著者
大八木 敏弘 堀内 久子 藤本 蓮風
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.507-512, 2001-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
16

鍼灸治療における清熱解毒の鍼法は、一般的には曲池、委中、大椎、合谷、内庭、手足の井穴などの刺鍼又は刺絡などで対応する。北辰会の清熱解毒に対する刺鍼法は、藤本北辰会代表が『外台秘要方』の黄連解毒湯、『素問』刺熱篇などからヒントを得て考案したものである。その配穴は、霊台、両督兪と脊中、両脾兪に横刺をする。この組み合わせ配穴は、気分の種々の熱性疾患に対して清熱解毒作用が顕著に得られる。このことを11症例から検証し、これらの異病同治の症例から清熱解毒刺鍼法の治効範囲を確認した。
著者
尾崎 昭弘 高田 外司 浦山 久嗣 熊本 賢三 榎原 智美 坂口 俊二
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.727-741, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
23

背部の経穴位置決定の基準とされ、歴史的にも論議が繰り返されてきた「大椎」の経穴位置に焦点を絞りシンポジウムを行った。シンポジストからは、 (1) 経穴の位置は、時代や文化と共に治療対象・治療目的・治療用具によって変化していることから、「大椎」の位置が第2頸椎棘突起上部、第6・7頸椎棘突起間、第7頸椎・第1胸椎棘突起間と変遷してきたのも例外ではないとする見解、 (2) 背部取穴法の基準点である「大椎」の位置が異なると、臨床的価値が無意味なものになるので第6・7頸椎棘突起間に統一すべきであるとする見解、 (3) 頸椎のなかで体表臨床学的に重要なのは第6頸椎であり、運動性と脊椎の区分という点では第7頸椎であるが、鍼灸の発達してきた過程を考えると「大椎」の位置は臨床的効果から決めるのが合理的であるとする見解、 (4) 第7頸椎・第1胸椎棘突起間を国際標準化案として作成しているが、この位置については中国・韓国共に異論がないので現行のままで良いとする見解、が寄せられた。本シンポジウムでは、統一見解をみるには至らなかったが、「大椎」は臨床的にも重要な意義を有しており、今後に検討が必要である。
著者
関 行道
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.314-322, 1987-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

針治療は, 東洋医学的には生体のバランス調整をもたらすように用いなければならない。私は指向性を与えると考えられている間中式イオン誘導コード (I. P) を用いて生体三陰三陽の各交会穴 (無名穴〔間中〕, 三陰交, 三陽絡, 陽交の四穴) に応用して臨床的効果より全体調整の確証を得てここに太極療法となることを確信するにいたった。私の確立したパターンは従来の如何なる太極療法よりも優れており, 確実にその効果を各個々の80~100%にもたらし得ることもわかった。この方法を基盤として応用すると従来の阿是穴的治療もその効果を倍加してくれることも実証済である。生体の虚実に拘らず応用出来るので, 諸氏の針治力を倍加してくれるものと思う。追試をお願いする次第である。
著者
韓 晶岩
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.592-603, 2004-08-01 (Released:2011-03-18)

微小循環とは細動脈、毛細血管、細動脈を含めた血管床であり、全身血管系の90%以上を占め、体内の物質交換と新陳代謝を営む重要な場である。微小循環障害は、血管径と血行速度、活性酸素の過剰産生、血管壁への白血球と血小板の膠着、血管透過性の方進、血管外の肥満細胞の脱穎粒などの一連の多彩な変化を含む。微小循環障害は心脳血管障害のみならず、糖尿病の血管合併症、肝腎機能障害、婦人科疾患にも関連する。中医学では、微小循環障害に対して漢方と鍼灸を用いて治療し、良い臨床効果が得られているが、そのメカニズムに関してはまだわからないところが多い。そこで、著者は1991年より、慶鷹義塾大学医学部消化器内科にて、倒立型生物顕微鏡に接続したCCDカメラ、蛍光カメラなどの微小循環観察システムを用い、FITC標識アルブミンによる血管透過性の観察、DHR蛍光色素強度変化による局部活性酸素の産生部位と産生動態の観察などの方法により、種々の原因による微小循環障害動態の変化を経時的に観察し、さらに漢方、鍼による予防と治療効果、そのメカニズムについて検討したので、その成績の一部を紹介する。
著者
吉元 授 田口 玲奈 今井 賢治 北小路 博司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.406-415, 2009 (Released:2010-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

【目的】三陰交穴への円皮鍼治療が月経痛に及ぼす影響について検討した。 また、治療効果に影響を及ぼす背景因子についても検討を行った。【方法】対象は月経痛を有する女子大学生51名とした。 研究期間は9ヶ月間とし、無治療期間(a)、治療期間、無治療期間(b) の各々3ヶ月間を設定した。治療効果は月経痛重症度分類と服薬錠数の変化、治療期間終了時の痛み評価 (軽減、不変、増悪) で判定した。 さらに、治療効果に影響を及ぼす背景因子については神経症傾向(Cornel medical index: CMI)及び月経随伴症状 (Menstrual distress questionnaire: MDQ) 等との関連性を調査した。【考察】本治療は月経痛の緩和に有効であると考えられたが、その効果は精神的な要因や月経痛以外の痛みに影響されやすい可能性が示唆された。
著者
松元 丈明
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
日本鍼灸治療学会誌 (ISSN:05461367)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.86-104, 1981-03-15 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

At the 28th Japan Acupuncture and Moxibustion Society Congress I presented a research report on the above theme. With the cooperation of the prefectural presidents of the Japan Acupuncture and Moxibustion Association nationwide, 19 acupuncture needle manufacturing companies were listed and 50 stainless steel 1.6 TSUN, No. 3 needles were collected from each manufacturer and examined. The results of that study showed imperfect needle tips to average 37.7% and imperfect needle bodies to average 52%.For this report, last Oct. the needle manufacturers were forewared that early this year a study of needle conditions would be repeated. In Mar. of this year, in the same manner stainless steel 1.6 TSUN, No. 3 needles, 50 each were collected and examined. These results showed imperfect needle tips to average 37.6% and imperfect bodies, 93.9%. From these results it can be said that quality control of the manufactured product is insufficient. I strongly feel that more consideration is necessary in the selection of needle materials.
著者
渡邊 健 鮎澤 聡
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.21-31, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
5

【目的】坐骨神経鍼通電療法とは、殿部あるいは下肢において鍼を経皮的に刺入して坐骨神経に電気刺激を行う方法である。一定の治療効果が報告されているが、体表の指標を目安にブラインド下に鍼を刺入するため、血管等組織損傷の可能性が常に存在する。これまでに、安全性を目的とし、かつ生体を用いた殿部における鍼刺入路の画像解剖学的検討はなされていない。本研究では、殿部の生体画像を用いて、殿部刺鍼点およびその鍼刺入路周囲部における解剖学的構造物(骨盤腔内臓器・血管・骨格筋)の解析を行い、より安全性の高い刺鍼部位について検討を行った。 【対象と方法】殿部における代表的な刺鍼点3点(a:傍仙骨部・b:梨状筋下孔部・c:坐骨結節-大転子間部)を取り上げ、各鍼刺入路周囲部をそれぞれA、B、Cゾーンとし、各ゾーンに存在する構造物について既存のCT画像(男5症例・女7症例)を用いて解析を行い、安全性について検討した。 【結果】内腸骨動脈から分枝する上殿動脈・下殿動脈の分枝パターンと走行は多様ではあるが、Aの頭側には太い上殿動脈、AおよびBには太い下殿動脈が存在することが確認された。坐骨神経内側に伴行する下殿動脈はCにも存在するが、血管径は末梢に向かうほど細くなるため、太い動脈はほとんど確認できなかった。また、AおよびBの腹側では全例で骨盤腔、約半例で腸管等臓器への接触が確認された。Cでは深部であっても臓器そのものが存在していないため、臓器損傷リスクは皆無であり、刺入路の先は筋または骨のみであった。 【結論】A・Bでは鍼先が深部・内側に向くと骨盤腔内臓器損傷の可能性がある。Aでは上殿動脈、A・B・Cでは下殿動脈への血管損傷の可能性はあるが、Cでは血管径が細いため刺鍼に伴う出血のリスクは低いと考えられる。坐骨結節-大腿骨間(C)における刺鍼が最も安全性が高いことが示唆された。
著者
重松 俊朗 田山 文隆
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.320-323, 1991-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

神経伝達物質を使用するO. R. T法をもちいて督脈, 任脈のイメージングを施行した。督脈は下垂体 (ガバ), 任脈は下垂体 (アドレナリン) に反応した。督脈, 任脈の中枢は視床下核で, 大脳はブロードマン第46野であった。頭部における督脈, 任脈の交会穴は百会穴で, 陰部では男性は陰茎の後根部, 女子では陰核の後根部で交会していた。百会穴は外周円は下垂体に, 内周円は中心灰白質に反応し, 残りの内部の前半分が黒質に反応し, 後半分が肝臓に反応した。膀胱経は百会穴で交叉していないが, 後方 (絡却穴付近) より膀胱 (ガバ) 経の支脈が入っていた。百会穴より中心灰白質が斜前方へ走行し, 膀胱経と交叉していた。海馬の反応点は脳戸穴のすぐ下, すなわち外後頭隆起の下で, 周円は下垂体 (ガバ) で, 内部の上半分が延髄に反応し, 下半分が海馬に反応する。扁桃核の反応点は水溝 (人中) 穴よりやや上方の鼻下点で経穴の周囲は下垂体 (アドレナリン) で内部の上半分に扁桃核が反応し, 下半分は洞結節 (心包経) に反応する。
著者
黒野 保三 平松 由江 松本 美富士 渡 仲三
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.12-17, 1983-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19

健康人9名における鍼治療の免疫反応への影響のうち, in vitro における各種リンパ球機能の変化について検討を行なった。脈診法により2穴を選穴し通電刺激を行ない, その前後におけるリンパ球機能について末梢血リンパ球を用いて検討した。対照は大腿四頭筋中央部より2穴を選穴し同様の結果とした。鍼刺激直後が最大で240分後も上昇・増強を認めた。T-リンパ球の非特異的刺激物質である, PHA, ConAおよびB-リンパ球刺激物質としてのPWMとNK細胞活性に有意な上昇を認めた。対照については変化が認められなかった。経穴への鍼刺激によってヒトのリンパ球機能に変動が認められた。従って鍼治療が各種疾患に有効であることは免疫反応系に関与していることを示唆する。
著者
福野 梓 鶴 浩幸 生島 美紀 山田 潤
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.628-635, 2006-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
15

【目的】置鍼刺激は仮性近視や眼精疲労の改善に有用であり、毛様体筋緊張低下、縮瞳、脈絡膜血流増加などの作用を有する。今回、置鍼刺激が網膜感度閾値に及ぼす影響について検討した。【方法】屈折異常以外に眼科的疾患を有しない健康成人11例11眼 (平均年齢27.8歳±7.1、平均±標準偏差) を対象とした。鍼刺激は仰臥位にて両側の合谷、太陽、上晴明穴に10分間の置鍼術を行った。鍼刺激前後における網膜感度閾値をハンフリー視野計のBlue on Yellow視野プログラムを用いて測定し、感度低下の際に指標となるMean deviation (MD) 値と中心窩閾値とについて比較検討した。また、視野測定時間の変化を評価した。同一症例における10分間の安静仰臥位を対照とし同検討を行った。【結果】鍼刺激前後、安静前後におけるMD値や中心窩閾値に変化はなく、両群間にも有意な差は検出できなかった。しかし、安静仰臥位後の視野測定時間は有意に延長したが (14.9±20.1秒, p<0.05) 、鍼刺激後では有意な変化がみられず、逆に3.6±56.9秒短縮した。測定時間が5秒以上短縮した被験者は鍼刺激群に有意に多かった (p<0.05) 。【考察】健康成人に対する鍼刺激ではハンフリー視野計で検出できる程度の網膜感度閾値変化はみられなかった。測定時間延長には感度測定時のばらつきに対する閾値再測定や固視不良が密接に関連しており、鍼刺激による網膜感度の維持、眼精疲労の減少、集中力の持続などが示唆された。
著者
沢崎 健太 木下 藤寿 平野 修 末藤 俊寿 本田 達朗 茂原 治 向野 義人
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.492-499, 2001-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
5
被引用文献数
3 5

企業内労働者における運動器症状への経絡テストを用いた鍼治療の効果と医療費との関連性があるかを鉄材の移動、組立、溶接作業などの動作を繰り返し行う肉体労働職を主体とした有痛者117名を対象として検討した。8週間の治療で痛みが半減した者は頚肩部痛で83%、腰痛で77%、膝痛で88%に達した。心理検査 (POMS) では緊張、抑鬱、怒り、疲労、情緒混乱のスコアが有意に減少した。鍼治療期には運動器疾患の受診は半減し、その健康保険医療費は約1/3となった。終了後も医療費減少は持続し、経絡テストを用いた鍼治療は健康づくりならびに医療費削減に有用と考えられた。