著者
伊丹 貴晴
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

アシドーシスはカテコラミン反応性を減弱させ心収縮力を低下させることが知られている。本研究では、カテコラミンβ1受容体を介さずにアデニル酸シクラーゼを賦活化することで強心・血管拡張作用を得るコルホルシン(COLF)のアシドーシス時における心機能改善効果を検討した。6頭のビーグル犬に正常時と呼吸性アシドーシス時とにおいてCOLFとカテコラミンであるドブタミン(DOB)とを交互に投与した。両薬剤とも用量依存性に心拍出量および心拍数を増加させ、全身血管抵抗を低下させたが、その作用は正常時と比較してアシドーシス時では抑制された。DOBは用量依存性に肺動脈圧を増加させたが、COLFでは増加させなかった。
著者
高前田 伸也
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

FPGAがもつオンチップメモリや再構成可能ロジックなどのリソースを最大限活用し最大性能を達成する,マルチパラダイム型高位設計フレームワークの実現に向けて研究を行った.研究代表者が以前より開発を進めている,プログラミング言語Python上のドメイン固有言語として実装したハードウェア設計ライブラリVeriloggenをベースとして,逐次処理,ストリーム処理,レジスタ転送レベルの3つの異なるパラダイムを持つ高位合成コンパイラを実現した.また,本フレームワークをバックエンドとして用いて,ディープニューラルネットワークを主な対象とした,データフロー型ハードウェア・コンパイラの開発に取り組んだ.
著者
深谷 健一 入江 敏博
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大學工學部研究報告 (ISSN:0385602X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.115-126, 1970-10-31
著者
木口 学
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年度は溶液内においてFe,Co,Ni,Pd,Pt,Rh遷移金属のナノ接合を電気化学STMを用いて作製した。その結果、水素発生条件のもとで超高真空、極低温と同様の量子化伝導を観測することに成功した。従来、室温ではこれら遷移金属の量子化伝導を測定した例は少なく、溶液内室温でナノ接合を安定化した意義は大きい。溶液内水素条件では擬似的に超高真空、極低温と同じような環境が実現したものと考えている。特にNi,Pdの場合は単原子ワイヤー形成を示唆する結果が得られた。金属の単原子ワイヤーはこれまでAu,Pt,Irなど一部の金属に限られ、遷移金属の単原子ナノワイヤー作製に成功した例はない。本研究の結果は、溶液内が新たなナノ構造形成の場となりうる事を示している。また昨年度まで作製法を確立した金属ナノ接合を利用して単分子の伝導度計測も今年度は行った。現在、分子エレクトロニクスヘの応用から単分子の伝導特性が注目を集めている。しかし分子の存在、架橋状態が不明、分子と金属の接合部がAu-Sに限定など単分子の伝導特性の研究には課題が多い。今年度、超高真空、極低温において単分子の振動スペクトルと伝導度の同時計測の研究をおこなった。そしてPt電極に架橋した水素、ベンゼンについて架橋状態を規定して単分子の伝導度を決定することに成功した。また溶液内において新たなアンカー部位の探索を目指して単分子伝導計測を行った。電極金属としてよりフェルミ準位の状態密度が高いPt,Ni、末端部位としてNC,NH_2,COOHなどに注目して実験を行った。その結果、Au-CN,Pt-CN,Pt-Sなどの新規接続部位をもつ単分子伝導計測に成功し、特にPt-Sでは従来のAu-Sより1桁高い伝導特性を示すことを明らかにした。
著者
山中 康裕
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

近年、科学と研究者の理想が無いままに、被引用数やインパクトファクターを安易に評価 指標とした歪みとして、組織や研究者の業績評価における論文崇拝主義や、直接的な課題解決を得意とする学問分野への偏重を招いている。本研究では、研究者コミュニティーが、自ら研究活動を評価し、それに基づく社会への説明責任を果たす文化を創造することを目指す。社会の中の科学の縮図として、地球科学分野を取り上げる。研究活動の把握(IR)として、国内各研究者への情報収集、聞き取りやアンケートにより「知の創造」に対する価値基準の国際比較を行う。チューニングの概念にもとづき、社会と研究者コミュニティーが納得する評価指標を提案する。
著者
原 暉之 有馬 学 中見 立夫 酒井 哲哉
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

黒木親慶(1883-1934)は宮崎県出身の陸軍軍人(陸士卒業第16期)で、第一次大戦中ロシア従軍武官を勤め、ロシア革命を現地で観察したのち、シベリア出兵に際して親日派・反革命派の軍人アタマン・セミョーノフの軍事顧間として活動するなど、ロシア通の参謀将校として活躍した。また、ロシア・シベリアで荒木貞夫(9期、のち睦相、文相)と行動をともにしたことから、1920年に帰国したのちも荒木との関係は密接であり、昭和期には荒本に連なる皇道派人脈の中で重きをなした。本研究は、これまで学術調査の対象となったことはなく、ほとんど手つかずのままに残されてきた黒木親慶文書(宮崎県立図書館所蔵)に対し、学際的・総合的なアプローチを研究する試みるとして企画されたが、現地調査を含む研究活動の結果、ロシア極東近現代史、日本近代政治史、東アジア国際政治史の各分野において多くの知見を得ることができた。とりわけ、ロシア極東近現代史の分野では、アタマン・セミョーノフの思想と行動の未解明部分が判ってきたし、日本近代政治史の分野では皇道派人脈について、また東アジア国際政治史の分野ではモンゴルをめぐる国際環境について、従来の研究とは異なる角度から光が当てられることになった。
著者
湊 正雄
出版者
北海道大学
雑誌
北大百年史
巻号頁・発行日
vol.通説, pp.893-907, 1982-07-25
著者
上田哲男
出版者
北海道大学
雑誌
電子科学研究
巻号頁・発行日
vol.2000, no.8, 2001-03-05
著者
平田恵啓
出版者
北海道大学
雑誌
電子科学研究
巻号頁・発行日
vol.1998, no.6, 1999-03-10
著者
石原(安田) 千晶
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本研究は、ヤドカリのオスが 1. メスをめぐるオス間闘争、あるいは 2. 強度の低い小競り合いのような通常の相互作用から優劣を構築し、劣位個体がそれに基づいた個体識別を確立して、同一の優位個体と再遭遇した際に闘争を避けるか、また、そのようにして確立した劣位個体の個体識別が、再遭遇時に優位個体の状況が変化することで、より速やかに破棄されるかを検証するものである。本年は、主たる対象種であるユビナガホンヤドカリにおいて、前年度からの実験・解析を進め、以下3編の成果発表に至った。まず、野外の交尾前ガードペアを用いたメスをめぐるオス間闘争において、オスの大鋏脚の重要性と挑戦者が闘争前・闘争中に行う評価戦術を明らかにした研究が、研究代表者を筆頭著者として国際誌に掲載された。また、共同研究として、本種の一腹卵数と卵径が繁殖期を通じて経月変化すること、並びに大鋏脚サイズの性的二型が年間の繁殖スケジュールと対応してその強度を変化させることを実証し、研究代表者を対応・筆頭著者として国内誌と国際誌に発表した。これらに加えて、本種のオスが、オス間闘争での優劣を介して、過去の闘争相手を個体識別していることを明らかにした。すなわち、観察対象の劣位オスは、過去の闘争で自らが敗北した優位オスと遭遇した場合に、そうではない優位オスと遭遇した場合と比較して、闘争を仕掛ける頻度が大幅に低下した。本成果も国内学会にて発表されている。
著者
冨田 武照
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

サメ・エイ類を含む軟骨魚類は、現在でも生きている原始的な脊椎動物と考えられており、その生殖システムを解明することは私たちの生殖システムの起源を知る上で極めて重要である。特にサメ・エイ類には卵生(卵を産む)と胎生(赤ちゃんを産む)のグループが共存しており、私たち哺乳類に見られる胎生がいかに進化してきたのか明らかにする格好の材料である。私は、沖縄美ら海水族館と共同で、卵生のトラザメが呼吸システムをいかに獲得するのか詳細に調査を行った。調査には実体顕微鏡による行動解析、組織切片の観察などを中心に行った。その結果、トラザメの胎児は卵殻の中にいる期間に大きく呼吸システムを変化させることが明らかになった。具体的には、前半の期間には外鰓を用いて呼吸を行うが、後半の期間には筋肉や骨格系の発達に伴って水をポンピングする能力を獲得し、内鰓を用いて呼吸を行うようになる。このような呼吸システムの変化は脊椎動物の進化の初期にすでに獲得されていた可能性がある。さらに、私の過去の胎生のエイ類の研究によって得られた結果は、トラザメで見られた呼吸システムの変化は胎生のサメ・エイ類でも見られる可能性があることを示している。この結果は、卵生と胎生はまったく異なる生殖システムなのではなく、ある程度同じシステムを共有していることを示唆している。胎生と卵生のシステムに今回共通性が見出せたことで、卵生から胎生への進化の過程の一端が解明できたと評価できる。
著者
柏柳 誠 松岡 一郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

フェロモン受容細胞は神経細胞の一種であり、フェロモン情報を中枢に伝えるためには、電気的信号に変換することが必須であるが、その性質はほとんど不明であった。カメのフェロモン受容細胞が存在する鋤鼻器感覚上皮にアデニル酸シクラーゼの活性化剤であるforskolinを与えたところ、フェロモン受容細胞で神経インパルスの増加が見られたことから、フェロモン受容細胞にアデニル酸シクラーゼとcAMP依存性チャネルが存在することが示唆された。そこで、電気生理学的にcAMP依存性チャネルの存在の確認し、さらにその性質を解析した。カメのフェロモン受容細胞に各種濃度のcAMPを投与したところ、濃度依存的に内向き電流応答が生ずることを見出した(J. Neurosci.,1996)。濃度依存性は、嗅細胞で得られたものと類似していた。この際、膜コンダクタンスは上昇した。内向き電流が生じている時にランプ波を与えることにより逆転電位を調べたところ、カメの嗅細胞の逆転電位に近い値が得られた。以上の結果から、カメのフェロモン受容細胞には嗅細胞と同様のcAMP依存性チャネルが存在することが明らかになった。カメの鋤鼻器感覚上皮から調製した膜標品を用いて、アデニル酸シクラーゼ活性のforskolinおよびGTP依存性を調べた。フェロモン受容細胞におけるアデニル酸シクラーゼ活性は、嗅上皮と同様であった(Biochem. Biophys. Res. Commun.,1996)。さらに、forskolinをフェロモン受容細胞に与えたところ、副嗅球から誘起脳波を測定できたことから、cAMP依存性経路を介した応答が中枢に伝達されることを確認した(Chem. Senses, 1996)。ヘビなどでは、フェロモンがcAMP濃度を変化させることが報告されていることから、爬虫類におけるフェロモン受容はcAMPを介して行われている可能性が考えられる。
著者
白 尚燁
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2016-03-24

The present dissertation examines the Tungusic languages from the perspective ofareal linguistics, centering on the southern Bikin dialect of Udihe. This study mainlyconsists of four syntactic issues: (i) third person marking on finite indicative forms, (ii)the converbal ending *-mi, (iii) conditional forms, and (iv) correlatives.First, taking the four typological parameters, namely obligatorily distinct,optionally distinct, non-distinct, and non-person marking types in terms of numberdistinction, the analysis demonstrates distinct patterns of third person marking on finiteindicative forms in Tungusic in accordance with areal distribution, strikingly similar tothose of neighboring languages. Second, the functional differences of the converbalending *-mi among the Tungusic languages are analyzed with the employment of thecross-linguistic morpho-syntactic and semantic typological standards of converbs froman areal perspective in relationship with the adjacent languages. Third, based on switchreferenceand semantic classification for conditionals, different syntactic characteristicsof conditional forms in Tungusic according to geographical distribution are clarifiedfrom the viewpoint of areal linguistics. Lastly, correlatives, the WH pronoun in thesubordinate clause corresponding with the WH or DEM pronoun in the main clause, arerevealed to show gradual syntactic variations among the Tungusic languages insimilarity with those of Russian and Chinese correlatives depending on geographicalposition, in terms of correlative types and verb forms in the correlative clause.In conclusion, the syntactic differences among the Tungusic languages stronglycorrelate with areal distribution, classified into three groups; (i) North Tungusic, (ii)East Tungusic, and (iii) South Tungusic. First of all, North Tungusic, spoken in thenorthern Siberian region, shares similar syntactic characteristics with Kolima Yukaghir,Sakha, Russian, and Mongolic. Second, East Tungusic in the Russian Far East retains thegrammatical features of Russian, Mongolic, and Chinese at low or intermediate levels.Third, South Tungusic languages inside the Chinese border are heavily influenced byMongolic and Chinese. Consequently, the areal-based distinctions among three Tungusicgroups at the syntactic level are attributed to the influences from different neighboringlanguages and different degrees of influence from the same adjacent languages.