著者
荻原 成騎
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2019年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.16, 2019 (Released:2019-07-03)

Yooperlite とは、2017 年の夏に Superior 湖の湖岸にて発見された“紫外線蛍光を示す石ころ”である。Yooper とは、発見された場所である Michigan 北部の Upper Peninsula、略して U.P. に由来する。Yooperlite の紫外線によるオレンジの蛍光は、まことに麗しく神秘的であり、パワーストーン愛好者を魅了している。岩石学的には、Syenite の円礫で、蛍光の原因は Sodalite である。蛍光する Sodalite について、特に区別して Hackmanite と呼ぶことがある。Greenland や MontSaint-Hilaire、コラ半島などからの産出が知られるが、いずれも母岩は Syenite である。これらの Hackmanite 蛍光の原因として S や Be が指摘されている。岩石学的には、珍しい石ではない。本研究では、薄片観察に基づき、Sodalite の産状を記載し、XRD による結晶学的特徴付け、EPMA および LA/ICP-MS による主成分/微量成分分析により蛍光の起源を明らかにする。Yooperlite は湖岸に転がる石ころの中でも稀な石であり、現在ではほぼ取り尽されている。そのため現地調査は行っていない。Yooperlite は氷河堆積物中の円礫であるため、礫の母岩である Syenite の産状は見ることはできない。顕微鏡観察に基づく Syenite の特徴は、nepheline を欠くことである。Nepheline については、XRD からも検出されなかった。顕微鏡観察から、Sodalite は matrix を充填しており、もともと nepheline があった場所に置換して分布しているように見える。Sodalite が matrix の Nepheline を置換していると考えると、Sodalite の成因は、単純に Nepheline とアルカリの反応3NaAlSiO4 + NaCl → Na4Al3Si3O12Cl(3Nepheline + NaCl →Sodalite)で説明できる。本研究における Sodarite の分析の結果格子定数 a=8.8594(49)組成 Na3.49Al3.15Si3.07O12Cl1.22発表では、Sodalite 中の蛍光に関与している微量元素組成について言及する。研究で用いた Yooperlite は、Mr.Stone 吉田様から提供された。質問などは ogi@eps.s.u-tokyo.ac.jp まで
著者
高 興和 古屋 正貴 畠 健一
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.37, 2015

紫色の美しい花、ジャマランカが咲き誇るタンザニアの大地の地下1000メートルに美しい紫味を帯びたタンザナイトが眠っている。ジャマランカの花言葉は「栄光」と「名誉」。1960年後半に発見されたタンザニアを代表する新しい宝石タンザナイトにいまだ正式な宝石言葉はない。20世紀を代表する宝石の1つになったタンザナイトの宝石言葉に、「栄光」と「名誉」を贈りたい。タンザナイトの命名通り、現在タンザナイトはタンザニアのみ産出し、詳しくはアルーシャ地方のメラニヒルズのみが確認されている。1971年タンザニア政府によりメラニヒルズ鉱山は一旦国有化されたが、1990年、政府系、民間系の4つのブロックに分けられ、現在各ブロックごとに採掘が稼働している。<br> Aブロック) 政府系 Kirimanjaro Mines Limited<br> Bブロック) 民間系 小規模業者 オーナー数約200名<br> Cブロック) 政府系 Tanzanait one<br> Dブロック) 民間系 オーナー数 約300名<br> 今回、BブロックのELISARIA MSUYA MAININNG社の協力のもと地下500メートルの採掘現場より入手した原石を中心に研磨、インクルージョン観察、その後、3時間ずつ、100&deg;C、200&deg;C、300&deg;C、350&deg;C、400&deg;C、450&deg;C、500&deg;Cの加熱処理を実施、分光スペクトルの処理前、処理後の検査結果を得た。今回の現地調査の目的は、通常低温加熱されているタンザナイトについて、確かなサンプル原石を入手すること。そして、今回はBブロックに絞り、品質をジェム・クオリティ、ジュエリー・クオリティ、アクセサリー・クオリティの3段階に分け、出現率を調査することである。宝石の価格相場は宝石の品質を評価し、その出現率と需要で決まる。<br> 今回、タンザナイトのBブロックに絞り込み、鉱山の現地調査を実施。その原産地状況を報告する。
著者
清水 正明
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.40, pp.4-5, 2018

<p>富山県に産出する代表的な鉱物及びその産地について,産状別にまとめ,報告する。合わせて,「越中七金山」について,紹介する。</p><p>I. 産状別にまとめた富山県の代表的鉱物産地</p><p>(1) スカルン鉱床</p><p>(1-1) Pb-Zn-Cu 型</p><p>1. 富山市池ノ山 <u>神岡鉱山清五郎谷坑</u>,播磨谷,銅平谷</p><p>アダム鉱,異極鉱,灰鉄輝石,灰礬ざくろ石,孔雀石,珪灰鉄鉱,青鉛鉱,チタン石,デクルワゾー石,透輝石,バーネス鉱,白鉛鉱,ブロシャン鉱,硫カドミウム鉱,緑鉛鉱,緑閃石,緑簾石など</p><p>2. 富山市亀谷(かめがい) <u>亀谷鉱山</u> アダム鉱,霰石,異極鉱,灰鉄輝石,水亜鉛鉱,水亜鉛銅鉱,透輝石, <i>菱亜鉛鉱</i>,ロードン石など</p><p>3. 富山市長棟(ながと) <u>長棟鉱山</u> 黄鉄鉱,黄銅鉱,絹雲母,閃亜鉛鉱,白鉛鉱,方鉛鉱など</p><p>(1-2) Fe 型</p><p>4. 富山市水晶岳 <u>黒岳鉱山</u> 磁鉄鉱,灰鉄ざくろ石,水晶,鉄バスタム石など</p><p>5. 上新川郡加賀沢村 <u>加賀沢鉱山</u> 磁鉄鉱,磁硫鉄鉱,珪灰石,ざくろ石など</p><p>(2) 鉱脈鉱床</p><p>(2-1) Au-Ag-Cu 型</p><p>6. 魚津市松倉(虎谷) <u>松倉鉱山</u> 黄銅鉱,輝銅鉱,エレクトラム,石英,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,</p><p>7. 魚津市鉢金山(かなやま) 鉢鉱山 輝銅鉱,石英,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,エレクトラム</p><p>8. 魚津市河原波(かわらなみ) <u>河原波金山</u> 輝銅鉱,石英,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,エレクトラム</p><p>9. 中新川郡上市町下田(げた) <u>下田鉱山</u>(白萩鉱山) 黄鉄鉱,黄銅鉱,エレクトラム,石英,閃亜鉛鉱,方鉛鉱</p><p>10. 富山市庵谷 庵谷鉱山,片掛鉱山, <u>吉野鉱山</u> 黄鉄鉱,含銀四面鉄鉱,輝銀鉱,閃亜鉛鉱,磁硫鉄鉱</p><p>(2-2) Mo 型</p><p>11. 黒部市宇奈月町池の平山東斜面 <u>小黒部鉱山</u> 輝水鉛鉱,水鉛華,石英,ポウエル石</p><p>12. 富山市岩苔小谷 <u>大東鉱山</u> 輝水鉛鉱,鉄水鉛華</p><p>(2-3) その他</p><p>13. 南砺市福光刀利下小屋(とうりしもごや) <u>刀利鉱山</u> 黄鉄鉱,輝銀鉱,石英,方鉛鉱,硫砒鉄鉱</p><p>14. 黒部市宇奈月町餓鬼谷 <u>大黒鉱山</u> 銅鉱</p><p>(3) その他</p><p>15. 富山市小原(おはら) <u>千野谷鉱山</u> <i>石墨</i>,絹雲母,ぶどう石,方解石,緑泥石</p><p>16. 富山市蟹寺 <u>蟹寺鉱山</u> 石墨</p><p>17. 中新川郡立山町室堂 <u>地獄谷</u>鍛冶屋地獄(かじやじごく) 硫黄</p><p>18. 下新川郡朝日町宮崎—境 <u>ひすい海岸</u> <i>ひすい輝石</i>,オンファス輝石,コランダム,透閃石</p><p>19. 黒部市宇奈月町明日(あけび)谷,深谷(ふかたん), <u>イシワ谷</u>など <i>十字石</i></p><p>20. 南砺市利賀村<u>高沼</u>(たかぬま)<i> コランダム</i>, 珪線石,石墨</p><p>21. 南砺市祖山(そやま) <u>祖山珪石</u> 褐簾石,サマルスキー石,ジルコン,石英,正長石,微斜長石,ポリクレース,ユークセン石</p><p>22. 中新川郡立山町 <u>新湯温泉</u> 魚卵状珪石,貴蛋白石(珪華、蛋白石)</p><p>23. 南砺市福光 玉随,碧玉,めのう</p><p>24. 中新川郡上市町白萩村 鉄隕石(白萩 1 号:明治 23.4. 発見,白萩 2 号)</p><p>II. 「越中七金山(ななつかねやま)」</p><p>越中は,かつてエル・ドラード(黄金郷)であった。富山藩分藩の際,加賀藩が手放さなかった(富山藩領地内に加賀藩の飛び地があった。)。一時期佐渡金山より産金量が多かったという記録があり, 17 世紀後半まで加賀藩の財政の要を担ったドル箱的存在であった。ゴールドラッシュに沸き返ったこれら「加袮山」は,戦国時代から江戸時代初期を中心に,「越中七加袮山」と呼ばれ,松倉,河原波,下田,虎谷,吉野,亀谷,長棟の 7 つの鉱山のことであった。</p>
著者
西村 文子 岩松 利香 大池 茜 藤原 知子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.34, 2012

クンツァイトとはスポデュメン(リチア輝石 LiAlSi2O6)の一種で、ペグマタイト鉱床から産出される。スポデュメンのうち、特にピンク~紫色石のスポデュメンはクンツァイト、クロム着色の緑色石はヒデナイトと呼ばれている。クンツァイトは1902年にアメリカ カリフォルニア州にて発見され、近年は主にアフガニスタン、ブラジル、マダガスカルで産出される。クンツァイトは退色しやすく、また、放射線を照射すると緑色に変化すると言われている。<BR>GEMS & GEMOLOGY(2001)には米郵政公社が始めた郵便物への放射線照射により、一部の宝石が影響を受けたことが報告された。その中でクンツァイトも放射線照射の影響を受けて緑色に変化し、自然光の下で短時間のうちに元のピンク色に戻った事が言及されている。<BR>色調の変化をより詳しく調べる為に、今回複数の産地からクンツァイトを入手した。放射線照射、退色テスト、加熱処理を施してその変化を観察すると共に、FTIR、EDXRF、可視分光スペクトル測定を行いその推移を考察した。幾つかの知見を得たので報告をする。
著者
藤原 知子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成26年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.5, 2014 (Released:2014-10-01)

長い間,スピネルは処理されていない宝石と信じられてきた.しかし2005年のGIAラボによる加熱処理実験を皮切りに,ミャンマー産•タンザニア産のレッド∼ピンク石について同様の実験報告がなされ,熱処理されたスピネルが市場に流通している可能性が指摘されている. 今回は,入手できた非加熱のスリランカRatnapura産ピンクスピネルの原石を1000°Cで5時間,酸化雰囲気の下で加熱処理した実験結果を報告する.処理前と処理後の変化をEDXRF,紫外可視分光スペクトル測定,フォト•ルミネッセンス分光,および蛍光分光光度計を用いて比較•グラフ化した.処理後の測定グラフと,フラックス合成スピネルについての測定グラフとの比較は,興味深い結果となった. スピネルとルビーは見た目や成因がよく似ていて産地も重なり,クロム含有レッド∼ピンクスピネルは,ルビーと同じく,微量元素のCr(クロム)が色因である.片や,光分析における天然レッドスピネル特有のクロム•ライン「オルガンパイプ」は.ルビーでは見られない.そこで,非加熱のミャンマーMong Hsu産ルビー原石を上記ピンクスピネルと同じ条件で加熱処理し,処理前後の変化をスピネルのそれと比較した.この比較に基づき,加熱処理によってスピネルに生じたクロム•ラインの変化の要因を考察してみたい.
著者
古屋 正貴 剱持 苗子 檀上 圭司 ウンア ジョン
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成22年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.8, 2010 (Released:2011-03-03)

北海道の鉱山から産出したロードクロサイトは、日本から産出する数少ない宝石の一つである。北海道古平郡古平町稲倉石鉱山はマンガンの採掘を目的に昭和59年まで稼働していた。ロードクロサイトはそのマンガン鉱石の副産物として産出していたものであった。しかし、海外からのマンガンの鉱石の輸入に押され、鉱山は閉山してしまい、ロードクロサイトの産出もなくなってしまった。現在、マンガン鉱山が稼働していた頃に産出されたものが流通している状況である。 一般にロードクロサイトには、ファセットカットにもされる透明石と、カボションカットにされる半透明石がある。前者では世界最大の結晶を産出するアメリカのコロラド産が有名であり、後者ではインカ・ローズの別名に用いられているようにアルゼンチン産が有名である。これらを含め、中国、ペルー、ロシア、ブラジル、南アフリカ産のものと北海道産のロードクロサイトを比較した。 MnCO3を成分とするロードクロサイトは、透明度の高いものであると蛍光X線成分分析機ではMnOしか検出されないものもあるが、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの不純物が検出されるものもある。また、北海道のものを始め、半透明のものでは不純物も多く検出される。それら不純物の含有量や割合を元に産地ごとの特性を調べてみた結果、北海道産について他の産地より、マンガン量が少ない、鉄分が多い、亜鉛は少なく、マグネシウムは少なく、カルシウムは多いなどの特徴が見られた。 また、紫外・可視分光スペクトルや、FT-IRなどのスペクトルにも特徴が見られたので、それについても合わせて報告したい。
著者
三浦 真 桂田 祐介 猿渡 和子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.17, 2018 (Released:2018-06-24)
参考文献数
1

金色のシーン・エフェクトを特徴的に示すサファイアは、ゴールドシーンサファイアと商業的に呼ばれている(例えば Bui et al. (2015))。ケニア北東部が産地とされているが、流通量が限られているために研究例が非常に少なく、その詳しい産地およびその成因については不明な点が多い。そこで産地鑑別のための化学組成データベースの充実、およびその成因について探るため、 GIA 東京ラボでは 23 石のゴールドシーンサファイアについて一般的な宝石学的検査に加えレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)による微量元素の定量分析を実施した。試料は特徴的に赤鉄鉱・チタン鉄鉱の針状内包物を多数含み、それにより光が反射されることで独特のシーンエフェクトが生み出される。またジルコンや雲母、赤鉄鉱、磁鉄鉱、ダイアスポア、炭酸塩鉱物といった多様な自形~半自形内包物を含む。色あいは青色と黄色が混在するもの、黄色単色のもの、多数の内包物・亀裂により色合いが不明瞭なものがあり、透明度も亜透明から不透明と多様である。青色および黄色に着色されている部分は化学組成上ではあまり違いが見られなく、試料は全体的に鉄含有量およびガリウム/マグネシウム比が高い傾向にある。先行研究で報告されている他のゴールドシーンサファイアと組成および内包物が類似しており、本研究の試料はそれらと同じ産地を由来としている可能性が高い。ゴールドシーンサファイアの産地とされるケニアにはアルカリ玄武岩起源(Lake Turkana)もしくはサヤナイト起源(Garba Tula)の2つの鉱床が知られている。ゴールドシーンサファイアは化学組成上では Garba Tula のものに近い傾向がある。
著者
荻原 成騎
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1-4, pp.52, 2018 (Released:2018-06-10)

【緒言】 Herkimer Diamond は、 約 5 億年前に堆積した炭酸塩岩(苦灰岩)に形成された空洞中から産出する。空洞の内壁は黒色の炭質物(anthraxolite)によって coating されており、 Herkimer Diamond は、炭質物上に成長している。炭質物は Herkimer Diamond に包有物としても含まれる。【疑問点】独特の産状形態を示す Herkimer Diamond の成因、形成メカニズムを明らかにするためには、解明されなければならない疑問点が複数ある。(1)鉱床は特別な地層にのみ分布するのか、(2)ハーキマー鉱区における各鉱山の産状の多様性、 (3)鉛直方向に延びる鉱化作用、 (4)炭質物と Herkimer Diamond の関係、 (5)炭質物の起源と鉱化作用に及ぼした役割、 (6)シリカの起源、 (7)形成(沈殿)のタイミング、 (8)温度環境、さらに(9) Herkimer における産状は、他の世界中に分布する水晶鉱床にもあてはまることなのか、などである。本発表では、現在進行中の現地調査と化学分析の結果を報告する。【結果】炭酸塩岩(苦灰岩)にあいた空隙は、ストロマトライト化石が抜け落ちて形成されたように見える。空隙の形は、柏餅型から円柱状で、空隙底面の中央部は盛り上がっている。盛り上がった底面は珪化されており、非常に硬い。 Ace of Diamond 鉱山では、 Herkimer Diamond 胚胎層準が 5 層準あり、 5 層のストロマトライト化石層に対応している。黒質物質の粉末X線回折の結果、グラファイトの反射のみが認められ、石英や炭酸塩の反射は認められなかった。黒色物質は炭化水素ではない。本研究では、黒色物質(グラファイト)について、ラマン分光法による温度推定を行った。晶洞を coating している黒色物質、および Herkimer Diamond 中に包有物として取り込まれている黒色物質の経験した最大温度は、どちらも約 200℃であった。その他、苦灰岩および黒色物質に含まれる抽出性有機物、特に環境指標となる biomarker の分析結果と総合して、生成環境について議論を行う。
著者
林 政彦 酒見 昌伸 安井 万奈 山﨑 淳司 堤 貞夫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-16, 2016

縄文時代の6千年前頃から首飾り等に使われていたヒスイ(翡翠,ヒスイ輝石(Jadeite))は,主に新潟県糸魚川市~富山県朝日町周辺で産出したとされている.わが国では,新潟県以外にも鳥取県若桜町,岡山県新見市,兵庫県養父市あるいは長崎県長崎市などからも産することが報告されている。さらに外国では,ミャンマー,アメリカ,グアテマラ,ロシアなどが知られている。今回入手した各地の試料を調べた結果,輝石族の鉱物名分類(Morimotoら,1988)1)に従うと,ほとんどのものはヒスイ輝石であったが,いくつかの産地のものはオンファス輝石(Omphacite)と呼んだ方がよいものであった。
著者
梅田 巌 飯田 孝一
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1-4, pp.3-11, 1990-11-30 (Released:2017-01-16)
被引用文献数
1

宝石用ダイヤモンドに、研究用原子炉または電子線線型加速器を用いて放射線照射処理を行い、人工的に着色させた。また熱処理も行って変色させ、一つひとつの石の処理前後の変化を自記分光光度計で測定した。用いたダイヤモンドは、天然ダイヤモンドのカットストーンと結晶原石が主で、一部に透明度の低い黄色い合成結晶ダイヤモンドの原石を含めた。放射線照射処理および熱処理の良い条件の下に、無色の天然ダイヤモンドを、青色から緑色、レモンイエローからゴールデンイエローの美しいファンシーカラーダイヤモンドに人工着色することができた。
著者
福田 千紘 但馬 秀政 宮崎 智彦
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成23年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.5, 2011 (Released:2012-03-01)

昨年、含銅リディコータイトが出現し、 国際的に“パライバ・トルマリン”の定義についての議論が再燃した。これらはEDXRFの実測値において明らかに Ca>Naであり、これまでのエルバイトとは異なり、含銅トルマリンとしては初めてリディコータイトに属するものであった。 LMHCや国内のAGLにおいて慎重に議論された結果、これらも“パライバ・トルマリン”としてカテゴライズされる方向にある。本報告では、パライバ・トルマリンの産出地ごとの外観および化学的特徴を総括し、最近出現した含銅リディコータイトの詳細な化学分析の結果を紹介する。 1980年代後半に含銅トルマリンが最初に発見されたブラジルのパライバ州Sao Jose da Batalha地域のMina da Batalha鉱区のものは、鉱物学的にはエルバイトに属していたため、以降パライバ・トルマリンは銅およびマンガンを含有する青~緑色のエルバイトとされてきた。この地の青色含銅トルマリンのCuO含有量は、我々の蛍光X線分析(日本電子製JSX3600M)による実測値では2~2.9%であった。その後1990年代以降主流となったリオグランデ ド ノルテ州の2つの鉱山のうち、Mulungu鉱区のもののCuOの含有量は、0.6~1.8%で、Alto dos Quintos鉱区のものは0.5~4.9%であった。2000年代に入って発見されたアフリカのナイジェリア産の青色含銅トルマリンには、比較的CuO含有量が少なく、PbOの含有を特徴とするいわゆるタイプ_II_と蛍光X線分析ではブラジル産と化学的に識別が不可能なタイプ_I_が存在する。2005年の中頃、モザンビークのAlto Lingonha地域から産出するようになった含銅トルマリンは、比較的CuOの含有量が少なく、0.20~0.9%で淡い色調のものが多い。最近になって産出が知られるようになった含銅リディコータイトはCuOを0.2~0.6%含有しており、同時にPbOを0.1~0.2%含有しているのが特徴である。
著者
尾崎 良太郎 丸飯 虎太朗 門脇 一則 小田原 和史
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.6, 2022 (Released:2022-07-08)
参考文献数
2

真珠の構造色は、表面の真珠結晶層内のアラゴナイト結晶層とコンキオリン層で発生する光の干渉によって発色することが知られている。一般的な構造色では、反射光の干渉が色彩を決めることが多いが、アコヤ真珠の場合は、特に透過の干渉色が重要であることを小松氏は指摘している。我々は、透過の干渉色と反射の干渉色のメカニズムを光学の視点から考え、そのモデル化に成功した。真珠の光学特性は、透過と反射と散乱の組み合わせである。真珠核および真珠結晶層での多重散乱は Kubelka-Munk 理論で計算し、アラゴナイト結晶層とコンキオリン層での干渉は、 Transfer Matrix 法で計算した。計算で得られたスペクトルを色情報に変換し、その色情報に基づき OpenGL シェーディング言語で作成したプログラムで可視化した。図 1 は、コンキオリン層を 20 nm として、アラゴナイト結晶層が 360 nm のときの結果である。上段が写真であり、下段がコンピュータグラフィックス(CG)であるが、撮影角度に伴う干渉色のグラデーションの変化をよく再現できている。また、アラゴナイト結晶層を300 nm、 360 nm、 400 nm としたときの結果を図 2 に示す。結晶層厚の変化に伴う、干渉色のグラデーションの変化も再現可能である。今後は、 CG の更なる高度化を目指し開発を進める予定である。【謝辞】本研究は農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち先導プロジェクト)」の支援を受けて行われたものです。
著者
田澤 沙也香 山本 亮 佐藤 昌弘 矢﨑 純子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.5, 2022 (Released:2022-07-08)

蛍光観察では、アコヤ真珠の浜揚げ珠は黄色、漂白珠は青白色などの特徴があり、鑑別でも用いられている。しかし真珠は生体生成物であるため個々のばらつきがある。また、一般的な紫外線ライトは、点滅がわかるように青色等の可視波長の色が加えられているため、観察真珠の蛍光色に青が加わり、本来の色とやや異なって見えている場合も考えられる。本発表では、まず目視で可視波長カットのフィルターを用いた長波紫外線(365nm 付近)照射時の試料真珠の蛍光を観察した。次に、観察した試料真珠の 3 次元蛍光分光測定を行い、目視観察との比較検討を行い鑑別への応用を検討した。1.アコヤ真珠浜揚げ珠と漂白珠浜揚げ、漂白試料真珠を長波紫外線照射下で観察すると、浜揚げ珠は黄色味を帯び、漂白珠は青白色である。紫外線カットフィルターを通して照射したところ、漂白珠にもやや黄色味は確認できたが、浜揚げ珠に比べ青みが強い。次に、試料真珠の 3 次元蛍光分光測定を行ったところ、漂白前後で明らかなピークの変化が見られた。浜揚げ珠は、励起波長 290nm付近で 345nm 付近の蛍光ピークが現れ、漂白を行うことでこの蛍光は減少し、励起波長380nm 付近で 450nm 付近の蛍光が強くなり、漂白後に蛍光の青みが強くなる現象が測定された。アコヤ真珠の浜揚げ珠は、いわゆるアコヤ吸収と呼ばれる 3 つの小さな吸収があるが、年月で消失するとも言われ、蛍光測定の併用で、より正確に浜揚げ珠(未処理珠)の判別ができるようになると考えられる。2.その他の試料真珠放射線照射によって蛍光が弱くなることが報告されているが、処理真珠と未処理ブルー珠についても同様に観察測定した。
著者
阿依 アヒマディ 北脇 裕士 岡野 誠
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成16年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.10, 2004 (Released:2005-04-06)

宝石素材に供される岩石・鉱物の真偽を判断するためにはいくつかのラボラトリーの分析が行われる。すなわち、異なる波長 (UV-Vis-IR)による分光分析、蛍光X線分析 (XRF)、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分析や電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)などである。XRF分析は簡単便利で主元素と微量元素を同時に分析できる手法である。測定対象はバルク状、粉末状など、多様な試料を測定することができ、宝石素材の分析には非常に有効である。更にこれより高感度の超微量分析を行う場合はICP-AES、ICP-MSなどの手法があるが、通常試料を酸で溶解、もしくはアルカリで融解し溶液化する必要があり、宝石素材には使用できない。また、微小領域の分析では元素マッピング機能をもつEPMAを用いるが、前処理が必要なことやPPMオーダーの分析には感度が十分ではないなどの欠点がある。 このように宝石鉱物の高感度分析には従来の分析手法にはそれぞれの限界がある。そこで当技術研究室ではICP-MSの高感度を維持しつつ固体試料で局所分析が行えるレーザー・アブレーション(LA)―ICP-MS分析法に着目し、宝石鉱物の化学組成及び微量元素~極微量元素分析への応用を開始した。 宝石の地理的地域の産地鑑別はそれを行うそれぞれの鑑別ラボの意見であり、その宝石の品質や価値を示唆するものではない。このことはCIBJOのルールにおいても基本理念となっている。とはいっても検査するラボごとに異なる見解がでるようでは顧客は混乱することになり宝石鑑別ラボの信用を落とす結果となる。産地鑑別を行う以上はより精度の高い科学的根拠の下に行われるべきである。 本報告では(LA)―ICP-MS分析法を用いて極微量に含有される不純物元素の分析を行うことにより、サファイアやエメラルドの地理的産地鑑別の可能性について言及する。
著者
中嶋 彩乃 古屋 正貴
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.19, 2018 (Released:2018-06-24)
参考文献数
1

様々な変色性を示すガーネットがあり、それらの分光特性と化学組成の分析を行った。1998 年にマダガスカル南部の Bekely から発見されたガーネットは、変種としてはパイロープ-スペサルティン・ガーネット(マラヤ)に分類され、 D65 光源下で帯緑青色~青緑を示し、 A 光源下では赤色になる。その色は含有される V3+によるものである。右図の 1)は Bekely 産の青緑色(D65)と赤色(A)を示すもので 1.3%(以下すべて蛍光 X 線分析による酸化物としての重量比)の V を含み、 Cr を 0.16%しか含まないものである。一方、 2)はスリランカ産の紫色(D65)と赤色(A)と弱い変色性を示すもので、ガーネットの固溶体比率はほぼ同じだが、 V を 0.10%とほとんど含まず、 Cr を 0.53%と多く含むものである。ともに 570nm 付近をピークとする吸収を持つために変色性が起こり、 1)の方が青~緑色域の透過が多く、赤色域の透過が少ないために色が違っている。3)は南アフリカやスリランカなどを代表的な産地とする帯緑褐色(D65)と赤色(A)を示すもので 1)のタイプと同じく、 0.3%の少ない V3+によって 570nm に弱い吸収のあり、それによって弱い変色性を示す。ガーネットの変種は、同じくパイロープ-スペサルティン・ガーネットであり、 V の含有量が少ないために緑色域の吸収も弱く、 D65 では褐色になっている。また、 460,483nm の Mn2+による吸収も見られる。4)はタンザニアやケニア Umba 渓谷などから産出するロードライト・ガーネットで、アメリカ、ヨーロッパなどでピーチカラー(黄桃)と呼ばれる褐色(D65)からピンク (A)に変わる極めて弱い変色性を示すものである。これらは V を 0.2%以下とほとんど含まないが、 Fe2+による 570nm を始め 506、 526、 696nm の吸収が見られる。しかし、 Mn2+による青色域の吸収も弱く、青色域の透過が多いため、 570~506nm 付近が吸収の谷となり、わずかな変色性が見られるものである。これらはすべて 570nm 付近の吸収が透過の谷となり、変色性の原因となっている。また、 Bekely タイプの中には V を多く含むことで吸収帯が広がり、 5)のように紫~青色域のみが透過するスペクトルになり、 D65 光源では帯緑青色を示すものもあり、これらは以前にはないとされていた青色のガーネットとなる。
著者
藤崎 雪雄
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.60-67, 1977-06-15 (Released:2017-01-16)

World population has been expanding rapidly, and it is only in 2100 when the increase in the world population is stadilized. By 2100, the world population is estimated to be 12 billions, which is three times of the present population. In contrast, the production of mineral resources, especially of gemstones, is expected to decline in future. This has already appeared on the decline of world production of natural diamonds of gem quality. Statistics indicate that the production of gem diamonds has been declining since 1970. Under these circumstances, it is expected that the concept of gemstones is forced to be modified, and the standard in evaluating gem quality will have to be moderated in near future. In evaluating quality of gem diamonds, the most important factor to create divergence in the evaluation is clarity of stones. It is therefore important to carry out serious studies on inclusions in diamonds.