著者
國生 剛治
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1_85-1_96, 2014 (Released:2014-02-06)
参考文献数
24

砂地盤の液状化現象では、支持力の減少と同時に地震波エネルギーが伝達しにくくなることによる「免震効果」あるいは「ベースアイソレーション効果」が表れることが経験的に知られている。免震効果によって構造物へ入射する波動エネルギーが減少すれば、上部構造物の地震慣性力による被害は軽減することにつながるが、そのメカニズムを理論的に検討する試みは稀であった。ここでは均質砂層を対象とした単純なモデルにより、液状化にともなうS波速度Vsの低下と内部減衰定数Dの変化が地震波動エネルギーの地表への伝達率に与える影響を検討した。その結果、免震メカニズムは主に液状化層中のVsの大幅な低下により、非液状化・液状化層境界でエネルギー伝達率が低減する効果と、液状化層中で地震波の波長が短くなり内部減衰による距離減衰が増大する効果に分けられ、液状化層が厚い場合ほど距離減衰が増大する効果の方が大きくなることを示した。
著者
大原 美保
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.5_2-5_16, 2015

東日本大震災後以降、多くの自治体が「災害・避難情報伝達手段の多層化」に取り組みつつある。災害・避難情報伝達手段には、受信者の状況に関わらず情報を伝達可能であるPUSH型の手段と、受信者側で何らかのアクションを行わないと情報を閲覧できないPULL型の手段があり、両者の効果的な活用が必要である。本研究では、首都圏の自治体へのアンケート調査を行い、自治体におけるPUSH型及びPULL型の災害・避難情報伝達に関する現状と今後の課題に関する分析を行う。前半ではまず、自治体での各種伝達手段の利用状況を概観する。後半では、近年普及が目覚ましい携帯電話を用いた情報伝達に着目し、PUSH型の手段である緊急速報メール(エリアメール)と、PULL型の手段である住民登録型のメールサービスを比較した上で、利用状況・発信内容の違いや今後の課題を明らかにする。
著者
井元 政二郎 森川 信之 藤原 広行
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_173-7_179, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

地震調査委員会による相模トラフ沿いの地震活動の長期評価において、地形・地質データに基づいたM8クラス地震発生確率がBPT分布を用いて推定されている。本稿では、歴史地震と地形・地質データとを統合処理する方法を提案し、大正関東地震(1923)、元禄関東地震(1703)、明応関東地震(1495) 、永仁関東地震(1293)を含めた場合について確率値を試算した。明応地震を含めない場合、30年確率は長期評価された値と大きく変わらないが、明応地震を含めた場合、有意に大きな値となる。BPT分布と指数分布との尤度比について検討を加えた結果、明応関東地震を含む場合では指数分布の適合度がBPT分布より高いことが判明した。明応関東地震の認識論的不確実性は、確率値の評価に大きな影響を及ぼすと考えられる。
著者
杉山 充樹 吉岡 優樹 平井 敬 福和 伸夫
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.7_101-7_119, 2020 (Released:2020-11-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1

1995年の兵庫県南部地震以降,我が国の震度観測体制は飛躍的に整備された.本論では,日本の震度観測の開始から現在に至るまでの変遷をまとめた.気象庁地震カタログの震度データの分析により,震度観測点密度が高くなると,より震源に近い位置での強震観測記録が増え,観測最大震度が増大することを定量的に示した.また,全国を震度観測点を基準にボロノイ分割した領域ごとに,表層地盤増幅度や人口分布を考察することで,同程度の規模の地震でも,観測点密度が高く,軟弱な地盤が広がる人口集積地帯の直下で発生すると観測最大震度が大きくなることを示した.さらに,観測最大震度の年代差・地域差を定量的に示し,気象庁,K-NET,自治体それぞれの震度観測点配置の特徴を明らかにした.
著者
若松 加寿江 先名 重樹
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.2_25-2_44, 2015 (Released:2015-05-25)
参考文献数
42
被引用文献数
7 10

本論文は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって関東地方に発生した液状化とその被害、および液状化地点の旧地形、微地形区分、造成履歴、液状化履歴などについて述べている。関東地方で液状化が確認された市区町村は、1都6県130市区町村に及んだ。液状化発生地点は、東京湾岸地域および霞ヶ浦沿岸、利根川とその支流の小貝川・鬼怒川、那珂川、久慈川、涸沼川、荒川などの大河川の沿岸に集中しており、土地の埋め立て・盛土造成、砂礫や砂鉄の採掘履歴、河道の変遷、洪水実績など、液状化の発生が土地の改変履歴や旧地形と関係が深いことが分かった。関東地方全域の計測震度5.0(震度5強)以上の地域において250mメッシュ毎に算出した微地形区分毎の液状化発生率は、埋立地で最も高く25.7%、次いで旧河道、三角州・海岸低地、干拓地、砂丘、砂州・砂礫州の順となった。東北地方で最も液状化発生率が高かった自然堤防と、関東地方の埋立地を比べると、関東地方の発生率の方が約4倍高くなっていた。
著者
早水 彦 森崎 裕磨 南 貴大 藤生 慎 髙山 純一
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.7_1-7_13, 2019

<p>2018年9月6日3時7分頃に平成30年北海道胆振東部地震が発生した.厚真町では最大震度7が観測され,北海道では初めて震度7が観測された非常に強い地震であった.この地震の影響により,地震発生当日は北海道全域が停電し,震度6強に見舞われた新千歳空港では全便欠航となった.本研究では,地震発生時の新千歳空港利用者の中でも,道外の居住者を対象とし,発災後の交通行動,情報収集の方法等に関するWebアンケート調査を実施した.本稿における分析から,新千歳空港の全便欠航した情報を入手した状況について把握を行った.また,大規模なブラックアウト及び交通マヒが生じていた被災直後の北海道から,どのような交通手段を用いて道外の自宅へ帰宅したのか実態把握を行った.</p>
著者
川又 優 関口 徹 中井 正一
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.16, no.8, pp.8_32-8_41, 2016 (Released:2016-07-25)
参考文献数
8

本研究では千葉県内の自然斜面及び、切土施工によって表面の軟弱な地盤を切り取った切土斜面を対象とし、それぞれの震動特性の評価を行った。斜面の法肩部と台地上の平坦な部分に地震計を設置し地震観測を行ったところ、自然斜面法肩部で地震動が大きく増幅していることが確認できた。そこで、地盤調査の結果に基づき地盤構造をモデル化し、2次元FEMを用いた動的解析による伝達関数の計算を行った。その結果、1次元解析では再現できない自然斜面法肩部での増幅特性を2次元解析で再現でき、斜面形状だけでなく台地端部表層の軟弱層が地震動を大きく増幅させることを確かめた。
著者
宮本 崇 本田 利器
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.3_41-3_52, 2016 (Released:2016-03-10)
参考文献数
10

著者らは耐震設計用地震動として地震動の集合を代表する波形を用いる手法について検討をしているが、性質の大きく異なる波形を代表する波形を設定することは合理的ではない。この問題を回避するには、類似した地震動波形に分類することが考えられる。本研究では、地震動の性質の非類似度を構造物の非線形応答値に基づいて定量化し、地震動波形の集合をクラスター化する著者らの既開発の手法について、基礎的な有効性の検証を目的とした数値解析を実施する。構造モデルを線形系として提案手法を適用した場合、応答スペクトル形状の異なる地震動波形の集合を提案手法によって適切に分類できることを示した。また、構造モデルを非線形系とした場合は、スペクトル形状とは異なるクラスターが形成されるということも明らかになった。
著者
根本 信 横田 崇 高瀬 嗣郎 今村 文彦
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.2_25-2_41, 2019 (Released:2019-05-31)
参考文献数
31
被引用文献数
1

2011年東北地方太平洋沖地震の津波断層モデルとしては,これまでに多くのモデルが提案されている.しかし,これらのモデルでは一部の観測データは説明できるものの,GNSSの連続観測データや沿岸の津波痕跡高分布を含めて総合的に評価されていない.本研究では,沖合津波波形データ,陸域・海域測地データ,GNSS連続観測データおよび津波痕跡高データを用いて,これらのデータを説明する津波断層モデルを線形と非線形のインバージョン解析により構築した.その際,断層すべりを与えるプレート境界面として,横田ら(2017)で提案された現実的なプレートモデルを用いた.解析の結果,地震発生から約1分後に宮城県沖で主要な断層すべりが生じるとともに岩手県沖の海溝軸に沿って地震発生から4分後までゆっくりとしたすべりが継続する断層モデルが推定された.
著者
廣井 悠 大森 高樹 新海 仁
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.5_111-5_126, 2016 (Released:2016-04-25)
参考文献数
7
被引用文献数
4

本研究は首都圏を対象として大都市避難シミュレーションを構築し、東日本大震災時における首都圏滞在者の移動データを利用して作成した帰宅意思モデルを用いて、帰宅困難者対策の量的評価を行うとともに、災害時における混雑危険度指標を提案するものである。この結果、首都圏において仮に大規模災害時に帰宅困難者の一斉帰宅が行われると、6人/m2を超える密集空間の道路延長距離は東日本大震災の約137倍となることや、このような歩道の混雑を低減するためには就業者の一斉帰宅抑制がより効果的であること、車両の平均移動速度が3km以下となる車道の渋滞は比較的長期かつ広域に発生することが判明した。
著者
藤生 慎 沼田 宗純 高田 和幸 大原 美保 目黒 公郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.4_189-4_200, 2012

本稿は東北地方太平洋沖地震で被災した三陸鉄道の現地調査やヒアリング調査を通じて、三陸鉄道の復旧・復興のプロセスをまとめたものである。当初、三陸鉄道は被害の状況から復旧は絶望視されていたが、沿線住民の復旧の強い要望や岩手県、沿線自治体の要望により新たな復旧資金スキームを創設し復旧のプロセスに入ることが可能となった。その背景には、東北地方太平洋沖地震での三陸鉄道の防災施設としての役割や三陸地方特有の地形による移動の困難さ、気候、復旧資金スキーム創設の考え方の工夫などがあり復旧することが可能となったことが明らかとなった。
著者
太田 外氣晴 山中 浩明
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.5_1-5_17, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
44

東日本大震災において、モーメント マグニチュードMw9.0の地震と大津波により、甚大な被害を被った。本論では、公開されている動画等から津波や人・自動車の速度を青森県八戸市から千葉県山武市の13地域26点に亘って分析した。沖合にあるGPSの波高に対する汀線の波高の倍率は、三陸沿岸で2.7倍、仙台平野などで2.0~2.2倍であった。調査した範囲では、海上における津波の最大波速値は久慈沖で21m/s、陸上では南三陸町の志津川で約11m/sであった。また、GPS位置から海岸までの津波の平均的な波速は、釜石沖・宮古沖が約29m/s であった。自動車の最大速度は約14m/s(約51km/s)、人の代表的な速度は3m/sであったが、避難の分析には各々3m/s、1m/sとした。聞き取り調査による避難の分析結果を参照して、避難の諸問題を議論した。避難の所要時間は地域差があるが、三陸沿岸における地震発生30分後の避難開始では遅すぎで、より早く避難する必要があることが分かった。
著者
野津 厚
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.2_21-2_40, 2012 (Released:2012-05-25)
参考文献数
33
被引用文献数
1 4

東北地方太平洋沖地震を対象として、スーパーアスペリティの組み合わせからなる震源モデルを新たに作成し、経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震動評価手法による強震動シミュレーションを実施した。その結果、宮城県沖から茨城県沖にかけて、一辺が数km程度の9つのスーパーアスペリティを配した震源モデルを用いれば、各地で実際に観測された強震動、特に、工学上重要性の高い0.2-1Hzの帯域の速度波形(パルス状のものを含む)を、精度良く再現できることがわかった。
著者
神山 眞 小出 英夫 沢田 康次 秋田 宏 千葉 則行
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_428-7_443, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本文は国土地理院が全国に展開しているGPS観測システムGEONETによる地震時地殻変動から求めた地盤の地震時ひずみの特性を二つの代表的な地震を対象として述べるとともに、それらの地震により生じた土木構造物の地震被害との関係を考察したものである。対象とした地震は2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)と2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)である。被害地点の分布は地盤ひずみ分布と相関があり、10-4.7~10-4.5の最大せん断ひずみレベルが土木構造物被害発生の一種のしきい値を与えることが指摘される。
著者
杉野 未奈 山室 涼平 小林 素直 村瀬 詩織 大村 早紀 林 康裕
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.16, no.10, pp.10_69-10_85, 2016 (Released:2016-11-28)
参考文献数
19
被引用文献数
10

2016年熊本地震における木造建物の被害の要因を分析することを目的として、益城町で建物被害が大きかった範囲を対象に空中写真により建物の建築年と倒壊の判定を行った。その結果、倒壊被害集中域は帯状であり前震と本震でずれがあることがわかった。また、倒壊建物と地盤の常時微動計測結果・建築年・観測地震動との関係を分析し、観測地震動の擬似速度応答スペクトルのピーク値と倒壊率との相関が高いことなどを明らかにした。さらに、1981年の新耐震設計法施行後に建てられた築1982年以降の木造建物でも倒壊した地域があり、倒壊率が最も高い地域では築1982年以前と以降で倒壊率に大きな差がなかった。
著者
神田 克久 武村 雅之
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.68-79, 2007 (Released:2010-08-12)
参考文献数
20
被引用文献数
6 6

最近、高密度の地点で多くの地震のデータが得られるようになった計測震度をデータベース化して、短周期地震動に関する距離減衰特性や地点による揺れやすさの分析を行った。関東平野では、揺れやすさの尺度である相対震度についてマグニチュード (M) 依存性がみられ、埼玉東部などの低地ではM が大きくなると相対震度が大きくなり、千葉県南部などの丘陵地では逆の傾向が見られた。得られた震度の距離減衰特性や相対震度を用いて、1923 年大正関東地震と1703 年元禄地震の震度インバージョン解析を行い、短周期地震波発生域を求めた。大正関東地震は三浦半島を挟んで2 箇所に短周期地震波発生域があり、その重心は別に求められているアスペリティ (すべりの大きな領域) の終端部にあたる。元禄地震の短周期地震波発生域は、神奈川県から房総半島南部までは大正関東地震に類似し、加えて房総半島南東沖に広がっていることが分かった。
著者
村上 ひとみ 中須 正 島村 誠 後藤 洋三 小川 雄二郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.5_76-5_96, 2015 (Released:2015-10-21)
参考文献数
17

本研究では、海外における災害避難関係資料・文献を収集するとともに、その内容を分析し、概要を明らかにする。また、特徴的な研究については、レビューを行う。以上から災害からの避難について海外ではどのような研究がされているかを俯瞰する。また研究にとどまらず政策としての避難対応マニュアルや調査するうえで不可欠となるデータベース等、基礎的な情報についても併せて概説する。
著者
神田 和紘 境 有紀
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.7_38-7_45, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
8

木造建物の全壊といった建物の大きな被害と対応した震度を迅速に計算するために,計測震度の算定に用いるフィルタの周波数特性を修正することを試みた.具体的には,過去に発生した地震動の観測点周辺の木造建物全壊率と対応するようにフィルタの周波数特性を修正した.その結果,フィルタの周波数特性を修正することにより,木造建物の全壊率と対応した震度を迅速に計算できることがわかった.
著者
角田 功太郎 五十田 博 井上 涼 森 拓郎 田中 圭 佐藤 利昭
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1_21-1_33, 2019 (Released:2019-02-27)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

2016年熊本地震において悉皆調査が実施された建物を対象に,2年後の調査を実施した.調査の目的は,被害レベル,建築年,構造種別などと2年後の使用状況の関係を定量化することである.益城町の調査範囲において,約半数が現存しないことがわかった.加えて,当然ではあるが,被災した建物の建築年が新しいほど,あるいは被災した住宅の被害レベルが低いほど,継続的に使用されている割合が高かった.また,継続使用されている建物であっても,そのうちの37%には補修が施されており,外観調査上は無被害と判定された建物でも補修されている例も多くみられた.建替え後の構造は84%が木造であり,階数は平屋建てが最も多く,71%を占めていた.
著者
安田 進 石川 敬祐
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_205-7_219, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

2011年東日本大震災で住宅地が液状化により甚大な被害を受けた関東の諸都市では、地区全体で地下水位を低下させて対策を施す「市街地液状化対策事業」が進められている。ところが、地下水位低下が家屋の液状化被害を軽減する効果に関しては、これまであまり定量的に明らかにされてきていない。そこで、まず過去の地震における被災事例について調べ、被害が生じる限界の水位を調べた。また、下層の液状化が地下水面上の表層の水位上昇に与える影響に関して試算を行った。さらに、戸建て住宅のめり込み沈下量や傾斜角に与える地下水位の影響を残留変形解析によって解析してみた。これらの結果、現在各都市の「市街地液状化対策事業」で目標とされているGL-3m程度まで地下水位を下げることが妥当と考えられた