著者
阿依 アヒマディ
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成20年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.11, 2008 (Released:2009-04-23)

2007年半ばに“グリーン・アンバー”と呼ばれている商品が香港市場でみられるようになり、9月香港国際ジュエリー&時計フェアの有機宝石の新目玉となった。2008年1月のIJTや2月のアメリカ・ツーソン・ジェム・フェアにも続々登場し、“天然カリビアン・アンバー”や“希少なバルト・アンバー”という商品名で香港やポーランドやリトアニアなどの琥珀業者によって販売されている。販売金額は通常の天然バルト産琥珀やドミニカ産琥珀より高値で取引されており、香港市場での登場と同時に、鑑別機関にビーズやピアー・シェープなどの“グリーン・アンバー”が鑑別依頼で持ち込まれるようになった。黄緑から緑色を呈するこの商品は非常に高い透明感を有し、ドミニカ産の天然ブルー・アンバーに見られる緑色よりもはるかに濃色である。しかし、天然琥珀に一般的な内包物(植物の葉の破片、昆虫、土など)はほとんど含まれず、燃やしたときに放出する芳香の臭いは天然琥珀よりやや薄いのである。この“グリーン・アンバー”は若い樹脂であるコーパルを超える硬度、比重および耐酸性(溶解度)を有し、その物理学的特性は琥珀に酷似する。しかし、このような美しい緑色を示す琥珀は天然起源としては報告例がなく、処理された可能性が高い。このような“グリーン・アンバー”に対する処理法はほとんど公開されていないが、香港とドイツの製造業者から直接得られた情報によると、従来、バルト産やドミニカ産やメキシコ産などの琥珀を加熱するために使用したautoclaveを用い、温度と圧力などのパラメーターを制御し、数段階の加熱過程を設け、長時間で加熱処理を行う手法である。加熱に使われている材料は、主にドミニカ産やウクライナ産や南米産などの琥珀とカリブ海のコーパルが対象になっている。 本研究ではこのような処理された“グリーン・アンバー”の性質を追求するため、香港やドイツやポーランドなどの処理業者から製品を入手し、また、異なる産地の(地質年代の異なる)琥珀とコーパルを香港業者のautoclaveを用いて加熱処理し、琥珀とコーパルの色の変化を観察した。同時に、FTIRによる赤外分光分析法や固体高分解能13CNMR法(核磁器共鳴法)により、“グリーン・アンバー”と天然琥珀との分子構造の違いや加熱処理前後の構造変化を調べ、グリーン色への変化するメカニズムを検討した。
著者
橘 信
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成29年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.19, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
2

はじめに ルビーやサファイアの結晶育成法にはいろいろあるが、合成宝石として一番価値がでるのはフラックス法であろう。フラックス法でつくられた結晶は表面が鏡のように平らになるので、カットや研磨をしなくても芸術的な作品になることがある。事実、みごとな Ramaura ルビーや Knischka ルビーの写真は宝石学のいろいろな本や雑誌で使われており[1,2]、これらの結晶の特徴はこまかく調べられている。ただし、育成方法や育成条件の詳細は公開されていない。本講演者の専門は物性物理であり、測定試料を得るためにこれまでいろいろな結晶をフラックス法によって育成してきた。ある時、何かのきっかけで宝石学の本を読み、はたして自分も Ramaura ルビーや Knischka ルビーのような芸術作品がつくれるのか、という疑問が沸いてきた。そこで、物性研究用の酸化物結晶をつくるのと同じ要領で、 ルビーやサファイアのフラックス結晶育成を始めた。実験結果 実験を始めた当初は薄い板状の結晶ばかりが得られ、結晶を厚くしようとすると表面が粗い結晶やフラックスの内包が顕著な結晶ばかりが成長した。いろいろな試行錯誤の末、 Ramaura ルビー[1]と同じ晶癖をもつ結晶の育成に成功した(Fig.1)。ただし、結晶の完全性という点では Ramaura ルビーにまだ遠く及ばない。この他にもサファイアや他の晶相をもったルビーについても育成実験を行ったので、本講演では結晶成長論に基づいて実験結果を議論する。
著者
中嶋 彩乃 古屋 正貴
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2019年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.11, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
3

2018 年の宝石学会(日本)でカラーチェンジ・ガーネットについて考察した中で、マダガスカル Bekily から産出するパイロープ-スペサルティン・ガーネットには、バナジウムを多く含有することで、ガーネットには存在しないとされた青色を、D65 光源下では示すものを紹介した。それはまさにアーサー・コナン・ドイルの小説 「The adventure of the blue carbuncle」 で描かれた青いカーバンクルを連想させるものだった。しかし、その内容や時代背景を考えるとドイルのブルー・カーバンクルは、青いカーバンクル(ガーネット)というよりブルー・ダイアモンドとして有名なホープ・ダイアモンドがそのモデルとなっていると考えられ、検証を行った。ドイルが描いたブルー・カーバンクルにはガーネットより、ホープ・ダイアモンドとの多くの共通点が見られる。第一に、青いカーバンクル(ガーネット)は、当時存在を知られていなかったこと。第二に、その宝石についてホープ・ダイアモンドと共通する記述が多くあること。第三に、その小説が発表された 1892 年以前に、ホープ・ダイアモンドはドイルの住むイギリスで所有されており、人々の注目を浴びるものであったことである。第一の、青いガーネットの存在が知られていなかったことは、Bekily のカラーチェンジ・ガーネットの発見が 1999 年のことであり、他のカラーチェンジ・ガーネットについて報告されたのも 1970 年代以降のことであることから、当時は青いガーネットは認識されていなかったことがわかる。(K. Schmetzer 1999)第二のホープ・ダイアモンドとの共通点については、結晶した炭素であること(”crystallized charcoal”)、ガラスをパテのようにカットすること(”It cuts into glass as though it were putty”)、ブリリアンシーのあるシンチレーションが強い青い石であること(”brilliantly scintillating blue stone”)などの記述が当てはまることなどである。第三の時代背景については、この小説が発表されたのは 1892 年であるが、それ以前のホープ・ダイアモンドについて調べると、1851 年のロンドン万国博覧会で公開されており、広く人々の注目を集めている。そして 1887 年には Henry Thomas Hope 氏の孫の Francis Hope 氏が相続することが裁判で決定される中、相続問題と裁判が数多く報道された。そのため、執筆時のドイルの目に触れたことは容易に想像できる。このような観点から、ドイルが小説の中で描いたブルー・カーバンクルは、ホープ・ダイアモンドがモチーフになったと考える。
著者
林 政彦 酒見 昌伸 安井 万奈 山﨑 淳司 堤 貞夫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1-4, pp.3-16, 2016-04-30 (Released:2017-01-16)

縄文時代の6千年前頃から首飾り等に使われていたヒスイ(翡翠,ヒスイ輝石(Jadeite))は,主に新潟県糸魚川市~富山県朝日町周辺で産出したとされている.わが国では,新潟県以外にも鳥取県若桜町,岡山県新見市,兵庫県養父市あるいは長崎県長崎市などからも産することが報告されている。さらに外国では,ミャンマー,アメリカ,グアテマラ,ロシアなどが知られている。今回入手した各地の試料を調べた結果,輝石族の鉱物名分類(Morimotoら,1988)1)に従うと,ほとんどのものはヒスイ輝石であったが,いくつかの産地のものはオンファス輝石(Omphacite)と呼んだ方がよいものであった。
著者
三浦 保範 高木 亜沙子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.26, pp.12-12, 2004

1.はじめに:ラブラドライト斜長石は、離溶ラメラ組織の光の干渉により様々な色を示して、ラブラドレッセンスといわれて宝石鉱物として広く知られている(Miura et al., 1975)。そのラメラ組織を示す斜長石の形成は、地球外の試料の研究が進むにつれて、ある問題点が浮上してきた。これまで市場に出回っているイリデッセンスを示すラブラドライト斜長石ラメラ組織の形成は、高温マグマからの均一溶液からの固体状態の離溶反応(スピノーダル分解)で理解されている。問題点は、a)高温マグマが関係した古期岩石は広く分布するがラメラ組織を示す斜長石鉱物の産出が限られている、b)マグマからの直接固体晶出であるが不均質な組織をしている、c)その不均質さが宝石のカット面などの作成に影響している、d)鉄の鉱物が組織内を広く充填している、d)月は高温マグマが形成初期に関与したが衝突で形成された古い月の試料(30億~45億年前の形成)にはラブラドライト斜長石が形成されていない、e)大気がありかって海水のあった火星の石からは探査機画像には発見されていないが、火星起源の隕石からは衝突ガラス(マスケリナイト)が発見されている。これらの問題点を、対比的に解明する糸口を筆者らが考察してみる。<BR> 2.地球上の試料の産出場所の特徴:地球上でイリデッセンスを示すラブラドライト斜長石は、一定の古期岩石の分布する地域(カナダが有名な産地、最近はマダガスカル産・フィンランド産、赤色透明の試料のある米国産など)に産出している。カナダとマダカスカルは、20億から30億年前の岩石から産出している。ほとんどのラブラドライト斜長石でラメラ組織を示すものは、鉄に含む暗黒色の岩石が多い。この岩石の特徴(古期岩石中・黒色・組織の不均質さなど)が問題点を解明する糸口になっている。これまで、これらの岩石の特徴は大陸地殻として形成された後に岩石が地殻変動を受けたためだけであると考えられていた。<BR> 3.対比試料の特徴:古い記憶は地球では消失しているので、地球外の月か火星・隕石で対比してみる。アポロ月面・月隕石試料は灰長石鉱物が多く、中間型斜長石組成の鉱物が形成されていない。月面形成後衝突以外にマグマ火成活動が続かず、ラブラドライト斜長石は産出していないと考えられる。火星には、火星起源隕石中にマスケリナイト(中間型斜長石鉱物)といわれる衝突で不均質にガラス化している斜長石があるが、ラメラ構造は火星の隕石からは発見されていない。火星隕石は2回以上の衝突で形成されて地球に飛来し高温状態での持続時間が短いため、ラメラ組織が形成されなかったと考えられる。しかし、破砕斜長石が高温状態での持続時間が長い今場所(火山構造のオリンポス火山など)周辺に、中間型斜長石鉱物が既存していればラメラ組織が形成されている可能性がある。小惑星起源の隕石中には、衝突分裂・破壊の後高温状態で長い保存される場所がないので、ラメラ組織が形成されていない。<BR> 4.新しい解釈:これら問題点を説明する考えとして、ラメラ組織を持つラブラドライト斜長石の形成を衝突形成岩石の高温マグマ状態からの形成と考える。最初に巨大衝突で地球が破壊されて高地と海の地形が形成されているので衝突に関係して形成されている。また、古期の大陸を復元すると大陸の分裂割れ目に相当する場所と同心円状の大陸地殻地域にラメラ組織を持つラブラドライト斜長石が多く産出するので、衝突形成後地下の高温マグマが発生して長く持続できる場所で既存組織からスピノーダル固体分解反応が進んだと考えられる。<BR> 5.まとめ:次のようにまとめられる。地球が形成された後、十数億年から二十数億年の間に中間型斜長石組成の衝突破砕ガラス形成記録が消失して固体晶出後ラメラ組織が形成されたと考えられる。破砕時の既存の組織がそのまま保存されているので、均質な岩石ではなく、衝突時にできた不均質な破砕組織となったと考えられる。高温のため既存の衝突組織は消失しているが、鉄などの鉱物が再結晶して多く含まれているのが形成を示す特徴である。したがって、市場の宝石試料に不均質な組織が多い。火星には、破砕斜長石が高温状態での持続できる場所周辺に、中間型斜長石鉱物ラメラ組織が形成されている可能性がある。<BR> 最後に、この議論には、米国でのラメラ組織の研究者Dr.G.Nordにも昨年と今年に渡米中に参加して頂き関連データの確認ができたので付記する。
著者
古屋 正司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.28, pp.16, 2006

2005年10月28日から11月13日までの17日間、ブラジルの宝石鉱山を訪問することができた。日本で根強い人気のあるパライバgルマリンの3箇所の鉱山を訪れ、それらの産状を視察すると共に、ミナス・ジェライス州の宝石取り引きのメッカ ゴベナドール・バラダレス(Govenador Valadares)を訪問し、最近アフリカのモザンビークで産出されている同じ様な色をした銅含有のトルマリンの流通の状況をしっかり自分の目で確かめることができた。さらに世界一変色性が良いとされているHematita鉱山のアレキサンドライトの産出状況、エメラルドの産地として有名なBelmont鉱山、Piteiras鉱山、そして発見されたばかりとの情報が入りコースを変更して訪れたRocha鉱山、通過したSanta Maria de Itabira やNova Eraの様子などを写真を使って報告したい。飛行機で約8000キロ、車で2000キロの宝石調査となり、想像していた以上の収穫を得る事ができた。
著者
大江 昌子 武 聖子 山内 常代 畠 健一
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.37, 2015

宝石市場は高額なハイジュエリー、一般的なジュエリー、ファッション性を重視したジュエリー、そしてお守り的な色彩を強く打ち出したパワーストーンが市場を賑わしている。<br> ジュエリー市場はステータス性、資産性、ファッション性、そして信仰的なお守りとしてのジュエリーが混とんとした状態の中にある。<br> 一方、世界視野に立ち、日本の宝石市場を見た時、日本の宝石市場は黎明期、発展期を経て、まさに成熟期を迎えている。<br> 一番に成熟期を迎えたのはヨーロッパ、そしてアメリカ、東洋では日本が最初である。世界の宝石を集めた日本は、鑑別技術を著しく向上し、鑑別技術についてはトップレベルにある。<br> しかし、残念乍ら、日本における宝飾文化の研究、そして普及は、ヨーロッパ、アメリカに遠く及ばない。<br> 日本の宝飾市場において、確かな宝飾文化の普及は、成熟期を迎えた今、大切な課題である。<br> ハイジュエリー、ジュエリー、ジュエリーアクセサリー、パワーストーンはすべて大地、地球の美しい創造物である。違いは一つ、品質の良し悪しによる商品価値の違いである。背景にある歴史的な宝の石、宝石の存在価値は同じである。<br> 歴史の流れとともに時代が求めるニーズとして、宝石はお守り、信仰、ステータス、財産、おしゃれそしてパワーストーンとして身を飾ってきた。しかし、精神文化における宝石の本質はお守りである。お守りとしての歴史の変遷を年表としてまとめたので報告する。
著者
奥田 薫 工藤 英一 林 栄里 水野 拓也 永井 美智子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.38, 2016

一般的に、宝石鑑別機関では、①ダイヤモ ンドのグレーディング(4C)と②宝石の鑑 別の 2 種類において、それぞれに証書の発 行およびソーティングを行っている。これ らの証書およびソーティングの依頼は、そ の石の取引を円滑にすることを目的として 行われることが多い。 特に、①のダイヤ モンドのグレーディングに対し、②の宝石 鑑別では、全ての天然石および人工石が対 象となるため、その依頼内容には、実際に、 その時にどのような宝石が市場に流通して いたのかが、反映されていると考えられる。<br>今回、中央宝石研究所(以下、CGL)が過 去 5 年間に受けた宝石鑑別依頼の内容から、 そこに反映されている市場動向について調 査を行ったので、その結果について報告する。 <br>CGLの過去5年の宝石鑑別の実績を調査し たところ、毎年、天然石として約 400 種類、 人工石として約 30 種類の鑑別が行われて いた。 しかし、それぞれの宝石種の鑑別依頼個数 を比較すると、上位 5 種類の宝石種で全体 の約 50%を占める結果となっていた。 <br>年度によって順位は変動していたが、常に上位を占めていたのは、「ルビー」、「ブルー サファイア」、「ダイヤモンド」および「エ メラルドで、特に、「ルビー」および「ブル ーサファイア」を含む「コランダム」は、 調査期間中を通じて、常に全体の約 30%を 占めていた。 <br>鑑別依頼個数の変化では、大部分の宝石種 において、大きな変動は認められなかった が、「さんご」、「エメラルド」および「ブラ ックオパール」において、明らかな増加傾 向が認められた。また、「ジェダイト」、「クリソベリルキャッツアイ」および「こはく」 にも同様の傾向がみられた。 反対に、減少傾向を示した宝石種は少なく、「ダイヤモンド」および「ロッククリスタル」において認められたのみであった。 <br>日本から国内外で消費された宝石に関する 正確なデータを知ることは難しいが、近年、 日本の宝飾業界に「中国市場」と「再流通 市場」が、大きな影響を及ぼしていること は周知の事実である。また、単価が低いな がらも、「パワーストーン市場」の影響も無 視することはできない。今回得られたデー タは、それらの動向を十分に裏付けるものであった。
著者
林 政彦 高木 秀雄 安井 万奈 山崎 淳司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成29年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.10, 2017 (Released:2017-06-30)

はじめに 1962 年に, 東京芝浦電気株式会社 中央研究所(現東芝研究開発センター)で合成ダイヤモンドが製造さ れた.これはスウェーデンのASEAで 1953 年に,米国のGEでは 1954 年に製造されてから僅か数年後の事である.この頃に東芝で造られたとされる合成ダイヤモンドが,早稲田大学の鉱物標本室に収蔵されていたので,その特徴について報告する.特 徴 この標本は,ほぼ無色の色調を呈し,表面に見られる成長模様から{100}で囲まれた結晶と見られる(Fig.1).その外観は,コンゴ産の天然ダイヤモンドに似ている.この標本の成長の様子を調べるために RELION Industries 製 RELIOTRON を使いてカソ―ドルミネッセンス(CL)像を観察したところ, 小さなセクターに分かれた組織が認められた(Fig.2).
著者
山田 篤美
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成29年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.6, 2017 (Released:2017-06-30)

今日、宝石の王者はダイヤモンドである。しかし、人類 5000 年の歴史を俯瞰すると、長い間、宝石の世界に君臨してきたのはダイヤモンドではなく、真珠であったことが明らかになる。本講演では最上の宝石だった真珠の歴史をダイヤモンドと比較しながら解説する。正確を期すると真珠は鉱物ではなく、有機物の一種である。しかし、真珠は伝統的に宝石と見なされてきた。たとえば、 古代ローマのプリニウスは『博物誌』の中で真珠を最高位の宝石のひとつと位置づけている。一方、プリニウスはキュウリの種ほどのダイヤモンドも貴重視していたが、それらは工具としての実用性が評価されたもので、「宝石」としての評価ではなかった。古代ローマ人憧れの真珠であったが、その産地は多くはなかった。自然界では海産真珠貝、淡水産真珠貝が多種多様の真珠を生み出してきたが、丸く美しく光沢のある真珠を生み出す貝は、海産のピンクターダ属(genus Pinctada)の真珠貝などに限られていた。ピンクターダ属の真珠貝の中でも、真珠採取産業を成立させるアコヤ系真珠貝(Pinctada fucata/martensii/radiata/imbricata species complex)の生息地は、古代・中世においては、ペルシア湾、インド・スリランカの海域、西日本の海域ぐらいしか知られていなかった。つまり、ヨーロッパ人にとってアコヤ系真珠は、コショウ同様、オリエント世界でしか採れない貴重な特産品だった。その状況が一変したのが 16 世紀の大航海時代である。 1492 年、コロンブスはカリブ海諸島に到達し、その 6 年後、南米ベネズエラ沿岸で真珠を発見する。実はベネズエラ沖はもうひとつのアコヤ系真珠貝の産地であった。オリエントに代わる真珠の産地となったベネズエラには征服者、航海者が押し寄せ、略奪と虐殺が繰り広げられた。 16 世紀のヨーロッパは真珠の時代であり、南米の真珠がヨーロッパ王侯貴族のジュエリー、ドレスを飾ったが、その真珠はブラッド・ダイヤモンドならぬブラッド・パールであったのである。一方、ダイヤモンドについても、大航海時代になると、インドの王侯の独占が崩れ、流通が増加。 17 世紀以降のヨーロッパではブリリアント・カットが発明され、ダイヤモンドと真珠が二大宝石となっていく。しかし、 19 世紀の南アフリカのダイヤモンドの発見でダイヤの値段が暴落、真珠は再びダイヤモンドよりも希少になった……。 真珠の歴史をダイヤモンドとの関係性の中で考察すると、小さな真珠がもたらした壮大で壮絶な歴史が浮かび上がるのである。
著者
小川 日出丸 渥美 郁男
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, 2018-06-10

<p>昨年、無色のメレダイヤモンド 211 個入りのロットを検査する機会を得た。パーセルには、 Size 1.25-1.35mm Color D-E-F Clarity VS-VVS Shape Round Full Cut の表記があった。販売者であるアメリカの R 社 によると内容は CVD Synthetic Diamond で、 価格は600USドル/ctとのことであった。ちなみ に同等の天然メレダイヤモンドとほぼ同じくら いの価格相当と思われる。 </p><p>一個の重量は 0.008~0.012ct であるこれら の石について、FT-IR を使用して赤外分光検 査をおこなった。その結果、12 個は明瞭なⅠ 型を示し検査の結果は天然石であった。残り の 199 個はⅡ型に分類されたので、検査を継続した。</p><p>拡大検査では、塊状や棒状の金属と思われるものや、松枝状などの内包物がみられた。 内包物によっては磁石に引き寄せられ、磁性 を示す石もあった。</p><p>フォトルミネッセンス(PL)測定など詳細な検 査をおこなった結果、高温高圧法による合成 ダイヤモンドであることが判明した。またⅡ型 のなかに天然石が1個確認された。</p><p>以上、天然石が混入していることや CVD 法 による合成石が確認できなかったことなど、販売者の言と異なるメレサイズダイヤモンドのロットであった。 </p><p>無色系のメレサイズ HPHT 合成ダイヤモンドについてはすでに報告(注 1)があり、分析 結果や特徴などについて紹介されている。 今回検査した石のカラーグレード(注2)は D-E-F となっていたが、D カラーは数個でほと んどが F から H であり、僅かに色を持っていた。 色調ごとに分類したところ、青色・黄色・緑色・ 灰色系になった。赤外分光、PL スペクトルなどに違いがないか調べた。 </p><p>クラリティは VS-VVS の表示であったが、内包物は多くみられた。内包物の形態や、未研磨面に残された結晶面に特徴がないか観察 した。</p><p>(注 1)</p><p> 北脇、久永、山本、岡野、江森、2016.1 無色系メレサイズ HPHT 法合成ダイヤモンド CGL 通信 No.30 </p><p>古屋正貴 2015.12 合成ダイヤモンド アップデ イト Gem Information W.Soonthorntikul P.Siritheerakul 2015summer Near-Colorless Melee Sized HPHT Synthetic Diamonds Identified in GIA Laboratory Gems&Gemology </p><p>(注 2) </p><p>宝石鑑別団体協議会(AGL)の規約により、合成ダイヤモンドのグレーディングはおこなわない</p>
著者
高橋 泰
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.30, pp.5, 2008

久米武夫氏は日本の宝石学の先駆者の一人であり、御木本幸吉氏の義弟である。御木本が明治時代に銀座に出店した際、顧客に外国人が多いことに気がついた御木本幸吉氏の命を受けアメリカにジュエリーデザインの研修に派遣された経歴を持つ。この経験により、久米氏は日本における宝石学の先駆者として活躍し、数々の宝石関連の著書を残している。彼は昭和14年、東京地学協会発行の地学雑誌に「宝石奇譚」を記しているが、同年5月6日付けで宝石標本を宝石参考品として出品している。その時の久米武夫コレクション(仮称)は、山梨県立宝石美術専門学校が寄贈品として所蔵している。お孫さんに当たる久米祐介氏により平成14年に教材として寄贈されたもので、標本個数244点のカット石を主体としたコレクションである。内訳は、天然石165点、合成石50点、模造石24点、処理石5点である。このコレクションは当時の宝石業界においてとり扱われていた宝石類を示すものであり、既に扱わなくなった宝石種や現在に至るまで流通し続けている種類を知ることができる。このコレクションの中からコランダム、真珠、サンゴ等数種類の宝石をピックアップし紹介してみたい。
著者
中嶋 彩乃 古屋 正貴
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.36, 2014

ルビーとレッドスピネルを現在の一般的評価で比較すると,ルビーはいわゆる貴石に含まれ,スピネルは半貴石に含まれるなど,評価はルビーの方が高いと言えよう.<br>しかし,歴史を振り返ると多くの人々を魅了してきたロイヤルジュエリーに使用されてきた宝石が,実はルビーではなくレッドスピネルであったことが,後に判明したことが何度もあった.後にスピネルと判明したロイヤルジュエリーとしては,Imperial State Crownの黒太子のルビー,エカチェリーナ2世の王冠のレッドスピネル,チムールルビーなどが挙げられる.これらはスピネルと分かるまでルビーとして人々のあこがれを集めてきた.<br>一方,ルビーでは,196.10ctsのHixon Rubyや,The Rosser Reeves Star Ruby 138.7cts など100ctを超えるような原石やスタールビーも知られているが,これらはルースや原石自体として博物館に所蔵・展示されているものであり,王室など著名人のジュエリーとしては使われてはいない.<br>ロイヤルジュエリーとして人々の目に触れてきたものとはしては,10~15ctsと推測されるStuart Coronation ringのルビーや,ナポレオンの妹ポリーヌ・ボナパルトのためにつくられたパリュールに使われた数ctsの複数のルビーからなるBorghese Ruby等があり,どれも素晴らしいものであるが,ルビーの大きさも限られており,レッドスピネルのように一つの石が大きく,一石がジュエリーに強いインパクトを与えられるものではなかった.<br>このようなことから,ロイヤルジュエリーに用いられてきた有名なルビーと言われてきたものの中には,レッドスピネルだったものがあり,それらがルビーとして人々の羨望を受け,人々のあこがれを喚起されてきた.ロイヤルジュエリーにおいて,ルビーとして活躍したスピネルの役割は大きいと言えるだろう.<br>謝辞)<br>アルビオンアート株式会社<br>Dr. Jack Ogden