出版者
北海道大学
雑誌
北大百二十五年史
巻号頁・発行日
vol.通説編, pp.323-384, 2003-12-25

第一章 北大文学部の歴史的事件: 藤井事件; 第二章 文学部・文学研究科の改革; 第三章 人と研究
著者
朝比奈 英三
出版者
北海道大学
雑誌
北大百年史
巻号頁・発行日
vol.通説, pp.865-880, 1982-07-25
著者
佐藤 知己
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
vol.124, pp.153-180, 2008-02-15
著者
森 樊須
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

マレ-シアのFicus属植物から発見したツメダニの一種Hemicheyletiamoriiは葉裏の葉縁部に薄い粗い綱を張って、その中に家族(雌、第2ニンフ、第1ニンフ、幼虫、卵)が群居している。産雌単性生殖で、雄はいない。Ficusでの密度は100葉当たり4.3巣、巣内の齢構成は(平均個体数)、雌3.48、第2ニンフ4.36、第1ニンフ5.82、幼虫5.19、卵4.27であった。輸入後の試験ではナミハダニ、タケスゴモリハダニ、ケナガカブリダニ、チリカブリダニの成虫を捕食した。H.moriiの家族は巣に接近した餌の脚部を触肢で瞬時に捕獲、家族共同で捕殺することが多い。摂食所要時間は約50〜120分、餌の死体は巣外(葉外、葉縁部、巣から離れた葉面上)に、捕食に参加した1個体が担いで投棄する。H.moriiは巣をはなれて葉内を単独で歩くワンダ-リングを行なうことがある。雌1、ニンフと幼虫25の巣では、雌個体が巣をはなれ葉表・裏を36分間かけて一巡して巣にもどった。次に雌3,ニンフ・幼虫22の巣では、雌1個体が日中から夜に立て続け20分間、51分間、38分間のワンダ-リングを行なった。ワンダ-リング中に他巣の雌を実験的に接触させても干渉しないことや、巣内に群居する個体は、他の巣からの個体を排撃することなく自分の巣内に受入れることなどから、ワンダ-リングは分散前の先駆的な行動と考えられた。従従供試したFRIM(マレ-シア森林研究所)のFicus葉から採集したツメダニ(Ficus系統)と、遠隔地のタケから採集したツメダニ(Bamloo系統)を用いてpermeability(浸透性)を実験した。両系統のツメダニ個体は、同系統間においても、他系統間においても、他の巣からの侵入(intruder)と巣内への受入れ(receiver)を行なった。このことから、これらグル-プメンバ-相互の親近性は、種の社会性の指標と見られている凝集性cohesivenessを示したことになる。巣を構成するメンバ-にとって、捕食・防衛・増殖上有利かもしれない。
著者
河合 靖 佐野 愛子 小林 由子 飯田 真紀 横山 吉樹 河合 剛 山田 智久 杉江 聡子 三ツ木 真実 今泉 智子 萬 美保
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は,東アジア圏における多層言語環境での複言語主義的な言語政策や人材育成の必要性の考察である。香港では多層言語環境が人々に日本と異なる影響を与えている。言語とコミュニケーション,言語教育政策と学習者,教育と技術の三つの視点からその影響を見ることで,多層言語環境化する日本が考えるべき問題を洞察した。日本がモノリンガル社会の心的制約を克服して,複言語主義的社会モデルに移行し,複数言語を行き来する態度と能力を持つトランスランゲージング的人材を育成するための知見が得られた。本研究の研究成果は,研究成果報告書(250頁)として編集・印刷された。
著者
水上 雅晴
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
vol.125, pp.右65-右118, 2008-06-20
著者
関 清秀 五十嵐 日出夫 黒柳 俊雄 三谷 鉄夫 山村 悦夫 加賀屋 誠一
出版者
北海道大学
雑誌
環境科学 : 北海道大学大学院環境科学研究科紀要 (ISSN:03868788)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.i-47, 1978-03-25

以上述べたところで明らかなように,かなやま湖の建設を主とする開発事業は地域社会にとって重大な環境変化を意味するもので,ここに解明された南富良野町民の生活意識は,開発事業にたいする地域住民側からの環境影響評価の一表現とみなすことができる。本稿において明らかにされた点は,およそ次の如く要約される。(1)南富良野町の自然環境については,その満足度が地区部落ごとに差異がある。特に気候に開しては,かなやま湖を挟んで南西部に満足度が高い。(2)人情の篤さについては町民相互に概ね満足しているが,冬の生活を改善すべき必要性に関しては各地区とも強い意欲を示している。(3)各種の生活基盤施設の充足については町内各部落ごとに要求度が異なるが,市街地においては下水道整備,北落合においては電気施設にたいする不満が極めて高い。(4)医療施設整備への欲求は特に金山・下金山地区において高い。(5)社会福祉施設および防災施設については概ね満足している。(6)家族がみんなで楽しむ場を要望する声が強い。(7)町道未整備への不満が多い。(8)畑作地帯,低階層そして高齢者ほど,日本農業の将来は暗い,と予測している。特に女性の中には明るい予測をもつものがいない。(9)畜産地帯では前途に明るい希望をもち,生きがいを感じているものが比較的多い。(10)稲作地帯では離農指向が強い。(11)経営形態については,個別経営を主体としてこれに機械の共同利用を加味した営農への指向が強い。(12)耕地規模拡大難と後継者獲得難とは,相互に因となり果となりして悪循環現象を呈し,特に低階層に著しい。(13)政府の農業政策については,下層へ向うほど所得保障制度への支持率が低く,投入財価格制度への選択は逆に多くなる。(14)町民は,日常生活物資の購入はほとんど町内で充足しているが,他市との結合を強くもっているのは富良野市(月に1〜2回58%),旭川市(同じく47%),札幌市(同じく24%)で,帯広市(同19%)との関連は比較的薄い。(15)鉄道の運行時間と運行回数についてはかなり不満を感じている。(16)石勝線開通における根室本線のローカル化にともなう対策としては,乗合バスによる代替を希望するものが多い(町民の76%)。(17)町内への定住指向度は,林業,鉱業中心の集落では低い。特に年令層が若いほど移住指向が強い。こういった町民意識は,いうまでもなく,地域社会内の環境変動のみによって形成されているものではない。ダム建設と相前後して経験した日本経済の高度成長と石油ショック以後の社会経済変動がその背後にある。いまここに表明された住民意識を環境問題として把握し,これを環境科学的視野の中で考究するとすれば,一つには地域社会の"住みよさ"(habitability)の問題としてとりあげられるであろう。産業的にみれば自然の恩恵の極めて乏しい北海道内陸山間地帯の一つの自治体が,その住民にたいして住みよい豊かな生活環境を保証するためにはどのような施策を講じなければならないか,この調査結果の中に多くの示唆を読みとることができると思われる。最近の国土計画においては"定住圏"あるいは"環境圏"等が広域生活圏にかかわる新構想として提唱されている。しかし,"住めば都"という俚諺はもはや昔通りには通用し難い時代となりつつある。過疎地帯の自治体の深刻な苦悩はかかってこの点にある。上から与えられるキャッチ・フレーズは地元住民の生活意識になじみ難い面が多いであろうことを本研究の結果は表現している。かなやま湖の造成による環境影響に関しては,冒頭に述べた如く,まだその全容を解明するにいたってはいないが,15年後の住民意識にみる限り,顕著なプラスの効果は発見し難いといわなければならない。
著者
澤辺 智雄
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本年度に得られた成果は以下の通りである。I.ウニ・アワビ消化管由来アルギン酸分解菌の種構成と分解特異性エゾバフンウニ消化管から分離したアルギン酸分解菌はその一般性状からVibrio属と同定されたものが大半を占めていたが、代表株についてDNA-DNA相同性を測定した結果、少なくとも2菌種以上が混在していることが明らかとなった。一方、エゾアワビ消化管から分離したアルギン酸分解菌は非運動性のVibrio属類似細菌が主体をなしていた。これらの菌群は16SrDNA塩基配列による分子系統解析およびアルギン酸分解性Vibrio属標準株とのDNA-DNA相同性を測定した結果、Vivrio属の新種であることが明らかとなった。また、ウニ消化管由来アルギン酸分解菌のアルギン酸分解特異性はアルギン酸を構成するpolyMおよびpolyGいずれのホモポリマーとも分解する菌株が30%以上を占めているのに対し、アワビ分離株ではpolyGブロックに対する分解性の強い菌株が30-70%占めていた。ウニ自体はアルギン酸分解酵素を分泌しないことから、消化管内細菌がアルギン酸分解の大部分を担っていると考えられた。一方、アワビはpolyM特異的な分解酵素を分泌することから、アワビ消化酵素で分解されにくい部分を分解する消化管内細菌が定住していることが示唆された。II.アルギン酸分解酵素の特性ウニ由来アルギン酸分解菌代表株Ud10株は基質特異性を示さないNaCl要求性の強い酵素を誘導的に産生していた。一方、アワビ由来アルギン酸分解菌A431株はpolyG特異的分解酵素以外にも、基質特異性の異なる6種類以上の酵素を産生しており、その中でpolyMに強い特異性を示す分解活性画分およびpolyGに強い特異性を示す分解活性画分の部分精製物について酵素化学的性状を調べた。それぞれの画分の至適反応温度は40℃および30℃と異なっていたが、至適反応温度(pH7.5)および塩類の要求性(100mM NaCl)は同様の性質を示した。
著者
関根 勇一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまでに、アダプター分子Signal-transducing adaptor protein-2(STAP-2)がさまざまな細胞内シグナル伝達経路において機能的に働き、サイトカイン刺激による免疫細胞応答を調節する重要な分子であることを申請者は多数報告している。特にT細胞においてSTAP-2が重要な働きをしていることを数多く示してきた。本申請研究において、STAP-2によるT細胞の活性制御機構の更なる解明と、アポトーシスシグナル経路におけるSTAP-2の機能解析を行った。1.STAP-2によるアポトーシス促進メカニズムの解明これまでの研究では、Fas刺激時のCaspase活性がSTAP-2により亢進することを明らかにしており、本年度の研究によりアポトーシス促進メカニズムの解明を行った。STAP-2自身は酵素活性を持たないことから、Caspaseを活性化する分子とSTAP-2との複合体形成が一つのメカニズムとして考えられた。アポトーシスのイニシエーターであるCaspase-8は、刺激によるFasの活性化によりFADDというアダプター分子を介してレセプターへリクルートされ、DISCと呼ばれる複合体の中で活性化する。そこでSTAP-2がCaspaseの活性化を促進するメカニズムを解明するため、ヒト白血病T細胞株Jurkat細胞、STAP-2 KO T細胞、ヒト胎生腎癌細胞株293T細胞を用いて、免疫沈降実験などによりDISC形成分子とSTAP-2の相互作用解析等を行った。その結果、STAP-2はFasやCaspase-8と会合し、DISC形成を促進することを明らかにした。これよりSTAP-2によるアポトーシス促進は、DISC形成亢進によることが明らかになった。2.STAP-2限定分解酵素の同定これまでに申請者は、Jurkat細胞においてFas誘導性アポトーシス時に切断されたSTAP-2産物の分子量から、切断部位を推測しアミノ酸に変異を導入することで限定分解されないSTAP-2点変異体の作製に成功していた。この切断配列は、アポトーシス時に活性化するシステインプロテアーゼ、Caspaseファミリーによって認識される配列と相同性が高く、また、広範なCaspaseインヒビターとして知られるzVAD処理により、STAP-2の限定分解が抑制されることも予備実験により明らかにしていた。これら知見からCaspaseファミリー分子がSTAP-2の限定分解酵素であると考えられた。本年度の研究ではCaspaseファミリー特異的インヒビターを用いた解析、siRNAによるノックダウン実験によって、Caspase-8がSTAP-2切断酵素であることを同定した。今後は、STAP-2が切断されることとアポトーシス促進の関連性、及びSTAP-2切断阻害剤の作製によりアポトーシスへの影響を解析していく予定である。アポトーシス時におけるSTAP-2限定分解の詳細な解析が、STAP-2限定分解の調節による自己免疫疾患の治療薬開発の手がかりになることを期待する。
著者
横濱 雄二
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

メディアミックス様々な物語メディアを横断するものであり、特にそのリアリティの構築を考える際の参考として、民俗学、哲学、精神分析などの理論を参考とし、また文学史や文学理論についても諸作を参照した。その成果の一部として、幻想文学に関する論文集である『ナイトメア叢書』(第3巻、第4巻)のブックガイド欄を分担執筆した(今後も継続予定)。また、大衆文化としての映画におけるメロドラマ性やスター性に注目し、近年のメロドラマ研究を参照した。この点を踏まえつつ菊田一夫『君の名は』について、ラジオドラマ、小説、映画のメディアミックスを分析した。時間的に初期のラジオドラマではメロドラマ以外に戦後の社会状況が多く織り込まれていたが、後半では物語の展開とともにラジオドラマ自身もメロドラマ性を強めているが、この傾向は小説や映画でも踏襲され、特に後追いで制作された映画では、ストーリー全体がメロドラマに特化している。こうした物語構成上の変化は『君の名は』ブームでの世評に対応したものといえる。また、全国を巡回するという構成上の特徴は、映画ロケ地の観光地化や、試写会に際しての出演者の全国ツアーといった、物語の外部に存在する俳優の身体性にも広がっている。このような形で物語の内部と外部をつなぐスターの身体性は、石原慎太郎の『太陽の季節』『狂った果実』における登場人物と実弟石原裕次郎との対応とも密接に関連する。また、キャラクタービジネスにおける物語を利用したマーケッティング手法は、こうした身体性と物語性との関係を応用したものと把握できる。メディアミックスはこのように見ると単に諸メディアを通底するばかりでなく、そうした通底性を基盤に俳優や作者といった物語そのものにとっては外部と見なしうる地平までその範囲を広げて考察することができる。これらの研究については、その一部を『層--映像と表現--』(近刊)に発表する。
著者
柴田 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,比喩やアイロニーといった修辞表現の理解過程が,字義的な理解と比較してどのような神経基盤によって支えられているのかをfMRIを用いて明らかにした.その結果,比喩理解では,左下前頭回(BA45)と内側前頭回(BA9/10)により大きな賦活が見られた.またアイロニー理解では,内側前頭回(BA9/10),上側頭溝により大きな賦活が見られた.これらの結果より,比喩やアイロニー理解では,矛盾した発話から意味関係や発話意図を推論するという高次認知過程の関与が示された.
著者
朝比奈 英三
出版者
北海道大学
雑誌
北大百年史
巻号頁・発行日
pp.865-880, 1982-07-25
著者
吉水 守 笠井 久会 西澤 豊彦 高見 生雄 大迫 典久 呉 明柱
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究で実用化を目指した「ds-RNA型」ワクチンは,申請者らが開発してきた「mRNA型」ワクチンを発展させたものであり,ds-RNA接種により産生されるインターフェロンを利用した簡便かつ実用的な魚類ウイルスに対する免疫方法である。Poly(I:C)をニジマス,マハタ,ヒラメに投与し,魚を一過性の抗ウイルス状態とし,それぞれ伝染性造血器壊死症,ウイルス性神経壊死症,ウイルス性出血性敗血症原因ウイルスで攻撃して生存率を対照と比較した。3例共にワクチン効果が確認でき,この間に養殖環境中に存在する病原ウイルスに暴露させることでウイルスに対する特異免疫を誘導することもできた。さらに実用化に向け,魚毒性の心配がない用法・容量を定めることができた。
著者
喜田 宏 河岡 義裕 WEBSTER R.G. 岡崎 克則 伊藤 寿啓 R.G.WEBSTER
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

平成3-4年度の文部省科学研究費・国際学術研究(0304103)および平成5年度の本研究による調査の結果、アメリカ合衆国アラスカ州中央部の湖沼に営巣する渡り鴨が、夏季にインフルエンザウイルスを高率に保有していることが判明した。平成6年度には前年度にひき続き、アラスカ州中央部のユコン平原にあるマラ-ド湖、ハート湖およびビッグミント湖で鴨の糞便材料を採取し、ウイルス分離試験を実施すると共に、湖水からのウイルス分離を試みた。さらに、分離ウイルスの抗原亜型を決定した上で、これまでに得られたウイルス株を加えて、分離年、分離地および亜型が異なるウイルスのNPおよびHA遺伝子の塩基配列を決定し、系統進化解析を行った。平成5年度および6年度に鴨の糞便541検体から分離されたインフルエンザウイルスは33株、パラミクンウイルスは15株であった。イルフルエンザウイルスの抗原亜型は、H3N8が23株、H4N6が8株、そしてH7N3が1株であった。文部省科学研究費により実施した平成3年および4年度の調査成績をあわせると、4年間に分離されたインフルエンザウイルスは108株で、その内訳は、H2N3が1株、H3N8が37株、H4N6が55株,H10N9が1株であった。従って、アラスカ中央部に夏季に営巣する鴨が多くの異なる抗原亜型のウイルスを維持していることならびに同じ営巣湖沼に異なる抗原亜型のインフルエンザウイルスが共循環していることが明らかとなった。また、鴨が夏季に巣を営み、ヒナを育てる湖沼の水からもインフルエンザウイルスが分離された。平成6年8月8日に採取したビッグミント湖の水13サンプルのうち7検体からインフルエンザウイルスが分離され、湖水1ml中のウイルス感染価は10^<1.8>-10^<2.8>EID_<50>におよんだ。そこで、ほとんどすべての鴨が渡りに飛び発った後、同年9月18日に再びビッグミント湖の水を採集して、ウイルス分離を試みた。その結果、H3N8およびH7N3ウイルスが得られた。その成績は、インフルエンザAウイルスが水鳥集団の間で受け継がれており、自然界におれるインフルエンザウイルスの存続には、冬期間の湖水中の凍結保存が関与するとの我々の推定を強く支持するものである。すなわち、北方の鴨の営巣湖沼がインフルエンザウイルスの貯蔵庫であり、秋(8月中旬)に鴨が渡りに飛び発つ前にその糞便と共に排泄したウイルスが冬期間凍結した湖沼水中に保存され、春に帰巣する鴨がこれを経口摂取して感染し、増殖することを毎年繰り返して存続してきたものと考えられる。これまでにアラスカで鴨の糞便が分離されたインフルエンザウイルス108株のうち、異なる年に異なる地点で分離されたウイルス18株のNP遺伝子および6株のH3ウイルスのHA遺伝子の塩基配列を決定し、系統進化解析を行った。成績から、アラスカ中央部に営巣する鴨の糞便から分離されたウイルスのNP遺伝子およびHA遺伝子は何れも北米大陸で分離されたウイルスと同じ系統に属し、アジアおよびヨーロッパで分離されたウイルスとは異なることが判明した。これらの成績は、少なくともユコン平原に営巣する鴨はアリューシャン列島を通ってアジアに飛来することは稀であることを示している。一方、このようにウイルス遺伝子を解析することによって、その宿主島の飛翔路を推定することが可能であることが判明した。先に研究代表者らは新型インフルエンザウイルスの起源が渡り鴨のウイルスにあって、アジア、特に中国南部で家鴨および豚がその出現に関与することを証明した。従って新型インフルエンザウイルスの予測のためには、南中国に飛来する渡り鴨およびその営巣湖沼を調査することが必須である。今後シベリアの鴨の営巣湖沼におけるインフルエンザウイルスの分布を調査する計画である。