著者
楊 虹
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.162, pp.66-81, 2015 (Released:2017-12-26)
参考文献数
19

本研究は,話題上の話し手・聞き手の役割交替の様相を分析し,中日母語場面の話題展開のパターン及び中日母語話者の話題上の聞き手としての会話の参加の仕方の相違を明らかにした。分析の結果,1.日本語母語場面と比べ,中国語母語場面では,話し手と聞き手の役割交替が頻繁に見られ,聞き手側だった参加者が話し手役割の発話をする場合が多く見られることがわかった。2.「役割固定型」「協調的役割交替型」「役割回帰型」「話し手役割競合型」という4つの話題展開のパターンが見られ,この4つのパターンの生起分布について,中日母語場面を比較したところ,有意差が見られた。一つの話題が展開していくプロセスにおいて,日本語母語場面では,話題上の話し手と聞き手が比較的固定的であるのに対して,中国語母語場面では,会話参加者の双方が話し手役割をめぐって交渉する場面も多く見られるという中日母語場面の異なる特徴が明らかになった。
著者
八木 真奈美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.162, pp.50-65, 2015 (Released:2017-12-26)
参考文献数
37

近年,日本語教育研究においても質的研究の重要性は高まっている。本稿の目的は,ナラティヴという視座から質的研究方法の一つとしてのエスノグラフィーの新たな展開を示すことである。それに先立ってまず,ここで扱うエスノグラフィーは,単なる調査や分析の手順を指すだけではなく,認識論的な世界の見方に関わるものだということを述べる。次に,エスノグラフィーの分析プロセスを示した後,ナラティヴとの融合による新たなエスノグラフィーの展開を,筆者の研究を再考する形で示す。結論として,質的研究の調査や分析の方法は,自らの依って立つ解釈の枠組みを明示し,対象となる人や集団の理解を目指した上で,何を明らかにしたいのかによって多元的に選択し,組み合わせていくことができると考える。それにより,人間と言葉の複雑な関係をより深く捉えられる可能性が生まれることを主張したい。最後に,日本語教育における質的研究の意義について述べる。
著者
田中 奈緒美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.130-137, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
10

本稿は,日本語会話において,話題転換時の新規話題導入発話の冒頭で用いられる「話題開始のための談話標識」を,聞き手の談話理解の手がかりとして分類することを目的とし,「BTSJによる日本語話し言葉コーパス」に収録された日本語母語話者による初対面雑談会話 (47会話,計13時間40分) で観察された当該表現について,聞き手が汲み取る情報の種類により分類した。その結果,観察された表現は,「①談話間の連接関係に対する話し手の認識」,「②談話内容に対する話し手の態度」,「③話し手の心的操作」の大きく3つに,さらに①と②は,「① a前後の談話の論理関係」「① b後続発話の導入理由」,及び「② a先行発話内容に対する態度」「② b後続発話内容に対する態度」のそれぞれ2つに分類することができた。
著者
深江 新太郎
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.122-129, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
10

本研究の目的は「生活者としての外国人」を対象にした日本語教育の目的を再提案することである。方法は教室活動の目的を実践者自身が問い直す実践研究の立場から,「生活者としての外国人」事業における筆者自身の実践を基に「標準的なカリキュラム案」の目的を批判的に考察することを採用した。結果として,「標準的なカリキュラム案」の目的である日本語で意思疎通を図り生活ができるようになることには日常生活における自己実現という視座が欠けていることが分かった。考察では「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目的に関し,生涯における自己実現について指摘した先行研究に対し,日々の日常生活における自己実現という視座があることを論じた。まとめにおいて,生涯における自己実現と日常生活における自己実現を組み込んだ「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目的の再提案を行い,今後の課題を明示した。
著者
古別府 ひづる
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.107-121, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
13

本研究の目的は,英語圏中等教育機関の日本語教師が求める日本語アシスタント (以下,JA) の資質を明らかにすることである。質問紙調査より日本語教師212名の回答が得られた。データを因子分析にかけた結果,「教師の専門性と英語力と規律」「日本語教授者の基本的態度」「明るい人間性」「勤勉さと役割認識」の4因子が抽出された。うち,JAに強く求められる因子とそうでない因子,教師と共通の因子,JAに特徴的な因子が挙げられた。次に,4因子と教師の語学アシスタント (以下,LA) 経験有無とJA受入希望有無との関係を探るためノンパラメトリック検定を行った。結果,「教師の専門性と英語力と規律」の因子に有意差があり,LA経験有無とJA受入希望有無は,JAと教師の区別の認識に重要な要因であることがわかった。また,JA受入希望者が多い一方,JAと教師の区別が明確でない者も多いことが指摘できた。本結果は,海外JA活用の基礎的な指標を示したと考える。
著者
朴 在恩
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.92-106, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
31

本稿は,日本語教育学研究における調査方法論としてのインタビューに焦点を当て,日本語教育学研究におけるインタビュー研究の変遷と動向を調査し,日本語教育学研究におけるインタビュー研究の今後の方向性を考察する。本調査は,学会誌『日本語教育』創刊号から168号までの掲載論文を対象とし,インタビュー研究を精査,分類したデータベースを構築し,分析したものである。分析の結果,インタビュー研究が初めて掲載されたのは45号 (1981) であった。1980年代から2000年代までインタビュー研究の掲載率が着実に増加しているが,2010 年代に入って急増していることが確認された。また,2000 年代までは実験などを質的に補足する役割をするフォローアップインタビューが主流であったが,2010年代に入ってインタビューを分析データの中心とした研究が増加していることが明らかになった。
著者
田中 祐輔 川端 祐一郎
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.78-91, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
65

日本語教科書作成の際に語彙がどのように選択されているかについて,明らかになっていることは少ない。教科書掲載語は,想定する学習者のレベルや,現実の日本語使用場面における実用性を考慮して,また既存の教科書を参考にするなどして総合的に選定されているものと考えられるが,実際にどのような選択傾向が存在しているのかについての,横断的かつ定量的な研究は行われていないのが現状である。本研究では,日本語教科書における語彙選択の傾向を把握するための基礎的分析として,戦後に発行された初級総合教科書のうち各年代を代表する教科書の掲載語を集計し,時代ごとの変化や教科書間の類似・相異度などについて定量的な評価を行う。また,そこで明らかになった語彙選択の傾向がもたらされた要因についても,データベースなどとの照合を通じて考察を加える。
著者
柴田 あづさ
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.62-77, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
15

本稿の目的は,関西地区の大学に在学する外国人日本語学習者4名が,日本人と関西弁による演劇作品を制作し上演する活動を通して,日本語学習上の問題をいかに克服し学習を進め伸びていったか,その過程と変化の要因を認識することである。インタビューで得た語りを複線径路・等至性モデリングで分析した結果,4名が,時期や具体的な状況は多少異なるものの共通性のある過程を辿り,いくつかの重要な行動をとることで日本語発話や演劇活動に対する不安を克服し,新たな自己を確立してくことがわかった。それは,1) 怖さや不安を感じる中で劇をすることを「決断した」こと,2) 「恥ずかしがっている方がおかしい」と「認識を変えた」こと,3) 震えや発汗などの症状を感じる中で「舞台に上がった」ことであった。さらに,スポットライトが緊張を和らげ,観客の笑いや拍手による反応によって「客を笑わせる」という学習者自身が立てておいた行動目標の達成を実感したことも変化を促したと考えられた。
著者
CHAUHAN Anubhuti
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.47-61, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
20

本研究では,ヒンディー語を母語とする日本語学習者に見られる対のある自動詞・他動詞 (以下,自他動詞) の誤用傾向・使用実態を学習期間別,自動詞・他動詞別に調査した。その結果,下位群では,述語選択の誤用が最も多く,中位群では,格助詞選択の誤用が比較的多かった。そして,上位群ではヴォイスに関する誤用が占める割合と述語・格助詞の選択に関わる誤用の割合にはあまり差が見られなくなった。つまり,先行研究で指摘されている通り,自他動詞の習得段階が「語彙を選択する→格助詞を選択する→文法的で意味が通じる文を作れる」のように展開していくことが窺えた。しかし,自動詞・他動詞別に考察すると,自動詞では,3群ともに述語選択の誤用が最も多く,他動詞の習得段階と異なり,語彙習得が助詞習得に必ずしも先立つわけではないことが示唆された。対のある自動詞の過剰使用による誤用の原因として,ヒンディー語が自動詞表現を好む言語であることが考えられた。
著者
戸田 貴子 大久保 雅子 千 仙永 趙 氷清
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.32-46, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
13

本研究では,大規模公開オンライン講座 (MOOCs) における発音の相互評価について分析する。本講座は,世界中の日本語教育関係者に向けて無料配信されており,170の国や地域から登録した受講者は35,000名を超えている (2018年5月17日現在)。本研究は,受講者が相互評価に継続的に参加できたのか,コメントにはどのような特徴があったのかを明らかにすることを目的とする。 分析の結果,以下のことが明らかになった。1) 受講者の相互評価への継続参加率は高かった。2) 相互評価に継続参加した受講者は,具体性の高いコメント (問題点,修正方法の指摘) を継続して書く傾向がみられた。また,最初は具体性の高いコメントができなかった受講者も,継続参加することによって具体的な指摘ができるようになっていった。 以上の結果から,オンライン上でも発音学習の継続が可能であり,相互評価が受講者の学びを促すことが示された。
著者
佐々木 香織
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.1-16, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
20

本稿では,外国人散在地域である新潟県において外国につながる子どもの学習支援がどのような状況であるかを記述した。自治体が支援を行ってはいるが,外国につながる子どもが抱える問題は深刻で,十分とは言い難い。外国につながる子どもは,日本語の問題があるだけではなく,学校や家庭に居場所がないことがある。文化の違いから学校生活への適応が難しく,家庭でも教育に関する認識の違いから親と衝突することも多い。「りてらこや新潟」は,そのような子どもたちを支援するため,日本語指導に加え,教科補習を行う勉強会や入試対策の個人指導を行っている。勉強会は,子どもたち同士の交流の場ともなり,子どもたちの学習面だけではなく精神面を支える場ともなっている。しかし,外国人散在地域であるという点からも,新潟ではボランティアによる地域日本語教室だけでは担いきれない課題が山積している。行政からの支援等,さまざまなサポートが必要である。
著者
小玉 安恵
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.93-108, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
8

近年のグローバル化に伴い,国を越え就職する学生が増えている中,カルフォニア州立大学サンノゼ校では学生の異文化間能力を育成するため,二つの国のクラスを毎週70分間オンラインでつなぎ,日米の学生達が協働で学習するCOILという新しい教授法に基づいた実践型の日本文化の授業を実施している。本稿ではまずCOILという新しい教授法を紹介し,次に本稿の理論的枠組みであり,授業内容や活動の決定の際参考にしたBennett (2004) のDevelopmental Model of Intercultural Sensitivity, Vulpe et.al (2001) による異文化間で効果的に働ける人物像のプロファイル研究,及びWillingham (2007) の批判的思考を紹介する。そして,最後に学生の気づきや批判的思考の促進,相対的視点の育成及び世界観の変容を目的とした異文化間協働型のクラス活動やリサーチプロジェクトの実践報告を行う。
著者
小山 悟
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.78-92, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
26

本研究は,歴史を題材としたCBIで学習者の批判的思考を促す手段として質問作成を提案し,実際の教育現場で想定どおり機能させるためにはどうすればよいのかを,デザイン実験という新たな研究方法によって明らかにしようとするものである。これまで「質問作成を意識することで講義を聞く態度に変化が生じ,質問の質も高まる」という学習モデルを立て調査を行ってきたが (小山 2014, 2015, 2017),想定したような結果は得られなかった。そこで本研究では,質問作成が精緻化という学習方略の1つであることから,篠ヶ谷 (2012) や湯澤 (2009) らの学習方略研究の知見を取り入れ,「質問作成の下地づくり」と「質問作成指導」の2点から学習モデルの再構築を行った。その結果,講義の聞き方に関する数値は全項目で事前調査を上回り,これまで一度も産出されなかった高次の応用的質問が初めて産出された。また,質問の長さもこれまでの最高値の5倍を超えるものとなった。
著者
岡田 亜矢子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.62-77, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
11

本稿は筆者が担当する大学での授業で実践した対話活動において,対話がどのように生まれ,つくられるのかを分析,考察し,今後の活動再設計に向けて行ったものである。授業開始時の留学生の日本語学習への希望は,日本語コミュニケーションスキルと,日本語を使って実現したいこと (研究室コミュニティメンバーの一員として存在し十分に参加したい) の2点が毎回挙がる。そこで,後者の希望を目標に据えた対話活動を設計し実践してきた。日本人も参加する対話活動の録音と,活動後に参加者記述の振り返りシートのデータを「聴く・つなぐ・もどす」の分析観点で,対話のうねり度合いをスケール化し,対話の動きの変化を時間軸のグラフで可視化して分析,考察した。その結果,対話が生まれ,つくられるのに大きく関与する要素は,グループ活動の進め方,対話の場での態度や参加の仕方,グループ活動での支援と環境づくりの必要性の3点に集約された。
著者
高橋 恵利子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.16-30, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
34

日本語学習者の日本語アクセントの習得に関わる認知的な要因を調査するために,上級韓国人日本語学習者70名を対象に,アクセント習得に関わると考えられる複数の課題を課した。課題は,有意味語の読み上げ課題,アクセント正誤判断課題,無意味語の読み上げ課題とそのモニター課題,およびアクセント弁別課題の5つであった。読み上げ成績と最も相関が高かったのはアクセント正誤判断課題であった。また変数間の関係について,アクセント生成と他変数との関係を考察するために重回帰モデルの検討を行った結果,アクセント生成成績を予測する変数はアクセント正誤判断課題成績のみであることが示された。
著者
野村 和之 望月 貴子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.1-15, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
29

点数至上主義の競争文化で学歴が社会的威信に直結する香港では,学校が強い影響力を持ち,学校での競争で優位に立てない青少年は抑圧や劣等感に晒される。本稿はエスノグラフィーの手法で香港人青少年の日本語学習を社会文化的文脈に絡めて分析し,青少年学習者にとって,日本語学習が学校での抑圧から逃れるための「心の拠り所」 (safe house) として機能していることを明らかにする。香港において日本語は大学入学資格試験の選択科目になるなど十分な威信を持ち,学校内外での日本語学習は青少年が学校からの抑圧への「対抗的アイデンティティ」 (subversive identity) を構築する基盤となっている。その反面,心の拠り所となるはずの日本語学習も香港の競争文化と無縁ではない。香港で広く普及するSNS を媒介した青少年学習者同士の繋がりの中にも,言語能力・文化的知識・新情報の入手速度などをめぐり,学校での競争と共通した優越感と劣等感のせめぎ合いが存在している。
著者
伊藤 秀明
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.168, pp.55-62, 2017 (Released:2019-12-26)
参考文献数
7

日本語の多様な文字体系における読字能力の評価尺度の欠如は,学習者の動機づけや課題遂行型の試験の内容的妥当性に影響を与える。しかし,この読字能力の記述化については現在まで必要性が議論されてこず,CEFRやJFSなどの言語教育スタンダードにおいても読字能力が一体何を示すのか,具体的に示されてこなかった。そこで本稿ではCEFR/JFSの拡張・精緻化の観点を前提に,CEFR/JFS の他の言語構造的能力の能力記述文を参考に熟達度別の特徴を洗い出し,今後,拡張・精緻化を図っていくための熟達度別の読字能力の能力記述文の試案の作成を行った。本稿が示した読字能力の能力記述文の試案は今後の議論の余地を残したものであるが,現在までまったく示されていなかった読字能力の能力記述文を具体的に提示することで,より詳細な読字能力の調査・記述への貢献を目指した。
著者
坪田 珠里
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.168, pp.40-54, 2017 (Released:2019-12-26)
参考文献数
20

海外における日本語教育が近年盛んに行われている状況の中,本稿では,日本とベトナム民主共和国(北ベトナム)との国交がまだなかったドイモイ改革前の時代に,ベトナム政府はなぜ日本語人材の育成を開始したのか,またロシア語偏重の外国語教育政策の中で日本語教育政策はどのように展開され,その目的は何だったのかに関し,日越双方の文献資料と関係者に対するインタビューにより調査・分析した。その結果,ドイモイ改革前の外国語教育政策における日本語人材の育成は,〝職業割り当て制度〟と密接に関わっており,社会主義国家建設のための幹部育成の一つの方策であったことを明らかにした。日本とベトナムとの国交樹立以降は,高等教育レベルで徐々に整備されていったが,日本語学習は個人の選択ではなく各大学により半ば強制的に決定され,また,教育の規模も国際政治経済情勢の動向に直接的に左右される非常に不安定なものであった。
著者
金 孝卿
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.168, pp.28-39, 2017 (Released:2019-12-26)
参考文献数
3

本稿では,2017年度春季大会特別プログラムにおける発表要旨をまとめる。まず,本企画の趣旨と経緯について述べる。次に,当日のパネリストの発表要旨として,佐藤理史氏(名古屋大学大学院)の人工知能研究の現状と今後のAIを用いた言語教育の可能性についての発表,山本和英氏(長岡技術科学大学)のAIと日本語教育の関連についての発表,そして伊東祐郎氏(本学会会長,東京外国語大学大学院)を交えた鼎談,及びフロアとの討論をまとめる。最後に,総括を述べる。
著者
金田 智子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.168, pp.16-27, 2017 (Released:2019-12-26)
参考文献数
2

新たな日本語教育学会は,その使命を果たすために,学会を挙げて社会的研究課題に挑戦することと,社会的課題の解決に向けて行動することを事業目標の中に位置付けた。そして,学会は中期計画毎に社会的研究課題と社会的課題を具体的に設定し,学会として取り組んでいくことを決め,調査研究合同会議を発足させ,課題策定を行った。両課題の共有,課題設定目的の理解が会員間に進むことを企図し,なぜ,学会はこれらの課題を設定することにしたのか,今期の課題策定はどのように行ったのか,そして,今後,どのようにその課題に取り組んでいく計画なのかを記すこととする。