著者
獅々見 真由香
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.165, pp.73-88, 2016 (Released:2018-12-26)
参考文献数
18

本研究では,オノマトペの会話教材の提案を目標に,前段階として不可欠である,会話におけるオノマトペの基本語彙選定を行った。基本語彙の選定方法としては,出現頻度調査に加えて親密度調査を行い,両方のデータを統合させる手法を採った。出現頻度調査の結果,オノマトペの出現頻度に偏りがあったが,出現頻度データに親密度データを加味することで基本度の順位を決定することができた。親密度調査にあたっては,幅広い年代の新しいデータを収集するため,独自の調査を行い,成人458名(男性218名,女性240名)のデータを得た。その上で,主成分分析を行い,その得点により273語のオノマトペの基本度の順位を決定した。そのうち,主成分得点の低い21語を除外した252語を,本研究における基本語彙としてのオノマトペとした。
著者
松下 光宏
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.165, pp.57-72, 2016 (Released:2018-12-26)
参考文献数
8

原因・理由を表す接続辞「ものだから」は,これまで「PものだからQ」のPとQが表す事態の特徴や機能からとらえた意味や用法が説明されてきた。本稿では,「PものだからQ」文より前や後の文脈に表される事態も分析し,「ものだから」の使用文脈の特徴を明らかにする。その特徴は次のとおりである。 「PものだからQ」は,話し手の認識において,本来・通常の事態とは異なる,異質・例外の事態Qとそれを引き起こす異質・例外の理由Pを表し,本来・通常の事態と対比的に示す文脈で用いられる。 そして,この使用文脈の特徴から,当該事態が本来・通常の事態と異なる,異質・例外の事態であるという話し手の判断が使用条件になり,さらにこの使用条件が予想や期待と異なる都合の悪い事態に対して理由を述べる「言い訳・弁解」の用法に結びつくことを述べる。
著者
井上 史雄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.165, pp.3-17, 2016 (Released:2018-12-26)
参考文献数
10

ここでは,オリンピックの言語問題を論じる。経済言語学的観点から2種の資料を提示する。第1として,グーグル検索を利用し,オリンピックと言語への言及の変化を見る。言語の市場価値は,かつては戦争に左右されたが,現代は経済に影響を受ける。オリンピックへの関心は短期間で,言語への関心や習得が長期にわたるのと,タイムスパンが違う。スポーツ大会は言語に限定的な作用しか与えない。 第2として,開催都市の言語景観を考察する。オリンピックはじめスポーツ関係の国際的行事で多言語景観が出現する。しかるに2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは,日英+ピクトグラムを基本にするそうで,公的言語サービスとしては後退を示す。ただ私的企業としては,多言語化によって客を呼び込む可能性があるわけで,ビジネスチャンスととらえることができる。
著者
戸坂 弥寿美 寺嶋 弘道 井上 佳子 髙尾 まり子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.79-93, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
13

本研究では,学外でのインタビュー活動における学習者の不安とその変化を明らかにした。対象者は日本国内の大学で日本語中級コースを履修する144名であった。まず,インタビュー活動前後の不安を比較した結果,活動後,6項目において有意に低下した。因子分析の結果からは,活動前後とも「インタビュー活動における不安」という1因子が抽出され,その因子の不安の大きさは性別や教室外での日本語使用時間という条件で異なっていた。さらに,母語話者の言語,協力的な母語話者の存在,活動での失敗経験と失敗に対する意識,成功体験,自身の日本語力に対する肯定的な気づき,タスクの難易度に対する認識,効果的なタスク達成の方法に対する気づきが不安の変化の様相に影響を与えた要因であると考察した。また,活動後の学習者の意識に関しては5つの肯定的変化が見られ,その変化が今後のインターアクションにおいて効果を生む可能性があることを考察した。
著者
黄 明淑
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.64-78, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
21

本研究は,「さくらんぼ狩りへの誘い」というロールプレイデータを用いて,中国語母語話者(以下CNS)と日本語母語話者(以下JNS)の「誘い」談話における再勧誘の言語行動を比較することを目的とする。分析の結果,1)再勧誘のやりとりの回数においては,CNSがJNSより有意に多かった。2)再勧誘の切り出しの意味公式別使用数においては,CNSは「意志要求」がJNSより有意に高く,JNSは「受け止め」がCNSより有意に高かった。また,再勧誘を構成する各意味公式の生起頻度においては,「受け止め」「気配り発話」「同意表明」において,JNSがCNSより有意に高く,「代案提示」「誘導発話」「意志要求」「理由尋ね」「負担軽減」「相手非難」において,CNSがJNSより有意に高いことが明らかになった。以上の結果から,CNSは積極的で,自分を強く押し出す目的達成型で,JNSは無理強いをしない対人配慮型であることが示唆された。
著者
近藤 優美子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.50-63, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
10

本稿では,補助動詞「しまう」のうち,現実の世界で既に実現した事態に接続するものをテシマッタとし,テシマッタが何を表すかと,そこから課される使用制約を明らかにした。 テシマッタは,実現した「事態は想定と異なる」という話し手の評価的態度を表す。そこから次の使用制約が課される。話し手は,具体的にはどのように「事態は想定と異なる」か,を表す情報を,聞き手が文脈から得られるようにする必要がある。検証は1.会話コーパスの分析,2.二種類の話し手の評価的態度「事態は想定と異なる」と事態は想定通りという文脈内での例文の自然度判定調査,3.会話作成調査の三つの手法による。2,3は母語話者調査である。 カーナビが「目的地に到着してしまいました」と言ったら不自然であるのは,機械であるカーナビが事態を評価することはない点,また目的地に着くという事態は想定通りである点でテシマッタの使用制約に反するからである。
著者
魏 維
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.34-49, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
23

本研究は清末に行われた日本語学習活動を近代日本語教育史の一部として捉え,読解・翻訳を主とした日本語教育において行われた音声教育に注目する。具体的には言語教育の視点から清末に編集された日本語教科書や学習書に用いられた発音教育の方法などを考察の対象とし,清末の日本語音声教育の実態を探る。考察の結果,清末に行われた独自の日本語学習活動において,読解・翻訳という言語習得の目的に応えた和文漢読法が誕生したが,そこでは文字と音声が分断され,音声教育が軽視される傾向にあったことが明らかになった。また,清末の学校教育においては,反切法や直接表音法などが表音表記として使われたこと,日本人教師の登場により,清国人の方言訛りなどによる発音の混同が意識されるようになったことなどが明らかになった。
著者
中島 和子 佐野 愛子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.17-33, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
29

多言語環境で育つ年少者の作文力の分析には,モノリンガル児とは異なり,4大要因(年齢,滞在年数,入国年齢,母語力)を踏まえる必要がある。本研究は,英語圏で収集した日・英バイリンガル作文(「補習校データ(2010)」)336名から選出した小学校6年生から中学校3年生(82名)を滞在年数と入国年齢によって短期・中期・長期の学習者グループに細分化し,各グループの特徴を把握すると同時に,日本語指導のあり方について考察した。分析の対象は,作文の構想を練る段階であるプレライティングと本文の文章構成力である。文章構成力の指標としたのは導入部分とまとめの部分,単文を使用する割合である。またバイリンガル児特有のトランスランゲージングと2言語の関係にも留意した。これら4大要因による学習者の細分化は,国を越えて移動する国内外の年少者一般の言語能力を把握する上で,また実態に即した指導への示唆を得る上で,極めて有用である。
著者
内藤 真理子 小森 万里
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.1-16, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
22

学部留学生が書いたレポートの中に不要な語や表現の重複があることにより,読み手に稚拙な印象を与えることがある。重複を回避するためには,学生の気づきを促す指導を行うことが有効であると考える。しかし,作文教材を調査したところ,重複が十分には扱われていないことがわかった。このことから,アカデミック・ライティングの授業において重複が積極的に取り上げられていないことが推測される。そこで,重複回避を意識したライティングの指導ができるよう,その基礎研究として本研究を行うことにした。本稿では,まず,学部留学生のレポートから,複数の判定者によって重複と判定されたものを抽出し,次に,文レベル,談話レベル,およびその2つのレベルに関連する重複をみていくため,卓立性・結束性・論理性・一貫性の4つの観点を導入し,それぞれに関わる重複に分類し,分析・考察を行った。さらに,重複と判定されなかった文との比較も行った。
著者
黒崎 亜美 松下 達彦
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.46-56, 2009 (Released:2017-04-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

会話や作文の語の産出には,意味理解のほか文脈や連語等の知識が必要な上,既知語彙の検索の過程を経ねばならず,理解と異なる能力が必要である。そこで,中上級の韓国語母語の日本語学習者を対象に語彙の自由想起の実験を行ない,以下の諸点を示した。①中上級の韓国語母語の日本語学習者は日本語母語話者に比べ高頻度のプロトタイプ的な語を使用し,低頻度語彙の産出が少ない。②中上級の韓国語母語の日本語学習者は,第一言語(韓国語)の語彙の自由産出において,第二言語(日本語)より低頻度の語彙を産出し,日本語母語話者の第一言語(日本語)と語彙頻度レベルに差はない。③中上級の韓国語母語の日本語学習者の自由想起の語彙産出は文法テストや制限付き産出確認テストの結果と相関はなく,語彙の自由産出の発達は制限付き産出の発達に比例しない。④制限付き産出ができた語を自由想起できない場合,その語と語義の一部が重なる語を,自由想起することがある。以上の結果から,自由発表語彙を増やすには,語彙を検索・使用する機会を多くすることが必要だと考える。
著者
宮田 公治
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.36-45, 2009 (Released:2017-04-05)
参考文献数
8

本稿は「にとって」の用法について,教室での説明に供することを念頭に置き,簡明な記述を目指したものである。「Xにとって,AはB」は,「経験者がXである場合を適用範囲として,「AはB」という判断を行う(=“少なくともXの場合は,「AはB」と言える”)」という意味の表現である。B(述語)の位置を占めるのは名詞・形容詞を基本とするが,不自然な例になりやすいのは形容詞である。なかでも「反対だ」「嫌いだ」など,常に特定のXのもとに下される個別的判断を表す述語は「にとって」と結びつきにくい。これらは“X(経験者)を必須成分とし,「XはA{が/に}B」という文型をとる”という構文上の共通点を持つ。ただし,「にとって」は構文関係を明示するという機能も有しており,その機能を優先して,これらの述語にあえて「にとって」を共起させることもある。
著者
中村 重穂
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.25-35, 2009 (Released:2017-04-05)
参考文献数
11

小論は,日中戦争期華北占領地に於ける日本軍兵士による日本語教育の実態を,ミクロストリアを方法論として公文書と戦争体験記から再構成し,その性格を検討したものである。5種14冊の史料から再構成した授業と原史料から窺える兵士の日本語教育の特徴は,理論的根拠,技術,言語(教育)観,体系性を持たず,丸暗記主義を軸として,対訳に依存しつつ個々の内容の徹底した模倣・記憶・練習を重ねることによって,これらの手続き/形式の集積として成立させた教室活動と総括することができる。そして,このような兵士の日本語教育は,自分を日本人=日本語を完璧に操れる能力を持つ存在としてカテゴリー化することにより日本語能力による差異化・差別化=「権力関係」を外国人との間に構築する点で,質的には現代の日本語ボランティアのあり方と共通する面を有し,その意味で現代の日本語教育に再検討を促すものとして読まれるべきであることを述べた。
著者
市嶋 典子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.134-144, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
5

本稿では,M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)によって,学習者の相互自己評価活動に対する認識を調査・分析した。分析からは,学習者らが,学習者同士が互いに行うという相互自己評価活動に対して心理的負担を抱きながらも,これらの葛藤と向き合い,評価を再解釈していくプロセスを生み出していったこと,自身の価値観が変化したことに意義を見出し,この変化を将来の日本語学習への動機付けとして位置づけるようになったことが明らかになった。一方で,このように相互自己評価活動に対して意義を感じつつも,不満も抱いていることが明らかになった。以上の分析結果を踏まえ,相互自己評価活動の意義と課題を考察した。
著者
金 蘭美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.102-112, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
14

本稿では,母語話者と学習者の複合助詞「にとって」の使用実態を比較することで,学習者の誤用の原因を調べた。その結果,学習者の誤用の原因として,①「xにとってAはB」における「x」が「B」の「主体」ではなく「受け手」であることへの無理解,②「AはB」という意味づけ・位置づけを行う意義が見出せない場合の「にとって」の使用,③「x」と「A」がコミットしていることへの無理解,が主な原因であることが明らかになった。特に①の「x」を「主体」と捉えることによって起こる誤用の場合,その多くが「B」に動詞述語を使用しているものが多く,結果として「A」が欠如している文が多いことを確認した。③に関しては,「私にとって……」と「私は~と思う」との混同という形で現れており,「x(私)」と解釈の対象である「A」が直接関わりのある事柄でなければ「にとって」が生起しない,という成立条件を理解していないことが原因であることが明らかになった。
著者
稲垣 俊史
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.91-101, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
16

中国語話者による目的を表すタメニとヨウニの区別(日本語教師になるためた勉強している/日本語教師になれるようた勉強している)の習得を調査した。主節の主体が目的節の表す行為をコントロール可能な場合はタメニが用いられ,そうでない場合はヨウニが用いられることが知られている。日本語と中国語の比較ならびに母語の転移とインプットの観点から,中国語話者はタメニを過剰般化し,この過剰般化は上級レベルでも消えにくいであろうと予測できる。タメニを含む文とヨウニを含む文を比べる優先度タスクを用い,上級レベルの中国語話者と日本語話者を比較したところ,この予測が支持された。本研究は,目標言語と母語における目標構造の特性を踏まえ,主に印欧語の習得データを基に第二言語習得研究で議論されてきた母語の転移と肯定証拠の観点から,非印欧語(中国語)話者による非印欧語(日本語)の習得データを提示し,説明した点で意義深いと言える。
著者
戸田 貴子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.47-57, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本稿では,近年の学習者音声に関する研究成果を紹介し,音声教育実践について述べる。 三つの調査の結果から,1)発音上の問題がコミュニケーションの弊害になっているとの認識を学習者が示していることが明らかになった。一方,2)大人になってから学習を開始した場合でも,学習次第でネイティブレベルの発音習得が可能であることがわかった。また,3)学習成功者は発音学習に対する意識・学習方法・インプットの量などの理由に支えられて高い発音習得度を達成したことが示唆された。 これらの研究成果を踏まえ,教室内外において発音練習ができる学習環境を整備し,学習機会を提供することにより,自律学習を促していくことを提案した。具体例としては,1)シャドーイング練習用DVD教材,2)オンデマンド日本語発音講座,3)日本語発音練習用ソフトウェアの開発について述べた。
著者
小河原 義朗
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.36-46, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
8

本稿では,対象となる発音が目標発音に変化する過程が現れている2つの発音指導の事例を取り上げ,その過程の中で学習者が実際に何をしているのか,その行動を教室談話に着目して分析し,比較することを試みた。学習者は単に教師から与えられる情報や指示の通りに学習しているわけではないことから,単に情報の量や質ではなく,情報をリソースとして学習者が何をするか,それを予めどのように仕掛けるかを考えることが教師の役割として示唆される。しかし,同じ目標の実践でも,成果に至る過程は異なるのが普通であり,何がどのように作用したのか,実践とその過程の詳細な分析の蓄積が不可欠である。そのための方法論として,教室談話を分析することはその結果に至る過程を見ることが可能であり,そのような実践と分析が蓄積,共有されることによって,教師自身の信念,実践だけでなく,音声教育のあり方を問い直すことにもつながることを指摘する。
著者
松崎 寛
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.25-35, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
8

従来の音声教育実践研究には,指導前後の発音成績等を比べた量的研究は多いが,教師と学習者の行動を質的に分析した研究はあまりない。本研究では,韻律指導時の内省および行動を,学習者,教師,観察者のメールによる報告をもとに分析し,教師に求められる知識および指導技術について,「モデル音を与えることの是非」「評価の食い違いと評価箇所のズレの問題」「誤用指摘方法の使い分け」「教師の正誤判断や解答を与えるタイミング」「学習者の発音に対する教師評価」等の観点から考察した。
著者
前川 喜久雄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.4-13, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
12

日本語教育における音声研究の課題のひとつに,学習者が生成する日本語音声に生じる外国語なまりの研究がある。この現象をきちんと研究するためには,大規模な学習者音声データベースが有効であり必須でもある。その理由としては,過去の対照言語学的研究が音韻論に基づくトップダウン分析が音声変異の研究には無力であることを示していることにくわえ,母語の音声認識の研究がボトムダウンに構成される音響モデルの有効性を示していることがあげられる。本稿の後半では,日本語学習者データベースの仕様,構築手法,解析上の可能性について筆者自身のコーパス構築経験に基づく見解を述べた。最後にコーパスに基づく日本語教育研究において学会が果たすべき役割についても意見を述べた。
著者
江田 早苗 内藤 由香 平野 絵理香
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.143, pp.48-59, 2009 (Released:2017-04-07)
参考文献数
10
被引用文献数
1

韻律(プロソディー)情報は,円滑な日本語のコミュニケーションを図る上で重要な役割を持っており,日本語学習者の韻律情報知覚のストラテジーを明らかにすることは,今後の音声教育の発展に貢献すると考えられる。本稿では,イントネーションの統語機能の知覚に焦点を当て,日本語母語話者,中級,上級学習者を比較した聴覚実験の結果を報告する。実験調査の結果から,中級・上級学習者ともに,イントネーションの「区切り」による統語機能を,文音声の意味理解の手がかりとして,予想以上に利用しようとしていることがわかった。本研究で明らかになった日本語学習者の韻律情報に対する意識の高さを利用し,複雑な統語構造を持つ発話の理解を助けるストラテジーとして,日本語音声教育の場面に積極的に取り入れることを提言したい。