著者
平林 晃 PIER-LUIGI Dragotti
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,スパース信号に対する複数チャンネル標本化と,スパースサンプリングに基づく画像特徴量抽出に関する研究に取り組んだ.前者は主に初年度の課題であり,信号の事前分布とl1ノルム最小化原理をそれぞれ利用した2種類の信号再構成アルゴリズムを提案した.また,次年度は主に後者に取り組み,画像に含まれる直線エッジの完全抽出アルゴリズムを開発した.そして,提案手法の雑音耐性が従来手法より約10dB優れていることを計算機実験により示した.
著者
石井 由理 塩原 麻里
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

文化のグローバル化と混合における学校教育の役割を解明すべく、日本とタイの政策比較と質問紙調査を行った。日本の2世代間、日・タイ大学生間の比較から、明治以来の学校教育を通した音楽文化の近代化は、日本の全体の音楽文化に唱歌・童謡として根付いたが、個人の領域では西洋ポップスの影響が大きいこと。政府が積極的に介入しなかったタイでは、国、個人のいずれにおいても西洋ポップスの影響が大きいことが明らかとなった。
著者
辻 正二 中村 彰治 原田 規章 坪郷 英彦 松野 浩嗣 石田 成則 高野 和良 速水 聖子 鍋山 祥子 林 寛子 高橋 征仁
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現在の高度産業社会には、これまで人類の歴史が経験したことのない新しい時間問題が生まれている。これまで人類は、進化の中で身につけた生命的時間と人間が自ら形成した社会的時間をうまく調和させてきたが、今日のグローバル化と情報通信技術の進展によって生じたハイスピード化社会は、社会的時間を大きく変化させて、人類の時間構造に歪みを増幅させて、生命的時間に慢性的時差ボケを生みつつある。今回の時間意識の調査研究ではハイスピード化によって社会的時間の変化が生じており、これが生命的時間との間でズレを生んでいることがある程度明らかになった。調査データの分析からは、ハイスピード化が生命的時間に負の影響をもたらし、青年や高齢者に身体の不調(疲労やイライラ度や不眠や生理不順など)や社会病理の原因を生んでいることが明らかになった。
著者
藤田 基
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、我々が開発した生体内活性酸素種測定システムを用いて、ラット熱中症モデルにおけるスーパーオキシド(O2-・)の動態を測定し、組織障害の程度と産生されたO2-・量との関連を解明することにより、熱中症におけるO2-・傷害の病態解明と治療指標としてのO2-・の意義を検討することである。本年度は、ラット熱中症モデルを作成・確立し、このモデルの生体内で混合静脈血中O2-・電流値の測定を行った。中枢温が38度を越えたあたりからO2-・電流値の上昇を認め、熱中症発症まで上昇し続けた。O2-・電流値の積分値(Q値)は肝臓および血漿中のマロン酸アルデヒド(MDA;脂質過酸化物質)、HMGB1(急性期炎症反の指標)、ICAM-1(血管内皮傷害の指標)、ALT/AST(肝障害の指標)と有意な相関を認めた。また、熱中症発症後に輸液投与、中等度低体温療法を含む体温管理を行うことにより、混合静脈血中O2-・値、肝臓および血漿中のMDA、HMGB1、ICAM-1、ALT/ASTの改善を認めた。以上の結果より、熱中症の病態において混合静脈血中で発生した過剰なO2-・は、全身および肝織の酸化ストレス、血管内皮細胞傷害、急性期炎症反応に関連しており、中等度低体温療法はそれらの抑制に効果的であることが示された。重症熱中症の臨床において、明確な治療指標は確立されていないが、本研究の結果、熱中症において混合静脈血中O2-・を測定することにより組織障害および全身炎症を予想することができ、熱中症の治療の指標となることが示唆された。また、熱中症における中等度低体温療法の有用性が示唆された。
著者
岡村 吉永 森岡 弘
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

測定的な手法を用いた、IT活用型の学習指導方法について、その効果の検証ならびに教材の開発等を行った。のこぎりびき作業の学習に関する研究では、学習者の技能を類型化し、これに基づく指導方法の提案とその効果を検証する授業を行い、学習改善効果を認めることができた。また、作業技能との関わりが深い前腕部の技能評価については、被験者の技能レベルを反映すると考えらる有効な資料を得ることができた。さらに、赤外線や無線通信を使った装置の利便化や教材への応用も検討し、実用化に近づけることができた。
著者
鍋山 祥子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年は、「遠距離介護とコミュニティの関連」を明らかにする研究計画の最終年次にあたり、特に山口市内に居住し、別居子を持つ高齢者に対する聞き取り調査をおこなった。そのなかから、地域の人的資源(近隣住民とのつながり)に生きがいを見いだしながらも、別居家族(特に子ども)に精神的な拠り所を求めている老親の姿が明らかになった。これまで、遠距離介護に関するインタビュー調査の傾向として、遠距離介護をおこなっている別居子に対する調査が中心であった。そこで、本研究において、別居子を持ちながら、地域で生活を続ける高齢者へのインタビュー調査が実施できたことは、遠距離介護を多角的に考えるうえで、非常に意義のあるものとなった。そして、初年度の別居子に対する質問紙調査と、次年度の遠距離介護を実践している別居子へのインタビュー調査、さらに今年度の老親へのインタビュー調査の結果から、老親の住む地域が遠距離介護支援のためにできることと、望ましいサービス体制、並びに地域が遠距離介護支援に取り組むことのメリットなどを明らかにした。本研究によって達成した、老親の住む地域における遠距離介護支援の望ましいあり方とその必要性についての認識を基盤として、今後は、別居子のワーク・ライフ・バランスと遠距離介護との関係に焦点をあてる。そして、地域における遠距離介護支援が別居子のワーク・ライフ・バランスにどう影響するのかという分析をおこない、超高齢社会における労働政策と地域福祉政策を考察していきたい。
著者
小原 豊志
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

今年度は、南北戦争以降の黒人選挙権問題の展開を検討した。特に報告者が注目したのは、南北戦争直後に成立した合衆国憲法修正第15条である。なぜなら本条項は「黒人選挙権保障条項」として知られるように選挙権における人種差別を禁止したにもかかわらず、結局のところ19世紀末の南部に展開した黒人選挙権剥奪運動を阻止しえなかったからである。そこで報告者は、本条項の成立過程を追跡することにより、同条項の意義を再検討できると考えた。考察から明らかになったのは、合衆国の国制的特質および当時の黒人選挙権観が本条項の成立に大きな制約を与えたということである。すなわち前者についていえば、そもそも建国期から選挙権授権権限は州に帰属していたのであり、連邦政府が選挙権問題に干渉する余地はなかったのである。こうした「選挙権におけるフェデラリズム体制」が既に確立していたために、連邦が直接黒人に選挙権を付与することは国制上不可能であったわけである。さらに後者についていえば、世論の反黒人選挙権感情は戦前から一貫して強固であり、奴隷制の存在しない北部においても大半の州が黒人選挙権を拒絶していた。しかしながら、憲法修正条項が成立するためには四分の三以上の州で承認を得る必要があったため、黒人に対象を限定した選挙権保障条項案は各州から否決されるおそれがあった。以上の国制的制約および世論的背景のために、合衆国憲法修正第15条は選挙権授権にあたって各州に人種資格の設定のみを禁止するという内容にならざるをえなかったといえる。以上のことから、合衆国憲法修正第15条は消極的かつ間接的な「黒人選挙権保障条項」であったといえ、本条項においても「選挙権のフェデラリズム体制」を根本的に変革し得なかったことが後の南部黒人選挙権剥奪運動を招来する一因であったといえる。
著者
山中 明
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1,ナミアゲハ休眠蛹に特有なオレンジ色蛹の発現調節に関わる基礎的な内分泌学知見を得るために、オレンジ色体色発現に関わる環境条件を検討し、オレンジ蛹が90%以上出現する環境要因を作り上げることに成功した。その環境条件をもとに、短日飼育個体の前蛹期を6段階に分け、胸腹部間での結紮実験により前蛹期の後半に頭胸部より分泌されるオレンジ色蛹誘導化因子の存在が示唆された。次に、オレンジ色蛹誘導化因子の生物検定方法を確立した。また、オレンジ色蛹誘導化因子の分泌時期や存在部位を明らかにした。続いて、ナミアゲハオレンジ色蛹誘導化因子の精製手順の検討および精製を行い、オレンジ色蛹誘導化因子を精製し、N末端アミノ酸配列決定をした(Yamanaka et al.,未発表)。2,ナミアゲハ夏型ホルモンの精製のため、ナミアゲハ蛹の脳を集め、粗抽出液を調整したのち、ゲル濾過・逆相液体クロマトグラフィーにより部分精製を進めた。現段階では、カイコガの夏型ホルモン活性物質と同じ挙動を示すことから、カイコガ成虫の脳を用いて、精製を進めている。キタテハを用いた生物検定では、ほぼ最終精製標品が得られ、N-末端アミノ酸シークエンス分析を試みた。N末端アミノ酸10残基を決定した(Inoue et al.,未発表)。3,ベニシジミでは蛹の体色と羽化する成虫の翅の色彩との問に密接な関係があることを見出し、蛹体色の決定と夏型ホルモンの関係について検討した。その結果、ベニシジミでは蛹の体色は、日長と温度によって調節されていることを明らかにした。
著者
笠松 儀三郎 小西 竹造
出版者
山口大学
雑誌
山口大學工學部學報
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.52-56, 1951
著者
林 徳治 黒川 マキ 井上 史子
出版者
山口大学
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.133-140, 2003-08-31

本稿は、パキスタン国立アラマイクバル公開大学(Allama Iqbal Open University, Islamabad : 以下 【AIOU】と略す)における遠隔教育のためのマルチメディア教材開発プロジェクトの活動報告について論述した。筆者のうち林は、国際協力事業団(Japan International Cooperation Agency : JICA)の短期派遣専門家として2003年3月18日~同年5月3日の間、AIOUにおけるマルチメディア教材開発の現状調査および任地のカウンターパートであるサイエンス学部長の協力によりスタッフを対象としたマルチメディア教材開発能力の向上を目的としたSD(staff development)支援を実施した。黒川、井上は、SD研修のための教材作成補助として協力した。 任地でのインタビュー調査の結果、マルチメディア教材開発における大学スタッフの習熟度は、デザイン、 素材編集(動画、ナレーション、静止画、コースウェア)、技術(知識・スキル)の面で概ね良好であった。しかし、遠隔によるCD教材利用の学習と対面授業による学習との教育効果の比較調査、マルチメディアCD教材利用に対する学習者の意欲などを情意関心面を調査する内容・方法などが確立されていなかった。そこで筆者(林)は、マルチメディア教材の開発過程において設計・実施・評価および改善の標準モデルを考察した。特に不十分であった評価の点を重視し、SD用教材や資料を用いて研修を実施した。 なお本件に関しては、日本教育情報学会第19回年会(2003,8)にて発表した。
著者
坪郷 英彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中国5県で活躍する草葺き屋根職人の所在調査と、地域ごとの屋根型、技術、道具の違いを調査した。その結果、環境と人の暮らしの立場から山地と平野部の屋根の屋根勾配の違い、千木の有無の違いを明らかにした。近代産業と在来技術の関わりの視点から芸州流と呼ばれる広島県の職人、出雲の職人について、技術の特徴と職人像を明らかにした。
著者
松下 一信 右田 たい子 三芳 秀人 山田 守 外山 博英
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするキノプロテイン脱水素酵素である大腸菌のグルコース脱水素酵素(GDH)および酢酸菌やPseudomonasに存在する異なる2種類のアルコール脱水素酵素(ADH)の構造と機能を、生化学、有機化学、遺伝子工学及びX線構造解析の手法を総合的に駆使して解明することを目的とし、3年間の研究によって以下に示す研究成果を得た。1)大腸菌GDHの構造機能解析:GDHの変異体ランダム変異法と部位特異的変異法を組み合わせて調製し、細胞膜から精製したそれら変異体のキネティクス解析及び酸化還元スペクトル分析を基に、PQQの周辺で酸化反応に関与する部位と分子内電子移動反応に関与する部位について解析した。その結果とGDHモデル構造解析から、His-262、His775、Trp-404、Asp466、Asp730、さらにLys-493の機能を明かにした。2)酢酸菌ADH及び大腸菌GDHのユビキノン反応部位の解析:酢酸菌ADHにはユビキノン還元反応とは別にユビキノールを酸化する活性が存在することを発見し、その2つの部位が異なる領域に存在し、異なる立体構造をもつことを、数多くの合成フェノール系およびカプサイシン系ユビキノン阻害剤の阻害スペクトラムとユビキノン類似体の基質特異性の比較から明にした。GDHのユビキノン結合部位が膜の比較的表面に存在することも明かとなった。3)酢酸菌ADH及びPseudomonas ADHのX線構造解析:Type II ADH(ADH IIB)の結晶化とそれに続くx線結晶構造解析を行い、その構造を1.9Aレベルで解読すること成功した。また、酢酸菌の膜結合型ADHに関しては、その結晶化には成功し、部分的な解像は得られているものの、最終的な構造を得るにいたっていない。
著者
村上 ひとみ 瀧本 浩一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

地震時においては家屋の倒壊に至らない場合でも、住宅室内の家具什器による転倒・散乱被害が甚だしく、居住者が死傷したり、室内で出火延焼したり、避難ルートを失う危険性が高まる。室内被災の背景には、居住空間内の家財が増加・大型化していること、収納空間の不足と不適切な配置、内壁や家具の設計に固定への配慮が欠けていることなどの問題点が考えられる。このような実態を改善するには、居住者自身が室内空間被害の可能性と人的被害の危険度を客観的に認識し、家具の配置、住まい方を変えることによる危険度低減効果をシュミレーションにより視覚的かつ、定量的に認識できるような自己診断システムが望まれる。本研究では、1995年阪神・淡路大震災における震度と建物被害・室内被害に関するアンケート資料を分析して、震度を横軸とする家具の被害関数を導出した。具体的には住宅内で一般的な5種類の家具の4つの被害レベル(物が落ちる、転倒など)について正規分布関数を仮定し、数量化I類を用いて関数系のパラメータを求めた。上記の関数を基に室内危険度評価手法を提案した。さらにパソコン用CADのベースとプログラム環境を組み合わせ、居住空間の間取りを作成し、柱状体としての家具什器を入力・配置し、上記家具被害関数を用いてその環境における地震時被災危険度を推定するソフトウェアを開発した。1993年釧路沖地震で得られている室内被害調査結果を利用して、本ソフトウェアで推定される危険度と実被害を比較、推定の精度を検証した。ソフトウェアは推定結果を具体的かつ視覚的にわかりやすく表示し、震度の上昇に伴って増大する危険性を表示するなどの機能を有する診断用ソフトウェアとなっている。これによりインターアクティブなCAD環境を利用した住宅室内環境の地震危険度自己診断手法を提案するに至った。
著者
藤原 輝男 日下 達朗 翁長 謙良 南 信弘 細山田 健三 今尾 昭夫
出版者
山口大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1986

水食による農地災害防止の基礎的問題としての降雨特性と土壌特性との関連における土壌侵食の問題解明についておよそ次のような成果を得た。(1)南・小椋は25種の土壌について自然降雨による最大一時間降雨強度と土壌流亡量を一降雨毎に測定した結果、許容流亡土量を0.5t/haとすれば限界降雨強度は5〜30mm/hとなる結果を得た。(2)細山田は表土が黒ボクの土壌流亡の実測結果から、土壌因子Kの値が約0.04となり、また、たてうね,よこうねの土壌流亡量の比は中程度の侵食量の場合、前者が30〜40倍になることを求めた。(3)田熊はマサ土と赤色土の侵食性は、それぞれ220μmの粒径分と集合体の安定度が高い相関を示し、その両土の水食後の粒子の210μmの粒径分が対照的であることを明らかにした。(4)藤原・日下はこれまでに明らかにしてきた表面流と土壌侵食量の基礎的な関係に侵食要因を総合的な数値で表わす侵食係数を取り入れて展開し、降雨量から直接予測できる実用的な土壌流亡量推算式を提案した。(5)福桜は雨滴侵食に対する土壌面タン水の影響を明らかにするためにナイロン球を用いた実験を行なった結果、水滴の場合と明らかに異なって水深3mm程度のタン水時における衝撃のピークは認められなかった。(6)深田は水深がある場合に落下水滴による底面圧力を測定し、データを無次元量でまとめ、底面圧力と侵食量は密接に係わっていることを示唆した。(7)翁長は侵食試験区や室内実験の観測をもとに侵食に関与する傾斜要因を解明した結果、【E_I】値186以下の降雨条件下で侵食が極めて少くなる限界勾配(約1.5度)があることを実証した。また今尾は被覆による防止効果の発現は単作栽培に比較して早朝に発生すること及び帯状幅の長さには限界のあることなどを明らかにした。
著者
鈴木 賢士
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

梅雨や台風によりもたらされる集中豪雨は災害の防止・軽減という点からその予測は重要である。しかし、集中豪雨は短時間で狭い領域に大量の雨をもたらすため既存の観測網では捉えることが難しく、そのためその雲内での水の集中化メカニズムの理解は重要な課題となったままである。本研究では狭い領域をできるだけ密な地上観測網で捉えることが出来るようになることを目指して安価でかつ簡易的な観測機器の開発を目的に簡易雨滴粒径分析計の開発を行い、それを用いて観測研究を行った。今年度は昨年度開発・製作した簡易雨滴計のプロトタイプを小型・軽量化し、さらに将来の地上気象観測網の構築を念頭に地上気象観測ステーションに組み込むことを試みた。既存の気象観測ステーションと組み合わせることにより雨滴粒径分布のほか気温、湿度、気圧、風向風速、雨量といった一般気象データも同時に観測ができる。また、この雨量計からの電気信号を受けて雨滴粒径分析計の計測を開始・終了できるようにしたことで観測の無人化が可能になった。このシステムにより得られるデータは一般気象データに関してはデータロガーにより10分ごとの測定で約2週間の連続観測が可能である。雨滴粒径データは改良型ではデータの記録方法を2通りにし、1つは昨年度と同様のビデオによる映像の録画、もう1つは赤外線センサーを雨滴が横切る際の電気信号の変化を電圧としてデータロガーに記録する方法である。前者は解析に時間がかかるが実際の粒子を見ることが出来、後者はデータを簡単に処理できるという長所をもっておりこれらの組み合わせにより効率よい観測・解析が出来るようになった。将来的にはこのシステムを狭い領域で多地点に設置することで、集中豪雨における雨滴形成(降雨形成)の平面的な観測が可能になる。さらにレーダー等のリモートセンシングと組み合わせることで立体的な構造の理解に役立つであろうと期待される。本研究で開発した簡易雨滴粒径分析計を用いて昨年秋に山口を直撃した台風18号からの降水を観測した。また、鳥取大学乾燥地研究センターにおいて冬季日本海側に発達する雪雲からの降水、さらに山口大学において梅雨前線に伴う降水システムからの降水の観測を行った。台風18号に関する成果については第13回国際雲・降水学会において発表された。これらの観測はそれぞれ雲形成メカニズムの異なる雲からの降水の観測で、これらの観測結果を比較すると、一般に雨滴粒径分布はN=N_0exp(-λD)で表されるが、台風の場合は大量の雨をもたらす割に分布の傾きλがそれほど変化しないことがわかり、前線や低気圧に伴う降水とは異なる性質を持っていることが明らかになった。レーダーデータ等との関連を詳しく調べる必要があるが、非常に興味深い結果であり、本研究で開発された簡易雨滴粒径分析計が十分に利用可能であることが確かめられた。
著者
植村 一広
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ロジウム挿入型白金一次元鎖(-Pt-Rh-Pt4-Rh-Pt-Cl-)の結晶構造をもとに, -Pt-M-Pt4-M-Pt-Cl-(M=異種金属)の繰り返し単位を有する,新規異種金属挿入型白金一次元鎖の合成検討を行った.検討の結果,Pt-Rh部位の補助配位子と架橋配位子を替えた新規ロジウム挿入型白金一次元鎖とロジウム挿入型白金八核錯体の合成,そして、その単結晶X線構造解析に成功した.また,興味深い電荷分布を持つ,新しい白金-異種金属多核錯体の合成に成功した.
著者
三浦 房紀
出版者
山口大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

札幌市、仙台市、新潟市、福井市、千葉市、長野市、静岡市、高知市の道立、県立図書館を訪れ、戦後起った地震(1968年十勝沖地震、1982年浦河地震、1978年宮城県沖地震、1964年新潟地震、1948年福井地震、1987年千葉県東方沖地震、1984年長野県西部地震、1978年伊豆大島近海地震、1946年南海地震)の地震体験記を収集した。地震体験記には子供の作本、教師の報告、行政の対応記録、被害報告などがあるが、これらを地震時の心理・行動パタ-ン、情報の流れ、被害のパタ-ン、必要とされた情報・物質、教訓と対策等に分類し、それぞれキ-ワ-ドを作成してデ-タベ-スを作成した。今年度は時間の関係で市販のソフトを用いたが、将来的には独自の検索ソフトを開発する方向で検討を進めている。デ-タベ-スの作成と平行して、学校の立地条件、規模、校舎の形態、地震活動度などを考慮して、地震発生という緊急時に最も適切と考えられる対応を指示するためのソフトウェアの開発を行った。このソフトは日常の対策と心構えも含め、地震発生から無事生徒・児童を保護者へ手渡すまでの過程を時系列にフォロ-するものであり、それぞれの局面で対応できるものとなっている。地震発生後は停電になる可能性が高いので、バッテリ-で作動するラップトップ型のパ-ソナルコンピュ-タを使うことを前提として開発を行った。本研究で開発したデ-タベ-スはさらに深く地震防災について学習したいと思う者への便宜を図るものであり、また対応指針ソフトは緊急時に実際の活用を目的としたものである。両者を有効に活用することにより、格段の防災力の向上が期待できるものと思われる。
著者
瀬山 厚司 濱野 公一
出版者
山口大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2001

1.目的 骨格筋への骨髄細胞投与により誘発された新生血管により、骨格筋の生理的機能が改善されるか否かを知ることを目的とした。2.方法 ラット下肢虚血モデルを用いて、骨髄細胞注入による骨格筋血管新生を誘導した。群分けは、Sham群、Ischema群(虚血肢を作成したのみ)、PBS群(骨髄細胞の浮遊液であるPBSのみを注入)、BMI群(骨髄細胞を注入)の4群(各群n=5)とした。骨髄細胞は赤血球を除去した後、1×10^7/10μlを腓腹筋に6ヵ所経皮的に注入した。血管新生の程度は血管造影、alkaline phosphatase染色による毛細血管数、大腿静脈のarteriovenous oxygen difference(AVDO^2)にて比較した。また新生血管の生理的有用性を評価するために、20m/min,10%勾配のトレッドミル上でラットを走行させ、その走行時間を各群で比較した。3.結果 下肢血管造影では、BMI群において他の3群と比較して良好な側副血行路の発達を認めた。大腿内転筋及び腓腹筋における単位筋当たりの血管数は、BMI群において他の3群と比較して有意に高値であった(P<0.01)。モデル作成2週後のAVDO^2は、Ischema群においてSham群、BMI群と比較して有意に高値であった(P<0.01)。ラットのトレッドミル走行時間は、Sham群ではモデル作成1,2,4週後のいずれにおいても、全てのラットが5時間完走した。モデル作成2,4週後において、BMI群はIschema群、PBS群と比較して有意に長時間走行した(P<0.01)。4結論 骨髄細胞の注入により虚血肢に誘導された新生血管は、低下した運動能の回復に寄与すると考えられた。