著者
星野 洋一郎
出版者
北海道大学
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 地域事業 地域イノベーション創出総合支援事業 シーズ発掘試験
巻号頁・発行日
2008

ハスカップの果実には苦味を呈するものがあり、利用上の問題となっている。苦味成分ロガニンはイリドイド配糖体であり、健胃、血圧降下、抗菌性などの効果をもつ生薬として利用されている。そこで、ロガニンの供給原料としてこれまで未利用の部位(葉)に着目し、ロガニン含量の高い系統の選抜、ロガニン含量の季節変動の解析を進める計画である。
著者
市原 耿民
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

植物病原菌由来の植物毒素類は病徴の発現に関わるばかりでなく、植物調節物質など多様な生理活性を示すことで注目されている。具体的にはバレイショ細胞の肥大や塊茎誘導活性を持つコロナチンやトマトの宿主特異的毒素であるAAL-毒素を対象にこれらの高効率合成法の開発を目的として以下の成果を上げた。コロナチンは牧草イタリアンライグラスかさ枯病菌の産生毒素で、他の数種の細菌病菌も同じ毒素を生産している。コロナチンの化学構造は分光学的データ、化学反応、合成、X-線構造解析などにより決定したが、インダノン骨格を有するコロナファシン酸とアミノ酸であるコロナミン酸がアミド結合した特異な化合物である。最近コロナチンは植物ホルモンとして認識されつつあるジャスモン酸との構造ならびに生理活性との類似性が指摘され、コロナチンの方が高い活性を示すことから、ジャスモン酸の関与する生理現象を解明するための最も重要なプローブ化合物と考えられる。応用面ではセイヨウイチイの植物体をコロナチン処理することにより、抗癌剤タキソ-ルの生産性向上に役立つことも明らかとなった。シクロペンテノンを出発物質として、柴崎らの開発した不斉マイケル反応により9段階、通算収率25%で光学純度98%以上のコロナファシン酸を得ることに成功した。コロナミン酸はRーリンゴ酸より環状サルフェートを経て通算収率30%で(+)-コロナミン酸を得ることが出来た。最後にコロナファシン酸とコロナミン酸を水溶性ジアルキルカルボジイミドを縮合剤としてアミド化し、保護基を除去して高収率でコロナチンを合成した。この合成法により幅広い生物活性試験が可能となった。
著者
坪田 敏男 下鶴 倫人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、なぜクマは体脂肪率30~40%の肥満状態でも脂肪肝や高脂血症を発症しないのか、その特徴的な体脂肪蓄積メカニズムを明らかにすることを目的に、秋田県北秋田市マタギの里阿仁クマ牧場において、ツキノワグマを用いて行われた。麻酔下で血中糖および脂肪濃度測定、静注糖負荷試験ならびに脂肪組織バイオプシー等の実験を行った。その結果、ツキノワグマにおける冬眠前時期の体脂肪蓄積の増大は、単に摂食量だけでなく、生理・代謝機構によっても調節されていることが明らかとなった。
著者
櫻井 義秀
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
vol.128, pp.33-94, 2009-07-10
著者
櫻井 義秀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、第一に、現代の情報化社会で言説がいかに生成されるか、その過程をオウム真理教事件に関わる言説に則して見ていき、現在流通している様々な言説を共通の概念枠組みで記述した。第二に、オウム真理教がなぜかくも急速に信者を獲得・動員して犯罪を行い得たのかという疑問への説明として最も流布し、しかも社会的影響力を持ったマインド・コントロール論を取り上げ、オウム真理教現象の構成のされ方、論者の視点の問題点を社会学的に吟味した。また、川瀬カヨ氏によって設立された天地正教が、1995年に十勝清水町御影地区において教団の宿泊施設を建設しようとしたが、地域住民の反対運動が起き、町議会も建設中止の陳情を採択するに至った。天地正教は1988年の宗教法人化以来、霊感商法との関係が弁護士会等で問題にされていたが、1996年の弥勒祭、浄火祈願祭において二代目教母が下生した弥勒として統一教会の創始者文鮮明夫妻を迎えると宣言した。本事例は、新宗教教団が地域社会にいかに定着していくかという問題を示していたが、天地正教はこれに失敗した。本論文集には、上記の2論文以外に、新宗教教団の形成過程と地域社会変動の当初の研究対象教団であった、天照教調査の経過報告と、猪瀬優理「宗教とジェンダー -創価学会を事例に-」、大倉大介「情報受容に関する一考察-オカルトに関する情報を中心に-」、蔭山茂樹「新宗教教団における入信・回心・献身-統一教会・原理研究会を事例に-」の4論文を加えて、現代宗教を考察する視角を多方面から検討してある。
著者
吉田 邦彦 遠藤 乾 辻 康夫 丸山 博 ゲーマン・ジェフリー ジョセフ 井上 勝生 上村 英明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-07-19

第1に補償問題に関する研究はかなり進捗した。そのうちの1つめとして主力を注いだのは、先住民族研究の中のアイヌ民族に関するもので、2016年4月発足の市民会議(代表者は、分担者丸山)を本年度も鋭意続行し(2017年3月、6月、10月)、その報告書も公表した。関連して、海外の研究者との関連も密にし、コロラド大学でのアメリカ原住民研究者との意見交換(2017年5月)、アラスカ大学でのアラスカ原住民研究会議報告及び意見交換(2017年4月)(ニューメキシコ大学には前年度訪問(2017円1月))、北欧での北極圏会議の参加,ウメオ大学での北大交流会では、特にサーミ民族との比較研究に留意して意見交換をし、講演も行った(2017年6月、2018年2月)(オーストラリアのアボリジニー問題の比較研究は、前年度末(2017年3月)にオーストラリア国立大学で講義)。近時のホットな問題である遺骨返還について、ベルリン自由大学のシーア教授とも意見交換した(2017年7月)。補償問題の2つめは、済州島の悲劇に即して,ノースキャロライナ大学でのシンポを主催し、アメリカの補償責任との関係で、連邦議員とも意見交換した(2017年5月)。済州大学との提携での学生も交えたシンポも例年通り行っている(2017年8月)。さらにこの関連では、奴隷制に関わる補償論調査のためにアラバマ大学を初訪問し(2017年10月)、さらにチュレーン大学での補償問題のシンポで報告した(2018年3月)。第2に、移民問題との関係では、北大のサマーインスティチュートの一環で、UCLAのモトムラ教授、マイアミ大学のエイブラハム教授、トルコの中近東大学のカレ教授を北大に招聘してのシンポ及び講義・討論を実施した。さらにこの問題群を深めるのは、今後の課題である。関連して、メキシコ国境の環境問題についても調査する機会も得た(2018年1月)。
著者
加藤 重広
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究院紀要 (ISSN:24349771)
巻号頁・発行日
vol.161, pp.35-49, 2020-12-18

本論は,広義の言語研究の一環として収集されたデータや関連資料がどのような危機にあるか,また,それらのデータや資料(以下,言語データ)を継承・保存する上でどんな課題があるか,また利活用に際して遵守すべき研究上の倫理とはどのようなものなのか,について論じるものである。
著者
古山 若呼
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

エボラウイルスのGPに対して誘導される抗体の一部はin vitroでウイルスの感染を増強することが知られている(抗体依存性感染増強現象Antibody-dependent enhancement: ADE)。この現象は、デングウイルスを含む多くのウイルスで報告されており、主に抗体がFcγレセプターIIa (FcγRIIa) を介して細胞とウイルスとを架橋し、ウイルスの吸着効率が上昇することによって引き起こされると考えられている。さらに、エボラウイルスではFcγRIIaだけではなく、補体成分であるC1qおよびC1qレセプターを介したADEも報告されている。しかし、ADEの詳細なメカニズムは明らかとなっていない。そこで、本研究ではADE抗体存在時のエボラウイルス感染における宿主細胞内シグナル経路やウイルスの侵入経路を、ADE抗体非存在時の感染と比較することによって、ADEに特異的なメカニズムを分子レベルで解明することを目的とした。昨年度は、エボラウイルスに対する抗体がADEを引き起こすためは、宿主細胞のFcγRIIaを介したシグナルであるSrc Family PTKsが重要であることを、実際のエボラウイルスを用いて明らかにした。また、ADE抗体がFcγRIIa下流のSrc Family PTKsを介したシグナル伝達経路を活性化し、マクロピノサイトーシス/ファゴサイトーシスを誘導することによって細胞へのウイルスの取り込み効率を上昇させ、その結果、感染増強が引き起こされていることを明らかにした。本年度は、これらすべての結果をまとめ論文を執筆しPLoS Pathogensに掲載された。
著者
深澤 倫子
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.89-94, 2006-03-22

氷や雪のもつ "滑りやすさ" は,スキーやスケート等のウインタースポーツには欠かせない性質である.この "滑りやすさ" の原因は,氷表面に存在する液体状の層(擬似液体層)にあると考えられている.氷結晶は,その表面に擬似液体層を持つことにより,成層圏におけるオゾン破壊や雷雲の帯電等,様々な自然現象を引き起こす.本稿では,最近の分子動力学計算による研究を中心に,氷表面の構造とダイナミクスについて解説する.