著者
佐々木 晶子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

河口干潟の高い生産性を支える有機物源の一つとして陸上植物の落葉に着目し、その分解過程と大型底生動物による利用状況の解明を目的とした。野外調査と室内操作実験からは、河口干潟に供給された落葉が比較的速やかに分解されることが示された。また、現地に試験的に設置した落葉には、特定の動物群の出現が確認された。これらの大型底生動物が落葉を摂食している可能性を検討した結果、餌資源としての寄与は小さいことが明らかとなった。以上のことから、河口干潟では供給された落葉の滞留は長期には渡らないが、ある動物群に生育場所を提供している可能性が示された。
著者
佐藤 正樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

アンナ・ルイーザ・カルシュ(1722-1792)はシュレージエンの極貧の家庭に生れ、子守と牛追いと女中奉公に明け暮れた少女時代と二度の悲惨な結婚生活を経て(カルシュはシュレージエンで庶民としてはじめて離婚を経験した)詩人となった。この研究は、啓蒙のプログラム--カントによれば、万人に宿る悟性を鍛練して自立した人間になること--のもっとも重要な手段の一つである学校教育を受けず、詩人としての訓練はおろか綴字法や句読法さえ習得しなかった女性が、なにゆえ一冊の書物としては18世紀全体をつうじて最高の売上高を記録した『精選詩集』(1763)を出版し、ドイツ最初の自立した女流作家となりえたか、この疑問に、近代教育制度の初期の女子教育やプロイセン建国途上の社会文化、啓蒙主義とそれにたいするアンチテーゼとして提案された天才讚美、感情・陶酔を重視した時代風潮、それにカルシュ自身の生活史とから答えようとするものである。カルシュが不可欠であるはずの作家修業を経ず、まっとうな教育さえ受けなかったという境涯の不利益を、克服ないし回避するためにとった「戦略」は、彼女が人為的な教育にその天才を損なわれていない「自然児」だという主張であった。天才は神ないし自然の賜物であり、教育はむしろ有害だという。カルシュとその周辺の知識人たちはこの時代の流れに棹さして詩人カルシュを宣伝したのである。他方、フリードリヒ二世はカルシュにとって二重の意味で--一つは結婚生活の軛からの、第二には貧乏生活からの--解放者となった。天才カルシュは自然児であることを利用しただけでなく、プロイセンの愛国詩人となる道を選ぶことによって、みごとに生き抜いたのである。カルシュはドイツ文学・精神史の潮流を利用しつくし、前例のない「出世」をなしとげた庶民の娘だった。そもそも啓蒙のプログラムの対象とはなりえなかったはずの女は早々にこのプログラムに見切りをつけ、天才と感傷と愛国精神とに乗り換えたのである。
著者
沖村 雄二 K.A QURESHI I.H HYDRI S H KHAN A N FATMI 星野 健一 中田 高 徳岡 隆夫 大槻 憲四郎 中村 耕二
出版者
広島大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

パキスタンは, ユーラシア大陸とゴンドワナ大陸の一部の大規模衡突に伴う多様な地質現象のあらわれているところとしてよくしられている. 本調査研究は, 典型的な前地摺曲衡上断層帯といわれるパキスタン西部一帯の堆積相・堆積盆の移行・構造地質学・変動地形学・地球化学的解析により, 衡突型プレート境界に於ける地質学的諸現象を明かにしようとするものであって, 複数の対曲構造と横ずれの造構史の解明は, わが国のフォッサマグナ対曲の成因にも新知見をもたらすに違いない.パキスタン国のインダス河下流域の西域一帯, バルチスタン州のほぼ全域にわたって, 層序・古生物・堆積学的研究(1), 構造地質学的研究(2), 変動地形学的研究(3)の研究組織を編成して, 大陸プレートの衡突側縁で形成されたと考えられるクエッタ対曲の北部域を精査し, 南部域については予察を行った. (1)の部門では, ペルムージュラ系としてその地質学的意義のまったく不明であったAlozai層群の層序区分と, 生物相・堆積相について研究(下記6・4)を行い, プレート運動と関連する付加複合地質帯としての解析をすすめている. その一部は, 日本地質学会第95年々会(1988,4.)において発表される予定である. (2)の研究組織は, すでにICL(CC6)UNESCO国際セミナーでゴンドワナーユーラシア大陸の分離と衡突の過程について, その年代と特性を明かにした研究結果の一部を発表した(下記6・1および第1図). この研究分野では, さらに地球化学的解析(EPMAによる岩石学的・鉱床学的研究)をくわえて発表結果の裏ずけを進めるとともに, 有効資源の開発のための資料をつくりつつある. (3)については, ランドサット・空中写真地質解析と現地調査結果の一部であるパキスタン全域における活断層と変位量の解析結果を, (2)と同じ国際セミナーで報告し, さらに大陸衡突による地形の変動過程を明かにする研究をすすめている. また日本地理学会1988年春期大会において, この研究資料をもとにヒマラヤの応力場の問題が発表される予定である.なお, この海外学術研究については, 共同研究先のパキスタン地質調査所が, "Geology of Baluchistan, Pakistan"の出版計画を持っており, 研究の続行を強く希望している.
著者
山田 隆 藤江 誠
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

青枯れ病菌巨大ファージRSL1ゲノムに検出した343個の遺伝子を対象にDNAマイクロアレイ解析を行い、感染期における4つの発現パターンを検出しゲノムマップ上に塗り分けた。持続的感染期に発現する12個の遺伝子を同定し、宿主菌増殖抑制/活性化制御等に関する機能解析を行い興味深い新規知見を得て、当初の目的を達成できた。病原細菌を薬剤を使わずファージを用いて持続的に制御する新システムとして重要と思える。
著者
水野 陽一
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

わが国において、被害者参加制度の導入以後、犯罪被害者に対して訴訟参加者としての地位が認められることになった。被害者保護の重要性について疑いはないが、一方で無罪推定原則が妥当するはずの刑事訴訟において、なぜ「被害者」という存在が観念されうるのか、といった問題もっとに提起されている。公判における被害者参加が、被告人の防御権に対して大きな影響を与えうるのだということを考慮に入れた上で、我々は刑事訴訟における被害者保護の充実を図ると同時に、それによって被告人の防御権が侵害されないように十分な配慮を図る必要がある。被害者には、本来犯人に対して刑罰の賦課を求めることが許されるものである。しかしながら、現行の刑事訴訟制度において、被害者に対して認められる権利は、公益の範囲内に限定されるものであるといえる。すなわち、被害者には公益を損なわない範囲で適正な刑罰権の執行を求めることが許されるものであるといえるが、当該権利が被害者の恣意的な意思に基づいて行使されることは許されない。また、刑事訴訟の目的は、現行制度において適正な刑罰権の執行であるとされるべきであり、現状において、刑事訴訟における被害者に対して行われるべきは、その損害回復に重点を置いた施策であるように思われる。この点について、ニュージーランドにおける修復的司法制度の議論に関わる研究が有益なものであり、被害者の損害回復にとって社会共同体の果たすべき役割が重要なものであり、被害者保護に関して、刑事訴訟外における制度的充実を図ることが重要であることを明らかにした。以上の成果を基礎として、来年度以降刑事訴訟における被害者の法的地位についての研究を更に深化させていく所存である。
著者
青木 多寿子 橋ヶ谷 佳正 宮崎 宏志 山田 剛史 新 茂之
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

東京都のA区が取り組み始めた人格の完全を目指した品性・品格教育を、研究者で支援するのが本研究の目的である。本研究の3年間の目的は、(1)品性・品格教育の全国初の実践に向けて、取り組みの理念や教育的意義を、教員や保護者に向けて正確に伝えるため、教育委員会の活動を支援すること、(2)品性に関する教育の成果を、well-beingとの関係を中心にアンケートで調査し、この取り組みをエビデンス・ベースの展開にすること、(3)アメリカで教員達に品性・品格教育を教え、全米で学校を支援しているボストン大学の先生をお招きし、A区の品性・品格教育にコメントしていただき、旧来の教育と違った新しい視点を取り入れることである。本年度はまとめの年なので、(1)、(2)を中心に行った。(1) 地域の保護者向け講演会、校内研修会、教育委員会主催の研修会等で、交通費、講演料なしの講演を行い、全区実施に向けて教員研修等のお手伝いをした。また、教育委員会は、全学区で使用する教師用手引き書を作成したが、これを作成する際、知識提供、翻訳した資料の提供を行った。(2) アンケート調査は、A区が取り組みを始める前の段階から毎年、2月に調査を行っている。今回で4回目のアンケートを実施した。3回目までのまとめは、アンケートに協力してくださった学校と教育委員会にお伝えした。この分析の結果、規範意識は確かにwell-beingと関わっているが、その教育の成果の様相は内容(根気、活力、寛容など)によって多様であることが窺えた。(3) 昨年のボストン大学の教授による講演の逐語録をまとめ、多くの方に配布できるようにした。
著者
山崎 昌廣 長谷川 博
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

脊髄損傷者(脊損者)の発汗機能は基本的には脊損レベルに依存しているとされているが、これまでの研究では脊髄損傷(脊損)レベルと発汗障害部位および発汗量の関係については明確にされていない。特に暑熱環境下における運動時の発汗応答に関する研究はほとんど行われていない。そこで、本研究ではまず脊損レベルと発汗部位との関係を明らかにすることを目的とした。また、暑熱環境下での運動中の飲水により発汗および体温がどのように変化するのかを健常者と比較し、さらに冷却ジャケットが脊損者の体温冷却にどれほど有効な手段なのかを検討した。対象とした被験者は成人男子で、損傷レベルはL1〜Th6であった。暑熱環境に暴露した際の安静時局所発汗量は脊損レベル別および部位別による顕著な違いが観察された。前額部、胸部および腹部では全被験者において明らかな発汗が観察された。一方、大腿部および下腿部では発汗量は少なく、Th6およびTh7の被験者では発汗がまったく観察されなかった。暑熱環境下における運動時の全発汗量は運動30分後および運動終了時とも、上位脊損者群が低い値を示した。しかし、下位損傷者群と比較して統計的有意差は認められなかった。大腿部および下腿部皮膚温は上位損傷者群が有意に低い値を示したが、前額部、胸部および上腕部の皮膚温には有意差は認められなかった。また、鼓膜温は両群に有意差は認められなかった。局所発汗は脊損レベルの影響が顕著であったが、全身発汗量はそれほど損傷レベルの差は認められず、その結果暑熱環境下の運動時体温調節において上位脊損者群と下位脊損者群には顕著な差はないと結論することができる。脊損者に対する体温冷却効果は健常者と同様に、飲水に加え冷却ジャケットを着用すると、循環系の負担が軽くなり、さらに体の許容蓄熱量に余裕ができ、運動中の体温上昇が抑制されることが明らかとなった。
著者
小早川 誠
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

外来化学療法中のがん患者の精神症状評価システム開発をめざし、看護師によるつらさと支障の寒暖計と精神科医による症状評価システムの実施可能性について検討した。外来化学療法中のがん患者130名に調査を行い、強い精神的つらさを示した38名のうち、6名が精神科医による面接を希望した。残り32名のうち、半数はその後の寒暖計調査で閾値を下回った。対象者において精神的支援の潜在的ニーズはあり、一部の対象者には介入効果があったと考えられる。
著者
Lauer Joe Yamada Jun
出版者
広島大学
雑誌
広島外国語教育研究 (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.133-140, 1998-03-31

本報告書は,現在,英語教育と第二言語習得の分野で最も高度な研究が行われているトロント大学のオンタリオ教育研究所とミシガン州立大学を対象にした調査研究である。筆者らは,両機関のスタッフに対して面接調査およびアンケート調査を行った。調査内容は,(1)研究分野のバランス・分布,共同プロジェクトの構成,個人研究の内容・評価,研究の一般的アプローチ・特色,関連諸科学との学祭性などの研究条件,(2)大学院レベルの教育内容および教育条件を中心に,多岐にわたっている。また,施設・設備の見学、自己点検にかかわる資料等の収集、および大学院生等への面接調査を実施しており、これらの結果に基づいて、広島大学外国教育研究センターのめざすべき目標と担うべき機能について考察を加えた。
著者
高橋 弘充
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、我々が日米欧共同で開発・製作したPoGOLite検出器をもちいて「はくちょう座X-1」から硬X線偏光を検出することを目指した。2011年度・2012年度では天候などによりPoGOLite気球の放球を実施・成功させることはできなかったが、2013年度には初めて放球に成功した。フライト中には、「はくちょう座X-1」だけでなく他のブラックホール連星系GRS 1915+105やパルサー星雲である「かに星雲」の観測を実施することができた。
著者
三村 真弓 吉富 巧修 北野 幸子 水崎 誠 藤原 志帆 伊藤 真 小長野 隆太
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、主として、幼稚園児・小学校児童・中学校生徒の音楽的リテラシーの実態調査、現在及び過去に行われた音楽的能力育成を目指した音楽教育指導法の分析と音楽的能力調査方法の分析を行った。その結果、音楽的リテラシーの発達の諸相、音楽的リテラシー育成のための必要条件等が明らかとなった。それらをもとに、音楽的リテラシーの育成を目指した小中連携の音楽科カリキュラムの試案作成を行った。
著者
滝本 和広
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

完全非線形楕円型・放物型偏微分方程式に対し,その境界値問題の可解性や解の振る舞いについて研究し,非線形現象の解明を目指した。幾何学的な構造を持ったk-曲率方程式と呼ばれる完全非線形偏微分方程式の境界爆発問題の解の一意性,および平均曲率型の準線形放物型方程式における正値定常解の解構造および放物型方程式の解の時間無限大における挙動に関する新たな研究結果を得た。
著者
SADATOMO Takashi YUKI Kiyoshi MURAKAMI Taro MIGITA Keisuke TANIGUCHI Eiji KODAMA Yasunori
出版者
広島大学
雑誌
Hiroshima journal of medical sciences (ISSN:00182052)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.91-97, 2003-12

A 35-year-old man presented with a sudden headache and disturbance of consciousness. On admission, his consciousness level was Japan Coma Scale 100. Computed tomography disclosed a subarachnoid hemorrhage (SAH) and right cerebellar hematoma. Angiography was performed and, at first, arteriovenous malformation of the posterior fossa was diagnosed. Then external decompression of the posterior fossa and ventricular drainage were performed, followed by barbiturate therapy. Repeat angiography revealed that the lesion was a venous angioma with arteriovenous shunts. On day 37, subtotal removal of the lesion was performed. Intraoperatively, acute brain swelling emerged and partial internal decompression of the right cerebellar hemisphere was performed. The postoperative course was comparatively good and the patient was discharged with very mild ataxia. The patient is now being followed up in our outpatient clinic.
著者
吉田 光演
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ドイツ語指示詞der、英語this/that、定冠詞der、日本語指示詞コソアに着目し、先行研究の検討とWeb上のデータの比較を通じて、それらの意味の共通性と相違を考察し、次の点を明らかにした。(1)発話場面の直示と文脈照応の機能は指示表現という点で統一的に把握できる。(2)近接・遠距離の対立はドイツ語では明示的ではなく、近接と非近接のdieser, derの対比がある。(3)日本語のソ系とドイツ語derは、距離と無関係に話者の視点に応じて指示対象が変動する。それは、話者が直接に操作できない間接的参照視点が介在する変項解釈や、人称代名詞との対比で話題転換を導入する役割を果たす。
著者
石井 良昌 上田 毅
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

近年,障害者スポーツはリハビリテーション分野のみならず学校教育やスポーツ現場において広がっており,様々な環境下で運動活動を行う機会が増えてきている.我々は,過去においてダウン症や自閉症などを有する知的障害児・者の運動様相の違いに関してバイオメカニクス的な手法を用いて科学的にとらえて検証を行ってきた.従来行われてきた知的障害児・者に対する研究は,研究室内で環境を一定にした状態で行われた研究や対象数の少ない事例報告が多かった.今回の研究では,軽量化で携帯が可能となった無線の測定器を対象者に装備させて,様々な環境下で行われる実際の集団スポーツ活動中の生体変化について測定を行うものである.本年度は知的障害児における夏期の体育活動時の心拍数について検討した.対象は,知的障害をもつ児童4名(男性2名、女1生2名:平均年齢9.0歳)であった.夏期(気温31.2℃、湿度68%)の屋内体育館で体育活動(約30分間)を行い,その間の心拍数(Polar社RS400)を経時的に計測した.体育活動の内容はウォーミングアップ(ストレッチ、ジャンプ、ランニング)3分,休憩1分,なわとび2分,休憩6分,バレーボール10分,クールダウン(ジョギンク)2分であった.運動指導は経験の多い指導者1名が,集団指導(7名)の形で行った.その結果,4名の平均心拍数は安静時では99.8±142bpmであったが,運動中ではそれぞれ準備運動147.3±8.8bpm,なわとび161.5±9.9bpm,バレーボール137.0±21.3bpm,ジョギング164.5±22.9bpmであった.また,最高心拍数4名ともにランニングおよびなわとびの際に187-205bpmの高値を示した.体育運動中に元気な活動をしているようにみえても,比較的高い心拍数を示していた.特に夏期の暑い時期には、休憩を多く取るなど十分な配慮を行いながら行うべきであると考えられた.
著者
小林 敏生 影山 隆之 久保 陽子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

定年退職時期にある男性労働者への健康支援策を構築するために,メンタルヘルスへの影響要因を明らかにすることを目的として,健康感,生活満足度,ストレス関連項目,抑うつ度,および Social Capital(SC)について,インタビュー調査と質問紙調査を行った.その結果,メンタルヘルスは退職に向って改善を示し,その改善には,ストレスの低下,適切なコーピング特性,高い SC が関与していた.退職期の労働者のメンタルヘルスの保持には,職場のストレス対策に加えて,労働者個人の SC を高めることが重要と考えられた.
著者
難波 愼一 岸本 牧 長谷川 登
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高強度プラズマX線レーザーと物質との相互作用,特に,非線形X線吸収現象を電子分光により明らかにすることを目的として実験を行った.ここで,X線レーザーの発振波長は13.9 nmであり,Xe原子の場合には4d内殻電子を光電離することができるため,内殻電離誘起強結合プラズマが発生する.本研究では原子・クラスターを対象とし,この非線形光学効果の寄与,及び,発生するプラズマの特性を明らかにした.
著者
小西 克巳
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

厳密解の許容誤差を考慮した制御系設計のためのBMI問題の厳密解法の研究を行った。厳密解の許容誤差と制御対象のモデル誤差の関係を導くために、平成15年度は具体例として2自由度PID制御系設計問題を扱った。一般的なBMI問題を解くには、その問題から派生するBMI最大固有値最小化問題を繰り返して解く必要がある。BMI問題の解を固定し、BMI最大固有値最小化問題を解いたとき、得られた解が0以下であれば、元のBMI問題に解が存在することがわかる。ことのき、BMI最大固有値最小化問題の最適解が0以下出なく、ある値ε(<0)以下であるようにとけば、BMI問題の許容誤差をある程度大きくしても良い解が得られることがわかった。また、このようにして得られた解の精度はBMI問題のラグランジュ緩和問題を導くことである程度見積もれることもわかった。しかし、一般的な厳密解の許容誤差と制御対象のモデル誤差の関係を導くには至らなかった。これは今後の課題である。本研究では多くのBMI問題を解く必要があったため、本研究に付随する研究として並列分枝限定法の研究を行い、並列分枝限定法を実装した。これにより複数のPCを用いて並列にBMI問題が解けるようになった。8台のPCで解いた場合、1台のPCで解くよりも5倍程度の速さで解ける。この並列分枝限定法の実装により、BMI問題の厳密解法の研究効率の向上が期待される。