著者
常岡 英弘 梅田 昭子 柳原 正志 柳原 正志 梅田 昭子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

猫ひっかき病(Cat Scratch Disease : CSD)の新たな血清学的方法としてBartonella henselae IgG抗体価測定用Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay (ELISA)を確立した。本法の特徴は液体培地で培養したBartonella henselaeATCC49882株をN-ラウリルーサルコシン液で処理し、その上清液を抗原とするものである。本法の感度は0.952、特異度は0.987であり、その臨床的有用性が期待される。
著者
梶原 健佑
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

表現の自由との緊張関係を孕むにもかかわらず、これまで十分に考究されてこなかった「名誉感情侵害」不法行為に焦点を当て、アメリカ不法行為法のIntentional Infliction of Emotional Distressとの比較から、「感情」という主観的法益の保護と表現の自由保障との調整法理を検討した。他のTortious Speechと同様に、表現の対象者と表現のテーマの両面からのアプローチが効果的と考えられる。また、調整にさいしては、結論を準則のかたちで得ることが望ましい。
著者
鈴木 義則 早川 誠而
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

盆地、傾斜農地などの複雑地形で発現する局地的低温は、放射冷却条件の下で卓越するとともに、温度の垂直分布が逆転層で特徴づけられるものとなる。このとき下降してくる気流の熱的特性の解釈が異なり、凍霜害の恒久的対策方法に対する考え方が正反対となる混乱が現存する。筆者らは「斜面下降気流の低地部に対する熱的作用の性格は時刻によって変わり、日没前後は冷気流として、夜半以降は放射による冷却を抑制する作用を果たすことが多い」という仮説をたてている。そこで仮説の検証と低温発現機構を解明するために、主観測対象地として宇部市の傾斜茶園、副対象地として学内の山地を選び,現地に下降気流の動きや地中熱流を人為に方化させる種々の実験装置もセットした上で、赤外放射温度計(熱映像装置)と通常のデ-タロガ-により気象観測を行った。これまでの解析結果は我々の仮説を裏付けるデ-タが多く出ており、特に重要な点である夜半の下降気流が低地部に対しては冷却緩和に作用している場合が多いことを見いだした。次に、地被の構造がモザイク的である場所の表面の冷却について実験とシミュレ-ション解析から、熱容量と熱拡散係数の差が冷却に寄与することが大であることを明らかにした。そこでは、植物、例えば蒲鉾状の茶株の存在は地中から熱補給を遮断するため、とくに表層部の冷却が進み、冷熱源となることが示された。また、斜面を上下に直線的に結ぶ裸地面の道と水平方向に茶株の間を抜ける道との上で、気温の垂直分布を測定した結果、下降気流の強い方が高温であった。風速が弱まる所の冷却の強まりが確認された。初年度に表面温度分布の中に「ゆらぎ現象(ロ-ル状対流)」を世界で初めて検出したが、今年も再確認できた。ただし、この興味ある事実をさらに詳細かつ定量化するには、新たな測器の準備と研究の展開が必要である。
著者
阿部 泰記
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

2年間にわたって継続的に行ってきた漢川善書に関する調査をまとめ、漢川善書が地方の演芸として無形文化財に指定されるまでに成長した要件を分析するとともに、国内外の図書館において文献を収集して聖諭宣講の歴史的発展を明らかにした。この過程で歌唱による教化が現代に至るまで各地で行われてきたこと、台湾においても現在無形文化財として唸歌による民衆教育が行われていることも明らかにした。
著者
浮田 正夫
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本年度は大型貨物自動車の燃料消費について調査し、長距離輸送にかかるエネルギー消費について主として検討を行った。運送業者に往復の燃料消費の違いについて聞き取りを行ったが、往路、復路別々の燃料消費の情報を得ることは容易ではなかった。わずかに収集できた16台のデータより、エネルギー消費の式を求めたところ、y:燃費係数kcal/km、x:車重量(=自動車自体の重量+積荷等の重量)kgとして、y=36.2x^<0.419>、R^2=0.80なる式が得られた。また燃費基準から整理すると、ジーゼル貨物車のエネルギー消費についても同様に、オートギアの場合y=49.0x^<0.383>、R^2=0.94、手動ギアの場合はy=51.2x^<0.354>、R^2=0.99なる式が得られた。手動ギアのガソリン貨物の場合、y=4.8x^<0.697>、R^2=0.96、ガソリン乗用車の場合、y=1.44x^<0.856>、R^2=0.97であった。確認の意味で、燃費計を装着した6台のバンタイプを含む乗用車を用いて、乗客数を変化させて、燃費実験を行ったところ、低燃費車でy=113x^<0.197>、R^2=0.96、あるいはy=100x^<0.214>、R^2=0.95、バンタイプ車でy=158x^<0.234>、R^2=0.79なる式が得られた。停車時においてもエネルギーを消費することから、見かけ上指数部が1より小さくなる傾向がある。いずれにしても、実際上は指数部を1にとることには問題があるようであった。ケーススタディとして山口県における木質バイオマスを全て宇部市に集める場合の集積費用及びエネルギー消費の試算に当たっては、上記の16台のデータを用いて、エネルギー消費は車重量の0.5乗に比例するとした式、y=16.2x^<0.5> R^2=0.74を用いて解析を行った。その結果、中間処理施設を19ケ所、13ケ所、6ケ所と集約すると、費用的にもエネルギー消費的にもかえって不利になることが分かった。また集積に要するエネルギー消費はバイオマスの持っているエネルギーの0.51%〜0.67%であった。
著者
渡邊 理恵
出版者
山口大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究では、M1が粒子内へ大量に存在する仕組みが、粒子形成前のM1多量体形成にあると仮定し、免疫沈降法を用いて細胞内で形成されるM1-M1複合体を検出した。FlagタグあるいはHAタグを付加した2種類のM1を細胞内で発現させ、抗Flag抗体で免疫沈降後、抗HA抗体を用いて検出した。免疫沈降サンプル調整時のpHを変化させたところ、長い紐状粒子を作りやすいインフルエンザウイルスUdorn株(H3N2)のM1では、細胞溶解液のpHに関わらずHAタグを持つM1が沈降した。一方、球状粒子を作るWSN株(H1N1) M1では、pHが変化すると、沈降するHA-M1の量が変化した。
著者
綱島 亮
出版者
山口大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

ポリ酸と呼ばれる分子性金属酸化物について、簡便に行えるクロマトグラフィー的分析手法の開拓を目指し、電気泳動に注目した。個々のポリ酸は、サイズと電荷に依存した移動度を有することを明らかにした。これにより、様々なポリ酸が混在する溶液中であっても、任意の成分を分離することが可能になり、合成収率の向上や形成機構解明に向けた反応系のクロマトグラフィー分析が合成実験の範疇で行えるようになった。
著者
中澤 淳 山田 守 野間 隆文 伴 隆志
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

神経・筋などの興奮性細胞において活動電位の発生に寄与するナトリウムチャネルについては、その一次構造が明らかにされてはいるが、チャネルブロツカ-としてのフグ毒(テトロドトキシン)のチャネル上の結合部位はまだ明らかにされていない。本研究ではフグ毒に耐性を示すフグ自身のナトリウムチャネルの解析によりその結合部位を推定する。トラフグの脳組織を材料として、λgt10ベクタ音引きを用いて、オリゴdtとランダム配列DNAをプライマ-として、2種類のcDNAライブラリ-を作製した。PCR法により作製したDNA断片ならびに分離したcDNAの断片をプロ-ブとして、合計9個のcDNAクロ-ンを得た。これらはいずれも単独ではmRNAの全長には及ばなかったが、配列をつなぎ合わせると全コ-ド領域をカバ-できた。えられたクロ-ンの塩基配列をもとにして分類すると、フグの脳には少なくとも3種のナトリウムチャネルが存在することがわかった。今回えられたフグ脳のナトリウムチャネルのアミノ酸配列を、ラット心臓、ラット器機筋、ヒト心臓のテトロドトキシン耐性チャネルならびにラット胞のテトロドトキシン感受性の3つのチャネルのアミノ酸配列と比較検討したところ、テトロドトキシン耐性のものでは、チャネルの4つの繰り返し領域の第1着目の領域中、セグメント5(IS5)とセグメント6(IS6)の間の部分に欠失が存在することがわかった。この部分は細胞外に突出していると考えられるところで、多数の糖鎖の修飾部位が存在する。単一アミノ酸残基の変化がテトロドキシン飽和性に寄与するという報告があったが、これらの残基はすべてフグのナトリウムチャネルでは、トキシン感受性のものと同じであった。従って、テトロドトキシン感受性を規定するのは単一アミノ酸残基というよりは、上述のようなIS5とIS6の間の領域の欠失ではないかと思われる。
著者
角田 哲也 望月 信介 大坂 英雄
出版者
山口大学
雑誌
山口大学工学部研究報告 (ISSN:03727661)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.331-337, 1990-03

The effect of the separating shear layer characteristics on the structure of the flow downstream of the reattachment region of a backward-facing step is examined using wall pressure distribution and mean velocity data at a unit Reynolds number of 9.92×(10)^5m^<-1>. The reattachment length X_R/h is 6.78 in this study. Log plots of the mean velocity profiles downstream of reattachment show that the disturbance in the boundary layer is primarily in the outer part of the log region. The inner part of the profile relaxed rather quickly.
著者
白井 睦訓 三浦 公志郎
出版者
山口大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

アモキシリン(AMOX)耐性ピロリ菌の耐性機構を世界ではじめて詳細に解明できた。すなわち、アモキシリンをアビジンラベルして菌体成分中のアモキシリンと結合する分子を同定した結果、そのアモキシリン耐性は、アミノ酸変異を起こしたペニシリン結合タンパク1(PBP1)によって引き起されるごとが分かった。世界でAMOX耐性ピロリ菌の分離は極めて少数で、日本全国をネットする大学病院と主要病院に呼びかけ40以上の施設の協力を得てAMOX耐性ピロリ菌研究のコンソーシアムを組織した結果、全国から数十の耐性株候補が山口大学に集積された。我々はこれらの菌株のAMOX最小増殖阻止濃度(MIC)などの薬剤耐性検定やペニシリン結合蛋白群のうち既に解明している耐性原因遺伝子でAMOX親和結合の主体であるPBP1遺伝子の塩基配列全長を解読して、耐性特異的変異アミノ酸を確定し、さらに同耐性遺伝子を感受性株に導入後耐性への形質転換を確認した。その結果、これまで少数の耐性株の解析に基づいて判明していた変異箇所をより限定化でき、PCR配列解析と感受性株の耐性転換による耐性診断率の上昇、診断の簡便化と迅速化に対応できる成果につながった。開発した診断法の対象患者は背景に示したように膨大である。我々は既にこの診断対象となる遺伝子配列とそれを利用した診断法の考案の特許を出願中で、優位性は確保されている。この耐性診断方法に関連した製品は皆無で、本成果は新製品や新技術に直結し、商品化された場合の優位性は極めて高い。既出の特許内容を追加し、協力企業と商品化を検討中である。また、耐性遺伝子産物を利用した治療薬の合成とスクリーニングも実施し、薬剤耐性菌に感受性のアモキシリン誘導体も数種類探索し得た。
著者
萬場 光一 牧田 登之 利部 聡
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

ファブリチウス嚢組織学的所見と電子顕微鏡および免疫組織学的リンパ球の同定1.ファブリチウス嚢の組織は基本的に、最内層の上皮、粘膜固有層と粘膜下組織、その中に特異的に発達したリンパ濾胞および被膜より構成されていた。2.孵化当日の濾胞のサイズを計測すると、濾胞の大きさは小型で約100μm、特に皮質の発達は悪かった。2〜3週令では濾胞は更に大きくなり、約220μmであり、皮質の発達は良好なところと不良なところがあった。6週令では、濾胞は4、および5週令のものより大型化し、約500μmとなり、皮質は発達し、髄質との間にある基底膜の波状化が認められた。7週令では、濾胞は最大に達し、約700μ以上のものも認められた。また皮質の発達も良好であった。9週令では、濾胞の大きさは減少するものも認められ、約400μmに減少したが、皮質にはまだ衰退は認められなかった。11〜12週令になると、濾胞の大きさは約150〜400μmのものが混在し、皮質にも一部菲薄化が見れた。14週令では濾胞の大きさは約300μmで、大小のものが見られ、皮質も菲薄化したものが多くなっていた。以上の結果より、1.濾胞サイズの検討は、ウズラの成長とリンパ濾胞の発達・消退が極めて密接な関係にあることを、このウズラで初めて見い出すことが出来た。2.免疫組織学的リンパ球の同定ではTリンパ球よりもBリンパ球の存在が多数う認められた。しかし、どちらにも分類されないものも観察された。これらの同定については今後の課題であろう。4.透過型電子顕微鏡によるリンパ球の分類を行ったところ、濾胞皮質には中リンパ球が見られ、有糸分裂も多数認められた。髄質には大、小のリンパ球が認められ、ヘマトキシリン好性の顆粒を持つ、所謂顆粒状物質含有細胞も認められた。5.また、走査電顕でも細胞表面の突起の有無により細胞の同定が可能になった。
著者
藤津 揚一朗
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

春季カタルにおける巨大乳頭は,その病態形成に重要な役割を果たしている。近年アレルギー疾患においてもMCP-1の関与が示唆されている。そこで結膜線維芽細胞におけるMCP-1受容体(CCR2)の発現を確認し,MAPKなどの細胞内シグナル伝達を介した反応をする事が分かった。さらに,MCP-1により細胞増殖がその濃度依存性に亢進し,かつ細胞外マトリックスであるフィブロネクチンやprocollagen type I C-peptide,III型コラーゲンなどの蛋白産生も濃度依存的に亢進させる事が分かった。
著者
内田 耕一 寺井 崇二 山本 直樹 飯塚 徳男 坂井田 功
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

我々は漢方薬・防風通聖散(TJ-62)および大柴胡湯(TJ-8)の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する治療効果の検討のため、ラットコリン欠乏性脂肪性肝炎・肝硬変モデルを用いて実験を行なった。防風通聖散投与群および大柴胡湯投与群は肝線維化を有意に改善した。肝星細胞の活性化を有意に抑制した。また肝発癌については前癌性病変のマーカーであるGSTP蛋白の発現が、防風通聖散投与群と大柴胡湯投与群では有意に抑制した。これらの漢方薬での結果を2008年11月米国、サンフランシスコで開催された第95回アメリカ肝臓病学会でそれぞれ発表した。
著者
福田 基一 和泉 晴夫
出版者
山口大学
雑誌
山口大学工学部研究報告 (ISSN:03727661)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-76, 1965-11

To examine the effects of length of an exhaust pipe and engine speed in a small four-stroke cycle engine, the authors have measured the output of the engine and analysed some pressure diagrams for the exhaust pipe. Some conclusions obtained in such experiments are summarized as follow : 1) The maximum output occurs on account of the innertia effect of the exhaust system. 2) The maching conditions are expressed approximately by the following equation Q=cθ/12kNl where c : mean sonic velocity in exhaust system θ : period of exhaust port opening k : maching factor N : engine speed, r.p.m.l : length of exhaust pipe+correction value of open end. The maximum output occurs in case of Q≒1.
著者
木下 武志 三池 秀敏 一川 誠 長 篤志
出版者
山口大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は,ベーシックデザイン教育(基礎デザイン教育)の分野横断的内容と参加型表現(造形)学習であることに着目した.理数系科目と連係させた実習課題を児童生徒に制作することによって理科や算数(数学)に関する興味・関心を高めることの可能性について,課題の考案や学習効果の定量的に評価することを目的とした.具体的な研究内容としては,同研究テーマの平成14年度からの研究成果を継続し,次の事項を行なった.1)つの実習課題を考案.2)小学生対象の実験授業の実施,及びインタビュー調査とその結果の統計分析による学習効果の明確化.3)画像処理計測による課題作品の定量的評価方法の検討.4)授業支援用Webサイトの制作.5)課題考案のための海外調査.6)研究成果の国内での発表,学術論文の投稿.研究成果として,a)実習課題については幾何学的形態の作図を行ない,それを実際に手でちぎって自由に2分割した形態をさまざまに組み合わせながら構成を考えさせた.その組み合わせをアイデアスケッチとして12個作図させ,その中から2個の形態を選択し,彩色する課題内容を考案した.また,ピクセルで描かれたキャラクターを四分木により符号化し,その符号から元のキャラクターを描く課題を考案した.b)考案課題の学習効果を調べるために小学生(山口県美東町立綾木小学校と同町立鳳鳴小学校の4年生〜6年生の12名)を対象としたに実験授業を4日間実施した.c)視覚心理に関係する講義の授業を1回実施した.d)インタビュー結果の統計分析は途中段階であるが,理数系科目への目的意識の変容と発想力,作画的造形力と興味と理数系科目への興味・関心との関連性が示された.e)評価項目の各色画に対する面積,明度,色相の「ばらつき」,構成エレメント間の「まとまり」,視覚的重心位置について課題作品を画像計測し,教育者の評価と相関関係の高い結果が得られた.f)実験授業の内容を小学校で実践することを目的とした教諭対象の授業支援用Webサイトの制作とユーザビリティテストを行なった.g)ベーシックデザインの教育者であったパウル・クレーに関する調査を行なった(スイス,ベルン).
著者
梶原 忠彦 川合 哲夫 赤壁 善彦 松井 健二 藤村 太一郎
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

最近"磯の香り"(マリンノート)はアメニティー機能を有する海洋系複合香として注目されている。例えば、そのタラソテラピー(海洋療法)における機能性芳香剤としての利用、あるいは水産食品への香味香付与によってみずみずしさを増強し、商品価値を高めるなど種々の用途開発がなされようとしている。ここでは高品質のマリンノートを安定供給できる最新の遺伝子組み換え技術と伝統的養殖技術を両輪とし化学合成を組み込んだ、未利用植物材料(沿岸汚染藻類、野菜クズなど)を利用する生産システムの技術開発を目指した研究に於て、次のような研究成果を得た。(1)紅藻ノリより、不飽和脂肪酸に酸素を添加しオキシリピン類(ヒドロペルオキシド)を生成する機能を有する新規のヘムタンパク質をはじめて単離することができ、このものはグリンノート生産に極めて有用であることが分かった。(2)ヤハズ属褐藻の特徴的な香気を有するディクチオプロレン、ディクチオプロレノール及びそのネオ一体の両エナンチオマーを酵素機能と合成技術を併用して、光学的に純粋に得ることに成功し、絶対立体位置と香気特性との関連を明らかにした。また、ネオ-ディクチオプロレノールから生物類似反応により、オーシャンスメルを有する光学活性ディクチオプテレンBに変換することに成功した。(3)緑藻アオサ類には、(2R)-ヒドロペルオキシ-脂肪酸を光学特異的に生成する機能を有することを実証した。また、このものはマイルドな条件下で海藻を想起する香気を有する長鎖アルデヒドに変換できることが分かった。(4)アオサ類に含まれる不飽和アルデヒド類を立体選択的に合成し、熟練したフレーバーリストにより香気評価を行った結果、これらは海洋系香料としての用途が広いことが分かった。
著者
加納 隆 今岡 照喜 大和田 正明 大和田 正明 JAYANANDA M.
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

隠岐島後の基盤岩中に, 新たに典型的なS-type花崗岩を見出し, その産状と岩石学的性質を明らかにした. また飛騨片麻岩に伴うミグマタイト質花崗岩との性質を比較し, 産状は同じでも, 母岩の片麻岩の岩相構成と対応して両者に違いがあることを見出した. これにより, 従来飛騨-隠岐帯として一括されてきたが, 両者は異なる地質体に帰属する可能性が大きいことを示した. また併せて飛騨帯とダルワールクラトンの花崗岩類の温度構造や熱史について比較・検討した.