著者
大利 徹 佐藤 康治
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

ゲノムデータベースの精査により新規経路・酵素の存在を予測し、その検証を行った。具体的には、Nitrosomonas eutrophaでは4-アミノ安息香酸の合成に機能未知のNE1434が関与すること、Streptomyces coelicolorのglutamate-cysteine ligase様遺伝子SCO0910はergothioneineの生合成に関与すること、S.coelicolorでは、真核生物でタウリン生合成経路に関与する2つのオルソログSCO3035、およびSCO3416,/2782/2017を持つ。しかし組換え酵素を用いて検討した結果、これらはタウリンの生合成には関与しないと推定された。
著者
澤口 俊之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は、前頭連合野の作業記憶(ワーキングメモリ)過程におけるノルアドレナリン受容体(α1、α2、β)の役割を明らかにすることにあった。この目的のため、二種類の実験、すなわち「局所薬物注入法による実験」と「イオントフォレスシ法による実験」を2年間に渡って展開した。まず、数頭のサルに眼球運動による遅延反応(oculomotor delayed-response、ODR)を訓練した。この課題では、サルは数秒の遅延期の前に提示された視覚刺激の位置に記憶誘導サッケードをすることが課される。この課題を正しく行なうためにはターゲットの空間位置を遅延期の間に覚えておく必要があり、空間情報のワーキングメモリが必須である。サルがこの課題を行なっている際に、マイクロシリンジを用いて各種ノルアドレナリン受容体阻害剤を前頭連合野に局所的に微量注入し(4・8μg/μl, 3μl課題遂行に対する効果を解析した(実験1)。さらに、多連微小炭素線維封入ガラス電極を用いて、前頭連合野からニューロン活動を記録し、各種ノルアドレナリン受容体阻害剤をイオントフォレティックに投与してニューロン活動に対する効果を解析した(実験2)。そして、1) α1受容体の阻害剤prazosinやβ受容体の阻害剤propranololの注入は、ODR課題遂行に有意な影響を持たないが一方、α2受容体の阻害剤yohimbineの注入によって、ODRが特異的に阻害されること。2) Yohimbineのこの効果は記憶誘導サッヶ-ドの「精度」に特異的であり、サッケードの反応時間や速度には影響を持たないこと。3) ニューロンレベルは、prazosinやpropranololのイオントフォレティック投与によって、ODR課題の遅延期に関連するニューロン活動(メモリを担う活動)は影響を受けないが、yohimbineによって著しく減弱すること。4) ニューロン活動に対するyohimbineの減弱効果は、背景活動よりも遅延期の活動でより強く、とくに、その方向選択性を著しく減弱させること。などの諸点をあきらかにした。これらのデータを総合すると、前頭連合野におけるα2受容体の賦活がワークングメモリのニューロン過程に調節的な役割(modulatory role)をもち、この役割が欠損するとワーキングメモリを必要とする行動が障害されることが示唆される。こうしたデータ・結論は世界で初めてのものである。また、前頭連合野におけるα2受容体の機能不全と同時にワーキングメモリの障害を伴う精神疾患(分裂病やKorsakoff痴呆症、注意欠損過活動症など)の理解や治療法の改善にも寄与すると思われる。
著者
諏訪 正明
出版者
北海道大学
雑誌
北大百二十五年史
巻号頁・発行日
vol.論文・資料編, pp.301-318, 2003-02-21
著者
岡垣 理
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大學工學部研究報告 (ISSN:0385602X)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-39, 1960-06-15
出版者
北海道大学
雑誌
北大百二十五年史
巻号頁・発行日
vol.論文・資料編, pp.499-539, 2003-02-21
著者
福田 正己 町村 尚 平野 高司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2002

現地観測の結果東シベリアヤクーツクのタイガ内に攪乱と不攪乱個所のキャノピーを超える観測タワーを設置し、水・熱・二酸化炭素収支の連続モニタリングを行った。そのための機器(CO2/H2Oアナライザー、超音波風速計、土壌水分計)を用いた。毎年4月末に現地入りし、2本のタワーを設置して10月までの連続観測を実施した。更にオープントップチャンバー法により土壌呼吸の連続観測を行った。永久凍土融解過程をモニタリングするために、対象サイトでボーリング調査を毎年実施した。伐採前にはNEPとして86mg/m2・dayの二酸化炭素が森林に吸収されていた。しかし伐採後には日射の増加で地中温度が上昇し、土壌中の有機物分解が促進されて大気側への二酸化炭素の放出に転じた。更に撹乱で地表面での熱収支バランスが乱れ、永久凍土の上部での融解が進行した。その結果地中への伝達熱が増加し永久凍土は約10%より深くまで融解した。こうした融解では上部に含まれるメタンガスの放出を促す。攪乱による温暖化の促進タイガの攪乱のおもな原因は森林火災である。本研究では森林火災の代わりに全面伐採による影響評価実験を行い、タワー観測・土壌呼吸観測・永久凍土融解観測を行った。それらの結果から地球温暖化へ多大の影響を与えることが明確になった。(1)火災時の直接的な二酸化炭素放出(2)火災後の土壌呼吸増加による二酸化炭素の放出(火災後数十年間)(3)火災跡地での凍土融解によるメタンガス放出(火災後数百年間)いずれも地球温暖化を加速させる効果となる。
著者
小野 麻衣子
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究目的マウス飼育法として、古くから尾を持ち上げて移動する方法が用いられてきた。近年、このハンドリング法が、マウスの不安や恐怖、ストレスを誘導し、行動学における表現型に影響を与えることが明らかとなった(Hurst et al, Nat Methods, 825-826, 2010)。実験動物はヒト疾患のモデルとして、その発症機序の解明、予防や治療法の開発に重要な役割を担っている。本研究ではハンドリングがマウスの表現型、とりわけ慢性疾患に与える影響を解析した。研究方法マウスは、慢性腎症モデルマウスICGNを用い、離乳後4週齢から、以下の4群のハンドリング方法で、週5回のハンドリングと週1回のケージ交換を行った。a)尾を掴み逆さに持ち上げて、そのまま30秒間保持した後、ケージに入れる。b)マウスを両手ですくい上げるように持ち、30秒間自由に行動させた後、ケージに入れる。c)マウスがプラスチック製トンネルの中に入るのを待ち、トンネルごとケージに入れる。d)コントロール群。ハンドリングを全く行わず、週1回のケージ交換をマウスの尾を保持する方法で行う。マウスは8週齢までハンドリングを行った後、血液学検査(ヘモグロビン濃度、BUN, クレアチニン)と腎臓の病理組織学的検査(PAS染色による糸球体硬化症の重篤度の差を判定)を行った。研究結果血液学検査の結果では、ハンドリングによる腎疾患重篤度の差は認められなかった。病理学的検査では、雌雄ともにコントロール群に比べハンドリング群において疾患の重篤度が大きくなる傾向がみられた。雌ではコントロール群に比べ尾を掴むハンドリングを行った群で重篤度が有意に高い結果となった。以上の結果から、ハンドリングによるストレスの違いが、腎症モデルマウスの疾患重篤度に影響を与える可能性があり、研究目的によって、マウスの日常の取り扱い方法に注意が必要であることが示唆された。
著者
大本 直哉
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2019-03-25

Recent discoveries and insights depended on some experimental results have already deeply impacted our understanding. Although the standard model in particle physics is consistent with almost all the experimental results obtained so far, there also exist unsolvable problems, even in the cosmology. It suggests that our standard model should be extended, beyond from the electroweak scale to higher energy scale. It is the time that we have to solve these serious problems facing now using all the knowledge we have gained until now. In this thesis, we have studied these relational extended models by considering the following two approaches. First, we concentrate on the inflation models as a high energy physics in the early universe. So far, there are found many kinds of slow-roll inflation models, in this thesis, we pursue mainly inflation related to axion. Typically, the axions are particularly attractive inflation candidates because they have shift symmetry to all orders in perturbation theories. Motivated above a key ingredient, we have studied an axion inflation model recently proposed within the framework of type IIB superstring theory, where we pay particular attention to a sub-Planckian axion decay constant. Further, we study a general class of small-field axion inflations which are the mixture of polynomial and sinusoidal functions suggested by the natural and axion monodromy inflations. In such a case, the axion decay constants, leading to the successful axion inflations are severely constrained in order not to spoil the Big-Bang nucleosynthesis and overproduce the isocurvature perturbation originating from the QCD axion. We, in turn, find that the cosmological favorable axion decay constants are typical of order the grand unification scale or the string scale which is consistent with the prediction of closed string axions. Our axion potential can lead to the small field inflation with a small tensor-to-scalar ratio, and a typical reheating temperature can be as low as GeV. Second, we have concentrated on about the cosmology in the viewpoint of supersymmetry phenomenology. After we briefly review a few variations on the basic picture of the minimal supersymmetric standard model(MSSM) and its application to the cosmology, we consider domain walls in the Z3 symmetric Next-to-MSSM. The spontaneous Z3 discrete symmetry breaking produces domain walls, and the stable domain walls are problematic. Thus, we assume the Z3 symmetry is slightly, but explicitly broken and the domain walls decay. Such a decay causes a large late-time entropy production. We study its cosmological implications on unwanted relics such as moduli, gravitino, lightest supersymmetric particle(LSP) and axion. Moreover, we also propose an Affleck-Dine leptogenesis model with right-handed neutrino as a minimal extension of MSSM, which is based on LHu direction, and we have pointed out that sufficient amounts of baryon asymmetry can be generated in our model. Through this thesis, we hope that our scenario would clearly contribute to our understanding of the feature of the universe.
著者
大本 亨 佐治 健太郎 加葉田 雄太朗
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

特異点判定法を用いた研究として,以下のテーマを扱った.(1)曲面の射影微分幾何における局所理論(ダルブー・ヴィルチンスキ)の復興とその応用を目指し,特異点論の手法による研究を進展させた.(2)幾何的代数と特異点論を用いて線織面や線叢などに現れる特異点の微分直線幾何を発展させ,応用幾何学における新しい可能性を示唆した.(3)射影空間内の曲線および曲面に係る古典的数え上げ幾何を整理して,ヴィジョン理論への特性類理論からの新しいアプローチを提案した.(4)判定法の基礎付けとして,判別集合(自由因子)の対数的微分加群とA-接空間の関係について考察した.
著者
ゲーマン・ジェフリー ジョセフ 飯嶋 秀治 小田 博志 マーティン カイリー・アン ルアレン アン エリス バヤヤナ ティブスヌグエ (汪 明輝)
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、最終報告書の編集にアイヌ民族当事者たちのインプット・フィドバックも含め、当事者たちの声を研究プロジェクトの中心に据えること=アクション・リサーチ研究を目指してきた。先住民族による合同研究会を継続的に実施することにより、先住民族アイヌの「知」を規定する様々な要因を特定できた。また、先住民族同士の合同研究の在り様に関する斬新な理論・方法論を発見した。このようにアイヌ民族の「知」を規定する社会的構造と文化伝承のメカニズムの両面を同時に取り入れた研究として、本研究はこの国初と言って良いであろう。国際発表をしたところで、研究方法は称賛され、注目もされている。
著者
伊福部 達 井野 秀一 泉 隆 川嶋 稔夫 高橋 誠
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

電子義手や機能的電気刺激およびテレイグジスタンス型ロボットや人工現実感などの分野では触感覚をどのように人間の皮膚にフィードバックさせたり呈示させるかが大きな課題となっている。本研究では、これらの課題に応えるために、材質感のような触覚の質に関する感覚がどのような物理的要因で規定されるかを心理物理実験を通じて調べ、触感覚をできるだけ忠実に呈示するシステムを提案した。また、水素吸蔵合金を利用したアクチュエータを利用し、触感覚ばかりでなく上腕に力感覚を呈示する装置の開発を行った。これらの呈示システムを感覚フィードバック型ハンドに組み込んで評価を行い、その有効性を確かめた。以下に、得られた結果を要約する。(1)表面粗さ、粘度および熱容量の異なる物体を指先で触れたとき、粒子径が30μmを境に「さらさら」感から「ざらざら」感に移行すること、粘度17dPa・sで「ぬるぬる」感が最大になること、皮膚温度の時間パターンが材質の識別の手がかりとなることが分かり、ペルチエ素子により皮膚温を可変にすることで、ある程度の材質感を呈示することができることを実証した。(2)物体を把持したときの「ずれ弁別閾」は20μm-30μmとなり、ずれ弁別閾には方向依存性があること、皮膚温が32℃のときに弁別閾が最も低くなることが分かった。水素吸蔵合金を利用したアクチュエータを設計し、アクチュエータを上腕に装着して力情報を呈示した結果、仮想物体の重量感を知覚させることができることが分かった。以上から、触感覚に関する多くの形容詞が表面粗さ、粘性及び温度の3つのパラメータで表現できる可能性が示された。今後は、本課題で得られた知見や技術を基に、感覚フィードバック型ハンドのための触感覚呈示システムを構築していきたい。
著者
原島 秀吉 紙谷 浩之 山田 勇磨 畠山 浩人 馬場 嘉信 秋田 英万
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

我々が独自に開発したin vivoがん送達型多機能性エンベロープ型ナノ構造体(PPD-MEND)に、がん細胞で選択的に発現している遺伝子に対するsiRNAを搭載し、抗腫瘍効果を誘起することができ、かつ、安全性の高い人工遺伝子デリバリーシステムを開発し、がん治療へと応用することを最終目標とした。その結果、shGALA修飾PEG-MENDは、静脈内投与により腫瘍組織でmRNAをノックダウンし抗腫瘍効果を誘起できることがわかった。