著者
祐村 恵彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

細胞内でのミオシンの単量体と繊維の分子平衡の定量的解析を行った。ミオシンは繊維となることではじめて細胞運動や分裂のモーターとして機能しうる。また、どのように機能的なミオシンが細胞内での分布を厳密に制御されるのかについてもこの分子平衡との関連が重要であると考えられる。本研究では、ミオシン重鎖欠損細胞にGFP標識ミオシンを発現させることで、細胞内のすべてのミオシンをGFP標識できるという細胞性粘菌のメリットを利用して、FRAP, FLIP, micro CALIなどの最新の方法によりミオシンの繊維の分子平衡の定量的解析を行った。その結果、従来ミオシンは収縮環内で安定に存在すると考えられてきたが、本研究により、内質にいるミオシンとハーフタイム7秒程度ですばやく置換していることがわかった。さらに、重鎖リン酸化部位アミノ酸をスレオニンからアラニンに分子生物学的に変換した改変ミオシンを用いることで、ハーフタイム7秒の収縮環の置換にミオシン重鎖のリン酸化が関与することを示すことができた。また、本研究によりはじめて、ミオシンが表層流に乗って細胞分裂面に移行することもあきらかになった。また、ミオシン重鎖キナーゼの1つキナーゼAの細胞内分布についてもあきらかにし、それが細胞内質と表層を行き来していること、これがミオシンの細胞内分布に関与することも明らかになった。以上の結果を踏まえ、細胞分裂期の収縮環形成の分子機構の新たな仮説を提唱するに至った。
著者
足立 収生 赤壁 善彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

タミフル製造に重要な原料であるシキミ酸の製造法において、有機合成法は不可能である。最も多用されているグルコースを初発とする発酵法には克服し難い幾多の隘路があった。2002年以来、研究代表者はこれらにブレークスルーを求めて、クロロゲン酸を高濃度に含む南米特産のマテ茶(Ilex paraguarienses )から、麹菌を固定化触媒としてキナ酸やカフェ酸を効率よく安価に大量に調製する方法の開発行った。得られたキナ酸は、既に研究代表者が確立している新規な酢酸菌触媒によって、高速・高効率にシキミ酸へ変換できる系へ連結させることができた。
著者
遠藤 徹
出版者
山口大学
雑誌
山口大学哲学研究 (ISSN:0919357X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-52, 1994

「真の幸福を得ようとするならば、Xせよ。」(α) カントはαは道徳的命法ではあり得ないと主張したと思われるが、拙稿「仮言命法は法則であり得ないか」(以下「仮言命法論文」と略記)が取り上げようとした問題は、第一次的には、αは果たして本当に道徳的命法たり得ないか、であった。 カントが「実然的」(assertorisch)仮言命法と呼んだものがαだと思われるが、彼は仮言命法は法則たり得ず、又道徳法則たり得ない、ただ定言命法則だけがそうであり得る、と主張した。上記拙稿は仮言命法は法則たり得るはずであること、又αも、それに対して義務から従うことは可能である限りで、従ってその限りでカント自身のものさしに照らして、道徳的命法であり得るはずであることを示すことに努めた。そればかりでなく、そもそも具体的な道徳的命法はカント自身においても仮言形式とならざるを得ないのではないかと述べて、道徳的命法が定言命法だとの彼の主張に根本的疑問を向けると共に、もしこうして定言命法のみが道徳的命法であるとのカントの主張が崩れるとしたしたら、彼の倫理学の体系はどのような修正を迫られるはずであるかを大づかみに予測した。―以上が上記論文のあらましである。 この我々の疑問を深化することは二つの方向を取り得るであろう。一つは、仮言命法が道徳法則であり得る可能性を一層具体的に追究することであり、もう一つは、定言命法が道徳法則であり得る可能性を吟味することである。本稿はこの二つの道のいずれにおいても一歩推し進めることに努めたい。前者の道では、上記論文への疑問・再考点にも考慮を払いながら、道徳的命法としてのαの可能性を追究する。後者の道では、約束に関する義務の根拠の検討を通して、定言命法の基本定式が果たして真に道徳法則であり得るか、根本的疑問を提示することに努めるつもりである。
著者
五島 淑子 篠原 里香
出版者
山口大学
雑誌
研究論叢. 人文科学・社会科学 (ISSN:02860589)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.15-23, 2005-12-20

1)大学生の米の購入と摂取、食事様式、嗜好の実態を明らかにする目的で、質問紙による自己記入法により、調査を行った。調査時期は2003年5月20日〜31日、調査対象者は、大学生247人(男子学生83人、女子学生159人)である。2)米の入手方法は、「実家から送られてくる」と答えた学生が最も多かった。米の購入時には「価格」を優先し、米の購入頻度は「3ヶ月に1回」、購入量は「5kg」、購入費用は「2000円未満」と答えた学生が最も多かった。3)米の摂食では「白米」を食べている学生が最も多く、「毎日」食べているが、炊飯は週に「1〜2日」、1度に「2合」の炊飯をする学生が多かった。また、米が食べたくなったときには「炊く」と答えた学生が最も多かった。4)米料理で「好きなもの」と「よく食べるもの」と「よく買うもの」との関連をみると、「おむすび」は「好き」で「よく食べ」、「よく買うもの」であった。
著者
藤原 貞雄 座間 絋一 谷光 太郎 古川 澄明 米谷 雅之 陳 建平 横田 伸子 増田 正勝 藤原 貞雄
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1 本調査研究は、日・中・韓3国の環黄海地域の大学が協力し、自動車産業、電子産業という基幹産業を研究対象に取り上げ、それぞれの国や地域の産業政策と産業構造、産業組織の展開過程と現状を比較研究することによって、それぞれの国と地域の段階的、類型的特徴を明らかにすると共に、「環黄海経済圏」を構成する3カ国の国や地域の経済協力の現状と問題、将来方向を調査研究することを目的にしている。2 中国自動車産業については、現地の国営企業、日中合弁企業、郷鎮企業等の視察、国、省、市等における自動車産業政策についてのヒヤリングを行い関係資料の収集に努めた。3年間に中国の自動車産業及び自動車産業政策は大きな変貌を遂げたが。それを現地において確認しつつ研究調査できたことは大きな成果であった。3 1995年以前の中国自動車産業においては米国及び日本の自動車メーカーの関与はきわめて薄かったが、以後は米国のビッグ2及び日本のトヨタ、本田技研、ドイツのベンツ・クライスラーが完成車(乗用車)組立に本格算入することによって、様相は様変わりしつつある。つま1995年以後の中国自動車産業は世界自動車産業の一部に包摂されて発展をしている。この変化のプロセスを国内市場の変化、政策の変化とともに観察できた。4 中国の電子産業についても自動車産業と同様に、現地の国営企業、日中合弁企業、郷鎮企業等の視察、ヒヤリングを行い関係資料の収集に努めた。中国の電子産業及び半導体産業の発展はめざましく、現地において確認しつつ研究調査できたことは大きな成果であった。ここでは自動車産業とはちがって当初から外資系企業の導入が積極的に図られ、外資系メーカー主導の発展に特徴があり、全体としては労働力集約工程が集積しているが、研究開発工程の導入と自発的発展が課題となっている。5 韓国については主要非外資系自動車・電子企業及びそれらの研究所、労働組合に関する現地調査を行った。これについては現地研究分担者及び研究協力者と共に行った。6 研究成果の公開と研究交流を目的に中国韓国で計2回、日本で2回の合計4回の公開シンポジュームを開催した。これには3国の若手研究者も参加し、将来の共同研究の基礎を築いた。
著者
白尾 敏之
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

SPH刺激やくも膜下出血モデルが引き起こす脳血管攣縮機構におけるラフトやカベオラの関与を検討した。血管平滑筋の総コレステロール濃度の変化がラフトやカベオラの発現を誘導しているだけでなく、そのシグナルの核への伝達によるラフトとカベオラの発現制御メカニズムの存在も示唆された。さらに、くも膜下出血後の血管平滑筋細胞内のABCA1の発現量を解析し、ABCA1を介するHDL新生反応が引き起こすCa2+感受性機構増強のメカニズムを検討したところ、SAH後では細胞増殖刺激の惹起により、細胞膜にコレステロール供給が促進される状態となっている可能性が高い事がわかった。
著者
田中 理絵
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、子ども期に家族崩壊を経験した者を対象に面接調査を実施し、彼らが遭遇する社会的困難や課題について明らかにしながら、家族崩壊の再生産要因について分析することを目的としたものである。調査の結果、定位家族での家族崩壊経験について被害経験を客観的に説明できると同時に、生殖家族において、今度は自分自身が加害者となるのではないかという不安を抱えること、それには性別・年齢・崩壊に至った原因による傾向はみられないことが明らかになった。
著者
鈴木 達行 音井 威重 藤原 昇
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

-20Cで3ヶ月間凍結保存後、融解した牛胎児細胞からドナー核を作り出した。セルラインの7回から12回継代培養したものを本研究のドナー核として用いた。これらのドナー核にオワンクラゲ蛍光遺伝子、EGFPジーンフラグメントをリポゾームの媒介により牛胎児細胞内へ取り込んだ。牛胎児細胞は遺伝子導入前に4〜5日間飢餓状態に置くため、牛血清添加量を抑えた0.5%血清加DMEM培地内で順化させた。一方、除核卵子を準備するため、食肉処理場で得られた卵丘付き卵母細胞を修正卵管液で成熟培養し、20〜22時間後に5ug/mlサイトカラシンB+0.3%BSA加修正SOF液内で除核し、ドナー核を挿入して電気融合装置BTX2001によりDCパルス1kv/cm, 50マイクロ秒にてチマーマン液内で融合した。その後修正SOF液内で8日間培養し、発生した胚盤胞、拡張・脱出した胚盤胞への遺伝子導入成果を確認した。その結果、胚全体に遺伝子が導入されたものは11例(3.5%)で、このうち胚盤胞は1例(1.0%)に過ぎなかった。遺伝子導入例の大部分がモザイク状で26例(8.4%)にみられた。遺伝子導入核構築胚の一部は開発した陰圧式炭酸ガス培養器で培養しながら、日本(福岡)から中国(チンタオ)空港を経て、中国莱陽農業大学で準備した5頭の受胚牛へ移植実験を試みた。その結果、3頭が妊娠し、1頭は移植後60日後に流産、2頭が分娩した。これらの分娩牛からの遺伝子導入成功の有無については未だ確認されていない。
著者
坂井 伸之
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

スポーツには様々な指導論があるが、その多くは客観的・科学的な言葉で記述されていない。本研究では、スポーツ動作全般に適用可能な剛体力学に基づく基本原理解明の理論的方法を提案し、野球の投動作及び剣道の面打ち動作について具体的に考察し、その成果をスポーツ指導及び物理教育に活用することを試みた。特に、通常はあまり意識されない重力・慣性力・筋肉の復元力・筋収縮の反作用の複合的効果の重要性を明らかにした。
著者
小谷 典子 林 寛子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近代化とともにボランタリズムが高揚し、ボランティア団体によって家族機能を補うことが期待される。子育て支援に焦点をおき、東アジア社会に特徴的な文化構造を共有する日本と台湾において、ボランティア団体の活動やボランティア意識に関する実証的調査を行った。その結果、台湾においてボランティア意識がより高く、個人の寄付や民間の基金会がボランティア活動を支援しており、東アジア社会に特徴的な親族組織や地域集団を基盤とした共同主義的ボランタリズムが存在することが明らかとなった。
著者
本田 健
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ホスホランバン(PLN)は心筋小胞体膜に局在する蛋白質で心筋収縮を負に調節している。その小胞体への局在を制御できれば、心機能の改善ひいては新たな心不全治療に繋がる。本研究ではPLNの小胞体局在にC末端のアミノ酸配列が重要である示唆を得た。また、この部位に結合して「PLNの局在を制御する蛋白質」の探索を試みると同時に、その支援技術としてPLNに特異的に結合する新しい分子ツール・アプタマーを開発した。
著者
宮原 一成
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

ゴールディングが作家活動に専念する前、教師をしていたことは周知の事実だが、その教職歴のうち約2年間がマイケル・ホール・シュタイナー・ヴァルドルフ学校で費やされたことは、従来等閑視されてきた。学友アダム・ビトルストンの誘いによりシュタイナー思想に触れ、マイケル・ホール校でも教鞭を執ったのである。近年公刊されたゴールディングの実娘ジュディ・カーヴァー氏による回想スケッチや、マイケル・ホール校の関係者に対する電子メールでの聞き取り調査により、シュタイナーに対するゴールディングの姿勢は、没頭というよりも一定の距離を置いた共感と呼ぶのがふさわしいことが見えてきた。1970年代以降は、むしろユング心理学に傾斜し、シュタイナー思想とは皮肉な距離が広がっていく。だが、共感的にしろ批判的にしろ、ゴールディング作品、特に前半期の作品にはシュタイナー思想の影らしきものが読みとれる。『蝿の王』の少年たちが年齢層によって行動様式に違いを見せる点は、人間の成長発達段階を独自に分類したシュタイナー教育論によって、うまく説明がつけられる。同作品で印象的な4つの色彩、緑・ピンク・白・黒は、シュタイナー色彩論の基底をなす四色である。サイモンをキリスト的と読む従来の固定的解釈も、シュタイナーのキリスト論を援用することによってさらに可能性が広がる。『後継者たち』の登場人物の名にはオイリュトミー的要素が感得できる。『ピンチャー・マーティン』は、シュタイナーの主著の一つ『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』を皮肉に、悲観的に辿った作品と読むことが可能である--など、本研究は新解釈の可能性を提示できた。
著者
木曽 康郎 森本 将弘 岩田 祐之 山本 芳美 奥田 優 本道 栄一 前田 健
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、受胎産物と子宮内膜との相互作用の解析を行い、(i)免疫担当細胞の特異性、(ii)子宮内サイトカインネットワーク、(iii)MHC発現の特殊性、(iv)補体調節因子、等の4点の変化を中心に複雑な母子境界領域の免疫応答機構と胎盤特異的情報との関連を総括的に捉え、胎盤の免疫抑制機構への環境因子の毒性的影響を明らかにし、適切なモデル動物を見いだすことであった。目的達成のため、生殖能力に多少なりとも問題が見られた多種多様なマウスモデルを使用した。これらと内分泌撹乱物質により生殖能力の低下(流産を含む)を見せたマウスと比較検討の結果、胎盤形成期に流産が誘起されたものは、両者の間で驚くべき相似性を見せた。すなわち、胎盤迷路部の発達不全、脱落膜の異常、ラセン動脈の異常、間膜腺の発達不全である。特に、迷路部の非化膿性炎症(胎子間葉組織肥大)、栄養膜巨細胞の分化異常、脱落膜細胞のアポトーシス不全、ラセン動脈血管内皮および中膜の肥厚、子宮NK細胞の異常、であった。これらは内分泌撹乱物質のエストロゲン様活性が局所的に、あるいは限局的に働いた結果と考えられた。一方、サイトカインや成長因子およびそれらのmRNA発現は、むしろ内分泌撹乱物質により生殖能力の低下(流産を含む)を見せたマウスで上昇するなど、まったく異なった。これらは内分泌撹乱物質のエストロゲン様活性が局所的に、あるいは限局的に働いた結果、母子境界領域で重要な免疫応答を担当する細胞(特に子宮NK細胞)にサブセットの変化を含めて、質的変化が誘導されたことを示唆した。今後の課題として、これまでの成果を基に絞り込んだ各因子を、胎盤および子宮内膜の各構成細胞株から作成した再構築組織様塊(オルガノイド)に導入し、これに生理活性を与え、妊娠現象を母子間免疫と胎盤特異情報との相互関連からブレークスルーさせたい。
著者
定光 大海 中木村 和彦
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

電気的心室細動と高カリウムによる心停止モデルを用いて、体外循環による蘇生法の有効性を検討した。【方法】実験動物にはネコを用い、電気的心室細動群と高カリウム群の2群に分けて、次のように心停止とした。[電気的心室細動群]大腿静脈より右房まで挿入したワイヤ-と前胸部に刺入した鋼線との間に交流を通じて心室細動とした。[高カリウム群]中心静脈より塩化カリウム1ー3Emqを投与して心停止とした。両群とも心停止中に大腿動静脈に体外循環用の送脱血管を挿入した。[心肺蘇生法]両群とも12分間の心停止後、心マッサ-ジと薬剤投与(ノルアドレナリン、リドカイン、重炭酸ナトリウム)を行い、心マッサ-ジ開始1.5分後より1分間隔で自己心拍が再開するまで電気的除細動を繰り返した。心マッサ-ジ開始後4分以内に自己心拍が再開しない場合には、申請したチュ-ブポンプ及び体外循環回路を用いて、大腿静脈から脱血し、大腿動脈より送血して体外循環を行った。両群とも蘇生後4日間経時的に神経学的スコア-を評価した。【結果】電気的心室細動群では、全例体外循環を必要とせず、心マッサ-ジ開始4分以内に自己心拍が再開した。一方、高カリウム群では約半数が4分以内に蘇生できず、体外循環を行った。体外循環を行ったネコは体外循環開始5ー20分以内に自己心拍が再開した。電気的心室細動群の90%は蘇生後4日間生存し、4日目の神経学的スコア-(0=正常、100=脳死)は大半が20ー40であった。高カリウム群では、体外循環使用と非使用との間で生存率と神経学的所見に有意差はなかった。また、電気的心室細動群の方が高カリウム群よりも生存率、神経学的所見ともに良好であった。【結語】体外循環を用いた蘇生法は、高カリウムによる心停止の心蘇生に対しては有効と思われるが、脳蘇生の効果は明らかでなかった。
著者
日下部 健 岡田 利也 柴田 雅朗 武下 愛
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

Adipsin/ASP経路は補体活性化と、血中遊離脂肪酸の細胞内取り込みを交差させる複合的な生理システムである。流産の発症要因に補体系が関係することから、本経路の生殖学的な意義について検討した。流産を起こした胎盤では脂質成分の有意な上昇と血管への脂肪滴の蓄積が認められた。妊娠マウスへadipsinタンパクを投与すると流産率が増加し、胎盤に変性所見が認められた。投与によって脂質代謝関連因子と妊娠に重要なサイトカインの変動が認められた。妊娠期の主なadipsin産生部位は乳腺であることが判明し、本経路が過剰に活性化した場合、胎盤局所の傷害作用と全身性の代謝変動により流産が誘導される可能性を示した。
著者
池田 恵子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日英同盟期の融合文化規範としてのスポーツに着目した。質実剛健、良妻賢母は日本における中等教育機関の教育理念に相当したが、それらは英国中流階級のエリート教育において理想とされた教育理念を媒介し、スポーツ教育と帝国主義との関わりを経由している。第二次世界大戦の勃発以前には、スポーツ教育を通じて英国規範を活用したにもかかわらず、ファシズム期には国粋主義的文化規範への昇華を意図し、国防体育が実践された。いずれも、近代国民国家形成期に日本的ナショナリズムを構築する上で、巧みに利用された外国の文化システムの援用であった。これらを複合的に融合することで日本独自のスポーツ的風土が醸成された経緯を説明している。
著者
奥津 聖
出版者
山口大学
雑誌
山口大学哲学研究 (ISSN:0919357X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.27-52, 2002

この論文は、山口大学哲学研究第10巻p.19-44の奥津聖『言語の構造としての視覚藝術』に依拠している。ただその中から徐冰の〈天書〉、〈新英字書道〉シリーズ、〈身外身〉の三作品に焦点をあて、それらの関係性に新たな考察を加えている。また前回の考察において保留されていた「四つの要素の一種の混成」という問題について更なる検討が加えられた。 この英文は、「2002亜細亜藝術學會 韓國大会會」(釜山廣域市2002年9月15日-18日)での発表のための草稿である。 日本文は、前回と重複するところもあるが、進展した考察もかなりあると思うので参考として付すことにする。 図版は重複を避けたので、前著の図版も参照されたい。その多くを徐冰のホームページ、 Xu Bing's Homepage: http://www.xubing.com/ http://virtualchina.org/archive/leisure/art/xubing.html http://www.chinese-art.com/volume1issue4/xubing.htm等に依拠している。 現在、拡大図版は入手不可能になっているものも多い。