著者
Hanley Sharon
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

若い女性の子宮頸がんが増加しており、この多くの女性達は子宮頸癌検診を受けていない。本研究は、受診率向上へのHPV自己採取検査(SS)の有効性を検討した。検診受診者のSS道具の受入れや安全性に関する実現可能性の研究と、30歳未満の道具の受入れに関する質的研究を行った。職場健診で、医師による子宮頸癌検診とHPV検査の前に受けたSSは、痛みと恥ずかしさが有意に少なく、よりリラックスでき、指示も分りやすいと回答した。安全性への懸念は報告されていない。しかし、道具が注射器や台所用品のようだとの若い女性の感想があり、小さめの道具が好まれる傾向があった為、これからより小さい道具を用いた研究を行う予定である。

4 0 0 0 OA 核生成

著者
木村 勇気 川野 潤 田中 今日子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

核生成は物質形成の始まりであり、物理的、化学的なメカニズムの解明は多分野にまたがる非常に重要な課題である。本研究では、1)気相からの核生成実験、2)計算機シミュレーション、3)核生成の透過電子顕微鏡(TEM)中その場観察実験の3つのアプローチを行うことで、核生成と前駆体のかかわりを直接的に示すことを目的としている。本年度は、それぞれに関して、以下に記す実績が得られた。1)気相からナノ粒子が生成する場合であっても、初めに生成したクラスターが成長ユニットとなり、方位をそろえて接合しながら成長することで、最終生成物が形成することが分かった。結晶成長分野で最近注目されている多段階核生成の解明に迫る成果であり、論文としてまとめてNanoscaleに報告した。2)昨年成功した、最大1500万の希ガス分子(Lennard-Jones分子)を用いた長い待ち時間の計算による、気相から過冷却液滴への核生成と液滴からの結晶化という多段階核生成過程の再現をまとめ、Physical Review Eに報告した。3)コンクリートの劣化を防ぐ為に使われるシリカ粒子と水酸化カルシウム溶液を用いて単純化したコンクリート化の初期過程のTEM中その場観察実験を行った。その結果、まずシリカ粒子の膨潤によってコンクリート内の細孔が埋められていき、その後、カルシウムケイ酸塩水和物が形成して粒子同士をつないでいくことで固化が進むプロセスを捉えた。わずか0.03 nm/秒というシリカ粒子が膨潤する典型的な速度の実測にも成功した。溶液セルを用いたTEMその場観察実験により、他の手法では殆ど不可能である個々のナノ粒子の水和による膨潤や溶解、成長の微小な速度を求めることが可能になった。本成果を論文としてまとめ、Industrial & Engineering Chemistry Researchに報告した。
著者
栃内 新
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

同じ個体が有性生殖と単為生殖を使い分けるミジンコの単為生殖過程では、'減数しない減数分裂'により2倍体となった卵が発生を開始することがわかった。卵巣では、成熟卵が第1減数分裂中期で受精を待ち、精子の侵入がないまま排卵されると分裂を途中で停止し並び直した染色体が次の分裂を行い、単為発生する。一方、受精が起こると減数分裂が進行し、卵核と精子が融合して2倍体となって発生するという仮説を立て、検証中である。
著者
橋本 雄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の課題は、室町期の日本がどのように東・東南アジアの異文化を摂取したかを究明することにある。対外関係史はもっぱら接触交流面に注目してきたが、そこで行き交う文物や思想がどこにどのように辿り着くのか、そこまで見通すことを目指している。というのも、ある外来の文物が日本に移入・翻訳され、既存の日本文化と融合していく様が分かれば、当時の価値観や世界観が却って浮き彫りとなるからである。具体的には、(1)貴金属の生産・贈与・流通、(2)禅宗の理念と足利家肖像との関係、(3)鉄炮伝来の契機や時期、(4)画僧雪舟の入明の史的評価など、様々な文化現象に着目し、もって政治社会史を豊かにするように努めてきた。
著者
宗原 弘幸
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

行動観察、受精生理および遺伝学的手法により、本課題を遂行した。その結果、ヨコスジカジカは産卵後に雄が卵に放精する、非交尾種であることが判明した。しかし、精子の運動活性は海水中よりも体液と等張でNa^+存在下で最も高く、特に卵巣腔液中では極めて長期間活動する。媒精、受精は産卵時に放出される卵巣腔液中であることから、非交尾カジカはすでに交尾への準備が進んでいることが示唆された。また、卵巣腔液中で受精可能な点は体内配偶子会合型の交尾種と相違した。その要因は卵巣腔液中のCa^<++>濃度の違いで、カジカ類では交尾習性の進化の際に、卵巣腔液中のCa^<++>濃度を下げる生理的メカニズムの変化があったことが示唆された。卵巣腔液の役割として精子の貯留や活性保持の他に、ケムシカジカでは交尾の際の精子受け渡しの媒介となることが水槽内観察より明らかになった。本種の交尾行動は、一連の求愛儀式を経た後、雌の生殖口から管が出され、さらにそこからゼリー状卵巣腔液が放出され、そのゼリーの向かって放精されるというもので、精子が絡みついてゼリーの一部が再び雌の卵巣内に収納されることで交尾が完了する。ペニスがないカジカも交尾をするという、本行動観察結果は、カジカ科魚類にはかなり交尾をする種がいることを示唆した。交尾行動は繁殖生態の上で、父性のあいまいさをもたらす。特に雄が卵を守るニジカジカの場合、重要な問題である。そこでDNAフィンガープリントで、保護雄と卵の父性およびいつ交尾した雄が有利かを調べた。その結果、繁殖期の終期では雄と卵には父性がないこと、および最初に交尾した雄は多くの子を残せることが分かった。本研究結果は、卵の保護は雄にとって直接的な利益が無いことが示され、卵保護の進化に父性の信頼性は必ずしも平行しないこと場合があることが分かった。最後に、配偶子会合型、交尾種の地理的出現を調査する準備段階として、アラスカ産のカジカ類の繁殖期を把握する目的で、キナイ半島リサレクション湾の仔稚魚サンプルを調べ、春季に10種のカジカ科魚類が出現することが分かった。
著者
南 雅文 金田 勝幸 井手 聡一郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

脳内分界条床核において、神経ペプチドであるCRFとNPYによる神経情報伝達が、痛みによる不快情動生成において相反的な役割を果たすことを明らかにした。また、これら神経ペプチドが分界条床核II型神経細胞に選択的に作用し、その活動をCRFは促進し、NPYは抑制することを示した。さらに、組織学的解析により、分界条床核II型神経細胞の活動亢進が、腹側被蓋野ドパミン神経の活動を抑制することにより不快情動を惹起する可能性を示し、痛みによる不快情動生成の神経機構を明らかにした。
著者
望月 哲男 沼野 充義 宇佐見 森吉 井桁 貞義 亀山 郁夫 貝澤 哉 浦 雅春
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

散文、詩、批評、演劇、美術、思想といった様々な分野における現代ロシア・ポストモダニズム作品を対象に、以下のような観点から分析・性格付けを行った。1)ポストモダニズムの思想や創作方法は、今日のロシア文芸界でどの程度優勢なものとなっているか。2)他地域のケースと比較して、ロシアのポストモダニズムにはどのような特徴があるか。3)現代ロシア文化は、革命前のロシア文化および革命後のソ連文化とどのような関係にあるか。4)ポストモダニズムはロシアの文化的自意識の表現にとってどのような役割を背負っているか。結論として、ロシア・ポストモダニズムと総称されている現象は、決して単なる欧米の文化潮流の模倣ではなく、ロシア・ソ連の文化的な過去に深く根ざしたものであることが確認された。またそれ故に、ポストモダニズムが単にソ連文化や共産主義文化への反動としてのみでなく、ロシア近代の様々な文化潮流を緩やかに総合する仲介者としての役割を果たしていることも認識された。本研究の一環として、北大スラブ研究センター国際シンポジウム『ロシア文化:新世紀の戸口に立って』(2000年7月)を行い、現代ロシア文化の特徴を多角的な観点から研究すると同時に、ロシアを含めた世界各国の学者・文化人による現代ロシア文化観を比較検討した。研究の中間成果は『現代ロシア文化』(望月他著、国書刊行会、2000)、『現代文芸研究のフロンティア(I)』(望月編、北大スラブ研究センター、2000)『現代文芸研究のフロンティア(II)』(望月編、北大スラブ研究センター、2001)、T.Mochizuki(ed.),Russian Culture on the Threshold of a New Century,Slavic Research Center,2001,『現代ロシア文学作品データベース』(望月編、北大スラブ研究センターホームページ)(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/literature/literature-list.html),『Modern Russian Writers』(T.Mochizuki,E.Vlasov,B.Lanin(eds)(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/Writer/windex-e.html)などに発表された。
著者
金子 勇
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
vol.125, pp.85-134, 2008-06-20
著者
関 孝敏 松田 光一 平澤 和司 轟 亮 山内 健治 岩崎 一孝 小井土 彰宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

申請テーマである「北海道南西沖地震に伴う家族生活と地域生活の破壊と再組織化」に関して、次の諸点が明らかになった。1)家族生活の破壊について。奥尻町における死者(不明者を含む)175名中107名(61%)が青苗地区に集中した。とくに70戸余の旧5区は、津波により地域社会が全減したため、犠牲者が多くみられた。青苗地区の被災者(家族)を中心に聞き取り調査を行った結果、家族の解体、家族成員の島外への転出、家族成員の病死・精神的後遺症・内体的疾患などが被災後みられた。2)地域生活の破壊。10年前の日本海中都沖地震による津波の経験(2名の犠牲者があり、防潮堤の一部整備が行われた)は、地域住民個々においては適切な避難行動につながる事例がみられたが、地域社会としては残念ながら生かされなかったように思われる。この原因は、何よりも、経験をはるかに超えた大規模な複合災害であったことよる。しかし、それに加えて、海岸に近接した漁業集落特有の形態が、災害のあり方とそのための防災システムのあり方を課題として鮮明にした。3)家族生活の再建。義援金の規模が被災家族における新築の恒久住宅建設を可能にした。多くの被災家族にとって、住宅再建が家族生活の再建にとって最大の課題であった。この住宅再建を通じて、職業と年齢によって家族生活の再組織化のあり方は異なることが鮮明になった。とくに、高齢者世帯家族、自営業家族、漁業経営者家族に顕著な特徴がみられた。4)地域社会の再建。災害前の住宅地図を手掛かりに、職業別の社会地図を作成し、地域社会の復元作業を試みた。その結果、被災後の住宅地図は、旧地区の住民が混住化しつつ地区成員の再組織化が行われたり、職業別分布の大幅な組み替えが見られた。とくに、商業者や自営業者は海側地区、民宿・旅館が高台地区、漁家と高齢者は両地区に混在することが明らかになった。
著者
MILLER Alan・S 山岸 俊男 大坪 庸介 山岸 みどり 大沼 進 ミラー アラン
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の主要な成果は、以下の4点にまとめられる。(1)信頼と社会的知性との関連について。囚人のジレンマ(PD)における他者の行動予測の正確さが、共感4因子のうちの、想像性因子とのみ関連しており、他の因子とはほとんど関連していないことが明らかにされた。PDで協力行動を取った人物の顔写真と、非協力行動を取った人物の顔写真の再認において、後者の写真の再認率が前者の写真の再認率を上回ることが明らかにされた。(2)集団所属性に基づく信頼について。集団所属性にもとづく内集団成員に対する信頼が、内集団成員に対するポジティブなステレオタイプによって支えられているのではなく、集団内部に一般的互酬性が存在するという直感的な集団理解により支えられていることが明らかにされた。(3)信頼関係形成プロセスにおけるリスクテイキングの役割について。信頼関係形成に際して、リスクの程度が外的環境により決定される状況と、リスクの程度を自分で決定できる状況とを比較することで、リスクテイキングのオプションが信頼関係の形成を促進することが明らかにされた。(4)情報の非対称性が存在する社会関係での信頼行動を支える評判システムの役割について。情報の非対称性が存在するインターネット・オークション市場を再現した実験を実施し、適切な評判システムが存在しない限りレモン市場化が確実に発生することが明らかにされた。更に、単純な評判システムではレモン市場問題の有効な解決をもたらされないことが確認され、適切な評判システムを支える条件についての示唆が得られた。これらの研究成果は、リスクテイキングを中核とする信頼行動を生み出す心理的プロセスと、社会制度の両面から、信頼社会形成のための条件を明確にしている。
著者
酒井 優子
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2022

Sakai, Y. (2020). Learners’ use of first language in small group discussions in a Japanese EFL class: Asociocultural perspective, Japan Journal of Multilingualism and Multiculturalism, 26(1), 83-106.http://id.ndl.go.jp/bib/031377180
著者
加藤 博文
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

研究実績:平成22年度は、日本文化人類学会、アメリカ考古学会において先住民族の文化遺産と知的財産権に関する報告を行う一方、研究アソシエートとして参画するカナダの研究プロジェクト「文化遺産における知的財産権問題(IPinCH)」(研究代表者ジョージ・ニコラス、サイモン・フレーザー大学教授)のワークショップにおいて北海道におけるアイヌ民族の手による文化遺産および景観保全の取り組みについて報告をおこなった。また2011年1月には,北海道阿寒において先住民族の文化遺産と知的財産権をめぐる国際会議をアイヌ・先住民研究センターとIPinCHとの共同で組織し、今日的課題についての協議をおこなった。意義および重要性:研究年度2年目にあたる今年度は、国内学会および国際学会において今日的課題と日本における現状についての報告を行うとともに、海外の研究グループとの将来的な研究ネットワークの構築をおこなった。このような取り組みを通じて加藤は、研究アソシエートとしてIPinCHへの参画が求められ、また世界国際会議(WAC)中間会議(2011年開催)のセッション「先住民族と博物館」の国際委員会メンバーへ招待され、本研究課題を国際的な研究組織の中で議論できる環境が構築できた。先住民族とその文化遺産をとりまく課題は、国際的に注目されており、その解決には国際的な連携が不可欠である。この意味において本研究の実施によって海外の研究組織と恒常的な研究協力体制が構築できたことは、今後の当該課題の解決にむけて大きな成果を挙げたと評価でき、日本における研究展開も国際的な場での議論も可能になると思われる。
著者
加藤 重広
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.19-41, 2006-07-20
著者
井上 勝生
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本軍の討伐大隊長文書と戦死兵の石碑碑文、討伐軍兵士個人の従軍日誌複数などを見出した。朝鮮農民ら東学農民軍の抗日蜂起は、従来は注目されなかった中央部山岳地帯で一斉に始まった。この時に、広島の大本営こそが、農民軍主力ほか全部を包囲殲滅する作戦を立案し、派兵した。作戦の後半では、日本軍指導部から殲滅命令が続発されており、朝鮮農民軍数万人以上の厖大な死者を出した。この事実関係を解明・実証した。