- 著者
-
澤田 祐一
- 出版者
- 京都工芸繊維大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1997
平成9年度中に,制御スピーカーを取り付けた1次元ダクト内の音圧に関する数学モデルをすでに確立し,さらにダクト開口部に達する進行波成分を最小にする有限次元フィードバック制御器を確率システム理論を用いて構築した.平成10年度は前年の成果に基づいて数値シミュレーションおよび実験を実施し,その動作特性,有効性の検証を行った.数値シミュレーションで取り扱うダクトは実験装置として使用する矩形ダクトと同サイズのものを想定し,全長2[m]のダクトに口径12[cm]の制御用スピーカーを取り付けた.また,制御スピーカーをエンクロージャーで覆いその内部の音圧を計測することで,スピーカーのバッフルボードの変位をより正確に推定できるようにした.数値シミュレーションを実施した結果,騒音源(送風ファン)からの音波(進行波)がスピーカーの設置位置を通過すると同時にその振幅は急速に減少していることが確認され,提案した制御系がダクト内の進行波成分を効果的に押さえることが示された.その性能はおよそ100[Hz]から1000[Hz]までの進行波成分を最大20[dB]減少させることができ,本研究で提案した制御系の目標を十分に満足するものであった.ダクト内の音圧分布という観点から見た場合,騒音源である送風ファンからスピーカーまでの部分では制御の有無に関わらす音圧の振幅にほとんど変化は見られないが,制御スピーカーから開口部に到る部分では音圧のみならず音圧勾配も十分に抑制できていることが明らかとなった.これは,ダクト開口部から放射する音が減少することを意味する.実験は数値シミュレーションの場合と同様のアクリル製矩形ダクトとDSP(Digital Signal Processor)を用いた制御装置により行った.シミュレーションでは1000[Hz]付近まで効果的に制御できることを確認したが,実験ではおよそ120[Hz]から500[Hz]の範囲でダクト開口部付近の音圧をおよそ10[dB]低下させることができ,実験においても1次元ダクトと見なせる周波数範囲で制御系が良好に動作することが確かめられた.