著者
大島 良雄
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.143-151, 1986-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3

鍼灸に関する文献は最近10年間の方が昭和50年より前20年間より多く, 内容が抄録されている文献数も著増した。科学的にレベルの高い論文も最近着々増加しているが, なお全般的に論文の質の向上が望まれる。東洋医学技術研修センターで鍼灸治療を受けた2000例と埼玉医大東洋医学外来の465例とにつき, 臨床的検討を行った。両施設とも女性患者がやや多く, 中年以上の患者が中心で, 発症から来院まで1年以上を経過した慢性病が多い。腰痛, 肩こり, 肩腕痛, 頭痛, 下肢痛, 耳鳴り, 足の冷えなどの主訴が多かったが, これらの病状の緩解, 除去は高齢人口が急増中のわが国において Quality of life の改善, 向上に役立つものと思われる。鍼灸療法は物理療法に属する。血圧に関して物理療法の原則である Wilder の law of initial value が妥当すると思われるデータがあるが, 鍼刺激の反復からなる鍼治療に際し生体反応がどのように推移するのか, 治療回数と治効率との関係を検討し, 一部に生物リズムに従いながら, 順応が行われてゆくのではないかと思われる所見を認めた。
著者
百合野 公庸 徳富 康男 田山 文隆 無敵 剛介
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.172-177, 1986-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

健康者に, 合谷―手三里鍼通電を行ない無侵襲計測法により末梢循環動態の経時的変化を追究した。循環動態諸量は, すべて増加傾向を認めた。すなわち, 最高の変化量 (mean±SE) は, 橈側皮静脈血流量156.25±40.81(%), 指先部毛細血管血流量112.4±9.14(%), 両側手掌深部体温 (右) 100.66±1.36(%), (左) 100.60±1.25(%), 1回拍出量116.33±11.57(%) であった。各最高値を示す時点は, 鍼通電後10~30分の間に認められた。1回拍出量の変化に関しては, 3.5%修飾ゼラチン溶液0.4ml/kg/minの急速輸液時の循環動態の変化に相当することが認められた。手掌深部体温の上昇は, 鍼通電後5~10分後に認められ両側性に認められることから, その中枢性機序が示唆された。
著者
福田 晋平 江川 雅人
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.212-218, 2014 (Released:2015-08-06)
参考文献数
10

【目的】鍼治療による歩行障害の改善が携帯型歩行計 (PGR) により客観的に示されたパーキンソン病 (PD) の 1 例を報告する。 【症例】症例:72 歳女性。 主訴:歩行困難、 頸肩部の重だるさ、 大腿前面部のこわばり感。 現病歴:64 歳時に右手の振戦が出現し、 PD と診断された。 抗 PD 薬の服薬によって症状は軽減したが、 71 歳時に頸肩部の重だるさや大腿前面部のこわばり感を自覚し歩幅が狭くなったため鍼治療を開始した。 現症:歩行は小刻みですくみ足、 日に 5 回の転倒を認めた。 頸肩部の重だるさは、 頸部から肩甲上部に認め、 重だるさが増悪すると前傾姿勢となり歩幅も狭くなった。 こわばり感を自覚する両側の大腿四頭筋に筋緊張亢進を認めた。 [鍼治療]後頸部や両側の大腿部の筋強剛に伴う筋緊張の緩和を目的に、 筋緊張亢進領域で圧痛の認めた経穴 (天柱、 風池、 伏兎、 血海、 梁丘等) に鍼治療を行った。 治療頻度は 1 回/週とした。 【評価】歩行は PGR で 「歩行の力強さ」 「歩行速度」 「歩幅」 を測定した。 歩行バランス機能は TUGT で、 PD 症状は UPDRS で評価した。 評価は初診時と鍼治療期間終了時に行った。 【結果】鍼治療は 12 週間に 12 回行った。 4 診時より、 頸肩部痛や大腿部のこわばり感は軽減し、 転倒回数は 1 日 5 回 (初診) から 3 回 (4 診)、 1 回 (7 診) と減少した。 歩行の力強さは 0.15 から 0.17 (m/sec2)、 歩行速度は 49 から 53 (m/分)、 歩幅は 47 から 49 (cm) となり、 TUGT は 11.8 から 9.5 (秒) と短縮し、 歩行障害の改善が客観的に示された。 UPDRS は 41 点から 28 点と低下し、 PD 症状の改善を認めた。 【考察と結語】鍼治療により、 筋強剛に伴う筋緊張による頸肩部の重だるさの軽減が姿勢を改善させ、 下肢の筋緊張の緩和が歩行機能の改善に寄与したと考えられた。 また、 本症例は、 歩行障害以外の PD 症状に対しても改善を認めた症例であった。
著者
高橋 啓介 赤羽 秀徳 粕谷 大智 中澤 光弘
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.32-47, 2010 (Released:2010-06-07)
参考文献数
31

近年、 腰痛をめぐる環境が大きく変化し、 腰痛に対する概念が大きく転換しつつある。 それは、 腰痛を 「脊椎の障害」 という捉え方から、 「生物・心理・社会的疼痛症候群」 という概念で捉えることの重要性が認識されるようになってきたことである。 従来の椎間板の障害といった形態的異常を腰痛の病態とする考え方から目に見えない機能障害という視点からも腰痛の病態を把握しようとする考え方である。 このように疾病構造が多様化していることから、 鍼灸臨床においても適切に対応できる力量が求められている。 即ち、 病態を把握した上で適切な治療を行うという考えは医療人として身に付けておかなければならない重要な要素である。 今回のパネルディスカッション1は、 このような視点に立ち、 整形外科医、 理学療法士もパネリストに加わり、 「腰痛に対するプライマリケア」 を企画した。 まず、 腰痛に対する概念が大きく転換しつつあることを踏まえて、 病態の捉え方、 対応の仕方、 鍼灸の適応と限界、 治療方法、 評価法について、 それぞれの立場から述べて頂いた。
著者
安藤 文紀 鶴 浩幸 北小路 博司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.308-318, 2020 (Released:2021-10-28)
参考文献数
27

【目的】先進国の鍼の利用や制度を調査し、我が国で鍼が発展する課題を検討する。 【方法】米国・韓国・日本について、pubmed.gov、scholar.google.com、google.comで acupuncture 、regulation、educationなどのキーワードを用いて英語文献と日本語文献を検索した。 【結果】日本の年間鍼灸受療率は減少傾向にあるが、米国の鍼受療者の割合は増加し、韓国は鍼灸を最も利用していた。米国では47州とコロンビア特別区で鍼の法規制が有り、43州と特別区で鍼を医師の業務範囲としていた。2020年から連邦政府は高齢者の医療保険制度で鍼の費用を補償するようになった。韓国では伝統医学である韓医学の制度が法制定され、韓医師が鍼を含む韓医学の保険診療を行っていた。米国では医師1万人が鍼の講習を受け、医師の鍼の学会会員は1,300名以上、2018年の鍼免許保有者は37,886人。2016年の韓医師は23,845人。米国連邦政府は医療保険の適用のため、鍼施術者に鍼の修士課程修了以上の学歴を求め、13州と特別区で医師が鍼を実施するには200時間以上の教育が必要。韓国では高卒後6~7年等の教育により韓医師を育成し、国家試験後4年間の専門医研修プログラムにより鍼灸科専門医を養成している。 【考察・結語】前報を含め調査した6か国の内、医療施設での医行為として鍼を提供しない制度は日本だけであった。海外に比べ日本は医療としての鍼の情報が少なく、国民から鍼が医療として認知されないことが、鍼受療率低下傾向の一因と考えられる。日本の鍼が発展するには次の4つを検討することは重要と考える。1. 医療施設でも鍼を提供し、国民に鍼が医療として認知されること。2. 医療施設で鍼が提供される未来に向けてのはり師の対応。3. 医療施設での鍼の役割。4. 医師・はり師のはり教育。
著者
飯田 藍 鮎澤 聡 櫻庭 陽
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.210-216, 2019 (Released:2020-07-13)
参考文献数
12

【はじめに】慢性的な冷えを伴ったレストレスレッグス症候群 (RLS) 患者に対して鍼灸治療を行い、 良好な経過が得られたので報告する。 【症例】42歳、 女性。 主訴は入眠時に出現する下腿後面のむずむず感。 過去、 妊娠時にむずむず感が出現するも出産後は消失していた。 X年7月誘因なく入眠時に下腿後面にむずむず感が出現。 症状は徐々に増悪し、 入眠障害も伴う。 神経内科にてRLSと診断されるも、 薬物治療を希望しなかったため鍼灸治療を開始した。 【治療及び評価】治療は両側内・外側腓腹筋上に置鍼、 両側承山 (BL57)、 三陰交 (SP6) に電子温灸器を週一回実施した。 評価は国際レストレスレッグス症候群重症度評価尺度 (IRLS)、 Numerical Rating Scale (NRS) を用いた。 【結果】IRLSは初診時26点であったが治療毎に軽減がみられ、 7診目には2点にまで減少した。 NRSも初診時8点であったが、 7診目には0点と改善を認めた。 また、 RLS症状軽減に伴い慢性的に感じていた足部の冷え症状の改善が得られた。 【考察】近年RLSの病態として背後側視床下部のドパミンA11神経の機能的異常が推定されているが、 この系の障害が交感神経系の過緊張を誘発し、 微小循環を障害して冷えの原因となる可能性がある。 【結語】下腿後面のむずむず感を呈するRLSに対し、 下腿部への鍼灸治療で異常感覚の改善と共に冷えの改善が得られた一例を経験した。 RLSと冷えにはドパミン系や自律神経系と関連した共通の病態があり、 鍼灸治療がそれらに作用して症状の改善を促した可能性が示唆された。
著者
藤本 幸子 井上 基浩 中島 美和 糸井 恵
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.208-217, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
19

【目的】腰痛に対する、 より効果的な鍼治療方法の検索を目的に、 同一部位における鍼の刺入深度の違いによる治療効果の相違をランダム化比較試験により検討した。 【方法】対象:罹病期間が3ヵ月以上の腰痛を有する患者32名をコンピュータープログラム (Sample Size 2.0) を用いてランダムに、 鍼を表在へのみ刺入する浅刺群と深部まで刺入する深刺群の2群に割り付けた。 介入:施術部位は両群ともに腰部の自覚的最大痛み部位3~12ヵ所を選択した。 浅刺群 (n=16) は切皮のみ (約5mm)、 深刺群 (n=16) は約20mm刺入し、 両群とも約1mm幅での雀啄術を20秒間行い、 その後に抜鍼した。 これらの治療を計4回 (1回/週) 行った。 評価:初回治療前後、 各回の治療前、 治療終了4週経過後に痛みのVisual Analogue Scale (VAS) を記録し、 併せて、 初回治療前、 治療終了時、 治療終了4週経過後にはRoland-Morris Disability Questionnaire (RDQ)、 Pain Disability Assessment Scale (PDAS) を用いて評価した。 なお、 評価は治療内容を知らない鍼灸師が行った。 【結果】VAS、 RDQ、 PDASの経時的変化パターンに関して両群間に交互作用を認め、 深刺群で有意に良好な結果を示した (VAS:p<0.05、 RDQ:p<0.001、 PDAS:p<0.05)。 また、 初回直後、 治療終了時、 治療終了4週経過後の各時点における初回治療前に対する変化量においても、 全ての評価項目において、 深刺群は浅刺群と比較して良好な結果を示した 「(初回直後 VAS:p<0.01)、 (治療終了時 VAS:p=0.13、 RDQ:p<0.05、 PDAS:p<0.01)、 (治療終了4週経過後 VAS:p<0.05、 RDQ:p<0.01、 PDAS:p<0.05)」。 【考察】全ての評価項目において、 浅刺群と比較して深刺群では良好な結果を示した。 このことから、 腰痛に対する自覚的痛み部位への鍼治療は、 筋の存在する深部まで刺入した方がより有効性が高いと考えた。 効果の相違が出現した理由に関しては、 浅刺群と深刺群それぞれの刺激を受容する組織の違いが関与し、 局所における痛覚閾値や筋血流、 あるいは筋緊張緩和に異なった影響を与えた可能性を考えた。
著者
秋元 恵実 小林 博子 嶋津 秀昭 伊藤 寛志 木下 晴都
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.409-415, 1988-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11

指動脈圧を無侵襲的かつ連続的に計測する容積補償式の血圧計を使用し, 本態性高血圧症16名を対象に, 洞刺による血圧応答について正常血圧群と比較検討した。本態性高血圧群では鍼刺激直後から収縮期・拡張期血圧は有意 (P<0.05) な下降を示した。平均では収縮期血圧で14mmHg, 拡張期血圧では9mmHgの下降であった。洞刺の効果は刺激後30分まで持続し, 洞刺後15~20分で最大の下降が認められた。脈圧および心拍数については有意な変化は認められなかった。本態性高血圧群と正常血圧群の血圧変化を比較すると両群共に類似した下降曲線が得られ, 両群には同様な反射が出現しているものと推察する。しかしながら洞刺による血圧変化には個体差が見られた。
著者
篠原 鼎
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.413-425, 1989-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
33

中国における脳血管障害の治療法に, 頭皮鍼療法, 眼窩鍼療法, 醒脳開竅法がある。3つの鍼治療法とも, 急性期から後遺症期を含めた総有効率は, 約90%と高いが, 急性期から後遺症期を含めた全癒率は, 5%~58%と開きがある。脳梗塞の全癒率は, 頭皮鍼療法では47%で, 醒脳開竅法では58%で, 約10%の差がある。脳出血の全癒率は, 頭皮鍼療法では5%で, 醒脳開竅法では47%で, 約40%の差がある。眼窩鍼療法による全癒率は, 脳梗塞と脳出血を含めて24%である。加齢による全癒率の低下傾向は特にない。脳梗塞の急性期の全癒率は, 頭皮鍼療法では65%で, 醒脳開竅法では65%で, 同じである。また3か月以内 (急性期と安定期と回復期を含めたもの) の全癒率は, 頭皮鍼療法では56%で, 醒脳開竅法では58%で, 差がない。脳梗塞の後遺症期の全癒率は, 頭皮鍼療法では39% (4か月以上~11年以上を合計したもの) で, 醒脳開竅法では46%で, やや差がある。したがって頭皮鍼療法や醒脳開竅法は, 現代の脳梗塞の後遺症治療として期待できる。しかし, あくまでも急性期に行うことが, 治療効果を引き上げる。しかも醒脳開竅法のデータは, 頭皮鍼療法のデータと比較して, データ数が1桁上位なので, より信頼性が高いと言える。脳出血の急性期の全癒率は, 醒脳開竅法では55%であり, また脳出血の3か月以内の全癒率は, 醒脳開竅法では47%であり, さらに脳出血の後遺症期の全癒率は, 醒脳開竅法では27%であり, 醒脳開竅法は, 現代の脳出血の後遺症治療としても期待できる。しかし, あくまでも急性期に行うことが, 治療効果を引き上げる。3つの鍼治療法に共通している特徴は, 四肢等の障害部位に対して直接深部を治療し, 残存機能の最大利用を狙うだけではなく, あくまでも大脳中枢の血栓部位や出血部位に対しては, 遠隔的に刺激を与え, 四肢等の障害部位に対しては, 直接的に刺激を与え, 改善する治療法である。
著者
松枝 秀二
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.2-12, 2008 (Released:2008-05-27)
参考文献数
8

スポーツ栄養を考えるには、 栄養士、 管理栄養士の存在をスポーツを取り巻く関係者に知ってもらわなければなりません。 そこで、 管理栄養士とはいかなるものかを紹介しました。 さて、 栄養素の中でスポーツ選手に必要なものは何でしょうか?私は炭水化物だと思っています。 たんぱく質が最重要ではありません。 最も少なくてよいのは脂質です。 そのように考えると、 従来の日本食でのエネルギー比率に近いものが、 アスリートには適切であると考えられます。 次に、 水分摂取も熱中症予防には重要です。 発汗量を推定するには練習前後の体重と飲水量を把握するとわかります。 それを基準にして水分摂取を考えます。 次に、 女性アスリートには特有の問題があるので、 指導者は気をつけるべきです。
著者
石神 龍代 黒野 保三 絹田 章 冨田 靖延 林 尚臣 渡 仲三 松本 美富士
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.238-243, 1994-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

名古屋市立大学病院第二内科膠原病・リウマチ専門外来において米国防疫センター (CDC) 及び本邦厚生省調査研究班の診断基準を満足し, 長期経過観察が可能で, informed concent が得られ, かつ従来から報告されている各種薬物療法抵抗性の慢性疲労症候群症例8例に対して鍼治療を施したところ, 慢性疲労症候群の中心的症状である激しい疲労感は明らかに改善し, 随伴症状である様々な身体症状も一部の症例において改善がみられた。また, 免疫学的検査において低下していた末梢血γδT細胞比率が有意に回復した。以上の結果から, 鍼治療は従来からの薬物療法に加えて, 慢性疲労症候群の一つの治療法として有用であることが示唆された。