著者
田中 高史
出版者
国立極地研究所
巻号頁・発行日
2020-03-31

8 0 0 0 OA 極地研NEWS 187

出版者
国立極地研究所
雑誌
極地研NEWS (ISSN:13476483)
巻号頁・発行日
no.187, pp.1-16, 2008-09
著者
有田 真 井 智史 仰木 淳平 高橋 幸祐 門倉 昭 源 泰拓
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:2432079X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-20, 2020-01

南極の昭和基地では,基線値(絶対観測値と連続観測値との差)が特に夏期間において顕著な変化を示す.この変化の要因としては,例えば重機のような磁性体によるノイズや磁力計センサーの傾斜変動や温度変化といった設置環境の変化が考えられる.磁力計センサーの傾斜変動が夏期間の基線値変化に及ぼす影響を調査するために,電子水管傾斜計を用いて傾斜変化を連続観測するとともに,絶対観測を通常より高頻度で実施した(2013 年1 月~2 月,2013 年11 月~2014 年2 月).調査の結果,東西方向で30 秒角から50 秒角程度,南北方向で10秒角程度の顕著な傾斜変化があることが判明した.基線値変化には傾斜変化が大きく寄与していることが分かり,傾斜変化の基線値変化への寄与率は最大で,D成分で60% から100%,H 成分とZ 成分で30% から40% と推定された.At Syowa Station, Antarctica, the baseline values, or the difference between the absolute and continuous measurements, vary relatively significantly in summer. They are possibly due to artificial disturbances from magnetized objects, and/or changes of the instrumental environment such as involving the tilt and temperature of the sensor for continuous observations. To evaluate the effect of the sensor tilt, we continuously monitored its behavior with electronic tiltmeters over two successive summer seasons (Jan.-Feb. 2013, Nov. 2013-Feb. 2014), while also intensifying the frequency of the absolute observation. The variability of the tilt was found such that, its angular changes in the East-West and North-South directions were 30 to 50 and 10 arcseconds, respectively. The observed variations of the baseline values can be attributed primarily to the sensor tilt changes, with its contribution estimated to be up to 60 to 100% for the D component and 30 to 40% for the H and Z components.
著者
田邊 優貴子
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

・試料分析とデータ解析(平成30年4月-6月)平成28年12月から平成30年2月にかけて南極湖沼で採取した湖水試料および湖底生物群集試料を国内に持ち帰った。これらの試料について、元素分析計(スミグラフNCH-22)で炭素・窒素・リン濃度の分析、HPLC(Shimadzu社)で植物色素の分析、湖水・間隙水試料は栄養塩オートアナライザー(Bran +Luebbe社製)を用いて溶存無機栄養塩(リン酸・アンモニウム・硝酸・亜硝酸・ケイ酸)の分析、TOC分析計(Sievers 500)を用いて全有機炭素・溶存有機炭素の分析、蛍光分光光度計(FluoroMax-4、堀場製作所)を用いた分析による溶存有機物の詳細解析、次世代シーケンサー(MiSeq)で一次生産者(シアノバクテリア・藻類)と分解者(菌類・バクテリア)の遺伝子解析を実施した。また、UC Davis安定同位体分析サービスに炭素・窒素の安定同位体比の分析を依頼した。・カナダ高緯度北極調査(平成30年7月-8月)北緯83度にあるワードハント島でカナダと共同で野外調査を行った。湖内の湖沼学的パラメーターの鉛直分布を測定し、湖底から深度毎に生物群集試料を採取した。また、平成28年7月にワードハント湖に設置した係留システムを回収し、2年分の水中環境データ(クロロフィル、溶存酸素、光、水温)の取得に成功した。カナダチームが長年取得しているこのエリアの気象・湖氷データと合わせてデータ解析し、水中環境と植物プランクトンの動態を明らかにし、国際誌に論文として投稿した。・試料分析と総合解析(平成30年8月-平成31年3月)現場および分析により得られた情報を統合することにより、エリア毎の一次生産者の環境応答と系内の生物多様性および物質循環プロセス、および、過去の環境変動パターンの違いから湖沼生態系の遷移プロセスとの関係について解析を開始した。
著者
D.A. Hodgson P. Convey E. Verleyen W. Vyverman S.J. McInnes C.J. Sands R. Fernandez-Carazo A. Wilmotte A. De Wever K. Peeters I. Tavernier A. Willems
出版者
国立極地研究所
雑誌
Polar science (ISSN:18739652)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.197-214, 2010-08

南極大陸の高緯度内陸部に位置するDufek Massifの湖沼と、そこに見られる生物を調査した。ここには二つのドライバレーがあり、地球上最南端の生物生息地となっている。優占する生物はラン藻で、その多様性は観察されてきた南極湖沼のどこよりも低い。緑藻、ケルコゾア類、バクテリアは存在するが、珪藻は風で飛ばされてきたと思われる一枚の殻が見つかっただけであった。コケ類を欠き、地衣類は一種類のみが見つかった。三種類のクマムシ、ワムシを含む後生動物は見いだされたが、節足動物と線虫は見つからなかった。これらの単純な動植物群集は、この地域のきわめて厳しい環境のために、低緯度南極に通常存在する要素のほとんどを欠く。
著者
巻田 和男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.15-24, 1996-03

最近の地球磁気の研究によると, 地球磁場はこの1000年間に急速に減少しており, もし今の減少速度で減り続けると, あと1000年ほどで地球磁場がなくなってしまうと言われている。注目すべき点は, 南アメリカ周辺部において, 地球磁場の減少速度が特に著しいということである。この地域は南大西洋磁気異常帯として知られているように, もともと磁場強度が大変弱い所であるため, 今の減少速度で推移すると, この地域の磁場はあと400年余りで消失してしまう状況にある。ところで, 地球磁場はこれまで何回となく磁場反転を繰り返してきたわけであるが, 近い将来, 人類は大変弱い磁場環境におかれることが予想され, 更には, 地球磁場反転の場面に遭遇する可能性も考えられる。他方, 最近の人工衛星観測によると, 地球磁場が大変弱いブラジル周辺部において, 多量の高エネルギー粒子(数MeV以上の電子及び陽子)の入射が見られることが報告されている。これらの粒子は高度数十キロメートル付近まで降下し, X線を放射していることも知られている。今後, 地球磁場の減少が続くとすれば, これらの現象がますます顕著になっていくと予想される。ただ, これらの高エネルギー粒子やX線は厚い大気に阻まれ, 地上までは到達していないため, 地上の生態系に大きな影響を与えていないと思われる。しかしながら, 超高層大気中において, これらの高エネルギー粒子が様々な電磁現象(電磁波の発生や電子密度の変動等)を引き起こしていることが考えられる。また, 最近の観測では, 高エネルギー粒子の入射がオゾン層破壊を引き起こしているという報告もある。これらの状況より, 本研究は, すでに著しく磁場強度の弱いブラジル域において, 超高層大気の現状を調査することにより, 近い将来, 地球磁場が大変弱くなった状況下における地球環境を予測することを目的としている。
著者
田中 高史
出版者
国立極地研究所
巻号頁・発行日
2020-12-01
著者
鮎川 勝 平沢 威男 国分 征 大瀬 正美
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-42, 1975-03

The rocket launching facilities were inaugurated in 1969 and completed in 1971 at Syowa Station (60°00'S, 39° 35'E: geomagnetic lat. 69.6°S, long. 77.1°E). In the rocket range, about 500 m south-west of the main base: of Syowa, there are three buildings, namely a propellant magazine (10.4×6.Om), a radar-telemeter hut (14.4×6m) and an assembly shop (12×7.6m) connected with a turntable. A turntable (8 m in diameter) in the center of the launching platform is at the same level as the floor of the assembly shop. A rocket carriage can be moved on rails from the assembly shop onto the launching turntable. Rotation of the turntable and movement of the launcher are remote-controlled. An iron-grating box covered with a vinyl sheet is attached to the launcher for keeping the rocket warm. The box is air-conditioned. The rocket is assembled and tested in the assembly shop and transferred to the turntable. The whole launching system is capable of firing a rocket with a diameter up to 350 mm. A radar-telemeter system and the igniter and timer controlers are installed in the radar-telemeter hut. A radar-tracking system with a power of 10 kW is used to measure the azimuth angle, the elevation angle, and the direct range, as well as to record telemeter signals in two channels transmitted by PPM modulation. The receiving frequency of the telemeter system is 290 MHz and the data in 12 channels is recorded. The control system consists of an ignition controller, a timer controller, and a probe controller. These control systems were designed to be operated by a limited number of technicians. There are two types of single-stage sounding rockets, S-160JA and S-210 JA. Their specifications are as follows: [table] Butadiene solid propellant is used from the viewpoint of low temperaturecharacteristics. There is another type of rocket which will be used in the future; S-310JA type (payload 40kg, peak altitude 220km). These rockets were developed by the Institute of Space and Aeronautical Science, University of Tokyo. In order to fire the rockets at the moment when auroral activities begin to show a drastic increase at the onset of an auroral substorm, some considerations were needed in the procedure of the firings in the Antarctic severe natural environment. As a result of many considerations and trainings, the rocket could be fired within one minute after the receiving of the introduction in the rocket launching. The ground-based observations were consolidated at Syowa Station, assisting the direct measurements of physical quantities in auroras by means of the sounding rockets. The instruments to be used in the auroral observations are: all-sky camera (35mm, every 10s), auroral zenith photometer (4278 A), multicolour geomagnetic meridian scanning photometers (4278, 5577, 6300 A, H_β), high sensitive TV camera and VHP auroral radar. It was 10th February 1970 when the first launching of the sounding rocket was carried out at Syowa. Since then, four S-160JA type and nineteen S-210JA type rockets were flown during the period of the research program in 1970-1973. Objects of measurements were electron and ion densities, electric and magnetic fields, infrared and ultra-violet emissions, energetic paticles, X-rays and radiowave in aurora. Through the successful rocket flights, the significant information to reveal the physical nature of auroras was obtained. The present paper mainly reports on the progress of the research program by means of sounding rockets at Syowa Station in 1970-1973 concerning the transportation, the construction and maintenance of the launching facilities, arrangements of the rocket firing and tracking and the obtained results of the rocket flights. During the period of International Magnetospheric Study (IMS, 1976-1979), the rocket facilities will be reopened and more than twenty sounding rockets (S-310JA and S-210JA) are scheduled to be launched from Syowa Station.
著者
菊地 光一 伊藤 惇 吉村 昇
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.80-98, 1985-03

筆者らは寒冷地における風力エネルギーの利用に関心を持ち, ここ数年来, 秋田工業高等専門学校屋上での風況調査および小型風車の試作, 実用運転などを行ってきた。秋田県は夏を除き, 移動性の高, 低気圧群が通過する緯度帯にあり, 冬は特に大陸高気圧の影響を強く受け, 西風が強く雪が多い。また, 日本海側にある本県は他都道府県, 特に太平洋側と比較して概して風が強いので, 筆者らは風力エネルギーの利用を強く念願していた。1982年11月, 風速7m/sで1kWのプロペラ型風力発電装置を設置する機会を得, 現在実用運転中であるが, 次のような項目について得られた成果を報告するとともに, 極地で風力発電を実施する場合の留意事項について述べる。(1)風車の安全性確認のための試験運転, (2)生活的環境への影響, (3)発生エネルギーの屋根雪処理への利用。
著者
田中 高史
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.89-107, 2014-07-31

私は第24次日本南極地域観測隊に参加し,昭和基地でのオーロラ観察から,サブストームを学んだ. 以来30年,そのとき観察したサブストームのイメージを数値シミュレーションで再現する研究を続けてきた.この研究では,まずM-I(magnetosphere-ionosphere: 磁気圏-電離圏)結合系全体を自己無どう着的に再現し,その部分としてサブストームの再現をめざした.はじめは観察されるサブストームの具体的な様相までは再現できなかったが,最近の高精度並列シミュレーションにより,当初の目標が達成された.これまでの磁気圏物理学の限界は,部分を見て全体を連想する点であったが,シミュレーション結果は3次元プラズマ,磁場,電流構造をすべて保持しており,それらの解析から,これまで連想していた磁気圏の全体構造と,それを反映するサブストームメカニズムのどこに誤りがあるか,わかるようになった.このためのキーワードはダイナモである.なお学術的な詳細は第2編に述べる.
著者
東野 陽子 神沼 克伊
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.190-195, 1998-07

1998年3月25日03時12分(UT)頃, 南極プレート内の62.876°S, 149.712°Eで, M_s8.0の巨大地震が発生した。昭和基地(SYO : 69°00′S, 39°35′E)からの問い合わせに対し, フランスのDumont d'Urville基地(DRV : 66°40′S, 140°01′E)では全員が揺れを感じ, 落下物もあったと言うから日本の気象庁震度階でIII∿IVに相当する。昭和基地では4時間にわたり連続して地震動が記録された。DRVの震央距離は670kmであるから, 日本の関東地震(1923年, M=7.9)を岡山付近で感じたことになり, 有感半径が700kmの関東地震と同じ規模かそれ以上の大きな地震だったことが分かる。この地震は南極プレート内で起こった初めてのM8クラスの地震であり, 南極大陸での初めての有感地震であった。
著者
Goderis Steven Yesiltas Mehmet Pourkhorsandi Hamed 白井 直樹 Poudelet Manu Leitl Martin 山口 亮 Debaille Vinciane Claeys Philippe
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:2432079X)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.1-20, 2021-01

2019-2020 年の夏期に,東南極セール・ロンダーネ山地南部においてベルギー南極観測隊(BELARE)により隕石探査を実施した.ナンセン氷原には,2020 年1 月15 日から2 月6 日まで23 日間滞在し,採取した隕石の総数は66 個,合計重量は約8 kg であった.ナンセン氷原での隕石集積機構を解明するために,隕石の他に氷,火山灰層や岩石の破片も採取した.採取した隕石は,凍結したまま国立極地研究所に輸送された.これら採取した隕石が国際隕石学会の隕石命名委員会に認可された後,分類データはMeteorite Newsletter で公開される.This report summarizes the Belgian Antarctic Expedition (BELARE) 2019-2020 meteorite search and recovery expedition near the Sør Rondane Mountains of East Antarctica during the 2019-2020 field season. This expedition took place from 15 January to 6 February 2020 within the area defined as "C" of the Nansen Ice Fields (S72°38'−72°48'S, 24°35'−25°06'E). The expedition team consisted of four scientists and two field guides, who systematically searched the ice field area and collected 66 meteorites. The total weight of the meteorites was determined to be ~8 kg. In addition to meteorites, blue ice samples, volcanic ash layers, and wind-blown terrestrial rock fragments were collected from the area to study in detail the nature of the mechanisms concentrating meteorites on the Nansen Ice Fields. The recovered meteorites were transported in a frozen state to the National Institute of Polar Research, Japan for dry-thawing and subsequent classification.
著者
辻本 惠 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.137-150, 2013-03-29

2009 年2 月15 日から23 日にかけて,オーストラリア南極局(AAD: Australian Antarctic Division,以下同様)で取り組まれている外来種持ち込み防止対策に関する調査を行った.(1)機材の管理,(2)装備品の管理,(3)積荷の管理,(4)観測隊員への教育の4 項目について施設見学やインタビューを行い,現場の状況と外来種持ち込み防止対策システムの全容を把握した.本調査により,AADでは南極における観測・設営活動に伴う外来種持ち込みの危険性を強く認識し,機材や装備品,積荷の管理から観測隊員への教育まで,細部にわたり包括的な外来種持ち込み防止対策を講じていることが明らかとなった.特にAAD で徹底されていた職員や観測隊員への教育活動は,我が国の南極観測事業においても極めて有効な手段であると考えられる.本調査結果を参考にした組織的な外来種持ち込み防止対策の立案により,昭和基地周辺の貴重な生態系の保全につながることが望まれる.

3 0 0 0 IR 南極の地名

著者
原田 美道
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1768-1776, 1964-02
被引用文献数
1

Japanese geographic nomenclature in Antarctica was decided by Japanese Promotive Headquarters of Antarctic Research Expedition (J.P.H.A.R.E.) in 1961, based on the policy of United States Advisory Committee on Antarctic Names. Until 1963 total 98 place names were decided by Antarctic Names Committee of Japan, Ministry of Education, and authorized by J.P.H.A.R.E. Those names are classified by First class, Second class and Third class generally. The provisional gazetteer will be published in the near future, in which all official names and their descriptions are contained. Place name lists are shown in Appendices 1, 2 and 3, and new names are located in Figs. 1, 2 and 3 respectively. Exact geographical positions are shown in the topographic maps which are being compiled by Geographical Survey Institute.
著者
奥野 淳一 三浦 英樹
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

南極周縁域の大陸棚の深度は,一般的な大陸棚の深度より著しく深いことが知られている.この原因は,南極氷床が地球表層における荷重として作用することで,その縁辺域を沈降させているという仮説がある.本研究では,地球の粘弾性的変形を考慮したグレイシャルアイソスタシーのモデルを用いて,南極氷床荷重を変動が大陸棚深度に与える影響を調査した.数値シミュレーションの結果,現在の氷床分布を表面荷重と仮定すると,南極縁辺域の大陸棚深度の異常を説明することができないことが判明した.しかし,過去に現在の氷床分布より拡大した時期があると仮定した場合,南極縁辺域の大陸棚深度異常を説明できる可能性を示した.
著者
成瀬 廉二
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.252-267, 1994-11

第34次南極地域観測隊は, 越冬隊(佐藤夏雄隊長)39名, 夏隊(成瀬廉二副隊長)16名で編成され, さらに交換科学者として, 中国から1名が越冬隊に, オーストラリアから1名が夏隊に参加した。砕氷艦「しらせ」は, 1992年11月14日東京港を出港し, 12月17日からリュツォ・ホルム湾の厚さ2∿3m強の定着氷に入り, 砕氷航行の後, 30日昭和基地に接岸した。12月18日から昭和基地へのヘリコプターによる輸送が始まり, 接岸後の氷上輸送, 貨油輸送を含め, 1993年1月中旬までに計960tの物資の輸送が完了した。昭和基地における夏期の建設作業は, 12月19日より2月9日までの間に管理棟内部設備等, 当初計画の工事をほぼ完了した。この間, 南極周回気球3機の打ち上げに成功するとともに, 重力絶対測定では600個以上の有効データが得られた。また, 大陸沿岸の露岩地域では正味43日間にわたり地質, 地形, 測地, 生物等の野外調査を, 氷床内陸では1カ月間の中継拠点往復デポ旅行を実施した。2月10日, 昭和基地最終便により第34次夏隊全員が「しらせ」へ帰着した。「しらせ」は2月13日流氷縁を離脱し, リュツォ・ホルム湾沖では4日間にわたり海底地形測量を実施し, その後19日から23日までアムンゼン・ケーシー湾にて露岩域の地学調査, 海洋生物観測, 3月2日から4日までプリッツ湾にて海洋生物観測を行った。生物観測では, トロール等により多種類の底生生物, 中層性魚類, プランクトン等が採集された。その後, 船上観測を行いつつ帰路につき, 3月21日にオーストラリア・シドニーに入港した。なお, 海洋停船観測は, 往路4測点, 復路11測点にて実施した。第34次夏隊は第33次越冬隊とともに, 28日シドニー発空路, 同日成田に帰着した。