著者
神取 秀樹 須藤 雄気 井上 圭一 岩田 達也 片山 耕大 山田 大智
出版者
名古屋工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

多くの生体分子は共通の構造をもとに多彩な機能を演出している。本課題で我々は、ロドプシンやフラビンタンパク質などを対象として機能の発見・転換・創成をテーマに柔らかさと機能との関わりを研究した。その結果、内向きプロトンポンプや新規チャネルロドプシン、環状ヌクレオチドを光で分解する酵素ロドプシンなどの発見を報告した。一方、機能転換については、ロドプシンやDNA光回復酵素に対して限られた変異導入により機能転換に成功したが逆方向は成功せず、非対称な機能転換が明らかになった。機能の創成に関しては、光駆動ナトリウムポンプの構造基盤に基づき、カリウムやセシウムをポンプするタンパク質を創成することができた。
著者
王 建青
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,人体内部と人体外部問の医療支援のためのインプラントボディエリアネットワーク(BAN)に適する通信方式の解明を目的として, 400MHz帯とUWB帯を対象に,解剖学的人体数値モデルに対して伝送路モデルを構築し,それに適する通信方式の検討及び送受信機の試作を行った.また,通信性能(BER)と人体安全性(SAR)の二つの視点から総合的考察を行い,インプラントBANに適する400MHz帯FSKやUWB-IR方式における最大伝送速度,最大送信電力を解明し,ダイバーシチ受信によるBERとSARの同時向上策も提案し,その有効性を示した
著者
小野 克彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々は、有機π電子系にホウ素キレートを導入すると分極構造が誘起され電子受容性が発現することを見出した。本研究では、このコンセプトを用いて高性能なn型有機半導体の開発を目指した。分極構造によって発生する正電荷は電子受容性の発現には必要であるが、正電荷間で生じる静電反発によりπ電子系が不安定になる。これを本研究の解決すべき課題と考え、ビチオフェン誘導体の改良を行った。πスペーサとして二重結合や三重結合を導入し、正電荷間で生じる静電反発の減少を調査した。加水分解反応の速度論解析と電気化学測定から、二重結合をもつ分子で静電反発の大幅な減少が確認された。
著者
小澤 智宏 米村 俊昭
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

生体内で血管弛緩、免疫などに関与している一酸化窒素(NO)は、作用に応じた適量が決まっているが、いったんその濃度が変化すると動脈硬化や敗血症など重篤な病気を引き起こす。本研究では生体内NO濃度に着目し、これをセンシング可能なシステムの構築を目指した。強い電子供与により正味の正電荷が減少した金属イオンは、外部からのさらなる電子供与に対して抵抗する。これを利用して金属イオンとの反応性が高いもの(NOなど)のみが反応する分子の構築に成功した。これらを電極表面に修飾してデバイスの構築を試みたところ、金属イオンと電極表面との直接的な相互作用により、本来の分子の性質を電極上で再現することができなかった。
著者
内藤 克彦 水野 幸男
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

年間の湿度変化を踏まえた上で、自然状態において絶対湿度の3〜20mg/cm^3の条件下でがいしのフラッシオーバ電圧に及ぼす絶対湿度の効果を調べた。試料として懸垂がいし、ピンがいし、ステーションポストがいし、ラインポストがいし、長幹がいし、高分子がいしを用いた。印加電圧は、交流電圧、雷インパルス電圧、開閉インパルス電圧および直流電圧とした。高分子がいしについては、フラッシオーバ電圧に影響を与えると考えられる表面の撥水性に関する基礎実験も実施した。本研究で得られた結果を以下に示す。1. 3年間の湿度実測データを解析した結果、絶対湿度は冬期に最小値3mg/cm^3の程度、夏期に最大値20mg/cm^3程度を示し、その間は緩やかに変化することがわかった。2.懸垂がいしおよびピンがいしに正・負雷インパルス電圧を印加した場合には、フラッシオーバ電圧は絶対湿度の上昇とともに低下することが確認された。現行のIEC(国際電気標準会議)規格の湿度補正係数に修正が必要と思われる。3.それ以外のがいしでは、フラッシオーバ電圧は絶対湿度とともに上昇した。現行のIEC規格の湿度補正は、ほぼ妥当と考えられる。4.高分子がいし外被に使用されるシリコーンゴム表面の水滴に関しては、電圧印加時に振動すること、形状が変化し水滴同士が結合する場合があること、従ってフラッシオーバしやすくなることがわかった。5.シリコーンゴム表面汚損時のフラッシオーバ電圧は汚損直後には低いが、時間経過とともに徐々に上昇し、1週間程度で一定値になることがわかった。
著者
福田 功一郎 浅香 透 吉田 英人
出版者
名古屋工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

サンドイッチ型のLa2SiO5/La2Si2O7/La2SiO5拡散対を1600℃で50時間加熱することで、c軸高配向したアパタイト型La9.50Si6O26.25多結晶体の作製に成功した。得られた多結晶体は偏光顕微鏡とX線回折法、複素インピーダンス法を用いて評価した。加熱した拡散対は機械研磨することで、拡散対の最も内側に位置する結晶配向電解質を取り出した。この電解質の配向方向に平行な酸化物イオン伝導度は、450℃で2.0×10-2S/cmであり、温度の上昇とともに増加し、700℃では7.9×10-2S/cmに達する。この値はc軸配向アパタイト型La9.33Si6O26多結晶体の約2.5倍に相当する。これら2種類の配向多結晶体の活性化エネルギーは、共に0.35eVであることから、伝導機構は同一であると考えられる。La9.50Si6O26.25とLa9.33Si6O26の結晶構造を単結晶X線回折法で決定したところ、両方の結晶構造は空間群P63/mであり、Si原子に結合している12i席の酸素原子位置に不規則性が確認できた。さらに、4fと6h席のLa原子位置にも非調和熱振動で近似できる不規則性がみられた。La9.50Si6O26.25の結晶構造中には、格子間に過剰な酸化物イオンが存在することを初めて示すことができ、高い酸化物イオン伝導性との相関関係を初めて示すことができた
著者
塩塚 理仁
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、光応答性超分子ルテニウム(II)-白金(II)複合錯体の光物性及び電子物性を解明し、金属基板上へのルテニウム(II)-白金(II)超分子金属錯体の配列制御法の確立を目的とした。そこで直線的な構造を持ったルテニウム(II)-白金(II)複合錯体を新規に合成し、電気化学的及び光物理的な各種測定結果より、この複合錯体の光誘起電子移動過程に関する知見を得ることができた。更に、基本骨格となるルテニウム(II)錯体を独自に合成し、金基板上に自己組織化する方法で配列制御できることを電気化学的及び光物理的測定により明らかにした。
著者
糸山 豊
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

若材齢時におけるコンクリートは活発な水和進行過程にあり物性の変化が著しいため、クリープ試験期間中の水和進行を抑制させた状況下において試験を行う必要がある。そこで本年度は,若材齢時の水和組織を極力保持した状態で、それ以上の水和進行を抑制させるために、練混ぜに用いる水の一部を同体積のアルコールで置き換えたコンクリートおよびモルタルを対象として圧縮クリープ試験を行い、アルコール置換による水和抑制効果とクリープ挙動に及ぼす影響について検討を行った。また、異なる応力履歴においてクリープ試験を行い、クリープ挙動の履歴依存性について検討を行った。予備実験の結果から、アルコール置換率40%以下で1ヶ月間養生を行ったコンクリートが若材齢時におけるコンクリートの水和状態を保持していると判断し、置換率はコンクリートでは30%、モルタルではアルコール置換率の違いが強度発現、クリープに及ぼす影響を検討するため30%、40%の2水準設定した。クリープ試験中は温度30℃、湿度98%一定で、てこ式圧縮クリープ試験機を用いて一定応力を載荷してひずみ挙動を測定し、除荷後の回復クリープひずみ挙動も併せて検討を行った。本年度の研究で得られた知見を以下にまとめる。1 試験期間中の水和進行を抑制させてクリープ試験を行った結果、長期材齢時におけるクリープ特性の傾向がみられたことから、若材齢時のクリープは水和進行の影響を大きく受けることが推察された。2 セメント硬化体における微細空隙中の液体の特性がクリープおよび回復クリープの発生機構上、重要な役割を果たすことが推察された。3 練混ぜ水の一部をアルコール置換することで強度発現が小さくなり、水和反応が長期間にわたって抑制された。
著者
小田 亮 福川 康之 平石 界
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ホスピタリティの心理的基盤について、調査と実験の両面から明らかにした。(1) 職業上発揮されるホスピタリティの程度には日頃関わりのある相手への利他行動の頻度が影響していた。(2) ホスピタリティの基盤となっている利他性が、目の絵のような抽象的な刺激によって促進されることが、実験室とフィールドにおいて示された。(3) 大規模調査データの分析から、個人レベルの互恵性が主観的健康を向上させる効果は、集団レベルの互恵性が低い場合により強いことが明らかとなった。
著者
萩尾 生
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

スペインのバスク自治州政府が1994年以来実施している在外バスク系同胞支援策は、在外同胞の帰還支援よりも、スペイン中央政府を介さない自治州政府と在外同胞との関係性の構築に主眼があった。また、帰還すべき「バスク本土」の領域性と「在外バスク系同胞」に対する民族性に関して、自治州政府と在外バスク系同胞との間には認識のずれがある。予算と受益者が限定的な在外同胞支援策の意義と効果は、つねに議論の姐上にある。
著者
柴田 哲男 融 健 中村 修一
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

有機化合物へフッ素原子を導入するための試薬や方法論は多数開発されているが,現在知られている含フッ素医薬品は,ベンゼン環や複素環などの芳香族上の水素原子をフッ素に置換した例ばかりが目立ち,含フッ素ステロイド医薬品に代表されるような不斉中心にフッ素原子を有する医薬品や農薬品は少ない。これは,不斉中心にフッ素を選択的に導入する実用的な不斉フッ素化試薬やフッ素化反応がないことにも起因する。我々はこの問題に取り組み,これまでの研究例から完全に脱却した,キナアルカロイド/Selectfluor試薬を開発することに成功した。この試薬は,2種の市販試薬を有機溶媒中で混合するだけで簡単に調整出来るキラルフルオロアンモニウム塩である。簡便に反応を実施でき,適応範囲が広く,しかも不斉収率は従来法に比べ格段に高いなど,これまでにはない優れた性能を備えていた。本方法は,試薬という性格上,キナアルカロイドを化学量論量使用する必要がある。我々がこの研究を発表した直後に,Togniらによって初めての触媒的不斉フッ素化反応が報告された。彼らはβ-ケトエステルのフッ素化反応において,チタン/酒石酸を触媒に用いることにより,二点配位型の錯体を経由し,高エナンチオ選択性でフッ素化体が得られることを見出した。選択性については,まだ改善の余地が残されていたが,その後このアプローチは袖岡らのPd錯体を用いる方法により劇的に改善された。鎖状構造から環状構造までバリエーションに富んだβ-ケトエステル類の不斉フッ素化反応を,すべて90%ee以上の選択性で実現した袖岡らの方法は,この分野を一挙に完成にまで近づけた。この研究成果に刺激され,我々は,もう一歩踏み込んだ新しいフッ素化反応が出来ないものかと模索し始めていた。アミノ酸より簡便に合成できるビスオキサゾリン型触媒は,世界中で汎用されるキラル触媒の一つで,その不斉合成への実績は大きい。そこで,この触媒を活用した新しいフッ素化反応の開発を目指すこととした。着手して数ヶ月後,β-ケトエステル類の触媒的不斉フッ素化反応において,金政らの開発したDBFOX触媒とニッケル触媒が最適であることを見っけた。その不斉収率はこれまでに一度も達成されなかったことのなかった99%eeを記録しただけでなく,オキシインドール類の不斉フッ素化まで可能にすることとなった。
著者
岩田 知之
出版者
名古屋工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

アパタイト型ケイ酸ランタンLa_<9.33-2x>(SiO_4)_6O_<2-3x>は,酸化物イオン伝導体として実用化されている安定化ジルコニアと比較して700℃以下の低温でより高いイオン伝導度を示す材料であり,SOFCへの応用が期待されている.ケイ酸ランタンが高いイオン伝導度を示す本質的な理由が議論され,現時点では「格子間酸素イオンの寄与が最も重要である」と考えられているが,その化学組成を厳密に定量分析した研究例はほぼ皆無であり,不純物が混在した試料を解析している場合が多々認められる.ケイ酸ランタン(x=0)の高分解能X線粉末回折パターンから結晶構造を精密化して,酸化物イオンが比較的動きにくい室温と,比較的動きやすい800℃の結晶構造を比較している.詳細な結晶構造解析は,最大エントロピー法で電子密度分布を三次元可視化することで行なっている.さらにLaとO原子に欠陥を持つアパタイト型ケイ酸ランタン(x>0)の存在を初めて明らかにした.xの増加とともに,席占有率g(La1)とg(La2),g(O4)は減少した.一次元トンネル中の酸化物イオンO4の異方性原子変位パラメターの値は,xの増加(g(O4)の減少)にともない減少した.ごく最近の研究では,Bechade博士と共同で,分子動力学法とbond valence sum法を用い,格子間隙の酸化物イオンサイトと伝導メカニズムを解明している.以上の知見を踏まえて,ケイ酸ランタンの温度と化学組成による結晶構造の変化を基に,イオン伝導度と結晶構造との関連を解明した.
著者
有吉 誠一郎 田井 野徹 寺嶋 亘 大谷 知行
出版者
名古屋工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、超伝導トンネル接合素子(STJ)の新しい作製法を用いて究極感度の検出デバイス実現へ向けた技術的基礎を築くことにあった。具体的には、従来の多結晶成膜法(スパッタ法)に代わり、単結晶成膜法(分子線エピタキシー法)を導入し、原子層レベルで平坦なトンネルバリア界面を形成することで超低雑音特性をもつAl系STJ素子の作製技術を検討した。まず、Al単層膜の成膜時にはAl203(oool)とsi(111)の2種の基板を用いた。反射高速電子線回折(RHEED)や原子間力顕微鏡等を用いて薄膜の結晶性と平坦性を多角的に評価した結果、平坦性と結晶性の両立の観点から成膜時の基板温度は約100℃が適していることが分かった。次に、MgOをトンネル障壁とする3層膜をSTJ素子に加工し0.3Kに冷却して電流電圧特性を評価した結果、STJ素子の臨界電流密度は15.5~ll7A/cm2、素子品質の指標の一つであるR、g/R、は4.0~60.2であり、良好な特性を有する3層エピタキシャルSTJ素子を実現した。
著者
斎藤 彰一
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究において,匿名通信における匿名性の向上と,携帯端末などの性能の低い計算機や家庭や移動端末等のネットワーク環境における匿名通信利用について研究を行った.さらに,新しい通信方式である送信者追跡困難通信を開発した.この新方式は,追跡困難性による利用者個人情報の保護と,匿名性の悪用を防止することが可能である.これらの研究成果は,個人情報を保護するネットワークを備えたネットワークインフラの構築に貢献できると考える.
著者
小田 亮
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

旭川市旭山動物園のシロテテナガザルを対象に、ソングのテンポに対する認知を調べる野外実験を行った。テナガザルのソングはノートと呼ばれる個々の発声が組み合わされて構成されている。昨年度に引き続き、3種類の異なるノート間隔をもったソングを作成し、これらをテナガザルに対して再生した。再生中と再生後の行動をビデオに記録し比較することで、テンポの認知がどのようになされているのか調べた。まず刺激音であるが、伊豆シャボテン公園において飼育されているシロテテナガザルのオスが自然に鳴いたソングを録音し、デジタルファイルに変換した。ノート間の時間間隔をすべて倍にしたものと、半分にしたものを作成した。このようにして作成した通常のソング(S)、ノートは同じだが間隔が倍のもの(D)、そして間隔が半分のもの(H)のそれぞれを、旭山動物園の野外ケージにおいて飼育されているシロテテナガザル4頭(オトナメスとその子供3頭)に対して再生した。再生は馴化を避けるために午前中に1回、午後に1回の1日2回のみとした。反応はデジタルビデオカメラ2台に記録し、動画ファイルに変換した後に動画分析ソフトウエアを用いて分析した。前年度は最年長のオス(長男:5歳)を分析対象としたが、今年度は第二子のオス(次男:3歳)の反応を分析した。ソングを再生中と、再生後同じ時間のあいだの移動時間割合を分析したところ、長男ではHの場合のみ、再生後に移動時間が有意に多くなっていたが、次男ではそのような差がみられなかった。長男と次男でソングへの反応に差が見られた原因としては、年齢が関係している可能性が高い。テナガザルが出自群を出て独立するのは8〜10歳といわれており、歌への反応もこれに伴って高くなると考えられる。5歳の長男は他個体の歌にある程度敏感であると考えられるが、次男はまだ性成熟にも達しておらず、歌への関心が低いと考えられる。
著者
桑原 浩平
出版者
名古屋工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

平成15年度は,まず屋外環境において,人体の体感温に影響を及ぼす環境要素を探るために,修正湿り作用温度を用いた屋外温熱環境の評価を行った。修正湿り作用温度は,気温・湿度・放射・風速が人体に及ぼす影響を個別に表示することが出来るという利点がある。その結果,夏や秋においては,日射を含む放射の影響を強く受け,冬においては,風速の影響を強く受けていることが明らかとなった。次に,日射を考慮したSET^*や予想温冷感ETSが暑熱環境において有効であるか否かを検討するために,名古屋の屋外空間において被験者実験を行った。実験結果から,SET^*は名古屋のような暑熱地域においても温冷感の評価に有効であったが,ETSは札幌の被験者実験を基に作られた指標であるため,名古屋においては,特に寒いと申告する側において計算値と申告値に差が見られた。また,これまでは屋外温熱環境の評価に関しては主に温熱指標と温冷感との対応を見るのが主であったが,今年度は温熱指標と快適感に関する検討も行った。これまでに行われた,札幌と名古屋の屋外空間における被験者実験データから,SET^*と中立温冷感,快適感との関係を明らかにした。分析結果から,屋外環境におけるSET^*に対する中立温冷感域として15.7〜25℃が,快適側申告域として17.8〜24℃が得られた。さらに,ETSと快適感の関係を実験データから回帰したところ,80%以上の人が快適であるというETSの範囲は見られなかったものの,-1.0(少し涼しい)<ETS<+1.0(少し暖かい)の範囲内で70%弱の人が快適と感じるとの結果を得た。最後に,人体のどの部位が全身の温冷感に影響を及ぼすかを検討したところ,頭部は季節に関係なく全身の温冷感とよく一致し,他の部位においては,季節を通じて露出部位の影響を受けやすいことが確認された。
著者
古川 達也
出版者
名古屋工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

2年目までの研究によってフルオロシュガーの重要な中間体であるFluorinated Osmundalactoneの合成に成功した。その研究ではアリル位のフルオロメチル化反応(Tsuji-Trost反応)がOsmundalactone合成の重要な鍵反応となっていたため他のアリル位のフルオロメチル化反応が行うことができれば,様々な置換基を有するOsmundalactoneが合成可能であると考えた。したがって,3年目の研究では新たなアリル位のフルオロメチル化反応の開発に取り組んだ。出発原料にMorita-Baylis-Hillman(MBH)反応の生成物から誘導できるCarbonateを用い,シンコナアルカロイドを用いたS_N2'/S_N2'型のモノフルオロメチル化反応を検討した。求核剤にFBSM触媒に(DHQD)_2AQNを用いることで高エナンチオ選択的にFBSM付加体を得ることに成功した。またFeCl_2およびTi(O^iPr)_4を添加剤として加えることによって選択性の向上が見られることを見出した。一方,求核剤としてRupert試薬を用いればトリフルオロメチル化反応が進行することも見出した。本反応はLewis塩基を用いたアリル位の初の不斉トリフルオロメチル化反応の例である。トリフルオロメチル化反応では触媒に(DHQD)_2PHALが効果的であり,エーテル系溶媒が重要な役割を果たしていることがわかった。得られたFBSM付加体およびトリフルオロメチル化体はラジカル反応を用いた分子内環化反応を用いることでフルオロメチル基を有するジヒドロインデンへと誘導することに成功した。X線結晶構造解析の結果,興味深いことにFBSMの付加体とトリフルオロメチル付加体は立体が逆転することが分かった。したがって,反応機構の違いが予想された。