著者
清水 研明
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-31, 1992

言語の「経済性」, すなわち, 有限数の音素から数十万の形態素を, さらにその形態素からほぼ無限数の文をつくりだすことが可能なのは, 自然言語が「二重」に「分節」されているからである.チンパンジーを中心にした類人猿に手話や人工言語を習得させるプロジェクトにおいて, この「二重分節」に言及されることが多い.「二重」に「分節」された手話や人工言語を使って語や文を産出しているのだから, 類人猿達の「言語」にも経済性がみられる, といった評価が一般的である.しかし, 類人猿達の産出する語や文はタイプの数が限られており, 人間のそれとは比較すべくもない.本論では, 「二重分節」という構造を持つシステムの習得が, 「経済性」の発現を必ずしも保障しないことを論じる.
著者
橘 智子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.49-56, 1993

「選ばれし女性たち」は, やや怪気的な幻想風の物語詩である.主人公の回想によって過去に五人の女性との不毛の恋愛を匂わせながら,実は唯一人の理想の女性を希求しての観念的な愛の遍歴である.つまり女性に対する自我理想の投影と追求であり, 永遠に満たされない結果的ドンファンの物語である.この小論では, 五人の女性の顔が融合して変容する六番目の「理想の女性」が現実のものではなく, 男性のidealizationによる幻影であるとして捉え, 五人が合体して初めて「究極の女性」になりうるとの比喩の観点からこの詩を論じる.
著者
竹並 正宏
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.353-366, 2006

この研究内容の持つ意味を整理すると,第一に,日帝時代の社会福祉研究が足りない現時点で,本研究は当時の社会福祉の理解に寄与でき,特に,貧困政策の生成および変化の脈絡の把握に役立つという意義を持つ.第二に,社会福祉史の研究は,社会福祉の実践領域と動態的法則を把握することにより,未来の展望を予測することに意義があるように,日帝時代の貧困政策研究は,解放以後展開された貧困政策についての説明に重要な意味を示唆する.第三に,特定な時期の社会福祉政策の変化脈絡を,社会福祉制度変遷論を適用して考察することで,社会福祉制度変遷論の理論的な仮説を一般化することにも寄与できると思われる.
著者
松本 啓子 若崎 淳子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.67-72, 2006
被引用文献数
1

Successful Agingの研究は主に米国において進んでいるが,用語そのものの意味も研究者によって見解が異なる.我が国では未だ独自の社会的文化的民族的背景からの示唆は得られていない段階である.そこで今回,著者らの先行の報告を基に,65歳以上の高齢者36名へのアンケート調査から,Successful Agingの現状について質的因子探索型研究を行った. 高齢者におけるSuccessful Agingの現状としては,【満足】【健康】【自己保存】【参加】【チャレンジ】【自負心】の6カテゴリーが抽出された.`健康・元気にむけて努力する'から【健康】,`過去も現在も満足している'から【満足】,`満足している今の自分を,努力して維持させたい'から【自己保存】,`社会や人との関わりに意味を見出している'から【参加】,`好奇心旺盛で前向き'から【チャレンジ】,`高い自己評価とともにある自信'から【自負心】,の6カテゴリーであった.高齢者におけるSuccessful Agingの現状を明らかにすることは,新たな高齢者像の構築,医療・看護教育における高齢者理解の一端に寄与することができる.
著者
吉利 宗久 手島 由紀子 母里 誠一
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.237-242, 2000

本研究は, アメリカ合衆国の学校教育における医療的サービスの提供をめぐる7つの判例を取り上げ, その特徴と問題点を把握することを目的とした.個別障害者教育法(IDEA)は, 障害児のユニークなニーズに対する「特殊教育及び関連サービスを強調する無償で適切な公教育」を保障している.また, 「関連サービス」は, 診断と評価を目的とする「医療的サービス」及び, 有資格スクールナースやその他の有資格職員によって提供される「学校保健サービス」を含む.しかし, これらの法定義が不明確であるために, 学校における医療的ケアの提供をめぐる問題が生じ, 法廷で争われている.1984年のTatro訴訟に端を発するこの問題は, その後の訴訟においても引き続き議論されてきた.その後の判例において検討されたことは, IDEAの医療的サービスから除外されるべき範囲, 施行規則の「学校保健サービス」及びTatro訴訟の連邦最高裁判所判決に関する解釈であった.1999年に連邦最高裁判所は, Garret訴訟において, 障害児が必要とするサービスが医師によって提供されない限り, サービスの性質や範囲に拘わらず, 学校において提供されるべきことを認めた.Garret訴訟は, 15年間にわたる学校での医療的ケアの提供をめぐる訴訟を集約する結果をもたらした.今後, 判例の一層の検討により, 障害児の医療的ケアに関する教育的課題が解明されるべきである.
著者
深井 喜代子 新見 明子 大倉 美穂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.285-291, 2000

患者側から看護者を評価する心理社会的尺度, 対象一看護者関係評価尺度(Client-NurseRelationshipScale, CNRS)を新たに開発した.まず, 既成の文献と観察法から138の項目を抽出し, 表面妥当性と重複の有無を検討して52項目の初版CNRSを作成した.初版CNRSでは某有名タレントを288名の学生に評価させた.初版の再テスト法による信頼性係数は0.93(p<0.01), Cronbachα係数は0.89であった.ついで初版から因子負荷量の低い項目を除外して31項目の改訂版CNRSを作成し, 看護学生に理想の看護者を評価させた.因子分析の結果, 初版, 改訂版ともに「人間的信頼感」「専門性」「威圧感」の3因子が抽出された.改訂版による調査結果の因子分析から項目をさらに厳選し, 最終的に24項目からなる完成版を作った.完成版CNRSは患者一看護者関係だけでなく友人関係や学生一教師関係なども評価できる信頼性と妥当性の高い対人関係評価尺度であることが示された.
著者
竹内 一夫
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.59-66, 1991-10-11

平成元年に「医療ソーシャルワーカー業務指針」が, 医療ソーシャルワーカー業務指針検討会により提出されたが, 我が国では未だ, 医療ソーシャルワーカーの法資格はできていない.本稿では, これまで厚生省や関連団体から出された公的文書の中で, 精神衛生法正前の1947年から1964年までを対象とし, 医療ソーシャルワーカーの役割, 定義, 業務, 教育体系などがどのように変化して来たのかを, 経時的に検討した.1965年以降のものは続報で検討する.今回の検討では以下のことが確認できた.1)保健所法制定後10年で, 医療ソーシャルワークは「医療チームの一部門」として位置づけを得, その扱う対象も「患者」から「患者及び家族, 地域社会」へと拡大している.2)同時期, 医療ソーシャルワークの専門技法は, 初期のケースワークから, それに加えグループワーク, ソーシャルワークリサーチ, コミニティーオガニゼーションの一部, ソーシャルワークアドミニストレーションの一部へと拡大している.3)専門的教育に関しては, 保健所法制定後15年で, すでにスーパーバイザー養成を含んだ大学レベルでの教育が提案されていた.
著者
若井 和子 小河 孝則
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.377-382, 2011

本研究は,乳児院で就業する看護師および保育士の協働意欲に影響する要因について明らかにし,入所児に専門性を発揮したケアを提供できることを目的とする.研究方法は,関西地方,中国地方,および九州地方の乳児院で就業している看護師5人および保育士5人,合計10人を対象とし,個別に半構造化面接調査を実施した.言語データを収集し,質的帰納的方法で分析した.その結果,【役割遂行ができた達成感の獲得】の有無が抽出された.カテゴリーには,専門職としての葛藤や孤独感などマイナス因子が含まれていた.複数の専門職で構成されている乳児院において協働意欲を向上させるためには,他職種との意思疎通を円滑にし,専門職としての役割が遂行できるように職場環境を整える体制づくりが重要である.
著者
山田 景子 津島 ひろ江
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-25, 2013

昭和54年の養護学校義務制度の開始により,重度障害のある児童生徒等の就学が可能となったが,医療的ケアを行う者は,学校に同伴する保護者であった.しかし,保護者負担の軽減や児童生徒等の 教育的ニーズにこたえる形で,各学校に配置された看護師や研修を受けた教員等へとケアを行う者が 推移していった.平成23年6月に出された「介護保険等の一部を改正する法律による社会福祉士及び 介護福祉士法の一部改正」により,特別支援学校において,教員等が医療的ケアを実施することが制 度上可能になった.本研究では,医療的ケアや医療的ケアを行う者についての法制度に係わる背景及 び変遷について述べ,教員等と看護師,養護教諭の職務に係わる課題を考察した.1特定行為を行う教員等が,教員の養成段階で医療的ケアの知識を得ておくことで,医療的ケアの 理解につながる.2看護師は,医療的ケアを行う者であり,教員等の指導者でもある.学校と病院と の看護の相違に戸惑うことがあり,学校における看護やその在り方について研修が必要である.3医 療的ケアに係わる校内体制のキーパーソンとなる養護教諭は,養護教諭の養成段階で医療的ケアに関 する知識や技術を取得しておくことが求められている.さらに,学校内外の連絡調整や医療的ケア校 内委員会等のコーディネーターとしての能力育成が課題である.
著者
橘 智子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.15-23, 1991-10-11

『エセルバータの手』(The Hand of Ethelberta)でトマス・ハーディ(ThomasHardy)はシェイクスピア風の貴族社会を風刺した軽いタッチの喜劇を書こうとしてか, 副題に『数章から成る喜劇』と付加しているが, 失敗作としてその評価は極めて低く, minor novelに分類されている.しかし, ヒロイン・エセルバータは, Hardyが創造した他の女性たちより興味深くユニークな存在である.家族のために恋人を諦めて裕福な老貴族と結婚する自己犠牲的行為は, 人身御供として本来ならテスの場合のように悲劇的であるが, エセルバータの場合, 考えようによっては, 環境の犠牲者(召使いの娘として, 10人の兄弟姉妹の5番目に生まれたという)とも言えるが, 彼女の自尊心及び虚栄心がらみの野心にのっとり, 自ら選んだ道を邁進し, 子爵夫人として夫も財産も管理・支配する姿には, 悲劇よりむしろしたたかな生命力を感じる.この小論では, 19世紀の時代背景と, その思潮に触れ, ヒロインが職業で果し得なかった女性の自立, 並びに持てる才能の開花を結婚によってどのように達成し維持していくか, 彼ざま女の生き様を「新しい女」と位置づけ論を進めていく.
著者
小薮 智子 白岩 千恵子 竹田 恵子 太湯 好子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.59-71, 2009

本研究は,緩和ケア病棟の看護師97名,一般病棟の看護師248名,一般の人429名,大学生244名,合計1,018名を対象とし,スピリチュアリティという言葉のイメージを明らかにすること,また4つのグループ別に認知の有無と,イメージの特徴を明らかにすることを目的とし,質問紙調査を行った.スピリチュアリティという言葉を認知している人は全体で421名(41.4%),緩和ケア病棟の看護師が83名(85.6%),一般病棟の看護師が136名(54.8%),一般の人が92名(21.4%),大学生が110名(45.1%)であり,スピリチュアリティという言葉は未だ一般の人に認められた言葉ではないことが示された.得られたイメージを内容の類似性で整理した結果,【超越的】【内的自己】【人間存在】【死生観】【ビリーフ】【Well-BeingとPain】【他者や環境】の7コアカテゴリーが抽出された.その内容からスピリチュアリティは幅広いイメージを与え,主観的で抽象的であることが確認できた.またこれらは既存の学術的概念と類似していた.カテゴリーに分類されなかった「その他」には〈マスメディア〉〈超常現象〉〈否定的イメージ〉が含まれ,スピリチュアリティをスピリチュアルブームという大衆文化の中でとらえている人がいることが明らかになった.7コアカテゴリーは4グループすべてで抽出され,その中でも【超越的】と【内的自己】が共通して最も多かった.緩和ケア病棟の看護師はスピリチュアリティに幅広い,多くのイメージを持っていた.また一般病棟の看護師の約1割と大学生の約2割が〈マスメディア〉をイメージしていた.一般の人の【他者や環境】のイメージは,日本人の中・高齢者の特徴と考えられた.
著者
盛政 文子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.261-270, 2001

レアリスムの代表作『ボヴァリー夫人』の作家ギュスターヴ・フローベールは近代小説の祖とされている,一方, それ以前の作品はフローベールの信念獲得の過程で書かれた, ロマンチズムの作品と奮える, その中で, 小説『11月』は, まさに彼の青春期と壮年期との過渡期に書かれた作品と位置付けられる.この作品の中にフローベールは, 多情多感な青年の面影と, 虚無思想に捉えられて苦しむ姿とを同時に描いている.フローベール自身の恋愛が実を結ぶことはなかった.自らの生活に幸福を実現できなかったのは, 人生に対して求めることが強すぎたためではなかろうか.彼は女性を常に理想化して描いていった.恋は彼にとって, 美しいものとして制作された, 文学的テーマであった.女性は彼の作品の中で, 肉体的位置を文学的位置まで高めたに過ぎなかった.フローベールの作品申の主人公たちは, 恋愛から一時的な満足しか味わえず, 常に新しい恋を求めて苦悩する.求めても叶えられないと自覚する時, 虚無感が生まれ, 死が必然的となり, 死によって救われることを欲し始める.まさにフローベールの著名の批評家であるチボーデが語るところの「ボヴァリー症」の一面を有している。フローベールの小説には, 絶えず現れる倦怠と, 人生の失敗とが描かれている.強い想像力を持つ彼は, 全てのものを文学に結晶させ, 現実をより美しいものとして夢み, 現実をより真実なものに再構成するのである.作品の成功にもかかわらず, 19世紀の偉大な小説家, フローベールは, 常に心が満たされることはなかったと思われる.若きフローベールにとって, この時にはまだ虚無思想から逃れるための文学的創作活動によっても, 虚無を征服し得なかったのではないだろうか.だからこそ, 虚無感はフローベールの文学の不変のテーマとなり得たのである.
著者
鈴井 江三子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.319-328, 1998-12
被引用文献数
1

この研究は, 妊婦健診を受けた妊婦の肯定的な体験を分析し, 助産婦と妊婦のあいだにみられる効果的な相互作用のあり方を探求した質的研究である.インタビューをおこなった対象は, 妊娠26週から36週までの初産婦で, 複雑な産科疾患を伴わない妊婦7名とした.データーの収集はテープ・レコーダーによる逐語記録とし, 半構成的質問内容にそって実施した.その結果, 妊婦と助産婦の対人関係の中で, 妊婦の体験の要素は, 1.耳を傾けてくれる, 2.心遣い, 3.聞くチャンスをくれる, 4.保証してくれる, 5.細やかに教えてくれる, 6.妊婦に合わせてくれる, 7.妊婦ができるように援助してくれる, 8.何でも気軽に聞ける, 9.精神的に支えてくれるの9項目が抽出された.これらの項目は, 人間関係の中に見られる肯定的な相互作用である.
著者
"鈴井 江三子"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.59-70, 2004
被引用文献数
2

"本研究は,超音波診断を含む妊婦健診の導入と普及要因を明らかにするため,戦後の医療制度再編に施行された医療法,医療保険制度,医療金融公庫法および母子保健法の4つの領域に焦点を当てて分析したものである.その結果,超音波診断装置の導入,普及には医療産業育成政策が動因として挙げられ,政府の政策支援によって達成したものであることが明らかになった.また同装置の開発と臨床への導入には医師,技術者以外に,日本ME学会の功労も大きいものであった.さらに超音波診断の保険診療の適応が広く導入を促した.その結果,超音波診断を含む妊婦健診が一般的になり,本来は順調に妊娠の経過を観察するという妊婦健診は,胎児異常の早期発見に傾倒した妊婦健診になったといえる."
著者
矢野 博己 宮地 元彦 矢野 里佐
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.139-143, 1995

本研究は, 運動時の肝門脈血流量低下に対して, それを決定する因子である肝門脈本幹断面積および血流速度がおよぼす影響について検討した.肝門脈血流量は運動強度に依存して低下した.運動時の門脈血流量と血管断面積問の単相関係数は高かった(r=0.812,p<0.01).門脈血流量に対して血流速度も単相関係数には有意性が認められた(r=0.375,p<0.05).門脈血流量に対する偏相関係数は, 門脈本幹断面積が高かった(vs, cross-sectionalareaandvs.venousvelocity, r_<xy-z>=0.809and r_<xy-z>=0.301).門脈本幹断面積変化が門脈血流量により強く寄与したメカニズムについて考察した.In the present study, we examined the effect of cross-sectional area and venous velocity on portal venous flow during exercise. Portal venous flow was reduced at 60% and 80% VO_2max intensities of exercise as compared with the resting level. A high simple correlation coefficient value between portal venous flow and the cross-sectional area was observed (r=0.812,p<0.01). A significant simple correlation coefficient value between portal venous flow and venous velocity was also observed (r=0.375,p<0.05). The partial correlation coefficient of portal venous flow and cross-sectional area was high during exercise (vs. cross-sectional area and vs. venous velocity, r_<XY-Z>=0.809 and r_<XZ-Y>=0.301,respectively). The mechanisms of the effects of the cross-sectional area on portal venous flow were discussed.
著者
"香西 はな 矢野 博己 加藤 保子"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.11-19, 2006
被引用文献数
1

"現在,小麦はアレルギーを引き起こす三大食品の一つとされており,更に食物依存性運動誘発アナフィラキシーの最多原因食品としても注目されている.これまで,小麦アレルギーとしては,Baker's Asthmaやセリアック病などがよく知られており,原因タンパク質としてはそれぞれ塩溶性タンパク質,グリアジンであるとの報告が多い.近年問題となっている小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)に関しては,ω-グリアジンであると報告されている.WDEIAの発症メカニズム解明のため,我々は,B10.Aマウスと卵白リゾチーム(Ly)を用いて,モデル実験動物系を確立した.各小麦タンパク質で感作したB10.Aマウスのアレルゲン投与後の疲労困憊運動時間は非感作群と比較して短く,更に,グリアジン次いでグルテニン群の小腸粘膜上皮組織の損傷は激しいものであった.マウスを用いて検討したWDEIAの原因タンパク質はグリアジン次いでグルテニンである可能性が高く,これらのタンパク質が小腸粘膜上皮組織を著しく損傷させ,体内へのアレルゲンの吸収も促進,更に,運動がこの損傷を増悪させることが考えられた.このような小腸粘膜上皮組織の損傷は,セリアック病でも観察され,セリアック病では,グリアジンの消化生成物であるペプチドがかなりの毒性ペプチドであることが報告されてきており,このようなグリアジンタンパク質の特性とWDEIAとの関係も示唆されるものであった.本報告では,小麦タンパク質とWDEIAに関して,これまで進められてきている研究の流れと,原因小麦タンパク質に関する情報を解説した."