著者
白坂 憲章 高崎 竜史 吉栖 肇
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.495-498, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
4
被引用文献数
4 5

梅加工品中に含まれる抗酸化・抗変異原活性を有する機能性成分として梅果実成分リオニレシノールの含量を検討し, 以下のような結果を得た.市販の調味梅干のリオニレシノール含量は製品の塩分濃度が低い製品ほどリオニレシノールの含量およびラジカル消去能が低い傾向がみられ, 調味工程における脱塩操作における流出が主たる原因と考えられた.調味梅干製造の漬け込み工程において, 調味液が果肉に浸透する調味の初期においては, 果肉からのリオニレシノールの溶出とその含量の減少に伴うと考えられるラジカル消去能の低下が認められたが, 調味液が浸透する2週目以降においては, リオニレシノール含量, ラジカル消去能共に増加が認められ, 浸透圧による種からのリオニレシノールの再移行が生じたと考えられた.以上の結果より, 調味液に添加が不可能なリオニレシノールなどの機能性成分の調味行程における低下を防ぎ, 有用成分を多く含む調味梅干を製造するには, 塩濃度を低下させるための過剰な脱塩を避け, 十分な浸透圧を持つ調味液を用いて十分な時間をかけて調味を行うことが必要と考えられた.

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著者
都築 和香子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.440-441, 2019-11-15 (Released:2019-11-27)
参考文献数
4
著者
田中 直義 木村 小百合 木内 幹 鈴木 あゆ野 村松 芳多子 三星 沙織
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.167-174, 2012-04-15 (Released:2012-05-31)
参考文献数
33
被引用文献数
2

糸引き納豆は醗酵後の冷蔵中ににおいが変化してゆくことが知られており,品質の変化が早く生鮮飲食品並みの消費期限が設けられている.冷蔵中における主要なにおい物質の変化を以下の方法で検討した.(1) 購入直後の市販納豆および1週間冷蔵庫中で保存した市販納豆から臭い物質を連続水蒸気蒸留抽出によりエーテルに抽出し,濃縮した.得られたエーテル濃縮液をガスクロマトグラフ-におい嗅ぎ法で分析したが,試料間の差異が大きかったのでエーテル濃縮液を10の指数関数的に希釈することにより,主要な臭い物質を検索した.その結果,主要なにおい物質として2-メチルプロパン酸エチル,2-メチル酪酸エチル,3-メチル酪酸エチルなどの低分子脂肪酸エステル,2,5-ジメチルピラジン,トリメチルピラジンなどのピラジン類,酢酸,2-メチルプロパン酸,2- or/and 3-メチル酪酸などの低分子脂肪酸,およびエタノールが検出できた.1週間冷蔵中で保存するとそれらの物質の中で,低分子脂肪酸エステルのにおいは弱く,ピラジン類と低分子脂肪酸は強くなる傾向にあった.(2) 醗酵終了直後および冷蔵日数の異なる納豆からにおい物質をSPME法で抽出・濃縮し,ガスクロマトグラフで分析し,主要なにおい物質の変化を測定した.冷蔵日数が長くなるにつれて主要なにおい物質の中で,低分子脂肪酸エステルは減少,ピラジン類と酢酸以外の低分子脂肪酸は増加する傾向にあった.以上の結果から,冷蔵中のにおいの変化は,脂肪酸エステル類が減少し,ピラジン類および酢酸以外の低分子脂肪酸類が増加することによるものと推定した.
著者
佐藤 幸子 夛名賀 友子 四宮 陽子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.108-116, 2014-03-15 (Released:2014-04-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

うどんのコシの特徴である硬さの不均一性を物理的に解明するために,圧縮によるクリープ測定をモデル化し,ゆで麺表面から中心部への粘弾性分布を測定することを試みた.結果は次の通りである.(1)測定方法のモデル化により,ゆで麺表面から中心部にかけての4点において典型的なクリープ曲線が得られ,試料A(ゆで直後麺)と試料B(ゆで後24時間麺)の各部位は,6要素と8要素に解析された.(2)粘弾性の解析結果,試料AとBの粘性率ηNは107~108Pa・sだが,η1,η2,η3は104~106 Pa・sと小さく,麺内部へかけての変化も見られないことから,ηNに対して無視できると考え,粘弾性を2要素に単純化した.(3)2要素に単純化した試料AとBの緩和時間を計算した結果,AとBともに表面付近は約1分で内部へかけて減少し,中心付近は10秒以下であり,ゆで麺の咀嚼時間1秒以下と比較するとかなり長かった.したがって,ゆで麺の咀嚼では弾性要素の影響が強いと考えられる.(4)試料Aの弾性率は表面から内部にかけて徐々に増加し,「コシが強い」状態を表していた.試料Bは歪率16%で増加して,その後やや減少傾向で,弾力の無い伸びた麺の状態を表していた.(5)官能評価で選択された麺の特徴を表す代表的な用語は,Aは「弾力がある」,「もちもちしている」,「こしが強い」,「つるつるする」,Bは「弾力がない」,「こしが弱い」,「噛み切りやすい」,「やわらかい」であり,クリープの測定結果とよく一致した.
著者
村上 香 永澤 健
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.84-91, 2021-02-15 (Released:2021-02-26)
参考文献数
15

本研究では,発酵および非発酵ルイボスティー(RTおよびGRT)の抽出時の茶葉量,時間および温度によるポリフェノール含量および抗酸化活性への影響を調べた.500 mLの水道水を沸騰させた熱水で茶葉1.5-10 gを10分間浸漬した「お湯出し」条件では,茶葉量は,1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去活性(抗酸化活性)と正の相関関係示し,茶葉5および10 gのRTと比べて,GRTは半分の茶葉量で同レベルの抗酸化活性を示した.また,茶葉5 gを500 mL熱水で5-20分間お湯出しした場合,RTでは15分以上,GRTでは20分以上浸漬することにより,より効率的にポリフェノールや抗酸化活性を引き出せることが確認された.7 °C,12時間浸漬の「水出し」条件(茶葉5 g/500 mL)では,ポリフェノール量と抗酸化活性はRTでお湯出し5分間,GRTで10-15分間と同程度であることがわかった.RTは茶葉5 g(/500 mL),10分間,70および80 °Cは沸騰を保った沸騰水の抽出「煮出し」と比較して,総ポリフェノールおよびアスパラチン含量,DPPHラジカル消去活性に大きな違いは見られなかった.GRTにおいても80 °Cと沸騰水ではポリフェノールおよびアスパラチン含量に有意な差は認められなかった.本実験で検討した条件では,茶葉量10 g/500 mL,10分間お湯出しは,総ポリフェノール含量(RT:756±9;GRT:939±5 µg/mL),アスパラチン含量(RT:10.6;GRT:363 µg/mL),DPPHラジカル消去活性(RT:3.62;GRT:5.87±0.03 mMアスコルビン酸当量)が最も高い条件であった.また,本研究により,RTおよびGRTは,「お湯出し」および「水出し」でもポリフェノールおよびアスパラチンや抗酸化活性を有することが確認された.
著者
高橋 陽子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.186, 2011-04-15 (Released:2011-05-31)
参考文献数
2
被引用文献数
4 1

繊維質とは,自然に放置しても分解されにくく,動物によっても消化されにくい成分のことを指す.本来,ヒトの消化酵素で消化されない繊維質は,生理的意義が低い非栄養素とされてきたが,難消化性の繊維質はヒトの健康維持に重要な役割を果たすことが次第に知られるようになった.食物繊維とは多糖類のひとつであるが,日本食品標準成分表2010では「ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体」と定義されている.ヒトの炭水化物消化酵素であるアミラーゼは,デンプンを構成している糖分子のα結合を分解できるが,食物繊維を形成しているβ結合を分解する能力がない.従来,食物繊維はエネルギー源にならないと考えられていたが,実際は,消化されない食物繊維の一部が腸内細菌により発酵分解されて短鎖脂肪酸とガスになるため,エネルギー量はゼロにはならない.また,食物繊維はタンパク質,脂質,炭水化物(糖質),ビタミン,ミネラルに次いで,ヒトに不可欠な第六の栄養素として数えられるようになっている.食物繊維は水に溶けない不溶性(water-insoluble dietary fiber ; IDF)と水に溶ける水溶性(water-soluble dietary fiber ; SDF)に大別される.一般的に食物繊維は,食物の咀嚼回数や消化液の分泌を増加させたり,便通や腸内環境を改善したりするが,不溶性と水溶性で異なる生理作用もある.不溶性食物繊維は保水性が良く,便量の増加や腸の蠕動運動の促進,脂肪や胆汁酸,発がん物質等の吸着・排出作用がある.水溶性食物繊維は,糖の消化吸収を緩慢にして血糖値の急な上昇を抑える糖尿病予防効果,胆汁酸の再吸収を抑えてコレステロールの産生を減らす脂質異常症の抑制効果が期待できる.また,水分を吸収してゲル化するため,胃腸粘膜の保護や空腹感の抑制作用がある.不溶性食物繊維には植物体を構成するセルロース,ヘミセルロース,リグニン,エビやカニ類の外骨格成分であるキチン・キトサンがある.セルロースは植物の細胞壁の主成分で,野菜や穀類の外皮に多く含まれる.グルコースがβ-1,4結合により直鎖状に連なってリボン状に折り重なる構造をしているため,力学的に強固な物質である.ヘミセルロースも細胞壁を構成する不溶性食物繊維であるが,セルロースを構成するグルコースが他の糖で置換された多糖類である.糖分子の種類によって水溶性が異なり,マンナン(グルコマンナンとも呼ばれるコンニャクの成分.グルコースとマンノースがβ-1,4結合したもの),β-グルカン(キノコ類や酵母類に含まれる.グルコースがβ-1,3または-1,4結合したもの),キシラン(細胞壁の成分であるキシロースがβ-1,4結合したもの)等がある.リグニンは果物や野菜の茎,穀類の外皮に含まれる木質の繊維である.キチンはセルロースに構造が似ているが,N-アセチル-D-グルコサミンが連なるアミノ多糖であり,キトサンはキチンからアセチル基が除かれたD-グルコサミン単位からなるものである.水溶性食物繊維にはガム質,ペクチン,藻類多糖類等が分類される.ガム質は植物の分泌液や種子に含まれている粘質物で,代表的なものにグアー豆に含まれるグアーガム(マンノース2分子に1分子のガラクトースの側鎖をもつ多糖類)がある.ペクチンはガラクツロン酸がα-1,4結合した構造をしており,腸内細菌では分解できるがヒトの消化酵素では分解できない.果物類に多く含まれ,水分を吸収してゲル化する性質があり,砂糖と酸を加えて加熱調理するジャムやゼリーの製造に利用されている.藻類多糖類には渇藻類に多いアルギン酸,紅藻類に多いフコイダン,寒天の主成分であるアガロース等がある.この他に,トウモロコシを原料として人工的に合成されるポリデキストロースや難消化性デキストリンも食物繊維として使用されている.食物繊維の摂取目標量は,日本人の食事摂取基準(2010年版)によると,18歳以上では1日あたり男性19g以上,女性17g以上とされている.日本人の食物繊維摂取量は,食生活の欧米化や穀類,芋類,野菜類,豆類の摂取減少の影響を受けて第二次世界大戦後から年々減り続けており,実際の摂取量は若い世代を中心に目標量を満たさない状況が続いている.
著者
中村 善行 藏之内 利和 高田 明子 片山 健二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.577-585, 2014-12-15 (Released:2015-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
7 13

調理後の甘さが大きく異なる多様なサツマイモ品種·系統や育種素材を供試して,塊根のβ-アミラーゼ活性およびデンプンの含量,糊化温度と蒸しいものマルトース含有率との関係を調べた.マルトース含有率はβ-アミラーゼ活性の上昇に伴って増加したが,活性が約0.2 m mole maltose/min/mg proteinを越えると含有率の増加は抑制された.マルトース含有率とデンプン含有率との間には相関が認められなかったが,デンプン糊化温度との間には弱い負の相関が認められた.特に,β-アミラーゼ活性が高い塊根では糊化温度が低いほどマルトース含有率が高い傾向が見られた.また,デンプンの糊化温度が比較的高い品種「ベニアズマ」を本州より気温の低い北海道で栽培すると,糊化温度が有意に低下し,β-アミラーゼ活性は同等かあるいはそれ以下にも拘わらず,マルトース含有率が有意に高くなった.サツマイモの加熱調理に伴うマルトース生成には塊根のβ-アミラーゼ活性に加えてデンプンの糊化し易さも重要であると考えられた.
著者
齋藤 寿広
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.419-424, 2018-08-15 (Released:2018-08-25)
参考文献数
44
被引用文献数
4

The Japanese pear (Pyrus pyrifolia Nakai) is one of the most commercialized fruit trees in Japan and it has been consumed for a long time. The concept of pear cultivars was first developed in the middle of Edo Era (1603-1887). Commercial pear orchards were established in the late Edo Era and over 1000 cultivar name have since been recorded. ‘Taihei’ was the leading cultivar in 1890-1900, followed by ‘Kozo’ in 1900-1910. ‘Chojuro’ became the leading cultivar from the 1910s to the late 1940s due to its high productivity and disease resistance, but ‘Nijisseiki’ replaced it until the late 1980s, as this cultivar had superior flesh texture despite its extreme susceptibility to black spot disease. The systematic breeding program of the Horticultural Research Station [currently National Institute of Fruit Tree and Tea Science (NIFTS), National Agricultural Research Organization (NARO)] began in 1935 and it mainly aimed to improve fruit quality by focusing on flesh texture and black spot disease. As a result, cultivars ‘Kosui’ and ‘Hosui’ were released in 1959 and 1972, respectively. ‘Kosui’ became a leading cultivar in the late 1980s and ‘Hosui’ became second in the beginning of the 1990s. Current breeding at NIFTS uses DNA marker-assisted selection for combining superior fruit quality with traits related to labor and cost reduction, multiple disease resistance, and self-compatibility.
著者
柳原 哲司 藤井 はるか
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.243-255, 2017-05-15 (Released:2017-05-26)
参考文献数
13
被引用文献数
2

Recently, the demand for commercial Hokkaido rice has been on the rise. Consumers are calling for the development of Hokkaido rice cultivars that are suitable for commercial use, in addition to the popular household varieties. In response, we have been developing new Hokkaido rice cultivars as well as evaluation methods to determine the suitability of these cultivars for commercial use.1.Definition of suitability for commercial useFrom 2009 to 2013, we visited 13 major commercial users of Hokkaido rice and conducted interviews to gain an understanding of the qualities considered essential in commercial rice. All the surveyed companies listed the following four processes in rice production: 1) commercial milling, 2) commercial cooking, 3) rice processing and molding, and 4) storage and distribution prior to consumption. The data demonstrated that in each process, the suitability of rice was evaluated based not only on taste and quality, but also on the unique commercial perspectives of economic efficiency and workability.2.Development of a method to evaluate the suitability of Hokkaido rice for commercial useBased on the results of the above survey, we identified the appropriate parameters to evaluate the suitability of commercial rice, as specified by actual consumers. We undertook the development of new evaluation methods that take into consideration economic efficiency (cooking yield) and workability (stickiness), aspects not previously considered. Addition of the parameters from the new evaluation method to the existing parameters of taste and quality is anticipated to make the assessment comprehensive and address the requirements of various commercial users, which include determining the amount of water to be added to achieve low stickiness (workability) and high cooking yield (economic efficiency). The ultimate goal is to select cultivars with reduced stickiness (workability), culminating in the selection of cultivars that have only moderate stickiness and little discoloration (taste and quality).
著者
吉田 充 三好 恵子 堀端 薫 水上 裕造 竹中 真紀子 安井 明美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.525-530, 2011-11-15 (Released:2011-12-31)
参考文献数
14
被引用文献数
12 13

日本人の主食である炊飯米からのアクリルアミド摂取寄与を推定するために,炊飯米に関して臭素化誘導体化GC-MS法による低濃度での定量分析法を確立し,アクリルアミドの測定を行った.本分析法の玄米おけるLOQは0.20 μg/kg,LODは0.09 μg/kg,発芽玄米では,LOQは0.17 μg/kg,LODは0.07 μg/kg,精白米では,0.14 μg/kg,LODは0.06 μg/kgであった.2種類の家庭用炊飯装置で炊飯を行った結果,米に生じたアクリルアミドの濃度は,発芽玄米,玄米,精白米の順であった.IH真空圧力炊き炊飯器の1機種を用いた炊飯ではいずれの米の場合も,電子ジャー炊飯器の1機種を用いた炊飯よりもアクリルアミド濃度は低く,業務用炊飯装置の1機種による炊飯ではさらにアクリルアミド濃度は低かった.この炊飯器の違いによるアクリルアミド濃度の差は,炊飯時の温度履歴の違いと高温になる鍋肌の材質の違いによると考えられた.本測定結果を日本人の炊飯米の摂取量と合わせて考えると,他の食品を含めたアクリルアミドの摂取量全体に対して,炊飯した精白米からのアクリルアミド摂取の寄与は小さいことが確認された.玄米および発芽玄米についても,IH真空圧力炊き炊飯器や業務用炊飯器で炊飯すれば,アクリルアミド摂取に対する寄与率は小さいが,焦げを生じさせるとその寄与はアクリルアミドの摂取源の一つとして無視できないものとなり得る.
著者
桝田 哲哉
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.499-509, 2016-11-15 (Released:2016-12-23)
参考文献数
45
被引用文献数
1

Many low-molecular weight molecules, including amino acids, saccharides, polyols, peptides, and synthetic compounds, are well known to elicit the sensation of sweetness, whereas most proteins are tasteless and flavorless. However, some proteins do elicit a sweet taste response on the human palate. Sweet-tasting proteins have potential as low-calorie sweeteners and as substitutes for sucrose for industrial applications, and could be useful in clarifying the mechanisms by which we perceive a sweet taste. However, despite a number of investigations assessing the relationship between sweetness and the structures of sweet-tasting proteins, no common feature has been identified in either their tertiary structures or amino acid sequences. However, most sweet-tasting proteins are basic and have high isoelectric points. Here, we first review site-directed mutagenesis and chemical modification studies on the charged residues of thaumatin and lysozyme. Efforts to increase the production yield of recombinant lysozyme and thaumatin from the yeast Pichia pastoris are then described. We conclude by introducing our recent investigations into the atomic-resolution structural analysis of thaumatin, and a cell-based assay using sweet taste receptors.
著者
常石 英作
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.362, 2006-06-15 (Released:2007-06-15)
参考文献数
3
被引用文献数
1

カルノシンはβアラニンとヒスチジンのジペプチドでβアラニル・ヒスチジン,アンセリンはヒスチジン部分がメチル化されβアラニル・1メチルヒスチジンとなったものである.筋肉中に高濃度に存在するが,図1に示す通り牛肉や豚肉では主にカルノシンが,鶏肉ではカルノシンも含まれているが,アンセリンが多い.ちなみに魚ではアンセリン,ウミヘビや鯨ではバレニン(βアラニル-3メチルヒスチジン)が多い.これらは,ヒスチジンの構成要素であるイミダゾールから,イミダゾールペプチドと呼ばれ,内因性抗酸化物質としての役割を果たしている.カルノシンを摂取したラットでは,筋肉中含量が上昇し,筋肉脂質の過酸化や蛋白の酸化が抑制される.これは生理的状況下におけるカルノシンの生体内での抗酸化性を示している.また,カルノシンは脂質酸化で生成される細胞毒素(不飽和アルデヒド)を消去する.カルノシンの抗酸化力は,グルタチオンやチオクト酸と比較すると劣るものの,筋肉中の含量が非常に多いため,生体内脂質酸化物の消去に重要な役割を果たしていると考えられている.生体内で発生する活性酸素には,呼吸によるエネルギー代謝の過程で生成する水酸化ラジカル,侵入異物の分解のための窒素系ラジカル,白血球による殺菌作用で生じる塩素系ラジカルがある.植物性食品のポリフェノールやビタミンEは水酸化ラジカルに,ビタミンCは窒素系ラジカルに,アンセリンやカルノシンは塩素系ラジカルに対して抑制作用を示す.カルノシンは1.0%で肉製品の褐色化を抑制し,銅イオンによるアスコルビン酸の酸化を阻害する.アスコルビン酸とともにカルノシンを肉製品に添加して用いると,品質保持や色調安定に効果的である.アンセリンやカルノシンにおける生体pHの緩衝能も知られている.過大な負荷のかかる運動を行った場合,筋肉中に乳酸が蓄積して酸-塩基バランスが酸性側に傾く傾向を示す.この乱れを防止し,運動の持続や疲労感の軽減に役立つ.アンセリンやカルノシンを豊富に含むチキンエキスをマウスに6日間経口投与したところ,遊泳持久力が有意に向上したという報告がある.緩衝能の向上に起因する効果であると考えられている.牛筋肉の筋線維タイプとの関連では,乳酸の蓄積しやすい解糖型筋線維数の多い筋肉部位でカルノシン含量が高い傾向があり,各筋肉部位の含量は図2の通りである.しかし,アンセリンについては筋線維型との関係は認められない.
著者
平澤 マキ 志村 晃一 清水 章子 村 清司 徳江 千代子 荒井 綜一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.95-101, 2008-03-15 (Released:2008-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
4 8

アボカドの食物繊維やポリフェノールの機能性を明らかにするために,その構成成分と特性を解析した.使用したアボカドは水溶性食物繊維5.23±0.53g,不溶性食物繊維11.3±0.71g(可食部100g当たり/無水物)を含んでいた.不溶性食物繊維はペクチン画分 : ヘミセルロース画分 : セルロース画分はそれぞれ20.6% : 43% : 36.4%であり,不溶性食物繊維は膨潤性が大きく,色素吸着能はローズベンガルにおいて高い値を示した.水溶性食物繊維は鉄吸着能も高く,WSPは優れた鉄保持能力をもつことが示唆された.また,アボカドの抗酸化性は果皮が最も強く,次いで種子,果肉の順であった.果皮にはポリフェノールが多く存在し,種子,果肉は少ないことが認められた.ポリフェノールの組成をGC-MSで測定したところ,カテキン,エピカテキン,クロロゲン酸類が同定され,これらが抗酸化性に寄与していると考えられる.果皮は未利用資源として新たな食品機能性素材に利用されることが期待される.
著者
原田 恭行 小善 圭一 横井 健二 里見 正隆
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.529-537, 2016-11-15 (Released:2016-12-23)
参考文献数
46
被引用文献数
1

魚味噌仕込み時にクエン酸を添加することにより,魚味噌中のヒスタミン蓄積抑制を試みた.また,クエン酸の添加時期が魚味噌中のヒスタミン蓄積抑制効果に及ぼす影響と,魚味噌の呈味性に及ぼす影響をそれぞれ検討した.その結果,終濃度0.6%のクエン酸添加がヒスタミン生成菌の増殖を顕著に抑制し,ヒスタミンの生成を抑制した.このため,ヒスタミンの蓄積抑制効果は,クエン酸の添加時期が早いほどが大きかった.また,クエン酸の添加は,好塩菌の増殖にも抑制効果を示し,好塩菌の代謝による乳酸や酢酸等の生成を減少させた.このため,呈味性への影響は,クエン酸の添加時期が早いほど酸味を弱め,かつ旨味の変化も小さかった.これらのことから,魚味噌熟成中のヒスタミンの蓄積を抑制するには,仕込み直後にクエン酸を添加することが望ましいと考えられた.
著者
大羽 和子 渡邉 章子 開元 裕美 戸本 綾子 森山 三千江
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.499-504, 2011-10-15 (Released:2011-11-30)
参考文献数
17
被引用文献数
5

(1) 15種類の新鮮野菜のビタミンC (VCと略)量を,正確に分析定量できるHPLCポストカラム誘導体法で測定した.その結果,総VC量に占めるアスコルビン酸(AsAと略)の割合を平均すると92.8%であった. (2)野菜(15種)の調理直後の総VCの残存率は茹で調理品より,炒め·揚げ調理品の方が高かったが,酸化型VC (DHA)の割合も後者で高かった.24時間冷蔵後のAsA残存率の平均値は茹で調理品の方が高い傾向にあった.したがって,調理野菜からVCを効率よく摂るためには,調理直後に食する場合は炒め調理法が,時間をおいて食する場合は煮(茹で)調理法が好ましいといえる. (3)市販惣菜(8品)の総VC量は調理直後の値の半分以下であり,AsA量は約1/4と著しく少なかった.
著者
奥田 徹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.278-282, 2017-05-15 (Released:2017-05-26)
参考文献数
6
被引用文献数
1 3

The way of use of grape is divided into two types, i.e. table grape (eat in raw) and wine grape. In Japan, table grape left unsold are used to process to wine in history. But the quality required for table grape and wine grape is completely different. To make good quality of wine, many attentions are paid in recent grape growing. Sugar content is very important because it is converted to ethanol by fermentation. Malic and tartaric acid content is also important for sourness of resultant wine. But these compounds can easily adjust in its concentration by adding to grape juice/must. Besides these compounds, aroma compounds affect greatly to the wine quality. Aroma compounds have volatility and easily escape from liquid phase during wine-making. This effect partially causes the difference between smell of grape and wine. From this point of view, aroma-precursors considered to be more important. Aroma precursor is converted to aroma compounds during fermentation. For example, glucosidic aroma compounds have weak in smell and difficult to evaporate because of its solubility to aqueous phase by the effect of glucose attached. Once the glucose moiety is hydrolyzed with glucosidase during fermentation, it is changed to aroma compounds and is smell. Amino acids in grape berry are assimilated by yeast, and produce higher alcohol. Amino acids have no smell in grape, but their amount and composition will affect wine quality. Other aroma compounds precursors are also taken account of their concentration in grape at harvest for good quality winemaking.
著者
中村 和哉 奈良 一寛 野口 智紀 大城 哲也 古賀 秀徳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.514-517, 2006-09-15 (Released:2007-09-29)
参考文献数
15
被引用文献数
6 12

ジャガイモおよびその加工食品(製品)に含まれるγ-アミノ酪酸(GABA)含量について検討した.(1)ジャガイモ22品種を用いて,総遊離アミノ酸含量およびGABA含量について比較したところ,総遊離アミノ酸含量には品種間差(239~819mg/100gFW)が認められた.また,GABA含量も品種間差が認められ,“インカレッド”で最も多かった(61mg/100gFW).(2)加工用品種である“トヨシロ”におけるアミノ酸組成について検討したところ,総遊離アミノ酸含量は,100g当たり416±100mgであり,GABAは総遊離アミノ酸含量の約7~8%を占めていた.さらに,全総遊離アミノ酸含量とGABA含量との間に正の相関(r=0.8048)が認められた.(3)ジャガイモを原料とした製品におけるGABA含量を分析したところ,ジャガイモを主原料とする製品では100g当たり約61mg認められた.一方で,ジャガイモを主体とし,小麦粉を配合した製品では約20mg, ジャガイモを含まない製品では数mgであり,製品に用いる原料の割合としてジャガイモが多いほどGABA含量が多くなると考えられた.
著者
千々松 武司 山田 亜希子 宮木 寛子 吉永 智子 村田 夏紀 秦 政博 阿部 和明 小田 裕昭 望月 聡
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.63-68, 2008-02-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
3 8

タイワンシジミは肝臓に良いとされ台湾で食されているが,その科学的根拠は乏しい.そこで本研究では,ラットにおいてD-ガラクトサミン誘発肝障害およびエタノール急性投与誘発脂肪肝に対するタイワンシジミ抽出物の効果を検討した.D-ガラクトサミン誘発肝障害に対し,タイワンシジミ抽出物は血清AST値およびALT値の上昇を有意に抑制した.また,エタノール急性投与誘発脂肪肝に対し,タイワンシジミ抽出物は肝臓脂質の上昇を抑制する傾向を示した.また肝臓のコレステロールは有意に低下した.更に,エタノールを急性経口投与したラットの血中エタノールの消失速度を有意に速めた.これらの結果から,タイワンシジミ抽出物は肝炎および脂肪肝に対し予防効果を示し,アルコール代謝を促進する可能性が示唆された.
著者
本多 正史 石崎 太一 黒田 素央
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.443-446, 2006-08-15 (Released:2007-09-14)
参考文献数
16
被引用文献数
13 23

本評価では,(1) 1日4時間以上VDT作業を行っている労働者であり,(2) 11名中9名が「眼が疲れる」「眼がかすむ」「肩,腰がこる」を感じており,(3) 平均年齢が45.7±7.8歳のパネル11名(男性)を対象に解析を行い,以下2点が明らかになった.(1)鰹節だしの4週間継続摂取により,自覚症状に関して,眼精疲労にみられる「眼が疲れる」「眼がかすむ」「涙がでる」「眼が赤くなる」などの項目が初期値に比べて主に摂取3週目,4週目で改善傾向を示した.(2)フリッカーテストの結果,主に夕方のフリッカー値が初期値に比べて摂取4週目で有意に上昇した.前観察期間のフリッカー値のΔ(朝-夕方)の平均値を基準に層別解析を行った結果,平均以上のパネルでは,顕著にΔ(朝-夕方)が低下した.平均以下のパネルでは,ほとんど変化しなかった.以上の結果から,鰹節だし摂取により眼精疲労が改善される可能性が示唆された.
著者
恒次 祐子 芦谷 浩明 嶋田 真知子 上脇 達也 森川 岳 小島 隆矢 宮崎 良文
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.347-354, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

5種類の味と香りの異なるチョコレートに対する主観的快適感と被験者の性別およびパーソナリティの関係を検討したところ, 以下の結果が得られた.1) 女性群においては,i) チョコレート全体に対する快適感が男性群よりも有意に高いこと, ならびに個別のチョコレートについては, 苦みを強くしたチョコレートにおいて快適感が男性群よりも有意に高く, オーク材抽出物を添加したチョコレートにおいても高い傾向にあることが認められた.ii) 快適感に対する男性性ならびに女性性の有意な正の影響が認められた.2) 男性群においては,i) 快適感に対するタイプA型傾向の有意な正の影響が認められ, 特性不安の有意な負の影響が認められた.3) チョコレート別の快適感とパーソナリティとの関係について,i) 男性群においてはオーク材抽出物添加チョコレートの快適感と女性性との間に有意な正の相関が認められた.ii) 女性群においてはオーク材抽出物添加チョコレートならびに甘みを強くしたチョコレートの快適感と男性性との間に有意な正の相関が認められた.以上により, チョコレートの快適感に評価者個々人のパーソナリティが影響を与えていることが明らかとなった. 今後個人の価値観や好みを重視したチョコレートの創造を検討していく上で, 有用な示唆を与えるものと考えられる.