著者
嶋田 義弘 緒方 正名 藤井 俊子 堀家 徳士 道辻 広美 細川 幹夫 田口 豊郁
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.67-73, 1995

外部精度管理の実情に近い条件のもとで, 有機溶剤の尿中代謝産物である馬尿酸, メチル馬尿酸, マンデル酸を人工尿, ヒト尿に加えた試料について, 郵送した後の濃度を, 東京都, 大阪市, 岡山市に存在する3検査機関で測定した上述の3種類の尿中代謝産物の郵送後の値の, 郵送前の研究室の値に対する比率(回収率)を求めた.その成績として, 液性試料で冷蔵保存(0〜4℃), 冷凍保存(-20℃)下の郵送では, 人工尿は郵送前のほぼ100%の値を示した.ヒト尿中の馬尿酸, メチル馬尿酸, クレアチニンは凍結保存では98%を示したが, 冷蔵保存では郵送前よりやや低い値を示した.凍結乾燥した人工尿, ヒト尿の冷蔵保存下の郵送では, 3種の代謝産物はほぼ98%以上の値を示し, 実用可能な事が推定された.
著者
嶋田 義弘 緒方 正名 藤井 俊子 堀家 徳士 道辻 広美 細川 幹夫 田口 豊郁
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.67-73, 1995

外部精度管理の実情に近い条件のもとで, 有機溶剤の尿中代謝産物である馬尿酸, メチル馬尿酸, マンデル酸を人工尿, ヒト尿に加えた試料について, 郵送した後の濃度を, 東京都, 大阪市, 岡山市に存在する3検査機関で測定した上述の3種類の尿中代謝産物の郵送後の値の, 郵送前の研究室の値に対する比率(回収率)を求めた.その成績として, 液性試料で冷蔵保存(0~4℃), 冷凍保存(-20℃)下の郵送では, 人工尿は郵送前のほぼ100%の値を示した.ヒト尿中の馬尿酸, メチル馬尿酸, クレアチニンは凍結保存では98%を示したが, 冷蔵保存では郵送前よりやや低い値を示した.凍結乾燥した人工尿, ヒト尿の冷蔵保存下の郵送では, 3種の代謝産物はほぼ98%以上の値を示し, 実用可能な事が推定された.The hippuric acid, methylhippuric acid and mandelic acid were spiked into artificial prepared urine and human urine, and used as specimens for external quality controls. These specimens were sent to the three laboratories located in Tokyo metropolis, Osaka city and Okayama city. Then concentrations of three acids and creatinine were measured in the laboratories. The ratio of the concentrations of three acids in artificial prepared urine measure in the three laboratories tested to those in the laboratory, where specimens were prepared and sent, was about 100 percent under the mailing condition at 0~4℃ and at -20℃. The ratios of three acids in human urine was about 98 per cent under the condition at -20℃ and slightly lower ratio was obtained at 0~4℃ in human urine. The three acids were spiked in artificial prepared urine and in human urine, and then these specimens were freeze-dried and mailed to three laboratories at 0~4℃. The ratios of three acids in artificial prepared urine and those in human urine were above 98 percent. The results indicate that the three acids in artificial urine and human urine are useful under mailing condition at 0~4℃ and at -20℃, though slight lower values are shown in human urine at 0~4℃ and can be useful under sending condition at -20℃. The freezedried artificial and human urines are useful under mailing condition at 0~4℃.
著者
種村 純
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.409-417, 2012

高次脳機能障害に伴って生じる言語コミュニケーション障害者,すなわち失語症者および認知コミュニケーション障害者に対する医療と福祉の間のギャップとその対策に焦点を当てた.多くのコミュニケーション障害者はリハビリテーションによって日常生活活動(ADL)は自立するが,就労は困難である.コミュニケーション障害者は就労を強く求めるが,職業生活で要求されるコミュニケーション能力を回復することは難しい.コミュニケーション障害者は孤独,意志決定や活動の制限,役割の変化などを経験する.失語症者の社会参加を促すためにはコミュニケーションによって失語症者の心理社会的ニーズを満たそうとする働きかけが重要である.集団での会話訓練や会話パートナーによって生活場面でのコミュニケーション活動を促す.慢性期の失語症者が集い,安全に社会活動を行う場として,失語症友の会が全国で展開されている.障害者福祉制度の面では失語症の身体障害者手帳および障害者年金の等級が低く,中年世代の就労できない失語症者への生活保障が不十分であることが指摘されている.外傷性脳損傷などによって広範囲の脳損傷を受けた場合には記憶その他の認知機能が障害され,認知機能の障害の結果として話す内容を上手く組み立てることができなくなり,会話での受け答えに齟齬が生じる.また説明が回りくどく,聞き手の立場に立って説明することができない.こうした障害を認知コミュニケーション障害と呼ぶ.この障害ではコミュニケーションの問題を媒介として攻撃行動や抑うつなど重大な社会的行動障害が出現する.認知コミュニケーション障害に対する介入としては,会話相手が協力的なコミュニケーションスタイルを示すことによって反社会的なコミュニケーション態度を改善したり,集団での生活技能訓練を行ったりする.社会的行動障害を伴う場合にはその家族に大きな介護負担が生じる.社会的アプローチとして高次脳機能障害支援普及事業が進められている.各県の支援拠点機関には支援コーディネーターが配置され,原因疾患の治療,リハビリテーション,生活支援,就労支援,就学支援,当事者団体による支援ネットワークが構成されている.本事業は障害者自立支援法の地域生活事業のうち,都道府県が行う専門的相談支援事業に位置づけられている.
著者
"塚原 貴子 新山 悦子 笹野 友寿"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.95-101, 2005
被引用文献数
1

"看護学生106名と栄養科学生54名を対象に,アダルト・チルドレンの特性(以下AC特性と略記)が看護学生と他学部学生で差があるのか,また,AC特性と対人関係のストレスの自覚との関係を明らかにすることであった.看護学生のAC得点の平均値は10.63(SD=4.85),栄養科学生の平均値は9.30(SD=4.73)で有意差(p>0.05)は認められなかった.対人関係でのストレスの自覚の程度の合計平均値は,看護学生6.57(SD=2.31),栄養科学生の平均値は5.78(SD=1.69)で有意(p<0.05)に看護学生が高かった.AC得点と対人関係のストレスの自覚の程度をピアソンの積率相関係数にて検討した結果,0.587(p<0.01)で比較的強い相関が認められた.看護学生のみに,「親との対人関係」や「先輩・教員との対人関係」でのストレスの自覚とAC得点に相関が認められた.看護学生にAC特性が高いとは言えないが,AC得点の高さとストレスの自覚の強さが関連していた.看護学生は,臨地実習などで対人関係を使った学習が要求され,ACの心理的特性が対人関係を経験することで顕在化している可能性が示唆された."
著者
服鳥 景子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

研究対象者である高齢者とその家族のほとんどは、事前指定書の考え方に賛同し、書面化に対し肯定的であった。家族機能が良好な場合は高齢者と家族の終末期医療の希望は一致する傾向にあった。しかし、機能不全の家族は一致しない傾向にあった。特に、高齢者とその家族の家族機能に対する認識が相違する場合は、終末期の希望に対するズレが顕著となった。事前指定書書面化への啓発活動モデルの主軸は、対象の年齢・家族背景(信頼する家族)・家族機能・事前指定書に対する認識・終末期医療に対する希望の5項目といえる。今後の課題は、啓発活動モデルの活用とともに、高齢者の終末期医療における意思決定に特化した家族機能アセスメント指標の確立である。
著者
"八並 光信 渡辺 進 上迫 道代 小宮山 一樹 高橋 友理子 石川 愛子 里宇 明元"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.227-235, 2005
被引用文献数
1

"本研究の目的は,造血幹細胞移植患者の無菌室治療期間中に生じる廃用症候群に対して,理学療法の頻度による効果の違いを検討することにある.対象は,2002年1月より2003年12月までの患者57名中,重度のGVHDおよび早期死亡を除いた34名であった.理学療法評価は,移植患者の握力・下肢伸展筋力・運動耐容能について無菌室入室前後(移植前後)で行った.理学療法は,理学療法士のデモンストレーションに従って,患者が自覚的運動強度で「きつい」と感じる強度で,ストレッチングおよび筋力増強訓練を15分から20分間行った.この他,理学療法士の非監視下で行う自主訓練は毎日行った.理学療法士のデモンストレーションに従って患者が行った理学療法頻度の違いにより,隔日群(16名)と毎日群(18名)の2群に分けた. 移植前後の筋力の変化率に対する,訓練頻度の違いによるに効果は認められなかった,運動耐容能の変化率に対する効果は,運動耐容時間を除き認められなかった.移植前後の筋力・運動耐容能の変化率を従属変数,性別・年齢・入院から移植までの期間・無菌室期間・訓練頻度を独立変数として重回帰分析を行った.筋力の変化率に関しては,無菌室滞在期間が寄与していた.しかし,運動耐容能の変化率は,この回帰モデルで説明できなかった. 我々は,今後も,移植治療中の廃用症候群を抑制できる理学療法システムについて検討していきたい."
著者
八並 光信 渡辺 進 上迫 道代 小宮山 一樹 高橋 友理子 石川 愛子 里宇 明元"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.227-235, 2005
被引用文献数
1

本研究の目的は,造血幹細胞移植患者の無菌室治療期間中に生じる廃用症候群に対して,理学療法の頻度による効果の違いを検討することにある.対象は,2002年1月より2003年12月までの患者57名中,重度のGVHDおよび早期死亡を除いた34名であった.理学療法評価は,移植患者の握力・下肢伸展筋力・運動耐容能について無菌室入室前後(移植前後)で行った.理学療法は,理学療法士のデモンストレーションに従って,患者が自覚的運動強度で「きつい」と感じる強度で,ストレッチングおよび筋力増強訓練を15分から20分間行った.この他,理学療法士の非監視下で行う自主訓練は毎日行った.理学療法士のデモンストレーションに従って患者が行った理学療法頻度の違いにより,隔日群(16名)と毎日群(18名)の2群に分けた. 移植前後の筋力の変化率に対する,訓練頻度の違いによるに効果は認められなかった,運動耐容能の変化率に対する効果は,運動耐容時間を除き認められなかった.移植前後の筋力・運動耐容能の変化率を従属変数,性別・年齢・入院から移植までの期間・無菌室期間・訓練頻度を独立変数として重回帰分析を行った.筋力の変化率に関しては,無菌室滞在期間が寄与していた.しかし,運動耐容能の変化率は,この回帰モデルで説明できなかった. 我々は,今後も,移植治療中の廃用症候群を抑制できる理学療法システムについて検討していきたい.
著者
"坂本 圭"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.471-484, 2006

"わが国の医療費は,1961年に実施された「国民皆保険」により,高度経済成長と比例して増加してきた.このことが,わが国の医療サービス,医療技術を発展させ,すべての国民が安心して生活できる環境を作り上げる要因のひとつになったと言える.しかし,その一方で国民医療費は,単に,少子高齢化だけでなく,医療保険制度自体が内包する制度的問題点により,高度経済成長終焉後も増加の一途をたどってきた.その間,幾度となく制度改革はなされたものの,医療費増加に対する十分な効果は今のところ得られていない.その背景には,「供給サイドの改革」が不十分であることがあると考える. そこで,本稿では,医療費抑制策を精力的に行った5カ国(ドイツ,フランス,イギリス,スウェーデン,アメリカ)の事例を取り上げ,「需要サイドの改革」「供給サイドの改革」について吟味し,日本の医療費抑制策と比較分析を行った.分析の結果,以下の内容が明らかになった. (1)諸外国では,「供給サイドの改革」を行うことにより,一定の医療費抑制効果が見られた. (2)わが国では,ほとんど「供給サイドの改革」が行われていない結果,効果的な医療費抑制に繋がらなかった."
著者
McCrimmon Mary F.
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.181-188, 1994

シェイクスピアの「マクベス」とサムエル記上のサウル王の物語とを詳細に比較検討した結果, シェイクスピアが「マクベス」著作に際して, サウル王の物語を念頭に置いていたことが明白であることを論じる.また, その結果は, もしサウル王がマクベスに該当しているなら, ジェイムズ王が自分の祖先と考えているバンコーはダビデに該当していることを示唆していることも併せて論じる.
著者
田島 誠
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、右手と左手で異なった運動振動数でタッピングした際の各手の運動振幅を検討することによって、複雑な両手協応運動のタイミング制御に対する運動振幅の役割を明らかにすることを目的とした。本実験には12名の被験者が参加し、彼らは単純な両手協応運動である1:1タッピングと2:1タッピング、3:1タッピングを遂行し、さらに複雑な両手協応運動である3:2ポリリズム・タッピングと5:3ポリリズム・タッピングを遂行した。また、これらの両手協応運動を遂行する際の右手と左手の運動振幅を測定、分析した。両手協応運動のタイミング制御に対して各手の運動振幅の大きさの関係から検討した結果、単純な両手協応運動の場合には運動振幅は短く、逆に複雑な両手協応運動の場合には運動振幅は長くなることが示された。これは複雑な両手協応運動の各手のタイミング制御を達成するために、空間的要素である運動振幅の長さを調整していることが示唆された。これに対し、各両手協応運動内での右手と左手の運動振幅を比較した結果、両手間に有意な差は示されなかった。複雑な両手協応運動には右手と左手の運動振動数間に非整数倍の差があるためにその達成が比較的困難であるが、本研究では右手と左手の運動振幅の比を運動振動数の比の,逆数倍にすることによって両手協応運動を達成しているという仮説を立てた。しかし、本実験の結果はこの仮説を支持しなかった。これは複雑な両手協応運動のタイミングを両手間で調節する際には、運動振幅によるタイミング制御ではなく、中枢のタイムキーパーによるタイミング制御が行なわれていることを示唆している。
著者
保住 芳美
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.337-346, 2009

ドイツでは,2003年に施行された「老人介護の職業に関する法律」に基づき,老人介護士を国家資格として制度化し,その養成のためのプログラムも設定された.老人介護士の養成期間は3年間,4,600時間である.教育内容は,4領域「14の学習領域」が設定されている.実習はデュアルシステムとして実習先と生徒の間で「訓練契約」を結ぶなど人材の育成が体系化されている.老人介護士養成学校の教員の資格要件は,老人介護士養成学校3年課程を卒業,職業経験,老人介護士教員養成訓練,教員養成大学を卒業していることであり,原則的にその職業に就いている者である.実習指導教員の資格要件は,実務経験2年以上,老人介護に相応する職業資格,看護・介護指導員養成訓練が義務づけられている.学習内容で注目したいのは,ドイツでは複数の専門職間における連携教育が導入され始めていることである.日本でも連携教育を学び,卒業後現場で活用ができる力量を身に付けさせる必要がある.教員養成課程においては,教員の質を向上させるため,専門課程の「教授学」を学ぶことが重要であり,現実に即した問題解決が可能となるような教員養成の方法を考える必要があると考える.
著者
橘 智子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.209-219, 1992

トマス・ハーディ(Thomas Hardy)は19世紀末英国文壇の偉大な小説家として名声を得た後,詩作に情熱を傾注した。おおよそ1000篇の詩を世に問い,現代詩人の萌芽を内包する個性的で特異な詩人として高い評価を受けている。詩のテーマは多種多様であるが,とりわけ生と死,死後の世界,墓地,幽霊をテーマに近代から現代に即した内容で多くの詩を書いている。ハーディーは若い頃,キリスト教の信仰を喪失し,加えて,ダーウィンの『種の起源』やショーペンハウアーの『無神論』,『内在性』に感化され,世紀末から20世紀初頭へのペシミズムに傾倒する。従って死者にキリスト教的死後の生命を与える希望が持てず,シェイクスピアやブラウニングのように死後の不滅を楽観的にうたい上げることができなかった。そして不滅を求めて深いペシミズムと限りない回生の希望の狭間で揺れ動き,その揺曳の果てに死後の魂の行方を希求して彼独自の工夫と観想をこらし作詩する。やがてハーディーは,死は生の否定であるとする生と死のパラドックスから脱却し,それを矛盾しない一体のもので不可分と考えるようになる。つまり生は死に向かって間断なく移行するプロセスに過ぎないと止観する。老齢と共に微妙に変化するハーディーの生死観は一層次元の高いものとなり,相矛盾する概念を止揚して,幽明の問に詩的効果を出している。しかしハーディーの生死観の根底をなすものは, 全て生あるものは個としては滅びるが,種としては不滅であるという「生の循環」論であり,宇宙観であると言えよう。
著者
石井 孝治 山本 裕陸
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.81-85, 1998

本稿は, 3次元空間R^3における境界要素法による3次元ラプラス方程式の数値解に関するものを考える.まず, R^3内の同心円環領域におけるディリクレ問題の厳密解と数値解を求める.境界要素法においては境界である球面を平面三角形により近似させる.厳密解と数値解を比較し, 厳密解に最も近づく近似法G_nを得た.次に, 境界が球面である非有界領域におけるディリクレ問題を考える.この問題の厳密解は求まっていない.球面に最も近似するG_nで数値解を求め, その結果をグラフ化した.さらに, R^3内の曲線族に対する2-モジュールの数値解を与えた.
著者
進藤 貴子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.29-44, 2010

高齢者心理学の発展,とりわけ1980年代以降のそれは,衰退し排除される対象としての高齢者観から,成長と自己実現の可能性をはらんだ高齢者観へのパラダイムシフトを後押しした.あわせて高齢者心理学は,対象者主体の高齢者福祉を営んでいく上で欠かせない知識である.高齢者心理学の基礎的研究は,(1)知能の加齢変化の様相,高齢者の知恵の特徴,加齢とともに適応性を増す人格変化の示唆など,加齢の発展・超越的側面,さらに,(2)感覚機能・身体機能・記憶機能の衰退と補償など,加齢に伴う喪失的側面,そして,(3)「エイジレス」な自己意識にみられる不変的側面と,加齢の3つの側面を浮き彫りにしている.こうした研究成果を現場に生かす高齢者臨床心理学の実践は,まだ十分に普及しているとは言いがたい.その背景には,臨床家の高齢者への偏見,専門的な心理ケアが制度上の位置づけをもたないこと,専門職の役割を分離しにくい高齢者領域の特異性などがある.それでも心理士の専門性には期待がもたれており,高齢者領域に特化した知識・技術,生老病死に向きあう姿勢,個を尊重しながらの集団へのかかわり,高齢者との世代を超えたつながりへの理解,認知症者への共感的な姿勢を備えての高齢者福祉領域への参入がのぞまれる.
著者
添田 正揮
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-13, 2012

本論文では,欧米のソーシャルワーク教育と実践の研究の発展過程を踏まえ,国際人口移動が進展し多文化・多様化社会となった今日,外国にルーツを持つ人々の問題に対応可能なソーシャルワーカーを養成する必要があることを示した.そのためには,文化的コンピテンスとダイバーシティの価値と理論に基づき,教育側と実践現場側が連携し,教育と実践の基準を構築することの必要性を示した.また,国際人口移動に伴う生命や生活の安定や安全保障の整備にあたっては,彼/彼女らのエスニックリアリティを念頭に置くことが求められる.それと同時に,各国の社会保障・安全保障という枠組みで考えるだけではなく,国家の枠組みを超えて人間の安全や生命をいかに守っていくかというヒューマン・セキュリティの考え方が重要となることが示唆された.
著者
井上 康二郎
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.411-426, 2011

慢性疾患の発生状況を示す罹患率は,通常前向き調査で大きな労力を必要とする.そこで,既存統計データを用いた,経年の連続する集団である年齢階級の有病率の差に死亡率を加算することで計算される式から,この推定の罹患率が計算できないか,糖尿病,高血圧性疾患,脳血管疾患について,その可能性を調べた.まず統計データである患者調査による,経年の有病率と,経年間の死亡率から計算される,理論的な年齢階級別推定罹患率(Age-Specific Estimated Incidence rate ; ASEI)の計算式を導いた.この式により,国際疾病分類での糖尿病,高血圧性疾患,脳血管疾患について,実際のデータを用いてASEIを算出した.また,ある保健所の死亡データから,その疾病の既往はあるが,死亡原因で他の疾患になっているものの総死亡数に対する割合(Rates of Persons who have Died by Another disease : RPDA)を算出し,死亡率にそれらのデータを加算して修正してから,ASEIを再計算した. 糖尿病のASEIは60歳でピークが見られたが,75歳以上で負の値であった.RPDAによる修正により,その負の値は,かなり0に近づいた.高血圧性疾患のASEIは65歳でピークが見られたが,80歳で負であった.RPDAによる修正によっても,その負の値は,ほとんど変わらなかった.脳血管疾患のASEIは80歳でピークが見られた.統計調査での1患者複数疾患のカウントによる有病率の推定や,前調査から現調査までにある疾患に罹っていたが現調査で異なる疾患に変化した人の全疾患に対する割合(Rate of Persons who suffered from the disease but Changed to Another disease : RPCA)を,付加調査として加えることにより,高齢者での負の推定罹患率は是正されるものと考えられた.また,推定治癒率(Estimated Cure Rate ; ECR)についても,実施された患者調査の患者についての後ろ向き調査による算出方法を検討した.また調査期間内に罹患し治癒したものについて,推定潜在罹患者数比(Estimated Potential Incidence Ratio ; EPIR)の算出も検討し,それらを式に組み込み,統計データを用いたASEIの計算式を完成した.
著者
塚原 貴子 矢野 香代 新山 悦子 太田 茂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.235-242, 2010

本研究の目的は,大学生が外傷体験を筆記により開示することが,心身の健康に及ぼす影響を検討することであった.実験参加者は,A大学の学生で研究の同意が得られた対象に外傷体験の重症度を測定する出来事インパクト尺度 (Impact of Event Scale Revised:IES-R) の調査を行い得点の高かった12名である.実験は,外傷体験を事実と感情に分けて15分間筆記した後に読み返しをするトラウマ筆記群と,1週間の日常を筆記する統制群とに無作為で分け,3日間行った.開示の影響を評価するため,IES-R調査の他に精神的健康度(General Health Questionnair:GHQ60)調査,唾液アミラーゼ活性によるストレス度調査,近赤外光トポグラフを用いた前頭部の血流測定,継続的な脈拍測定を行った.その結果,IES-R得点,GHQ60の得点がトラウマ筆記群で有意に低減した.身体的な評価指標には個人差があり,明らかな効果は認められなかったが,筆記による開示のストレス軽減効果の可能性は示唆された.
著者
田中 昌昭 川部 健
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.119-127, 1993

複素対数写像Z → lnZ+Cのスケーリング則について報告する.我々はこの写像のマンデルブロ集合におけるk-周期解領域の面積はk^-6でスケールされることを見い出した.これは対数写像に埋め込まれた円写像によって説明することができる.周期加算則もまたこの円写像の性質を用いることによって解明できる.周期加算則に関連して固定点領域との境界線に沿って悪魔の階段が現れることも示す.複素対数写像に見られるこのような現象は, この写像の背後にある, いわゆる2-frequency systemに起因する.