著者
矢田 順三 堀 正倫
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

国内外の実地調査および文献調査に基づいた考察により、持続可能な循環型社会において、パッシブな自然エネルギー利用伝統的技術が主要な役割を果たすと論じた。今日の科学技術は華々しい成果をもたらしている反面、環境破壊というマイナスの部分があるのに対して、伝統的技術は環境調和型である。科学技術の進歩した現在でも、エネルギーの効率については厳然とした限界がある。現代社会は、経済に支配されており、経済的に成立たないために、樹木を育てるべき森林や食料を生産すべき田園が放置される場合がある。持続可能な地球、循環型社会を目標とするときには、自然エネルギーの内容を、いわゆる自然エネルギーに限定せず、これらに森林や食料を含む植物(場合によっては動物)を加えたものを、広義の自然エネルギーとし、これらすべてを一体として取扱うことの妥当性を論じた。歴史的または伝統的家屋における自然エネルギー利用状況を再現するために、本研究で開発したシミュレーション用プログラムを、一部屋だけの最も単純な構造の家屋モデル(立方体型、三角屋根型、竪穴式型)に適用し、標準的な年間外気条件のもとで、1時間毎の室内温度および湿度の計算を冬季及び夏季について行い、屋根および壁の材質(萱、木材、土、岩石)が、これらに及ぼす影響を調べた。その結果、萱を用いた場合が、最も室内温度変動は小さく且つ保温性が良いこと、木材および土壁(漆喰)を用いた場合、室内湿度を外気湿度より低く保つことができること、縦穴式住居の場合、湿度が高いという問題はあるものの、冬は暖かく、夏は涼しいという室内環境が実現されることが示された。循環型社会に使用される作動流体として、自然作動流体(自然冷媒)の熱物性をまとめた。
著者
大住 晃 大瀬 長門 澤田 祐一 井嶋 博
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,超高層ビルの不規則外乱(地震動や風など)による振動の抑制に対するアクティブ制御問題について,高層ビルに加えた入力とその出力である振動データに基づいてアクティブ制御方式を確立することを目的としている.制御対象となる構造物のダイナミクスのモデリングは本研究代表者がすでに確立している連続時間部分空間システム同定法を用い,また制御法としては,すでに確立している地震動と風外乱それぞれを分離して制御する機能分担(Functionally Assigned Control)方式を用いた.縮尺1/200の実験模型を製作し,実験を実施してモデリングと制御が理論どおりに行なわれていることを確認した.(i)平成16年度:入出力データを用いてモデリングを行う部分空間システム同定アルゴリズムの構築と,アクティブ制御方式(FAC制御方式)のコンピュータアルゴリズムの確立およびコンピュータシミュレーションによる確認を行なった.またスケールモデルとして地上200m,50階建て,一辺が40mの高層ビルを想定し,その1/200の模型を製作し実験を実施した.(ii)平成17年度:カルマンゲインを含めたシステムの部分空間同定アルゴリズムを構築し,初年度に製作した実験モデルを用いて制御実験を実施した.(iii)平成18年度:FAC制御方式を予測制御アルゴリズムに組み込み,構造物の縮尺モデルでは偏心によるねじりを考慮し,x, y-2軸のアクチュエータにより制御が可能であることを確認した.
著者
西田 雅嗣
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.実測データの図面化と調査データ整理:補足調査の結果も含めて概ね手許にある実測データの図化は完了した。完成した実測平面図の総覧の結果、多くのものが従来流布している図面に見られる以上の歪みを示し、本研究における図化の意義が認められた。実測数値データについても整理を行い、数値データの比較検討が行えるようになった。2.調査データのデータベース化:完全なデータベース化には至らなかったが利用可能な整理は行った。35mmポジスライドの大量の画像データは、順次デジタル化した。作成済み実測平面図のデジタル化は終了した。3.現地補足踏査:平成13年度はスペイン、ポルトガル、イタリアの初期ロマネスク、末期ロマネスクの、平成14年度は、ル・トロネとセナンクのシトー会修道院について実測を含む補足的な現地調査を行った。正確な実測平面図、数値データが得られ、設計法と霊性表現の両義的プロポーションのあり方の仮説が確認された。4.プロポーション分析:ロマネスクの設計法としての幾何図形の使用の検証は、遺構から確実に言うのは難しいことが判ったが、蓋然性としては否定できないことも判明した。寸法を通じて表れる数、尺数が、当時の尺度単位の扱い方さえ間違えなければ、当時の心性として極めて重要な数象徴を介して、ロマネスク建築の多くを語ることが判った。設計法としての技術的意味の数と、数象徴を伴った霊性の表象との両義的プロポーションであり、寸法を様々なレベルでの建築的表象として捕らえ、当時の建築の意味を理解すると言う、今後の研究の新たな展望につながる視座を得た。5.フランスの大学でのセミナーに於ける口頭発表も含め、比較的多くの研究成果の公表の機会を活用できたが、発表論稿の大半は、寸法を通じて表れるプロポーションの両義的姿の重要性を明らかにすることに関係する論稿となった。
著者
西川 幸宏
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

物体内部の構造を三次元で観察できるX線CTは、空間分解能の向上とともに、産業分野での注目を集めており、急速に普及・発達しつつある。さらなる空間分解能の向上のためには、3つの要素技術が考えられる。点光源として用いるX線源の微細化、ベアリングを用いない試料回転機構、X線に対するコントラストの向上である。本研究では後者2つについて検討を行った。ベアリングレスのモーターシステムとして、連続回転するスピンドルモーターを使用し、高速カメラを組み合わせることで、試料の回転を止めずにCT撮影することに成功した。高コントラスト化については、検出器のシンチレータ-を薄くすることで、高エネルギーなX線に対する感度を大きく低下させ、低エネルギーのX線に対する感度を相対的に向上させた。これにより、高分子材料の種類の違いを区別できるコントラスト性能を達成し、高分子材料におけるX線CTの利用の可能性を大きく切り開いた。
著者
金折 賢二
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

核酸アプタマーとは、特異な高次構造をもつRNAやDNAオリゴマーのことであり、様々な機能を持つことが知られている。この核酸アプタマーの代表的な構造モチーフにテロメアDNAオリゴマーが形成する四重鎖構造がある。そのテロメアDNAオリゴマーが形成する四重鎖は、グアノシン(G)またはシチジン(C)残基に富んでおり、それぞれ、Gカルテット、i-motifと呼ばれる。本研究の目的は、このGカルテットやi-motifの構造と安定性を評価し、四重鎖を構造モチーフとする核酸アプタマーの分子設計指針を確立することであった。当該研究期間に得られた知見は以下の通りである。まず、核酸アプタマーへホスホロチオエート基を導入する研究をおこなった。HIVウィルスの増殖を抑制することが知られているCの連続した配列が形成するi-motif構造へホスホロチオエート基を導入し、その構造と安定性を円二色性分光法によって評価し、ホスホロチオエート基の立体異性によってi-motifの融解温度は変化することを見いだした。核磁気共鳴法で構造解析した結果、i-motifを形成するC残基の糖のコンフォメーションがall-Sp体の糖のコンフォメーションがC3'-endoから変化していることを見出し、Cアプタマーの構造と安定性の相関が得られた。また、テロメアーゼの標的配列であり、核酸アプタマーのリード配列であるd(TTTTGGGG)nを合成・精製し、相補鎖を含めたGカルテットの構造と安定性について核磁気共鳴分光法を用いて研究を進めた。その精密な構造について多次元NMR法を用いて解析した結果、従来のトポロジーとは異なるGカルテット構造が形成することを見出し、テロメアの構造と機能に関する重要な知見が得られた。
著者
PEZZOTTI Giuseppe (2009) PEZZOTT G (2008) PORPORATI A.Alan PORPORATI A. Alan
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

半導体材料における応力/歪みに関するサブミクロンスケールの定量的解析を海外の様々な研究グループと協力体制のもと研究を実施した。この研究では、応力/歪み印可に伴い、スペクトルバンドの波数変化が生じる現象に基づく、ピエゾ分光法を利用して応力/歪み解析を高空間分解で行った。異なるドーピングレベルを持つ既知の系列である、一連のIII-V族半導体(GaAs,AlGaAs等)の試料におけるカソードルミネッセンスによるバンドギャップ発光は、厳密に分析される必要に応え、発光バンドの形態論におけるキャリア濃度の寄与を研究した。発光スペクトルの特性(半値幅、ピーク位置、強度等)からキャリア濃度及び歪みのそれぞれの測定を行うことに成功した。AlGaAs及びInGaP結晶における応力とカソードルミネッセンス発光を繋ぐケース(歪みポテンシャル)を正確に測定し、発光における歪みの影響を及ぼす電子ディバイスを分析する道を開いた。一方、GaN物質に同じような測定する目的でまず吸収の影響を解明する必要があり、カソードルミネッセンス分光にGaNの独特な吸収現象を定める式を発表した。
著者
日向 進 松田 剛佐
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「連」と呼ばれる筏の規格が河川の流域によってどのように定められたかに注目して、京都周辺の丹波材、紀州の吉野材・熊野材、鳥取藩の智頭材について、各川筋における「連」の規格と変遷について史料調査を行った。丹波材14尺、吉野材は1間を7尺5寸、熊野材は13尺と15尺、智頭材は1間を7尺としていた。このような相違がみられることについては、各河川の浚渫状況や中継する材木市場などの相違が条件として考えられた。
著者
森田 孝夫 佐々木 厚司
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は,阪神・淡路大震災においてさまざまな生活支援施設の地震対応を調査し,実時間で最適な地域施設の対応システムを開発することである。研究実績をまとめると次の通りである。1, 地域施設の対応システム開発(医療福祉系):医療福祉系施設において,日常活動の非常時展開,および地域活動の拠点的展開に対応するために,共用スペース規模の量的充実に対する建築計画的配慮と,異分野や異属性のサービスのマネージメントの必要性が明らかになった。2, 地域施設の対応システム開発(消防・救助系):甚大な被害を受けた地区では,地域施設・設備も被害を受ける可能性が高いために,人間集団の協力に頼る率が高くなる。焼失型では,芦屋市や神戸市長田区真野地区のような民間消防団や企業消防団といった集団力を発揮させるソフト計画が必要となる。ただし,前提条件は局地的な被害実態と広域的な被害実態の両方の迅速な把握である。3, 地域施設の対応システム開発(商業系):コンビニエンスストアが早期に稼働する実態が判明したが,その他の施設の対応は期待できない。むしろ被害者自身が被害が小さかった地域の商業施設へ出かけたり,他府県に住む親類などによる個人的な運搬が非常に活発に行われた。問題はそのような行動ができない災害弱者に対して支給する緊急生活支援物資の調達・配送ネットワークの確立が必要である。
著者
澤田 祐一
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

平成9年度中に,制御スピーカーを取り付けた1次元ダクト内の音圧に関する数学モデルをすでに確立し,さらにダクト開口部に達する進行波成分を最小にする有限次元フィードバック制御器を確率システム理論を用いて構築した.平成10年度は前年の成果に基づいて数値シミュレーションおよび実験を実施し,その動作特性,有効性の検証を行った.数値シミュレーションで取り扱うダクトは実験装置として使用する矩形ダクトと同サイズのものを想定し,全長2[m]のダクトに口径12[cm]の制御用スピーカーを取り付けた.また,制御スピーカーをエンクロージャーで覆いその内部の音圧を計測することで,スピーカーのバッフルボードの変位をより正確に推定できるようにした.数値シミュレーションを実施した結果,騒音源(送風ファン)からの音波(進行波)がスピーカーの設置位置を通過すると同時にその振幅は急速に減少していることが確認され,提案した制御系がダクト内の進行波成分を効果的に押さえることが示された.その性能はおよそ100[Hz]から1000[Hz]までの進行波成分を最大20[dB]減少させることができ,本研究で提案した制御系の目標を十分に満足するものであった.ダクト内の音圧分布という観点から見た場合,騒音源である送風ファンからスピーカーまでの部分では制御の有無に関わらす音圧の振幅にほとんど変化は見られないが,制御スピーカーから開口部に到る部分では音圧のみならず音圧勾配も十分に抑制できていることが明らかとなった.これは,ダクト開口部から放射する音が減少することを意味する.実験は数値シミュレーションの場合と同様のアクリル製矩形ダクトとDSP(Digital Signal Processor)を用いた制御装置により行った.シミュレーションでは1000[Hz]付近まで効果的に制御できることを確認したが,実験ではおよそ120[Hz]から500[Hz]の範囲でダクト開口部付近の音圧をおよそ10[dB]低下させることができ,実験においても1次元ダクトと見なせる周波数範囲で制御系が良好に動作することが確かめられた.
著者
山田 和志
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究代表者は、金ナノ粒子をガラス基板上に固定化し、そこへポリマーコーティングを行いナノ加工ターゲット基板を作製した。その基板に対して波長532 nmの可視光レーザーを大気中下で照射することにより、レーザーアブレーションを誘起させ、ポリマーコーティング膜およびガラス基板上へ世界最小のナノ加工(加工サイズ10~30 nm)を行うことに成功した。また、金ナノ粒子のサイズまたはコーティング薄膜の厚みや種類等を変えることにより、ナノ加工サイズや形状を制御できることを見いだした。
著者
松田 剛佐
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

新出史料『白鳥方歴代記』(以下『歴代記』)を発見することができた。この史料の価値比定を行ったのち、同史料を手掛かりとすることで、近世の白鳥御材木場の活動状況を軸にして、建築材料としての木材に着目して研究を行った。『歴代記』の内容は、慶長五年から明治八年(1875)にわたる、白鳥御材木場の事跡について書かれたもので、御材木奉行の構成員の変遷、業務の詳細などが年次ごとに記されている。明治人年以降にそれ以前の日次記のような記録史料を手がかりに纏めたか、あるいは写して成ったものと思われる。白鳥御材木場の事柄のみならず、幕府・藩の徳川家関係の記録が、時には朱書きで、詳細に記されているのも特徴的である。筆者や年代を示すものは記されていないが、現在の研究成果から確認できる事項内容については齟齬が無いなどの検証を、類例史料から検討することで、『歴代記』が史料的に信頼のおけるものであることを明らかにした。また、この史料を用いることで、設立時から幕末にかけての「白鳥御材木場」の構成について、既往研究を補完しうる詳細な様相を明らかに出来た。さらに、近世初期の木曽材の木材需給について、江戸城御台所、出雲大社正殿の寛文七年遷宮用材といった、具体的な建築名がわかるものに関して、研究することが出来た。江戸城御台所用材は、きわめて長大なケヤキ材が必要とされたこと、出雲大社正殿遷宮用材などは、一度江戸の甲良家へ送り検分したことなどを明らかにすることが出来、木曽材の調達状況の一部を知ることが出来た。また、御材木奉行が兼任から専任に移行する課程も詳しく検討する手掛かりを得ることが出来た。これらの結果、白鳥御材木場の構成、および、具体的な建築用材の動きに関して、既往研究を補強しうる成果を得ることが出来たとともに、木曽材の調達状況が公需優先であったことを再検証することができた。
著者
山本 景子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

空間芸術の創作活動における非言語情報を伝達するインタフェースの実現を目的として,ドローイング時の動作情報からユーザ状態を推定するシステムと,ミラーインタフェースを応用した熟練者動作中の非言語情報を提示するシステムをそれぞれ実装した.その結果,前者のシステムでは,机上振動音よりユーザの心理的難易度および心理的負担が推定できることが確認されたが,後者のシステムの有効性は再実験にて評価する必要があることが確認された.
著者
笠原 一人
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

明治期に5回にわたって開催された内国勧業博覧会や大正期と昭和期のいくつかの大規模な博覧会を事例として資料を収集し、博覧会が都市の観光化に及ぼした事例を調査した。その結果、1895年に京都で開催された第4回内国勧業博覧会と平安遷都千百年紀念祭の開催時に都市の観光化が進められ、またその後の博覧会でも同様の手法が用いられたことが明らかになった。その手法は多彩で、道路整備や都市施設整備も見られるが、鉄道のネットワークの活用や観光案内書や錦絵、広告など、広義のメディアを駆使したイメージ戦略が目立つものであった。
著者
朝田 衞
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

有理数体に1のべき根をすべて添加して得られる代数体をKとする。 ガロア群が可解でないKの不分岐ガロア拡大についての以前の結果を強めることができた。結果は次の通りである。pを5以上の素数とするとき、Kの不分岐ガロア拡大体でそのガロア群がSL2(Zp) の可算個の直積と同型となるものが存在する。
著者
一田 昌利 古澤 壽治
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1.3年にわたって絹糸虫類(天蚕)の無菌人工飼料育法の検討を行った。蚕の人工飼料を基本とし、飼料樹葉乾燥粉末の割合を40%に引上げ、無機塩混合物についてはウエッソン塩混合物から不必要な成分を排除して、極力簡単な組成とした。ビタミンB混合物についても改変を行った結果、2眠まで到達する個体が認められたが、糖を含まない組成では3齢に達する個体はなかった。そこで、人工飼料に添加する糖の種類(グルコース、シュークロースおよび市販の精製糖)および添加割合の検討を行った結果、無添加では、虫体は大きくなるものの5%が3齢になっただけであったのに対し、いずれの糖類を添加した区においても3齢到達率が顕著に高くなった。特に、シュークロース10%添加区では3齢率が90%を越え、発育スピードも早くなったことから、人工飼料に添加する糖類としてはシュークロースが良く、添加量は10%が実用的濃度と考えられた。2.上記人工飼料による全齢人工飼料育および、1-3齢人工飼料育とクヌギおよびシラカシによる4-6齢飼育を組み合わせ、ヤママユガ(天蚕)の周年飼育を試みた結果、年間を通しての飼育が可能であることが明かとなったが、このことは、絹糸虫類の安定的飼育を考える上で意義は大きい。3.絹糸虫類卵の過冷却点を比較した結果、温度の高いものから3つのグループ(1)ヤママユガ、(2)クスサンおよびウスタビガ、(3)ヒメヤママユガに分けられた。また、2.5°C以下に卵を保護することでヤママユガの場合、産卵1年後においても80%を越える孵化率が得られた。このことは、イミダゾール化合物による休眠打破技術と組み合わせることで、年間を通しての随時孵化の可能性を示唆している。
著者
政宗 貞男 比村 治彦 三瓶 明希夫
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

球状RFPではヘリカル配位に遷移する確率が高いことを明らかにした.このヘリカルRFP配位で磁気計測と軟X線イメージング計測を実施し,高温//高密度のヘリカルコアの存在と電子エネルギー輸送障壁に対応する放射強度分布の勾配形成を確認した.さらにm/n=1/2キンク不安定性(RWM)のフィードバック安定化により,放電時間を50%以上伸長させた.トムソン散乱電子温度測定により,Ip~120kAで~200eV,電子ベータ値が10%程度のRFPプラズマ生成を確認した.電子系に関してRELAXの目標値を達成した.
著者
岩崎 仁 萩原 博光 坂東 忠司 安田 忠典 中瀬 喜陽 土永 浩史 土永 知子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

驚異的な「博物学的知識」が南方熊楠の第一の特徴であるが、一方で彼は日本の先駆的自然保護活動家として評価されている。本研究によって、彼の自然保護活動は、熊野地方を対象とした緻密な自然生態系調査、特に1900~1904 年の那智における植物標本採集を中心としたフィールド調査を絶対的な基礎としていることが明らかとなった。さらに、この時期の植物・生態学的な研究活動が、後に形成される熊楠の思考体系全体、民俗学や宗教学的側面にまで深く影響していることがわかった。
著者
柴山 潔 平田 博章
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本研究では,・従来のプロセッサから見たコンピュータ間通信性能がローカルメモリへのアクセス性能とほぼ同等になる(メモリアクセス性能と通信性能が拮抗する);・ネットワークのトポロジやその中での情報処理主体の地理的位置に広域的な通信性能が影響されない;の2つの仮定のもとに,地球規模のコンピュータネットワークに超多数個散在する情報処理主体要素(これを本研究では,「プロセッサによる処理だけではなくメモリアクセスや通信までを含めた情報処理主体」という意味で「情報体」と呼ぶ)のハードウェア/ソフトウェア・トレードオフについて考察した.具体的には,次の2つの知見を研究成果として得た.(a)プロセッサから見たメモリアクセスと他のコンピュータ/プロセッサとの通信とを論理的に等価に扱い得る情報処理主体要素(情報体)の処理モデルの構築;(b)共有メモリによる通信とメッセージ交換による通信との物理的な区別が無くなることに伴う情報体のアーキテクチャ(ハードウェア/ソフトウェア・トレードオフ)の設計;
著者
政宗 貞男 押山 宏 飯田 素身
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

絶縁ギャップを有する金属放電管の内面を利用した新しい静電的ヘリシティー入射法の可能性を探るために、STE-2装置においてRFPおよびULQプラズマを用いて基礎実験を行い、以下の結果を得た。結果(3)は、この方法の有効性を示唆している。(1)非円形断面放電管内に生成されたRFP(セパラトリクスはない)において、周辺部から電極を挿入してヘリシティー入射を試みた。放電管の形状などから電極は8mmφの円筒構造、入射位置は同一ポロイダル断面内に制限されている。電極間電圧を400Vまで印加し、電極間電流として100A程度を得ている。最大電流密度はRFP放電の平均トロイダル電流密度と同程度である。電極近傍ではヘリシティー入射に伴うトロイダル磁束の増加(5%程度)が観測された。この磁束増加は入射ヘリシティーの極性によらない。従って、入射ヘリシティーの極性に応じてプラズマの応答が異なるのか、あるいは局所的なジュール加熱によるβ値の増加が重要なのか、のいずれかである。周辺トロイダル磁場およびポロイダル磁場にはヘリシティー入射の影響は観測されなかった。(2)トロイダル磁場に空間的な変調をかけて2分割放電管を共通に貫く磁束をつくり、これがRFP放電におよぼす影響を調べた。変調磁場が元のトロイダルバイアス磁場と逆向きの場合、RFP放電に悪影響を与える変調レベルは同極性の場合より低い。この原因の解明を進めているが、RFPの異常放電抵抗の機構と関連する可能性がある。(3)低電流ULQ放電において、本研究で提案している方法を基づいてヘリシティー入射を行った。放電管ギャップ近傍の局所的な測定では最大20%程度のトロイダル電流の増加が観測された。この基礎実験に続いてギャップ部分に局所的シェルを取り付けて誤差磁場を減らし、特性が改善されたRFPプラズマにおいて同様の実験を進めている。
著者
山田 正良 龍見 雅美 福澤 理行
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

シリコンやGaAsなどの大口径半導体結晶塊を対象に、結晶引上げした円筒状の塊のまま、すなわち、結晶塊を何ら加工しない状態で、残留歪みの三次元分布を非破壊評価する新しい方法を開発し、その実用化を図ることを目的とした。このため、円筒状半導体結晶塊に直線偏光した赤外光を、円筒r軸ならびにz軸に沿って入射し、その透過光の偏光状態を測定する三次元赤外光弾性CT装置を試作し、LEC法で成長したLEC-GaAs単結晶塊、FZ法で成長した無転位FZ-Si単結晶塊、CZ法で成長したCZ-Si単結晶塊について、赤外光弾性測定を試み、残留歪みの評価を行った。LEC-GaAs単結晶塊では、結晶引上げしたままの円筒表面には大小の凹凸があるため赤外光弾性測定は困難であった。しかし、表面が鏡面でなくても円筒研削で荒れたままの状態でも赤外光弾性測定ができる新しい方法を考案した。これによって、LEC-GaAs単結晶塊中の残留歪みの擬似三次元分布評価ができることを明らかにした。無転位FZ-Si単結晶塊では、結晶引上げしたままの状態で赤外光弾性測定が可能であった。無転位FZ-Si単結晶では残留歪みが極めて少ないため、光弾性効果による複屈折よりも光学異方性による複屈折が支配的であることが明らかとなった。CZ-Si単結晶塊でも、光学異方性による複屈折が支配的であったが、赤外光を異方性がない[100]方位から入射することによって、残留歪みに起因する、光弾性効果による複屈折のみが測定可能であることを示した。これにより、本研究で開発した赤外光弾性法は、大口径シリコン単結晶の有転位化を調査するのに極めて有用であることが明らかとなった。