
著者
吉川 順子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

ジュディット・ゴーチエは19世紀後半から20世紀初頭に文学作品を通してフランスに日本文化を伝えた作家である。本研究はその日本関連作品の全体像を構築し、第一作小説『簒奪者』の生成過程の解明を進めた。その結果、日本に関連する行事に触発された執筆、日本の神話や文学への関心、同時代的な問題の投影、身近な資料の駆使といった特徴を見出すことができた。これにより、各作品の源泉調査および時代背景との関連性の考察を行っていくための基盤が作られた。
著者
浦川 宏 綿岡 勲
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

諸外国からの商品と差別化できる繊維染色加工技術の開発をめざし、インクジェット染色法における基礎研究から技術開発までの一連の検討をおこなった。従来の蒸気で蒸す染料固着の代替として、2枚の熱した鉄板で固着処理をおこなう乾熱固着法での染色機構を明らかにし、天然染料では処理時間の短縮だけでなく従来法よりも濃色に染めうる手法であることを見いだした。またインクジェットを用いた天然染料の金属媒染の検討もおこなった。
著者
藤本 康雄 池上 忠治 日向 進 山口 重之 西田 雅嗣 竹内 次男
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

研究分担者池上は本務(神戸大学文学部長)の都合上、先発隊としてフランスのパリとオーストリアのウィーンに赴き、関連予備調査と準備折衝にあたった。パリでは国立図書館、クリュニ-中世美術館、ル-ヴル美術館等、ウィーンでは歴史美術館、美術アカデミー美術館等を歴訪、ヴィラール・ド・オヌクールの画帖関連の絵画、彫刻を中心に調査を行った。その結果を後着の本隊に連絡報告の後、帰国した。調査本隊は8月末にパリに到着、レンタカ-(ルノ-・エスパース)を調達し、ヴィラールの修業地ヴォ-セル修道院と、オヌクール・シュル・エスコ-にヴィラール・ド・オヌクール協会本部を訪問することから調査活動を開始した。協会役員と資料・情報の交換を行い、ヴィラールの画帖に描かれた水車利用自動鋸装置の模型等を調査、藤本は協会員に推挙された。ランス大聖堂調査に際しては、1984年学術調査時に採取したゴシック建築家ユ-・リベルジェの墓石拓本の寄贈を果たした。ドイツではニュルンベルク国立博物館及びウルム市立古文書館で、中世羊皮紙図面多数を閲覧、一部実寸写真複写を入手した。チェコではプラハにP.パルラ-作の大聖堂を調査し、文化財保護局を訪問、ヴィジ・ブロッド修道院に、ヴィラールの画帖所載図面と類似のリブ・ヴォ-ルト架構建物を調査した。スロバキアのコシ-ツェではヴィラールが関与したと伝えられる聖エリザベート教会堂の実測を行った。ハンガリーではブダペストの文化財保護局と国立博物館でピリシュ修道院遺構の情報を得、その調査を実施、画帖所載分と類似の床タイル拓本等を得た。次いでオーストリアのウィーンに入り、美術アカデミー古文書館で建築古図面の実測調査を行い、一部複製を入手したほか、ザンクト・ステファン教会堂の建築家像を調査した。スイスではザンクト・ガレン修道院平面原図の調査を行ったほか、ロ-ザンヌでヴィラールの描いた大聖堂南袖廊バラ窓修理現場において実測調査の機会を得た。再度フランスに入り、ポアチエでは大聖堂聖歌隊席木彫に木の葉模様図案を見出し、またスケアの実測を行った。シャルトルでは大聖堂床舗石の迷路について、部分に留まったが拓本を採りを果たし得た。パリに戻りクリュニ-中世博物館に館長A.E.ブランデンブール氏を訪問、同氏の口ききで国立図書館秘蔵のヴィラールの画帖原本閲覧の念願が遂に叶った。写真撮影は許されなかったが、従来の複写本との比較で原図実寸を確認した。また一部の図柄に、何時の時期か不明であるが薄青色の着色を認め得た。一方、画帖研究家として知られるR.ベッシュマン氏と会い、意見・情報交換を行った。画帖所載投石機の模型復原と投擲実験は注目すべきものがあった。われわれのヴィラール・ド・オヌクール協会訪問と、同会に寄贈した藤本による画帖研究書は、直ちに会報に記事が掲載され11月例会に招待を受けるなど、大きな反響を呼ぶことになった。フランスほか6ヵ国にわたり旅程約12,000キロ、20余都市で訪問・調査した機関・建物は多数に及び、知遇、援助を得た人は数知れない。手続きや時間的な制約もあった中で、写真撮影も相当数をこなした。収集資料等を含め、その成果は多大であったといえる。現在、図面・写真・スライド等を鋭意整理中である。研究担当者藤本が平成6年3月末を以て本務校を退官することになるので、拓本資料はすべて、美術工芸資料館に寄贈し、分担者竹内のもとで整理保管することとした。その他の資料は、分担者日向、西田らの研究室に引き継ぎ、保管することになった。分担者西田は調査成果の一部を研究報告に導入しており、担当者も発表準備を進めているところである。ヴィラール・ド・オヌクール協会からは引き続き、雑誌記事のための照会が来ており、別途関係者からも藤本研究についての書信が寄せられるなど、今後の国際的研究へ進展が見込まれるに至ったことも一方の大きな成果であるといえよう。今回の現地調査により、ヴィラール・ド・オヌクールがハンガリーに赴いて旅を重ねた事績に、ある程度の裏づけを得た。また画帖に盛られたスケッチに類似の画題を多数見出し得たことや、画帖におけるローマ尺・カロリング尺の尺度用法について、われわれの仮説を実証し得たかと見られることを以て大きな成果と見たい。
著者
門 勇一 島崎 仁司 品川 満
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

人体近傍微弱電界通信の応用分野の拡大を狙って、カード型の装着型トランシーバと環境埋め込み型トランシーバを試作した。ユースケースに即して、両トランシーバ間の通信品質を評価するシステムを構築して、パケット誤り率を評価した。また、EO-OEプローブを開発して、実人体上や人体等価ファントム上での信号伝搬損失を正確に測定すると共に、電磁界シミュレーションによりその妥当性を確認した。ユニバーサルインターフェイスとして社会実装するための課題に対して、電界通信システムの等価回路モデル化に取り組み、通信品質改善や信号干渉抑制に対する指針を明らかにした。