著者
坪郷 英彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

山地・丘陵地・台地の竹籠の生産と使用について調査分析を行った。秩父・多摩地域の竹籠職人5名の製作技術の調査、博物館及び資料館10カ所の収蔵資料370点の資料収集を行った。成果として、論文発表とともに収集資料目録の作成、2職人の製作工程映像の編集を行った。研究は次のようにまとめられる。1、対象地域の竹籠は地域の自然環境(山地・台地)と、これにともなう生業の形態(雑穀畑作)に大きく関連している。雑穀の保管及び傾斜地での運搬のために竹籠は必要とされた。2、多様に展開した竹籠の種類・形状の基本形は畑作における落葉を活用した堆肥づくりの用具である。斜め網代編みの底に笊目編みの胴の技法と底胴とも六つ目編みの技法が基本である。3、竹籠の多様な展開は明治以降の養蚕、都市近郊の野菜作り、製茶など副業の多様さを反映したものである。いずれの場合も収穫、運搬、保管の役割を担っていた。4、山地では馬での運搬、背負板での運搬に適した独特の籠が使用され、形状や使い方に一定の型が生み出されていた。5、職人には専業と非専業の2つの営業形態があり、非専業は農家副業として行われていた。大正期のデータでは非専業の比率が専業を上回っていた。6、専業と非専業の職人は異なった職人意識を形成していた。多様な竹籠を生み出していったのは専業の職人であり、「何でも出来て一人前」という意識が根底にあった。非専業の職人は基本的な種類に限って生産しており、地域で了解された、実用的な形を作り出すことを心がけていた。
著者
西村 秀夫
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究課題では、英語史研究により有効な史的コーパスの構築に向けて、Helsinki Corpusの規模、収録されたテキストの種類および選択の基準、ジャンル分け等について再検討を行った。具体的には、Helsinki Corpusのサンプル部分を当該テキスト全体、同一テキストの別の箇所からのサンプル、同一ジャンルに属する別のテキストからのサンプルなどと比較しながら言語研究を行うことによって、史的コーパスとしての適正な規模とはどのようなものかを考察した。さらに、テキストの種類や選択の基準、ジャンル分け等が適切かどうかについても検討した。また、1999年に公刊されたICAME Corpus Collection on CD-ROM(第2版)に新たに収録された5つの通時的コーパスの中から、特にCorpus of Early English Correspondence Samplerを取り上げ、その有効性についても検証した。
著者
森竹 一之 高浪 五男 井上 克司 谷口 弘
出版者
山口大学
雑誌
山口大学工学部研究報告 (ISSN:03727661)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.89-97, 1980-10

A tablet input device (BID PAD) manufactured by Summagraphics Corp. is connected with a popular personal computer APPLE II which has high resolution graphic function. The system can input pictures from the tablet and display them on color TV screen. As software, drawing, painting, squaring, line drawing, and shaping routines are developed. The total program list is given.
著者
今村 速夫 酒多 喜久
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ボールミリングによるナノ複合化によって、Mg水素化物を活性化して水素の放出過程を促進させることを材料開発のコンセプトに、Sn/MgH_2やSiC/MgH_2を検討した。MgH_2の微結晶中に高分散したSnやSiCのナノコンポジットでは、複合効果が発現して水素の放出温度が低下した。Sn/MgH_2系では、ナノ複合化の結果、MgH_2の水素放出温度が473K近くまで低下した。これはSnによるMgH_2からの水素放出過程における動力学的な促進効果よりも水素化物の熱力学的な不安定化に起因することがわかった。TDS(熱放出スペクトル),DSC(示差熱量分析),TG(熱重量分析)測定よりMg複合系では、複合化の結果少なくとも二種類の水素種が存在することがわかった。
著者
奥田 昌之 芳原 達也 國次 一郎 杉山 真一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

コメットアッセイ(single gel electrophoresis)による毒性評価は細胞DNAの障害性をとらえることができ、様々な臓器や動物種に応用されている。本研究では労働衛生の現場で利用される化学物質でも損傷をとらえることができるのか、またどのような損傷をとらえることができるかを明らかにするという研究を計画するに至った。まず化学物質による健康被害の報告が有り、その化学物質に特異的な臓器の障害が明らかである物質として、ブロモプロパンに注目して実験研究を行うこととした。ラット(Wistar系)精巣から取り出した精祖細胞、精母細胞に短時間のブロモプロパンを曝露させると、濃度依存的、時間依存的にコメットアッセイによるDNA損傷がおきた。また、ブロモプロパン類のなかでもBr基を多く持つ化合物の方がDNA障害を起こすことがわかった。産業現場で用途が似ているトリクロロエチレンとの同時曝露を行うと、ブロモプロパンによるDNA障害は軽減された。この機序については今後詳細に検討する必要が有る。DNAの加水分解を起さない条件下でコメットアッセイを行ったところ、コメットの形成は明らかではなかった。また精巣から抽出したDNAを用いた実験では、アポトーシスを起すと報告されているzealarenoneと比べて、ラダー形成は顕著なものではなかった。酸化的ストレスの指標である80HdGを測定したところ、初代培養細胞および組織のDNAにおいてブロモプロパン高濃度曝露で80HdGが上昇していた。これらの結果は、コメットアッセイでDNA障害性を検知することができるとともに、コメットアッセイを行う条件を変えることでアポトーシスによる損傷と区別することができることを意味する。コメットアッセイの実験方法を工夫することにより簡便な毒性の評価方法、スクリーニング方法となりえるという知見を得た。
著者
高田 峰夫 山本 真弓 荒木 一視 三宅 博之 山本 真弓 高田 峰夫
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、在日バングラデシュ人と在日ネパール人を中心に、韓国(東アジア)とタイ(東南アジア)のバングラデシュ人とネパール人についても調査した。その結果、日本の各コミュニティーが日本を越えたネットワークを形成していることが判明した。一方、当初想定していた南アジア出身者としての両コミュニティーの結びつきは見られなかった。また、タイについては、東アジア(日本と韓国)とは異なったネットワークのあり方が見られた。これは、東南アジアに位置する(すなわち、国内にイスラム教徒がいる)仏教国という側面が影響していると思われる。
著者
田中 義人 TRIVEDI N. VERSHININ E. HIDAYAT B. YEBOAHーAMANK ディ LYNN K. FRASER B.J. 野崎 憲朗 立原 裕司 坂 翁介 高橋 忠利 北村 保夫 瀬戸 正弘 塩川 和夫 湯元 清文 HYDAYAT B YEBOAH-AMONKWAH D ANISIMOV S. YEBOAHーAMANK ディー. 宗像 一起 桜井 亨 藤井 善次郎
出版者
山口大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

太陽風によつて運ばれる太陽プラズマのエネルギーは、地球の磁気圏の境界領域から極域に侵入しオーロラや地磁気擾乱をおこし、さらに磁気圏内部から赤道域まで流入し様々な現象を引きおこしている。磁力線で結ばれた日・豪の共役点を含む磁気軽度210度に沿った、高緯度から赤道域にわたる広域地上多点で、電磁場変動,極低周波のプラズマ波動やオーロラの光学同時観測を行い、関与する電磁波エネルギーや粒子エネルギーのグローバルな輸送・流入機構を調査した。また、流入した太陽風エネルギーが集積し、且つ、電離層高度にジエット電流が流れている赤道域の南太平洋域で電磁環境変動の総合観測を行った。さらに、赤道域の経度の離れた南アメリカのペル-とブラジルの多点観測網において電磁気変動の同時観測を行い、磁気圏全体の太陽風エネルギーの流入ルートやエネルギー変換過程を明らかする手がかりを得た。1、太陽風変動に呼応したグローバルな地球磁気圏の応答を明らかにするために、特に、空間変化と時間変動が分離できる210度磁気子午線沿いの広域多点観測を、アメリカ、インドネシア、オーストラリア、台湾、日本、パプア・ニューギニア、フィリピン、ロシア等の28研究機関との共同研究として実施した。210度地磁気データ、LF磁気圏伝搬波データ、光学観測のデータの解析研究を行つた。(1)、惑星間空間衝撃波や太陽風中の不連続変動によって引き起こされ、地上の低緯度で観測されるSc/Si地磁気変動の振幅が季節変化しており、特に、夏半球で冬半球のおよそ2倍になっていることが見いだされた。このことは、極冠域に侵入した変動電場により誘起されたグローバルなDP型の電離層電流の低緯度への侵入の寄与を示唆している。(2)、SC/Siにより励起されたほとんどのPc3-4地磁気脈動は磁力線共鳴振動であるが、SC/Siの振幅が極端に大きいときには、プラズマ圏のグローバルな空洞振動モードも励起されている。(3) SCにより励起されたPc3-4の振幅の減少率はL<1、5の低緯度の領域で急激に増加する。また、赤道側に行くほど卓越周期が長くなっていることが観測的に明らかにされた。この結果は、低緯度電離層における理論的な薄い電離層モデルの限界とマス・ロ-デング効果を表している。(4) L=1,6の母子里観測所で光学・地磁気観測から、Dstが-100nT程度の磁気嵐の主相の時に、時々、目には見難い低緯度オーロラが地磁気H,D成分の湾型変化と大振幅Pi脈動の発生と同時に出現することが明らかになった。(5)美瑛LFデッカ局(85、725kHz)の磁気共役点のオーストラリア・バーズビルでのLFで磁気圏伝搬波の観測データ、NOAA-6衛星での高エネルギー電子のデータ、低緯度の地上観測VLF/ELF電磁放射のデータの解析から、磁気擾乱の伴う磁気圏深部への高エネルギー粒子の流入の様子が明らかにされた。2、磁気赤道帯は赤道エレクトロジェットで知られる様に、電離層電気伝導度がまわりの緯度より高く、地磁気脈動や電離層電流の赤道異常が現れる等の興味ある地域である。しかし、地磁気に関する研究は低感度の記録データもとにするしかなかったため、現象の理解はあまり進んでいない。そのため、磁気赤道帯で高時間精度、高感度フラックスゲート磁力計による磁場観測を試みた。(1)、ブラジル内陸部の6点の密な観測網で比較的長期(半年)にデータを取得した。また、ペル-の磁気赤道をまたぐ4点に観測点を設置し赤道ジェット電流の観測を開始した。さらに新しい試みとして、南部太平洋ヤップ島で、地磁気と電離層FMCWレーダーとの同時観測を実施し成功した。(2)、高時間精度、高感度磁場観測により、赤道域での地磁気脈動の振幅がおよそ0、1-1、0nTの範囲にあることが分かってきた。(3)、高感度のデータから、日出に伴う電離層電子密度上昇による地磁気脈動の振幅変調や、電気伝導度の赤道異常が引き起こす地磁気脈動の位相遅れなどの新しい結果が得られた。高時間精度のデータからはSSCやPi2脈動のグローバルな構造、衛星データとの比較からPi2脈動の開始と関係した磁気圏粒子環境の変化(オーロラブレークアップ、サブストームオンセット)などの興味ある研究が始められた。(4)、赤道域での多点観測や電離層レーダーとの共同観測から、赤道ジェット電流の空間構造や赤道反電流と電離層電場との関係など興味ある研究が始められた。
著者
村松 慶一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

最近、心臓移植や小腸移植の実験研究をみると、キメリズムと免疫寛容の導入についての研究が特に注目されている。平成21年度はキメリズム現象、つまりドナーからレシピエントへの細胞移動についてこれまでの実験を発展させ、新たな結果が得られた。最も興味深い研究は骨髄移植によるキメリズムの誘導である。つまり、臓器移植前にレシピエントに骨髄移植を行いキメリズムの成立、確認した後に目的臓器を移植すれば何の免疫抑制剤を投与しなくても移植臓器が免疫反応を受けることなく生着する。これは移植骨髄のドナーに特異的な免疫寛容であり、小腸など抗原性が高い臓器ですら安定した生着が報告されている。この骨髄移植が免疫寛容を導くならば、四肢に含まれる骨髄は血行を保ったまま移植されることになるため免疫寛容を導かないのかという期待がもたれる。平成21年度はレシピエントに放射線全身照射を行った後にドナーの後肢を同所性に移植した。ドナーにはLacZ Tgラット、レシピエントにはInbred Lewisラットを用いた。この組み合わせだと、何も処置をしなければ移植後4日で移植後肢は拒絶される。MHCでは大きなバリアーがあるペアーである。ドナー骨髄からキメリズムを誘導するために顆粒球刺激因子を投与し、またGVHDを抑制する目的でFK506を28日間投与した。この結果については2009年度のJournal of Orthopedic Researchにすでに報告したが、約20%に高いキメリズムと免疫寛容が得られたが、非致死的な慢性GVHDが認められた。この結果は放射線の量や薬物の使用量によって異なったが、いずれにしろレシピエントに対しては大きな負担となるのは間違いないプロトコールであった。平成21年度は、全身照射量や非骨髄破壊的な前処置について検討すべき結果となった。
著者
前田 健
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1) CDVのレセプターSLAMを恒常的に発現する細胞を用いて、野外株とワクチン株の増殖性を比較した結果、ワクチン株はSLAM発現細胞で極端に増殖能力が落ちた。これはワクチン株がSLAM発現細胞すなわちリンパ系の細胞での増殖が抑制していることから、イヌでの病原性が低下していると推測された。2)世界で初めて100代以上継代が可能なウマ由来の培養細胞株を樹立した。この細胞でウマヘルペスウイルス2型は細胞変性効果を示して増殖するため、EHV-2を含むウマヘルペスウイルスに対する治療薬の効果の判定が可能となった。3)Fcwf-4細胞を用いたウイルス中和試験によりI型ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FTPV)はFIP発症ネコ血清により感染が増強されることが示されたが、I型ネココロナウイルス(FCoV)感染健常ネコ血清には感染増強作用が存在していなかった。これはFCoV感染による抗体ではなく、FIPV発症ネコ血清中に含まれる何らかの因子がfcwf-4細胞に対する感染増強に関与していることを示唆している。このin vitroにおける感染増強機構を指標にFIPに対する治療薬の開発が可能になると期待される。4)コウモリより新規細胞株の樹立と新規ヘルペスウイルスとアデノウイルスの分離に成功した。コウモリ由来の新興感染症は多く、これらの細胞はその診断に役立つものと期待される。
著者
立野 淳子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

CNS-FACEによって算出した家族のニーズとインタビューによって見出した家族のニーズの一致度を検討したところ、「保証」のニーズは8割以上とらえられていることがわかった。一方、「安寧・安楽」のニードは約3割と低い割合であった。
著者
難波 章人 福田 隆眞
出版者
山口大学
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.93-107, 2005-09-30

[はじめに] : スペインは美術の歴史が深く、世紀の天才を生み出し続ける国として有名である。17世紀には宮廷画家のベラスケス、18世紀にはゴヤ、19世紀にはバルセロナのサグラダ・フャミリアを設計したアントニオ・ガウディー、20世紀にはシュールレアリスムのダリやミロ、様々な美術運動を起こしたピカソ、巨大な鉄彫刻をつくりだしたチリーダ、現在も精力的な活動を続け、レアリスム絵画で知られるアントニオ・ロペスなどがいる。 筆者難波は、2003年度にバレンシア工科大学・美術学部・2004年度にマドリッドのコンプルテンセ大学・美術学部にて彫刻を学んだ。そこで、スペインの大学で経験した彫刻教育について、コンプルテンセ大学のカリキュラムを中心に考察し、どのような教授方が行われているのかを検証する。検証の仕方として、コンプルテンセ大学・美術学部・彫刻科で開講している13の授業のカリキュラムを紹介し,実際の受講経験を基に,内容と教授法の利点と特徴を述べる。
著者
田邊 敏明
出版者
山口大学
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.79-94, 2006-03-25

This study clarifies what types of metaphors were used in the composition of this drama. It was revealed that a road operated as the main metaphor to express pure love on which love for family and friends intruded. Time and snow acted as metaphors in support of the road metaphor,and in addition pairs of opposites such as light and dark, intuition and morality in love were metaphors expressing opposing traits or opposing lifestyles in two characters. It was further revealed that the fusing of these opposing metaphors made this drama interesting and had a therapeutic effect on the audience.The possibility was discussed that future drama could also employ metaphors of this type.
著者
奥 和義
出版者
山口大学
雑誌
山口經濟學雜誌 (ISSN:05131758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.571-601, 1995-05-31
著者
澤 喜司郎
出版者
山口大学
雑誌
山口經濟學雜誌 (ISSN:05131758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.813-834, 2006-03-31
著者
遠藤 克彦
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

キタテハ・アゲハチョウ・ベニシジミの3種の蝶では、その成虫に季節型がある。その夏型成虫の発現に、蛹期に脳から分泌される夏型ホルモンが関与していることが知られている。今回、これらの蝶の前蛹または蛹から脳を集め、2%Naclの抽出液をつくり、キタテハの短日蛹(秋型成虫を生ずる蛹)に注射したところ、短日蛹から夏型成虫をつくる夏型ホルモン活性が、これらの抽出液に存在していることがわかった。更に、カイコ蛾の脳を集め、その抽出液をつくり、夏型ホルモン活性を調べたところ、このカイコの脳の2%Nacl抽出液にも、夏型ホルモン活性が存在していることがわかった。上記の3種の蝶とカイコの脳に存在する夏型ホルモン活性物質は、acetoneや、80%ethanolでは抽出されず、硫安によって沈澱(50-60%飽和で、2%Nacl抽出液中の夏型ホルモン活性の50%が沈澱する。)させられることがわかった。また、キタテハの夏型ホルモンについて、その性質を調べたところ、熱にはかなり安定(95℃,5分)であるが、trypsin処理でその活性が失われることがわかった。ついで、キタテハとカイコの2%Nacl脳抽出液をSephcclexG-50および高速液休クロマトグラフィーにかけて調べたところ、いずれの夏型ホルモン活性物質も分子量が3,500から6,000の間であり、逆層クロマトグラフィーの溶出時間もほぼ同じであった。得られた夏型ホルモンの分子量、逆層クロマトグラフィーの溶出時間から、これらの夏型ホルモンは、先に報告されているカイコの前脳腺刺激ホルモンと分子量(4,400)逆層クロマトグラフィーの溶出時間ともほぼ同じであることがわかった。また、SephcclexG-50と逆層クロマトグラフィーの各フラクションをアゲハチョウの休眠蛹に注射し、前脳腺刺激ホルモン活性を調べたところ、夏型ホルモン活性が存在するフラクションと、前脳腺刺激ホルモンが存在するフラクションとがほぼ同じであることがわかった。
著者
河中 正彦
出版者
山口大学
雑誌
山口大学独仏文学 (ISSN:03876918)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.v-vi, 2007

河中正彦教授追悼号