著者
二宮 敬虔 広川 英治 周東 晃四郎 村中 昇 卯尾 匡史 小笠原 雅弘 青木 星子
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-37, 1986-03

An Attitude Determination Software (ADS) system was developed for Japan's first interplanetary spacecraft, "SAKIGAKE (1985-001-A)" and "SUISEI (1985-073-A)". The ADS determines the direction of the spaceraft's spin-axis in and inertial reference frame based on telemetry data received from the onboard sun sensor and star scanner. The software system sonsists of three functional subsystems : ADS-RT, ADS-DT, and ADS-BIAS. These are used respectively for near real-time attitude determination, off-line attitude determination, and bias estimation of onboard attitude sensors. In this paper the authors describe the ADS system configuration, its functions, adopted principles of attitude and bias estimation, and the operational results obtained through the in-orbit operations of "SAKIGAKE" and "SUISEI".
著者
川口 淳一郎 稲谷 芳文 米本 浩一 細川 繁
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.3-199, 1987-03

宇宙研における有翼飛翔体の研究は, 1982年に WG が発足して以来今日に至るまで, 2機のリモートコントロールによる機体動特性の同定試験, 計5機の低速滑空試験と飛翔試験を行なってきた。そして, 1988年度には初のブーストフェーズを導入した再突入実験機をロックーンにより打ち上げることになった。この実験機は, 小型ながらもリアクションコントロール, サーフェスコントロール, 対気および慣性姿勢検出という将来型の機体にも共通な機能をもち, 求められる制御能力もまた従来宇宙研では行なったことのない新規のものである。本報告は, この新たな飛行制御系の設計の経緯と基本的な考え方についてまとめたものである。特に, かなり高い応答性が要求されたモーションテーブル試験については, 実験結果と設計の見直しというプロセスを詳しく記述している。本文は, 今後の設計, 試験に反映させやすいように, 設計データ集の形で構成されている。
著者
寺澤 寛一 山崎 吉助 秋篠 雄三
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.1, no.8, pp.213-224,Pl.1-Pl.4, 1924-09

風洞試驗に用ふる種々の模型の附近に於ける氣流の有樣を「テプラー」の「シュリーレン」法又は「ドボラック」の直接投影法を使つて瞬間寫眞を撮つて氣流の研究に資せんとして實驗を進めて居る中に瞬間寫眞では目的を達するのに面白くないので是非活動寫眞に撮したいと思つて色々な寫眞機械を取調べたが賣品にはとても望みの品がないので有り合せの機械を使ふて漸く一秒に千二百枚位の繪を撮ることが出來る樣に成つた.然し殘念なことには九月一日の大震火災で折角撮した多くの寫眞の種板も装置も實驗室記録も悉く烏有に歸して仕舞つた.此報告には實驗の方法と焼け殘りの中から拾ひ集めた數枚の寫眞とを掲げた丈けなので本當の研究に資すべきものは一つもないかも知れない.第十五圖は瞬間寫眞で撮つたもので(A)は平板に(B)は圓筒に氣流の當つた時の寫眞で氣流の速さは共に16.6m/sec.である(C)は三角形であるが山の後ろでは氣流がどう變るかを大體見るのに役に立つかも知れない氣流の速さは19.1m/sec.である(D)はR.A.F.19と云ふ飛行機翼の模型で風速は7.8m/sec.である.第十六圖以下は高速活動寫眞で撮つたものである其Aは平板に風の當つた場合で風速14m/sec.繪の數は毎秒1190枚の割である.第十六圖,B.正方形の棒に風が當つた場合.風速15m/sec.繪の數は毎秒1200枚の割.第十七圖,A.圓筒に風の當つた場合,風速18m/sec.繪の數毎秒1010枚の割.第十七圖,B.圓筒が風のある中で廻轉した場合,風速は3m/sec.で圓筒の廻轉速度は30r.p.s.である.第十七圖,C.「プロペラ」の廻轉による氣流でその廻轉速度は18r.p.s.繪での數は毎秒1050枚の割.第十八圖,A.空氣70%水素30%の混合氣體をゴムの袋に入れて爆發させた場合の有樣である.Bは眞空ガラス球を鐵槌で破碎した有樣である.此處に載せたものはほんの地震の殘り物丈けであるから研究所の復興と共に實驗が出來る樣になれば此方法で澤出繪を作つて研究の資料としたい考へである.
著者
村川 〓
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.97-108, 1958-09

数種類の成分の洋白の板について低温焼鈍の効果をしらべて,300℃から450℃にわたって焼鈍硬化による硬さの極大が二つの温度で起ることを見出した.この温度は洋白板に与えた(冷間加工による)内部歪み及び成分によってかなり著しく左右されることがわかった.精密バネ材料として洋白板を使うときには(冷間加工の前の中間焼鈍温度は約650℃として)上述の二つの温度のうち高温側の温度より少し低い温度で低温焼鈍を行なうことが望ましい.鉛を含有する洋白板の被切削性を良くするには中間焼鈍温度を約800℃とすることが望ましいことがわかった.精密バネ材料として役に立つ洋白板の顕微鏡組織を圧延面を検鏡面としてしらべると,その結晶粒は統計的に(双晶が圧延されたものは別として)細長くないが,被切削性の良い洋白板のそれは圧延方向に細長いものが多いことがわかった.以前の純銅板の低温焼鈍に関する研究を続行して,以前よりもっと純粋な銅(99.99%Cu)の板について焼鈍効果を研究した結果,この度も明らかな低温焼鈍による硬化が見られた.この硬化が0.01%以下の不純物によると考える根拠は発見し難い.したがって完全に不純物のない純銅の板でも焼鈍硬化が起ると結論することができる.焼鈍硬化の機構としては析出硬化とは結び付けないで,焼鈍のために内部歪みが緩和しようとしてdislocationが移動して結晶粒界の附近でdislocationが移動し難いような配置をとると考える方が実験的事実とよく調和する.黄銅及び洋白の板に於ける焼鈍硬化も同様に考えることができる.
著者
粟野 誠一
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.13, no.155, pp.2-19, 1937-09

近來ヂーゼル機關用燃料の發火性に關する研究の進歩と共に、その發火性が發動機性能に及ぼす影響が論ぜられるに至つたが、發火時期或は燃料の燃燒割合等がサイクルの熱力學的性質に如何なる影響を及ぼすかに就いては未だ理論的に充分明にされてゐない。本文は、燃燒ガスのエントロピ線圖を利用した逐次的近似圖式解法を案出することによつて發火時期、燃燒割合を考へた場合の筒内壓力及び平均ガス温度の上昇の模様、平均有效壓力、熱效率等を算出し、これらがサイクルに及ぼす影響に就いて理論的考察を試みたものである。この圖式的方法は燃燒割合が豫め與へられるなればガソリン機關の筒内壓力の推定にも適用出來る。又熱損失を伴ふ場合の諸計算にも用ひることが出來る。これらの理論的に求めた指壓線圖の傾向は、實驗によつて求めたものと極めて類似し、又出力效率等に關する理論的結果は各種の實際的現象によく一致しこれらに理論的根據を與へ得る。
著者
小幡 重一 吉田 彌平
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.1, no.11, pp.305-320,Pl.19-Pl.22, 1925-08

三極眞空管を含む電氣振動囘路を利用して微細な變位や運動を測定する方法は「ウイデイントン」「ドーリング」及「トーマス」等によって研究され極めて感度鋭敏なものである事が證明された。「ウィデイントン」の方法は三極眞空管を含む二つの電氣振動囘路の間の「ビート」を利用する所謂「ヘテロダイン」法であつて變位の絶對の値み極めて精密に測定する樣な場合には最も適當して居るが少くも二つの振動囘路を必要とし取扱上かなりの不便を免れない。これに反し「ドーリング」及「トーマス」の方法は夫々全然違つた考を基とした方法であるが何れも唯一つの振動囘路を必要とする點に於て實用上甚だ好都合である。著者等は此等唯一つの振動回路を使用する方法を研究し色々の應用を試みた。先づ「ドーリング」の方法即ち「チューンド、グリッド」囘路内の蓄電器の電氣容量の變化を利用する方法に「コンデンサー、マイクロフォン」を應用して爆發の音響、母音等種々なる音響を精密に記録する事を試みた。次に此「コンデンサー、マイクロフォン」を壓力計に改造して壓力變化の精密なる記録をとる事を試み其應用の一例として「ピトー」管に此壓力計をつないで扇風器の風速の變動を記録してみた。物體の振動等を記録するには非常な精密を要する場合以外は「トーマス」の方法が便利である。此方法では物體と「コイル」との關係的位地の變化によつて「エツディーカーレント」損失の變化を惹き起すのを利用するもので振動體に何物をも觸れさせずに其振動を記録する事が出來る。「トーマス」は「ハートレー」囘路を使用したが著者等は音響や壓力變化の記録をとる場合と同じく「チューンド、グリッド」囘路を使用して全く同様の成績が得られる事を示した。是等の方法は猶色々な方面に應用の途があると考へられるから種々な用途に適應する樣な装置を一と纒めにした器械を造つたら甚便利であらうと考へられる。因つて著者等は以上の經驗に基いて「アルトラ、マイクロメター」即三極眞空管を應用して微細な變位や運動を測定する器械を東京市麹町區有樂町報知ビルデイング内安藤商店をして製作させた。
著者
宇宙航空研究開発機構 Japan Aerospace Exploration Agency
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構特別資料 = JAXA Special Publication (ISSN:1349113X)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-SP-05-004, 2006-03-01

宇宙開発でこれまでに開発された技術は、単に宇宙開発だけで終わらずに、私たちの生活の、さまざまな場面で役立てられています。これがスピンオフ(SPIN OFF=技術移転)とよばれるものです。たとえば医療機器や照明装置などで使われるレーザー技術は、アポロ計画のとき、地球と月の距離を正確に測定するために生まれた技術でした。スペースシャトルの宇宙服の技術の応用からは、足への衝撃が少なく、ジャンプ力の高いバスケットボール・シューズが開発されています。さらに、コンピュータの高性能化、小型化は宇宙開発で生まれたIC(集積回路)のおかげです。このように、宇宙開発の過程で生みだされた新技術は、私たちの日常に数多く見ることができます。我が国においても、宇宙航空研究開発機構(JAXA)における研究開発の成果が、人々の暮らしや安全の確保、環境問題や医療・福祉、産業などに貢献している事例を見ることが出来ます。宇宙開発が今後、情報社会の進展などと共に一層高度化し、様々な分野に裾野が拡大していくことが考えられますが、それに伴って宇宙開発の成果も様々な形で人々のくらしや社会にますます貢献していくことが期待されます。この資料は、JAXAの宇宙航空に関する研究開発成果のスピンオフ事例だけでなく、国内の宇宙関連企業などによるスピンオフの代表的な事例や今後貢献が期待される研究開発の事例などを紹介するものです。
著者
渡邉 光男 永浦 克司 長谷川 敏 島垣 満 吉田 義樹 杉田 栄一郎 Watanabe Mitsuo Nagaura Katsuji Hasegawa Satoshi Shimagaki Mitsuru Yoshida Yoshiki Sugita Eiichiro
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 = JAXA Research and Development Memorandum (ISSN:13491121)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RM-09-009, pp.1-6, 2010-03-31

本報告では,「極低温流体中でインデューサに発生するキャビテーションの直接可視化(その1:耐低温樹脂の特性検証試験結果)」で行った要素試験のデータを基に,更に極低温透視管に改良を加え,目標耐圧圧力7MPaを目指した検証試験について述べる。(その1)でネジ強度に課題のあったポリカーボネートは,ネジ山形の設計変更を行い,シールは新たにスプリング荷重式テフロンシールを選定し,シール構造にも改良を加えることで目標とする耐圧7MPaを達成することができた。また,ポリカーボネート樹脂の懸念材料であった低温脆性の劣化についても,熱サイクル試験を行うことで素材の潜在能力の高さを確認できた。これらの経緯と試験結果について報告する。
著者
中 右介 牧野 好和 進藤 重美 川上 浩樹 原田 賢哉 Naka Yusuke Makino Yoshikazu Shindo Shigemi Kawakami Hiroki Harada Kenya
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 = JAXA Research and Development Memorandum (ISSN:13491121)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RM-11-004, pp.1-48, 2011-10-31

低ソニックブーム設計概念の実証と空中ソニックブーム計測技術の獲得を目的とする低ソニックブーム設計概念実証(D-SEND)プロジェクトにおいて,JAXA が開発した空中ソニックブーム計測システム(ABBA システム)を含むソニックブーム計測システム(BMS)の確認,及びD-SEND#2 飛行試験におけるダイブ飛行による低ブーム設計概念実証の可能性確認のため,実機を用いた飛行試験(通称ABBA Test #2)を実施した.係留気球の破損によりABBAシステムによる空中計測はできなかったが,地上ソニックブーム計測を通してダイブ飛行による低ブーム設計概念実証の可能性を確認するとともに,地上において正確にソニックブーム波形を計測する手法を確立した.また,ダイブ飛行特有の現象であるソニックブームのフォーカシング現象が観測され,フォーカスブーム推算技術の検証データが得られた.
著者
中 右介 牧野 好和 進藤 重美 Naka Yusuke Makino Yoshikazu Shindo Shigemi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 = JAXA Research and Development Memorandum (ISSN:13491121)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RM-10-012, 2010-12-28

低ソニックブーム設計技術の実証と空中ソニックブーム計測技術の獲得を目的とする低ソニックブーム設計概念実証(D-SEND)プロジェクトにおいて,JAXAが開発した空中ソニックブーム計測システム(ABBAシステム)の確認のため実機を用いた飛行試験(通称ABBA Test #1)を実施した.ABBAシステムにより大気擾乱の少ない地上1,000m付近において実機が発生するソニックブームを計測することに成功した.また,地上においてもソニックブーム計測を実施するとともに,地上建築物内部で観測される室内ソニックブーム,及び窓や壁などの建築物の振動データも取得した.
著者
井澤 克彦 市川 信一郎 Izawa Katsuhiko Ichikawa Shinichiro
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-07-025, 2008-02-29

フライホイールは衛星の姿勢制御に欠くことのできない機器であり、姿勢の喪失は電力、ミッションの喪失に直結することから、フライホイールには非常に高い信頼性が要求される。しかしながらフライホイールに関する重大な不具合がいくつかの衛星プロジェクトの開発段階と軌道上運用段階で発生しているのが現状であり、確実に動作するフライホイールが期待されている。一方、観測衛星をはじめとして、衛星の姿勢・指向制御要求が高精度化し、さらに高速でかつ大きな姿勢変更が求められるなど、フライホイールに対する要求(高出力トルク、振動擾乱の低減など)が近年高度化しつつある。これら高度化要求と前述の高信頼度要求を同時に満足することが求められている。上述背景のもと、宇宙航空研究開発機構では、2001年度より、当時、宇宙3機関(宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団)連携協力事業の一環として、高性能かつ高信頼性の次世代高性能フライホイールに関する研究(次世代玉軸受ホイールの研究、磁気軸受ホイールの研究)をスタートさせ(現在は宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部にて研究を継承している)、現在までに中・大型サイズのタイプM/Lの開発を完了している。本資料は宇宙用フライホイールの原理・設計を概説するとともに、高速回転ホイール開発研究で得た技術知見を整理したものである。
著者
木村 俊哉 高橋 政浩 若松 義男 長谷川 恵一 山西 伸宏 長田 敦 Kimura Toshiya Takahashi Masahiro Wakamatsu Yoshio Hasegawa Keiichi Yamanishi Nobuhiro Osada Atsushi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-04-010, 2004-10-25

ロケットエンジン動的シミュレータ(Rocket Engine Dynamic Simulator: REDS)とは、ロケットエンジンの始動、停止、不具合発生時などのエンジンシステム全体の過渡特性を、コンピュータを使って模擬し評価する能力を持った計算ツールである。REDSでは、ロケットエンジンの配管系を有限個の配管要素の連結(管路系)としてモデル化し、この管路系に対しボリューム・ジャンクション法と呼ばれる手法を用いて質量、運動量、エネルギーの保存方程式を時間発展的に解くことによって管路内(エンジン内)における、燃料、酸化剤、燃焼ガスの流動を計算する。ターボポンプ、バルブ、オリフィスなどの流体機器はボリューム要素やジャンクション要素にそれらの対応する作動特性を持たせることで動作を模擬する。燃料や酸化剤の物性については、ロケットエンジンの特殊な作動範囲に適応するよう別途外部で開発された物性計算コード(GASPなど)を利用するが、そのためのインターフェースを備える。燃焼ガスの物性計算については、熱・化学平衡を仮定した物性計算を行い、未燃混合ガスから燃焼状態、燃焼状態から未燃混合状態への移行計算も行う。ターボポンプの運動は、ポンプやタービンの特性を考慮したポンプ動力項、タービン動力項を加速項とする運動方程式を流れの方程式と連立して時間発展的に解くことによって求める。未予冷区間においては、配管要素と流体との間の熱交換を、熱伝導方程式を解くことによって求め、再生冷却ジャケットにおいては、燃焼ガスから壁、壁から冷却剤への熱伝達を考慮する。燃焼室、ノズル内においては、燃焼ガス流れの分布から熱流束の分布を考慮する。今回のバージョンでは、2段燃焼サイクルを採用した日本国の主力ロケットLE-7AおよびLE-7の始動、停止過程時における動特性を模擬することを目的にエンジンモデルを構築し、実機エンジン燃焼試験の結果と比較することでシミュレータの検証を行った。ただし、ボリューム要素の組み合わせは任意であり、エキスパンダーサイクルなどの新しいエンジンシステムに対しても適用が容易に出来る。計算の高速化のために2CPU以上用いた並列処理への対応を行い、ネットワークで接続した複数のPC(PCクラスタ)を用いた並列計算も可能である。
著者
歌島 昌由 Utashima Masayoshi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-05-008, 2005-11-30

世界のラグランジュ点ミッションについて。1978年8月打上げのNASAのISEE-3(International Sun-Earth Expiorer-3)により、ラグランジュ点を利用する新しいミッションの世界が開かれた。ISEE-3は太陽-地球系L1点のハロー軌道に投入された。太陽-地球系L1点は主に太陽観測に利用され、1995年12月に打ち上げられたESA/NASA共同ミッションのSOHO(Solar Heliospheric Observatory)が現在もハロー軌道から太陽観測を続けている。太陽-地球系のL2点においては、2001年6月に打ち上げられたNASAのWMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)が最初のミッションである。太陽-地球系のL2点は、その位置の特性から天文衛星に適した場所であり、今後もHerschel(ESA, 2007年打上げ予定)、Planck(ESA, Herschelと相乗り打上げ)、JWST(NASA, 2011年打上げ予定)、GAIA(ESA, 2011年打上げ予定)などの天文衛星の打上げが計画されている。日本の将来計画。日本においても、太陽-地球系L2点から観測する幾つかの天文衛星の検討が行なわれている。赤外線天文衛星SPICA(Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics)、高精度位置天文観測衛星JASMINE(Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration)、太陽系外地球型惑星探査衛星JTPF(Japanese Terrestrial Planet Finder)などである。JASMINEはサーベイ観測型ミッションであり、サイズの小さいリサジュ軌道が適しているが、SPICA、JTPFなどはポイント観測型ミッションであり、どちらかと言うとサイズの大きいハロー軌道が適している。2005年3月に発表されたJAXA長期ビジョン-JAXA2025-には、「月や地球重力圏界(ラグランジュ点)を太陽系に広がる人類活動のための新しい場として活用する「深宇宙港構想」の実現をめざす。」という記述が盛り込まれている。ラグランジュ点軌道の保持の方法。太陽-地球系L1、L2点周りの軌道は、発散時定数が約23日の不安定軌道であるため、少なくとも数ヶ月間隔の精密な軌道保持制御が必須である。しかしながら、姿勢制御系などからの大きな外乱がなければ、年間1m/s程度のΔVで軌道保持できる。これを実現するため、正確な摂動モデルの下でΔVゼロの基準軌道を前もって設計しておき、それに追従する様に数ヶ月間隔で保持制御が行なわれている。欧米での基準軌道の設計法。欧米では円制限三体問題の3次以上の解析解を求め、それを初期軌道として、各半周軌道の位置萌速度のmatching条件を満たす解を数値的に求める事で、ΔVゼロの基準軌道を設計している。この方式はSOHOに対して初めで適用された。本報告のハロー基準軌道の設計法。上記の欧米の方法は高次解析解を必要とする難点があるため、本報告では、非線型計画問題の解法の1つである逐次2次計画法(SQP法; Sequential Quadratic Programming)を使い、高次解析解を求める事なく、ΔVゼロのハロー基準軌道を設計する方法を示す。摂動としては、地球公転軌道の離心率の影響と月潮汐力を考慮した。この他の摂動として、太陽輻射圧と惑星潮汐力があるが、輻射圧はほぼ一定の加速度であり惑星潮汐力は小さいので、本報告の手法は実際の太陽系モデルにも適用できると考えられる。なお、本報告は、2005年2月に発行された「太陽-地球系L2点周りのリサジュ基準軌道の設計」のハロー軌道版である。
著者
高橋 孝 上田 裕子 平野 聡 邑中 雅樹 Runtao Qu 小堀 壮彦 Takahashi Takashi Ueda Hiroko Hirano Satoshi Muranaka Masaki Runtao Qu Kobori Takehiko
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-04-017, 2005-01-31

It is aimed that a simulation framework of Spacecraft Simulation Environment (SSE) can be commonly applied not only to Full Software Simulations (FSS) but also to Processor-In-the-Loop Simulations (PILS) and to Hardware-In-the-Loop Simulations (HILS), while various spacecraft simulators are generally tailor-made at individual phases of development. Prior to the actual implementation of SSE, the framework for FSS and PILS was designed, and its advantage to spacecraft simulations using an experimental system was demonstrated. In this study, implemented was an experimental system for PILS, and feasibility of the framework using the system was demonstrated. Real-time tasks working on microITRON communicate with the rest of spacecraft simulator through Java-based middleware Hirano's Object Request Broker (HORB) via distributed communication interfaces (I/Fs) written in Java. These I/Fs are designed to be commonly applied to both FSS and PILS. Also implemented was a tool called Java-microITRON Bridge GENerator (JBGEN) to automatically generate Java-microITRON communication programs from the I/Fs. Furthermore, MemorySaving HORB is developed in order to avoid communication latency.
著者
吉田 憲司 赤塚 純一 石塚 只夫 伊藤 健 岩堀 豊 上野 篤史 郭 東潤 小島 孝之 進藤 重美 高戸谷 健 田口 秀之 多田 章 徳川 直子 富田 博史 中 右介 仲田 靖 永吉 力 野口 正芳 平野 義鎭 二村 尚夫 堀之内 茂 本田 雅久 牧野 好和 水野 拓哉 水野 洋 村上 哲 村上 義隆 山本 一臣 渡辺 安 大貫 武 鈴木 広一 二宮 哲次郎 静粛超音速研究機開発チーム Yoshida Kenji Akatsuka Junichi Ishizuka Tadao Ito Takeshi Iwahori Yutaka Ueno Atsushi Kwak Dong-Youn Kojima Takayuki Shindo Shigemi Takatoya Takeshi Taguchi Hideyuki Tada Akira Tokugawa Naoko Tomita Hiroshi Naka Yusuke Nakata Yasushi Nagayoshi Tsutomu Noguchi Masayoshi Hirano Yoshiyasu Futamura Hisao Horinouchi Shigeru Honda Masahiro Makino Yoshikazu Mizuno Takuya Mizuno Hiroshi Murakami Akira Murakami Yoshitaka Yamamoto Kazuomi Watanabe Yasushi Onuki Takeshi Suzuki Hirokazu Ninomiya Tetsujiro S3TD Design Team
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 = JAXA Research and Development Memorandum (ISSN:13491121)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RM-10-007, 2010-07-10

宇宙航空研究開発機構では,将来のブレイクスルーとしての超音速旅客機実現を目指し2005年10月に飛行実験に成功した小型超音速実験機(NEXST-1)に引き続き,新たな飛行実験プロジェクトとして,2006年度より「静粛超音速研究機」(S3TD:Silent SuperSonic Technology Demonstrator)の予備設計に着手し,2008年~2009年度に基本設計を実施した.S3TDは,完全自律離着陸及び超音速飛行可能な無人機で,ソニックブーム低減技術を飛行実証することを目的としたものである.本報告書では,超音速飛行実験計画及び飛行実験システム(研究機システム及び実験場システム)の設計検討について,JAXAが独自に検討した成果及びJAXAとプライムメーカの契約に基づき実施された成果をまとめる.