- 著者
-
小林 誠
岸 博子
川道 穂津美
加治屋 勝子
- 出版者
- 山口大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
血管病は合計すると我国死因の第二位であり、また、突然死の主要な原因となる難病である。申請者らは、血管病の主因となる血管異常収縮の原因分子としてスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を発見した。本研究では、SPCによって引き起こされる血管の異常収縮に関わる新規の原因シグナル分子を同定し、その制御機構について明らかにすることを目的とした。その結果、以下の事を明らかにした。1.ヒト血管においては,SPCによる血管異常収縮は,コレステロール依存性であることが判明した。さらに,コレステロールが蓄積する膜ラフトが重要である事がわかった。この研究成果は,Circulation Research誌の編集者から,コレステロールと血管異常収縮の直接の関連性を初めて証明した報告として,Editorial Sectionで特別に紹介され,絶賛された。 2.膜ラフトに局在するFynチロシンキナーゼの重要性について検討した。スキンド血管にFynのリコンビナント蛋白(ワイルド・タイプ、ドミナント・アクティブ体,ドミナント・ネガティブ体)を導入する事により,Fynが,SPCによる血管異常収縮において重要な役割を果たしている事が分かった。3.従来のCa2+による収縮現象のみならず,Rhoキナーゼを介したCa2+によらない収縮現象をin vitro motility assay 系によって証明する事ができた。4.膜ラフトモデル膜として,ハイブリッドリポソームを作成することに成功した。これを応用して,SPC,EPAが,濃度依存性にラフトモデル膜に結合する事を明らかにした。5.ヒト血管から高純度のラフト分画を精製することに成功した。さらに機能的プロテオミクスによりヒト血管の膜ラフトに局在する新規蛋白を複数個同定した。6.以上の異常収縮のシグナル伝達経路を阻止できる新規の候補分子を複数個同定した。