著者
国立極地研究所
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.154-159, 1977-11
著者
福島 紳 小玉 正弘 宮崎 友喜雄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.894-898, 1961-01

当初,南極観測用に製作された宇宙線中性子観測装置は,IGY用として設計されたもので,全体の重量が6トンを超えるため,ヘリコプター輸送に適さない.そこで重量軽減化の方法として,(1)ニュートロン減速剤として,パラフィンの代りに現地の海水を利用する.(2)真空管方式の増幅,計数装流をすべてトランジスター化する.の2点から,新しい観測装置を製作した.この装置は重量約500kgで,第4次観測隊により無事基地へ空輪された.観測は1960年3月3日より開始された.観測結果の一部として,日平均値の変化及び5月4日の宇宙線異常増加の結果を示した.
出版者
国立極地研究所
雑誌
ぷれ極 (ISSN:24322687)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-9, 2017-08-03 (Released:2017-08-25)
著者
久保田 勝彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.88-96, 1981-09

天空照度とナンキョクオキアミ(Euphausia superba)群の日周鉛直移動との関連を明らかにするため, 南極海において, 1980年1∿2月水産庁開洋丸により調査を実施した天空照度と魚群探知機の記録を解析した。照度の最小値は, 00時付近で0∿30lx, 日出時(02時18分∿03時24分)には90∿520lx, 最大値は12時付近で30000∿124000lx, 日没時(20時13分∿22時47分)には420∿80lxを測定した。夜間(18時20分∿04時20分), オキアミ群の最大出現頻度は0∿20m層に認められ, その頻度は深度とともに減少している。昼間(08時20分∿16時20分)における, オキアミ群の最大出現頻度は20∿40m層に認められ, 0∿20m層および40∿60m層ではほぼ同じ値を呈しているが, 40m以深では深度とともに減少している。そして, オキアミ群の日周鉛直移動と照度との間に関係のあることが, 立証された。
著者
村越 望
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.42-58, 1969-12

Forty members of the 10th Japanese Antarctic Research Expedition left Tokyo on November 30, 1968, aboard the icebreaker FUJI, under the command of Captain Shigeo MATSUSHIMA The expedition was led by Dr Kou KUSUNOKI, also leading the wintering party of 28 men and one pressman, while the author, as deputy leader, led the summer party of 12 men and one press reporter At Fremantle, West Australia, an american scientist (aeronomy) Mr Gerard A ROACH got on board the FUJI as an observer The FUJI carried 560 tons of expedition's cargo, including a single-engine monoplane Lockheed LASA-60, and was equipped with two Sikorsky S61-A helicopters and one Bell 47G2A helicopter After anchoring at Fremantle from December 15 through 21, 1968, the FUJI proceeded to Lutzow-Holm Bay and reached the edge of fast ice on January 5, 1969, without much difficulty The anchorage was about 30 nautical miles northeast of Syowa Station, and from there the first helicopter flight was made to transport men and cargo. On the following day, January 6, the FUJI reached fast ice within 1400 meters east of Syowa Station Unloading of about 560 tons of cargo and transportation to the station were carried out mainly by two S61-A helicopters, but about 65 tons of diesel oil was transmitted by a pipeline directly from the ship to the tanks on the shore, one 50kl metal tank and three 10kl rubber pillow tanks This was the first attempt of oil transportation by a pipeline. The remaining 105 tons of heavy materials were transported by snow vehicles and sledges over sea ice. Construction works was carried out until February 20, and a new living hut (20 × 5m), an extention of garage (10 × 8m), a tidal observation hut (3 × 3m), a corridor and three rocket huts, an assembly shop (11.8 × 7.6m), a telemetry and rador station (14.9 × 6.5m), and a control center (6.0 × 3.6m) were completed For the constructions, we were provided with a new 11-ton bulldozer, a 2-ton dump truck, and a concreat mixer. The scientific activities were largely the continuation from the previous years It is, however, worthy to note that a small aircraft LASA-60 was used in aerophotogrammetry during the summer period. The aerophoto survey covered the southern part of Lutzow-Holm Bay and the Yamato Mountains about 300km south of Syowa Station. In conjunction with the study of conjugate points, the high altitude balloons were released to observe auroral X-rays during summer. On January 28 and 29, four astronomical points were newly established in the southern part of Lutzow-Holm Bay Between February 3 and 10, 15 research members studied biology, geochemistry, geology, cartography and geography in the Skallen area where they reached by helicopter. On February 15, the 9th JARE pole traverse party, after the long journey of 141 days, returned to F16 camp, 15km east of Syowa Station. At F16 the helicopter picked up 11 members, records and ice samples carried them to the ship. On February 20, the station was officially handed over to the 10th wintering party, and the FUJI took a course to the north and then to the west. On February 22, a helicopter was sent out to take the research party to the rocks of the east coast of the Riiser-Larsen Peninsula, and to bring them back. On March 3, the ship turned to the north, and left Antarctica. After staying at Cape Town from March 14 to 20 and at Colombo from April 5 to 9, the ship returned to Tokyo on April 25. The shipboard observations of upper atmosphere physics, meteorology, oceanography, and biology were successfully carried out throughout the voyage.
著者
伊神 〓 一ノ瀬 洋一郎 原田 道昭 神沼 克伊
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.158-182, 1980-09

日本の南極観測は,第20次隊から3年間地学部門の観測に重点がおかれ,人工地震観測も実施されることになった.これは,南極大陸の地下構造の解明と南極における資源探査の基礎技術開発を目的とした日本隊では初めての試みである.第20次隊では南極という特殊条件の下での爆破方法,観測方法,ボーリング方法の検討などを兼ねた予備観測が実施された.第21次隊で本観測が実施される.本報告は,第20次夏隊によって行われた人工地震観測の準備から実施までの報告である.測線は昭和基地付近のオングル海峡から東へ約70kmで,観測点は大陸内に約5km間隔で10点設けた.爆破はオングル海峡と側線東端の内陸の2点で行い,オングル海峡では110m下の海中で火薬1ton,内陸では氷雪ボーリングによる内径14cm,深さ62.8mの孔中に装てんされた火薬560kgの爆破が実施された.爆破および観測は成功し,所期の目的は達成された.
著者
西尾 文彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.29-52, 2013-03-29

第43次隊は総勢60名で構成され,このうち夏隊は20名,越冬隊は40名であった.ほかに夏隊同行者として7名が参加した.南極観測船「しらせ」は,2001年11月14日に晴海埠頭を出港,観測隊本隊は11月28日に航空機で成田を出発し,西オーストラリアのフリーマントルで「しらせ」に乗船した.「しらせ」は12月3日に同地を出発し,海洋観測を実施しつつ12月14日に氷縁へ到着した.12月18日に昭和基地第一便が飛び,12月23日に昭和基地に接岸して氷上輸送,その後の本格輸送が開始された.2002年2月12日の最終便までの間に,第43次越冬成立に必要な物資の輸送と越冬隊員の交代を滞りなく完遂した.また,観測隊ヘリコプターは12月23日に「しらせ」から昭和基地へ移動し,その後2002年2月3日まで氷床内陸域も含めた観測支援作業に従事した.人工地震の観測では内陸に雪上車行動を展開したが,適宜ヘリコプターを利用し空路支援した.基地作業では,昭和基地内の多くの地域で土木・建築作業,基地設備の更新などが行われた.なお,夏隊員のうち4 名は専用観測船「タンガロア号」を利用した観測を実施し,国内出発から帰国まで完全に別行動であった.
著者
神沼 克伊 羽田 敏夫
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.135-148, 1979-03

1976年2月から1977年1月まで,南極・昭和基地の地震観測網で観測した氷震について調べた.見かけ上氷震は,1)立ち上がりの明りょうな記象,2)立ち上がりの不明りょうな記象,3)群発氷震,の3種類に分けられる.このうち1),2)をそれぞれI型,II型とする.I型は1年間に80000回以上も発生しており,冬季に多い.また,これまで観測された氷震が気温の下降時に発生しているのに対し,I型は気温とは無関係に発生している.また,潮汐との顕著な関係も認められない.II型は約80回発生しているが夏に多く,昭和基地の大陸側から到来することから,大陸氷床の崩壊または,氷山生成に伴う破壊と考えられる.3)の群発氷震は,冬季にのみ発生し,その発生時間も,1日のうち気温変化の大きな夜間に集中していることから,熱歪による体積変化が原因であろう.
著者
中村 卓司 KERO Johan Ranold
出版者
国立極地研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では、最近導入された超多チャンネルの受信系で高性能な電波干渉計が構成できる大型大気レーダー「MUレーダー」に、超高感度のICCDカメラを組み合わせて、電波および光学の高感度・高精度同時観測で、流星物質の大気との相互作用、とくに電離発光時のフラグメンテーションの物理を定量的に明らかにすることを目的としている。本年度は、前年度に引き続き毎月24時間の光学および電波によるキャンペーン観測を行ない、多くの光学・レーダーの同時流星のデータを取得できた。また、10月にはオリオン座流星群の観測キャンペーンを国立天文台・渡部潤一氏らのグループとも共同で長時間にわたって行った。データ解析ではICCDビデオ画像の解析方法を改良して1/60秒のフィールド毎のデータ解析を行い、研究員の開発してきたフラグメンテーションモデルとの比較を進め、2体に分離する流星の干渉および減速の様子を詳細に検討した。また、研究協力者の上田、藤原らの多点でのビデオ観測との同時観測も進めることができた。また、EISCATレーダーとの比較では、とくにMUレーダーの広いビームを活かした散乱断面積の長時間にわたる変化の観測で、VHFレーダーの優位性を示すことができた。以上のように、本年度はこれまでのデータに加えて観測データを拡張しその同時データ数は170例を超えこの種の観測では世界最高であり、さらにデータ解析を進めることで他に類をみない高精度のデータベースを得ることに成功し、その成果は国際会議で発表し好評を得た。現在論文を投稿中(改訂中)でありさらに数編を執筆中である。
著者
影井 昇 綿貫 知彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.84-93, 1975-12

1971年南極大陸昭和基地沿岸で採集したショウワギス,ウロコギス,ライギョダマシ,ボウズハゲギス,キバゴチの内部寄生虫について調査した結果,線虫類2種(Contracaecum sp. 幼虫,Ascarophis nototheniae),鉤頭虫1種(Echinorhynchus sp.),吸虫類2種(属種共に不明),条虫幼虫(plerocercoid)1種, Copepoda 1種を見出した.ボウズハゲギスからのAscarophis nototheniaeの報告は始めてであり(new host record), Echinorhynchusは吻における鉤の数と配列から新種と考えられた.吸虫類,条虫類, Copepodaは固定が悪かったこと並びに幼虫形態であることから属種の同定は出来なかった.
著者
山内 恭 森本 真司 青木 周司 菅原 敏
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

南極域成層圏における温室効果気体の分布と変動を明らかにするため、 様々な改良を加えた小型成層圏大気サンプラーを南極・昭和基地から小型気球を用いて飛揚し、 14-29km の4 高度においてそれぞれ10.7 から7.0L(標準状態)の大気試料を採取することに成 功した。大気試料の精密分析によって、CO2、CH4、N2O、SF6 濃度、及びO2/N2 比、Ar/N2 比の鉛直 分布と経年変化が明らかになった。
著者
長谷川 貞雄 川尻 矗大
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1688-1706, 1964-02

1961年8月11日,昭和基地北方洋上に生じた金環食の際,基地において電離層観測を実施したので,その結果を報告する.この日食時には太陽高度が非常に低く,しかも若干電離層擾乱を伴っていたために,電離層の下部領域即ちE層,F_1層は観測し得なかったが,F_2領域については明らかに日食の影響が認められた.この領域について得られた主な結果を次に示す.1.F_2領域の電子消滅は主に付着作用によって行なわれ,その付着係数Bは高度300km付近において,1.5〜2.0×10^<-4>sec^<-1>の値が得られた.2.この付着係数Bの値を用いて求めた理論計算曲線は,食甚時まで観測値とよく一致するが,復円時には異常な電子密度増加が認められて,理論曲線とは一致しなかった.この原因として,荷電微粒子群の進入による電離を考え,日食期間のその電子生成率q'を求めると,平均70cm^<-3>sec^<-1>の値が得られた.3.付着係数Bの値を各高度に対して求め,それによりscale heightを求めた結果,高度300km付近におけるF_2領域においては,酸素分子0_2に対する電子付着作用を仮定して,約30kmであった.
著者
亀井 淳志 阿部 幹雄 志村 俊昭 柚原 雅樹 大和田 正明 束田 和弘 外田 智千 木下 雅章
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.283-299, 2009-11-30

第50次日本南極地域観測隊(第50次隊)夏隊のセール・ロンダーネ山地地学調査隊は67日間におよぶ野外調査を行い,その間に必要な電力を太陽光発電で賄った.今回使用した太陽光発電システム(出力電圧約12 V)の1日あたりの発電量は6724 Ahであった.そして,この調査によって以下の3つの重要なことが明らかとなった.1)南極での野外調査生活に必要な電力は太陽光発電システムにより得ることが可能である.2)最大出力電流2.3 Aの太陽パネルは1日あたり910 Ahを発電する.3)夏季の南極は白夜のために日照が途絶える事はないが,当山地では0000 LTから0500 LT (昭和基地時刻) の間に太陽光発電ができない.
著者
前野 紀一 成田 英器
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.18-31, 1979-10

日本南極地域観測隊か得た,みずほ基地の雪の密度のデータ数は,第11次,第12次および第13次のものを合計すると3635にのぼる.これらの測定結果を吟味,整理したものを使って「圧縮粘性係数」の深さ分布が求められた.みずほ基地の雪に限らず,一般に極地の雪の圧縮粘性係数は,季節的積雪,たとえば北海道の雪に比べて約100倍大きい.これは,極地における長期間の圧密過程において,氷粒子間の結合が極度に成長したためと解釈されるみずほ基地の雪において,密度の測定値は,深さ約30m〜40mの領域で,大きく振動し,かつ平均的傾向曲線からはずれた.圧縮粘性係数は,この深さ領域で鋭い極大を示した.これらの結果は,この層の雪が蓄積した時,年間蓄積量の少ない寒冷な時期が繰返しかつ持続して襲来したことを示唆する.その時期は,雪の年間蓄積量から約300年前と推定される.
著者
小山内 康人 豊島 剛志 馬場 壮太郎 外田 智千 中野 伸彦 阿部 幹雄 足立 達朗
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.291-398, 2008-07-30

第49次日本南極地域観測隊(JARE-49)夏隊・セール・ロンダーネ山地地学調査隊は,ドロンイングモードランド航空ネットワークを利用して航空機で日本から直接南極内陸山地に赴き,2007年11月23日〜2008年2月5日の75日間,キャンプ生活を送りながらスノーモービルと徒歩によりセール・ロンダーネ山地中央部地域の地質学的野外調査を実施した.また,ベルギー基地,インド基地等を訪問し,国際交流を実施した.今回の野外調査は,航空機を利用した南極内陸地域野外調査の初の試みであり,2007年度にスタートした国際極年(IPY)とも連動した国立極地研究所の一般プロジェクト研究(課題番号P-5-1:代表・本吉洋一)の初年度調査でもある.本報告では,設営面での計画の立案・準備から実施経過に至る過程について詳しく述べる.
著者
上田 豊
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.252-263, 1995-11

第36次南極地域観測隊夏隊16名(上田観測隊長), ドイツの交換科学者1名および越冬隊40名(召田隊長, 石沢副隊長)は, 1994年11月14日「しらせ」にて東京港を出発し, フリーマントル寄港後, 12月24日昭和基地に接岸した。翌年1月12日までに, 約1070トンの物資輸送を終え, 2月14日まで昭和基地施設更新建設工事, 大型短波レーダー設置ほかの作業を行った。氷床ドーム深層掘削計画では, ドーム往復内陸旅行を実施し, ドームふじ観測拠点で第35次拠点建設班と合流, 完成した新拠点で1月29日から9名による初越冬を開始した。昭和基地とその近辺では潮汐・海潮流, 生物, 測地, 気球回収予備実験, リュツォ・ホルム湾周辺露岸域とリーセルラルセン山域では地殼形成過程に関する地質調査, 測地, 生物などの観測を実施した。また往路に引き続き帰路の船上で, 海洋物理・化学・生物, 地磁気ほかの観測をしつつシドニーに到着した。第36次夏隊は順調な成果をあげ, 第35次越冬隊とともに3月28日空路帰国した。
著者
村越 望 佐野 雅史
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.56-62, 1985-03

南極地域観測が始まった1956年以来, 小型飛行機が必要に応じて使用されてきた。第12次観測隊までは夏期間だけの使用であり, 輸送・建設期間が短いこともあって飛行時間は毎回55時間を超えることはなかった。その後, 2年越冬1年持ち帰りという周期をとり, 安全のために2機を越冬させている。最近では年間の飛行時間は350時間を超えている。操縦士2人と整備士1人がセスナ185型1機とピラタスPC-6型1機を運航している。飛行機は海氷上で離着陸をし, 駐機もしているので, 夏のパドルの発生や強風に対する係留, 海氷の流失など面倒な問題が多い。安全を確保するために, 良い天気を選ぶこと, 飛行計画に余裕をもたせること, 整備上や飛行状態の過程における確認に十分気をつけている。
著者
渡辺 研太郎 佐々木 洋 福地 光男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.103-114, 1993-03

平成3年度から3年計画で, 「南極海海洋環境変動と生物過程の研究」との研究課題の下にオーストラリアと共同観測が始められた。初年度はプリッツ湾を主とした海氷域および沿岸観測基地周辺における生物生産過程の解明を研究テーマとし, H. MARCHANT博士(オーストラリア南極局)との共同研究"The production and fate of biogenic particles in the Antarctic marine ecosystem"をオーストラリア南極観測船, オーロラ・オーストラリス(RSV AURORA AUSTRALIS)の第6航海(1992年1月9日から3月27日)で行った。本研究の目的は, (1)係留実験により, プリッツ湾海氷域での低次生産およびその生産物の沈降過程の経時変化を年間を通して観測し, (2)低次生産者群集を構成する各種群の寄与を調べることである。そのため, プリッツ湾海域に時間分画式セディメントトラップおよび現場クロロフィル記録計, 海流計を係留し, かつ採水, プランクトンネットによる採集, 培養実験を実施した。また, 南大洋における優占的な一次捕食者, ナンキョクオキアミの摂餌選択性に関する電気生理学的実験を行った。
著者
工藤 栄 伊倉 千絵 高橋 晃周 西川 淳 石川 輝 鷲山 直樹 平譯 亨 小達 恒夫 渡辺 研太郎 福地 光男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.279-296, 2002-03

第39次および第40次日本南極地域観測隊夏期行動期間中(それぞれ1997年12月4日&acd;12月13日及び, 1998年2月15日&acd;3月19日と1998年12月3日&acd;12月20日及び1999年2月24日&acd;3月19日), 南大洋インド洋区で南極観測船「しらせ」の航路に沿って表層海水をポンプ連続揚水し, プランクトンネットで3&acd;8時間濾過して動物プランクトン試料を得た。動物プランクトンの湿重量測定を行い, 航路に沿って現存量を整理した。連続試料採取したにもかかわらず, 隣接した試料間においても現存量の変動は大きく, 動物プランクトンの不均一分布が伺えた。動物プランクトン現存量は「しらせ」南下時に顕著に認められる海洋前線通過時にしばしばきわだって大きくなり, その前後の海域で得られた値との格差は際立っていた。これら海洋前線では水温・塩分変動が大きく, 南大洋インド洋海区を四つの海域(亜熱帯海域, 亜南極海域, 極前線海域, 南極海域)に区切っている。2回の航海で得た現存量の平均値を比較したところ, 高緯度海域ほど平均値が大きくなる傾向があり, 南極海域で最大となった。南極海域の内でもプリッツ湾沖から東方にかけての海域(東経70-110°)で現存量が大きく, これまでの停船観測結果で推察されていた同海域の生物生産性が高いことに呼応する現象と考えられた。また, リュツォ・ホルム湾沖からアムンゼン湾沖の大陸近くの航行時に得られた現存量は, より沖合部を航行する東経110-150°間に得られた値よりも1/2程小さなものであり, さらに, 東経110°以東において大陸沿岸よりを航行したJARE-39とやや沖合いを航行したJARE-40で得られたデータ間でも前者の現存量が小さく, これらから南極海域では表層水中の動物プランクトン量が生物生産期間がより短くなると考えられる沿岸部ほど小さいことが推察された。今回表層水中で連続試料採取して得られた動物プランクトン湿重量値は, 過去四半世紀間に停船観測において同海域で主にプランクトンネット採集によって得られた値と大きくは異なってはいなかった。動物プランクトン分布の正確な測定のためには動物プランクトンの鉛直分布特性など考慮する必要があるが, 海域ごとの空間分布特性や海域内での変動性などの研究には今回のようなポンプ揚水による試料採集でも適用可能な部分が多く, その研究実施方法の容易さを考慮すると今後の長期的な動物プランクトンモニタリングなどに適した手法と思われた。