著者
永井 涼子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、場面や状況がある程度固定されている医療系談話を対象に、談話の持つ定型表現について明らかにする。その上で談話における定型表現とは何かについて考察を行い、専門日本語教育に応用する形について検討する。具体的には、各談話の定型表現をもとに「定型談話」を作成する。そして「定型談話」と実際の談話を比較し、それが専門日本語教育に応用できるのかを検証する。
著者
秋 利彦
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

心筋虚血による細胞傷害・細胞死のメカニズムの解明を目的として、特に解糖系(グルコース代謝)の細胞死への関与を中心に研究を行った。ラット心筋由来細胞株H9c2細胞を用い虚血のモデルとして低酸素ストレスを細胞に負荷したところグルコース存在下の低酸素においては、代謝性アシドーシスに起因するネクローシスが起こり、またグルコース代謝を促進する作用を持つphosphatidylinositol 3-kinase(PI 3-kinase)がネクローシスを促進することを見いだした。この研究は強力な生存促進因子と言われているPI 3-kinaseが条件によっては細胞死を促進することもあるということを初めて示したものである。又、アシドーシスがNa^+/H^+交換体,Na^+/Ca^<2+>交換体を通じたCa^<2+>流入を介してCa^<2+>依存性プロテアーゼであるカルパイン活性化を引き起こし、細胞膜の障害を起こすことも明らかにした。アシドーシス及びCa^<2+>流入はまた、H^+ATPase、Ca^<2+>ATPaseによるATP消費を促しATP depletionによるネクローシスを助長していることもわかった。更に、グルコース非存在下の低酸素ではアポトーシスになることがわかった。次に解糖系酵素グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の低酸素ストレスにおける動態を調べたところ発現が上昇していることがわかった。グルコース存在下の低酸素による細胞死におけるGAPDHの発現亢進は、従来いわれていたGAPDHのアポトーシス促進因子としての役割を反映しているというより、低酸素下の解糖系の亢進を反映しているものであると思われる。
著者
比嘉 充 遠藤 宣隆 垣花 百合子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

REDシステムを構成するモノリシック発電セル用の新規イオン交換膜はポリビニルアルコール(PVA)系ブロック共重合体から作製し、これらの膜は膜抵抗、イオン選択性において市販膜より優れた基礎性能を示した。また市販イオン交換膜を使用した大型RED発電装置は模擬海水として0.5MNaCl、模擬河川水として0.02MNaClを使用した場合、最大出力17.8W、出力密度0.45 W/m2を示した。この時の海水および淡水の供給圧と溶液流量から算出したポンプ電力は2.76 Wとなり、これより、15.1 Wの実効出力が得られた。この結果よりRED発電システムとしては将来のエネルギー源として期待できる。
著者
横川 俊哉 上山 智 真田 篤志
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、従来実現されていないテラヘルツ帯の電磁波の発生を可能とする真空チャンネルトランジスタの開発を目的とする。テラヘルツ波は高速無線通信やイメージング、医療の分析など多くの応用が期待される。しかし数THzの高出力電磁波発生には課題が多い。窒化物半導体であるAlGaNは負の電子親和力を有しており、低駆動電圧が期待される。AlGaN半導体を用いた真空チャンネルトランジスタを新たに提案した。AlGaN半導体の基礎物性や電子放出機構を系統的に調べ、そのデータベースよるデバイス最適構造設計を行うことで、真空チャンネルトランジスタを実現し、低電圧駆動(低消費電力)を実証することが計画であった。今年度の研究実績としてAlGaN半導体を用いた真空チャンネルトランジスタの低電圧駆動でのデバイス動作を確認した。AlGaN系半導体の負の電子親和力を示すバンド構造、電子放出機構や基礎物性を系統的な実験によって調べ、デバイス設計のためのパラメータが得られたため、このデータベースを用いて真空チャンネルトランジスタのデバイス最適構造設計に取り組んだ。エミッタ部がAlGaN半導体で形成されたデバイスとなる。MOCVD法によりGaN基板上にAlGaN膜の成長を行った。そしてエミッターに使用可能な高品質のAlGaN結晶が実現できた。その後、AlGaN膜をドライエッチング加工し、エミッタ―とコレクターを対面するように形成した。その後、AlGaN膜上にゲート絶縁膜とゲート電極を形成した。これによりAlGaNエミッタ―を用いた真空チャンネルトランジスタを形成し、低駆動電圧を実現した。またAlGaNに形成したカーボンナノチューブ電極の効果も確認した。さらにデバイスシミュレーションによるプロセス設計ならびに最適構造設計も行った。
著者
清水 則夫
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

バ-キットリンバ腫由来Akata細胞は、細胞表面に発現する抗体を抗Ig抗体でクロスリンクする(抗体処理)と潜伏EBウイルスの活性化が起き、ウイルス産生が誘導される。この抗体処理によるシグナル伝達の遮断に働いているEBV抗原の同定をするために、亜鉛イオンにより発現誘導可能なメタロチオネインプロモーターの下流へ、潜伏感染状態で発現する9種類のウイルス抗原の遺伝子をそれぞれ挿入した発現プラスミドを作成した。得られたそれぞれのプラスミドと薬剤抵抗性プラスミドをAkata細胞へ同時に導入し、薬剤選択により両方のプラスミドDNAを保持するクローンを選択した。さらに得られたクローンから、亜鉛処理によりウイルス抗原の発現誘導が起こる細胞クローンを蛍光抗体法により選択した。得られた細胞クローンを12時間亜鉛処理してウイルス抗原の発現を誘導し、亜鉛を除いた後、抗Ig抗体を加えてさらに12時間培養し、どのウイルス抗原誘導でウイルス産生が起こらなくなるのかを蛍光抗体法で調べた。その結果、LMP1を発現している細胞クローンでは、潜伏感染しているEBウイルスの活性化が抑制されることが明らかとなった。この結果は、従来から我々が得ていた結果と矛盾しない。しかし、用いた細胞クローンでは、亜鉛処理によりLMP1の発現は、通常のEBウイルス陽性細胞で発現する量より数倍程度多く発現していた。LMP1は大量に発現すると細胞毒性があることが知られているため、得られた結果がLMP1による細胞毒性を反映していることを否定できない。現在、LMP1の発現量を通常のEBウイルス陽性細胞と同等なレベルにまで落とすための亜鉛処理の条件を検討中である。
著者
西垣 一男 三宅 在子 鳩谷 晋吾 久末 正晴
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

内在性レトロウイルス(ERV)は宿主ゲノムに残された古代レトロウイルス感染の痕跡である。ERVの存在が宿主への危害となる事例や、ERVが宿主進化の原動力となっている事例について発見した。また、新規猫白血病ウイルス(FeLV)の受容体を発見した。「1」FeLVのGag遺伝子領域に非相同配列が組み込まれている新規組換えFeLVを発見した。FeLVが獲得した配列をX-regionと名付け、それはFcERV-gamma4に由来することが示された。FcERV-gamma4の9つの遺伝子座を分離・同定した。プロウイルスは感染性を喪失していたが、RT-PCRによって様々な臓器に発現していた。「2」FcERV-gamma4由来のX-regionを保持する組換えFeLVは、17検体において検出され、リンパ腫の発生と関連していた。X-regionはFcERV-gamma4の5’-非翻訳配列を含んでいた。「3」X-regionが共有していた領域に一致する配列が、ヒト、チンパンジー、マーモセット、メガネザル、ブタのゲノムにも存在することを発見し、この配列をCS-sequenceと名付けた。CS-sequenceが系統学的に独立したERVsにおいて共有され、種の進化に重要な役割を果たしていることが示された。FcERV-gamma4は家猫の生体内で発現していることも含めて生体で何らかの機能的役割を果たしており、FeLVへのトランスダクションの発見からその分子の異常発現は病気との関わりがあることが明らかになった。「4」新規FeLV株(FeLV-Eと命名)の受容体を明らかにした。受容体はRFCという葉酸を運搬する分子である。この発見はウイルスの病原性を解明するのみならず、ウイルスデリバリーシステムの革新的技術を提供する。
著者
井上 幸江
出版者
山口大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1987

シュードモナス属細菌より分離された, トルエンやキシレンの完全分解系を支配するTOLプラスミドについて, 発現調節機構を明らかにするために本研究を行なった.1.活性化因子XylRにより正の調節を受ける第1オペロンと調節遺伝子xylSのプロモーター領域を含むDNA断片をクローニングし, 逆転写酵素マッピング法により転写開始点を決定し, その周辺の塩基配列を決定した. その結果, 両プロモーターの構造は, 通常とは異なる大腸菌のシグマ因子NtrAをもつRNAポリメラーゼによって転写がおこるプロモーターと類似していることが示された.2.第1オペロンとxylSの発現を大腸菌のNtrA変異株を用いて測定した. その結果, 両遺伝子とも, 活性化にはNtrAが必要であることが明らかとなった.3.xylR遺伝子の全塩基配列を決定し, 一次構造を明らかにした. XylRのアミノ酸配列を窒素の利用や固定に働く遺伝子群の活性化因子NtrCやNifAの一次構造と比較した. その結果, これら3つの活性化因子のC末端側約200アミノ酸にわたって非常によく似た配列があり, お互いの相同性は約50%であった. この3つの調節蛋白に共通していることはNtrAをシグマ因子としてもつRNAポリメラーゼにより転写がおこる遺伝子群に対して正の調節因子として働くことである. このことから, 相同領域は, NtrA-RNAポリメラーゼと相互作用をもつことが示唆された.以上のことから, 分解系酵素誘導において各遺伝子が遂次発現されるときに, その発現調節に通常とは異なるシグマ因子が関与することが明らかとなった.XylR蛋白の分離精製は進行中である.
著者
木谷 秀勝
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

児童期から支援を継続して10年間追跡調査を続けた高機能自閉症スペクトラム障害(以下、高機能ASD)がもつ安定した「自己理解」の背景には、柔軟な状況判断を通した「自分らしさ」の表現と援助要請スキルの高さ、学習・就労体験からの達成感の高さが重要である。その一方で、青年期以降から支援を継続した高機能ASDの場合、家庭や職場において受身的な姿勢で支援を受けるだけでは、青年期以降の能動的な計画性や予測能力が十分に育たないことがわかってきた。そこで、集中型「自己理解」プログラムを通して、高機能ASDの能動性が賦活され、葛藤や対処スキルへの気づきが促進される効果が示唆された。
著者
李 明輝
出版者
山口大学
雑誌
東亞経濟研究 (ISSN:09116303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.263-292, 2001-12-31
著者
大浜 剛 大松 勉
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、停滞感のある抗がん剤開発の分野に対して、旧来の分子標的薬開発とは逆転の発想である「ホスファターゼを活性化する創薬」を提案するための基盤になることである。具体的には、最近申請者が発見した、重要ながん抑制因子であるホスファターゼPP2A、PP2A阻害タンパク質であるSET、および転写因子E2F1から構成されるシグナル伝達「SET/PP2A/E2F1軸」が、がんの悪性化を引き起こす分子機構と、イヌおよびヒトの腫瘍における役割の比較検証を行う。また、申請者が樹立した「発光反応によるタンパク質結合解析系」を用いて、PP2Aを活性化してSET/PP2A/E2F1軸を動かす刺激を同定し、抗がん効果を解析する。本年度は、ヒトおよびイヌの骨肉腫細胞株について、SET発現を抑制した細胞ET発現の低下が、がん細胞の表現型に与える影響について解析を行った。その結果、ヒトとイヌの骨肉腫細胞株では、SET発現抑制に対する反応性が大きく異なり、イヌ細胞ではSET発現抑制による抗がん効果が弱いことが明らかとなった。この点は、比較生物学的な観点から興味深く、より詳細な検討を行う予定である。ヒト骨肉腫細胞株に対するSET発現抑制の効果については、詳細な分子機構を解明するため、次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析を行った。今後は、得られたデータをもとに、着目したシグナル伝達機構について、より詳細な検討を行う予定である。また、「発光反応によるタンパク質結合解析系」を用いた検討について、PP2AとSETの結合(PPI)を制御するシグナル伝達機構を明らかにするため、各種阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニングを行った。これにより、PPIに影響を与える阻害剤が幾つか同定された。今後は、ヒット化合物についての詳細な検討を行うと同時に、新規化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを追加する予定である。
著者
柳井 秀雄 檜垣 真吾
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度および14年度の研究により、以下の成績を得た。残胃癌において、約4割と非常に高率のEBウイルス感染を検出し、極めて重要な成果として、英文誌に報告した(Scand J Gastroenterol 2002)。慢性胃炎・胃癌症例について、胃内視鏡検査時に被験者への十分な説明と承諾のもとに、通常の診断目的の生検に加えてシドニーシステムによる胃粘膜5点生検を行い、EBウイルスDNAのBamHI-W断片をリアルタイム定量PCR法にて検出し、ウイルス感染の有無、胃内分布と感染コピー数、の検討を行った。その結果、65.7%の症例において、胃生検切片からEBV DNAが検出された。胃粘膜よりのEBV DNA検出は、中等度の萎縮性胃炎例の萎縮中間帯に有意に高頻度であった(論文投稿中)。胃癌手術例での、EBウイルス感染細胞に多数存在るEBV encoded small RNA1 (EBER1)に対するoligonucleotide probeを用いたin situ hybridizationでは、EBウイルス関連胃癌は、胃体部の胃粘膜萎縮境界近傍に存在していた。胃癌120病巣におけるEBER1 ISHによる検索では、EBV関連胃癌は、内視鏡的粘膜切除を行った54病巣には見られず、外科手術の66病巣中3病巣(5%)を占め、胃型の粘液形質と関連を有していた(論文準備中)。これらの結果より、EBVは、慢性萎縮性胃炎の経過において中等度の萎縮の進展に伴い萎縮境界近傍に感染し、発がんに関与するものと推定している。これらの成果を含めて、画期的な邦文成書「EBウイルス」(監修:高田賢藏、編集:柳井秀雄・清水則夫)を編集し、発刊予定である(診断と治療社、東京、2003年6月予定)。
著者
桑原 昭徳
出版者
山口大学
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.17-31, 2007-03-25

2006年の10月初旬、6ヵ月後には定年退職をむかえる60歳のC教諭の2年国語授業を参観した。これが授業を通してのC教諭との最初の出会いとなった。学級の児童は12名なのだが、授業が始まる前に、子どもたちは教室の時計やチャイムの音を気にもしなかった。開始定刻に着席できず、学習準備もできなかった。端的に言えば、「学習規律」が指導されていない学級であり、授業なのであった。学年が始まってすでに半年が経過しているというのに、授業の指導技術の中でも最も基本的な「遅刻・私語・忘れ物」が克服されていないのであった。国語授業のなかで物語文を学習するための「学習方法」は考慮されているのだが、発問が子どもに理解されづらい。無限定の発問であるので、子どもたちが応答しようのない場合があった。結果として、会話を中心として展開され、わかりやすい物語であるにもかかわらず、子どもたちが登場人物に同化しながら、考えたことをきちんと発表することができなかったし、子ども自身が「わかった」という実感が持ちづらい授業となった。第2回目のC教諭の授業の参観は、筆者から申し出て10月20日となった。最初の授業参観から数えて、14日後のことである。この日、3時間目の音楽と4時間目の算数を参観することになった。算数は、授業の始まりから15分間をC先生が指導して、桑原と校長先生が参観した。残りの30分間の授業は、同じ教材を用いて桑原が指導して、C先生と校長先生が参観した。授業が終了した直後の10分間、校長室でC先生に助言する時間を持った。第3回目のC先生の授業の参観は、11月16日午後から開催されるB小学校の他学年の授業研究の日の4時間目に、筆者がC教諭の授業参観を希望するという形で実現した。この日の授業の始め方は、従来の子ども達とは違っていた。C教諭が「10、9、8」と声をかけると、子どもたちは一斉に「7、6、5、4」とカウントダウンの声を続けた。「3、2、1、ゼロ」で終わると、今度は一斉に「日直さん、お願いします」と言った。すると、日直の子どもが前に出て「気をつけ、れい、お願いします」と合図の声を発した。この声に合わせて、子どもたち全員が11時30分の定刻に、緊張感とともに授業を始めることがで?きたのであった。学習内容は掛け算九九の「6の段」であり、「6の段」の練習活動が展開された。学習規律の定着とともに、子どもたちの授業への参加の度合いや集中力は、約40日の中で明らかに向上した。第3回目の研究協議と私の指導講話の最後、それは同時に私の参加したB小学校における3回にわたる公式の授業研究の最後でもあったのだが、私は次のようにC先生とB小学校の先生方に呼びかけた。「どうかC先生、3月下旬の終業式まで、授業改善をしつづけてほしい。ほかの先生方はC先生を支えてあげてほしい」とお願いするとともに、「C先生が退職をされる最後の日まで、良い授業をしようとして努力され、笑顔とともにお辞めになった」という風の便りが、いつの日にか、私の耳に届くことを楽しみしていると伝えた。
著者
霍 斐
出版者
山口大学
巻号頁・発行日
2018

博士(学術)