著者
佐々木 和夫 木谷 晧
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

本研究では、パラジウム系触媒と水素、酸素を用いて、一段階で高純度の過酸化水素を得ることを目的として、気相及び液相の二種の反応系について検討し,以下に述べる成果を得た。1.水素、酸素同時通気法による過酸化水素の一段合成気相法では、シリカゲル上にパラジウムを担持した触媒を用いて、条件を種々変化させて詳細に検討した。しかし、生成する過酸化水素を触媒相から搬送させることが因難であり、気相法は不適であると結論した。従来知られている液相一段合成法では、過酸化水素の分解を防ぐために安定剤を添加する必要があり、高純度の溶液が得られなかった。本研究において、担体であるシリカゲルの表面をトリメチリシリル化して疎水性にすることにより、過酸化水素の生成速度及び溶液濃度が著しく増加し、高純度の過酸化水素水溶液が得られることを見い出した。しかし平衡濃度は製品として利用できるほど高くなく、濃縮工程が必要である。このため、本法を過酸化水素のin situ発生法として用い、生成する過酸化水素を有機基質と反応させて酸化生成物を得る方法について検討した。2.過酸化水素を利用する芳香族化合物の酸化反応ベンゼンを溶媒として、パラジウム触媒分散下で水素、酸素の混合気体を通気すると、選択的にフェノ-ルが得られることを見い出した。実験条件を詳細に検討してフェノ-ル生成の最適条件を決定すると共に、水酸化反応は触媒上で生成する過酸化水素を経由することを明らかにした。また、安息香酸やナフタレンのような固体の基質については、酢酸を溶媒に用いることにより、同様に水酸化反応を効率よく行えることを見い出した。更に気相反応によるベンゼン酸化についても検討した。パラジウム触媒ではフェノ-ルは殆ど生成しなかったが、銅を共担持させると著しく触媒活性が向上した。
著者
根本 裕史
出版者
広島大学
巻号頁・発行日
2009

博士論文
著者
深澤 義正
出版者
広島大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

[2,3]-Wittig転位反応は、代表的なC-C結合生成反応の一つであり、協奏的シグマトロピー転位で進行すると考えられている。多置換二重結合をもつ誘導体の[2,3]-Wittig転位反応では、生成する炭素-炭素結合上に新たな不斉中心が生成し、合成的に極めて有用な手法と考えられている。この反応の遷移状態については現在までに三つのモデルが提案されていた。我々は、これらのすべての遷移状態の詳細な構造を非経験的分子軌道法を用いて求めることに成功した。固有反応座標の解析により、その内の一つは段階的機構に対応することがわかった。しかし、段階的機構は活性化エネルギー(MP2/6-31+G^*〓3-21Gレベル)の点からは他の二つの協奏機構よりも有利であることがわかった。段階的機構においては、Liと同じ側に広がったアニオン軌道を使って二重結合に攻撃しており、アニオン中心の立体化学が保持されるように反応が進行することがわかった。これに対してて二つの協奏機構のうちの一つはアニオン中心の立体化学が反転する機構で反応が進行していることが明かとなった。我々は更に、これらの遷移状態の構造を用いて、大環状アリルエーテルにおける転移反応の立体選択性についてab initio-MM2遷移状態モデリング法を用いて解析を行った。この方法では反応に直接関与する反応中心部位の構造に上で求めた遷移状態の構造を用い、反応に直接関与しない部位をMM2で計算し、分子全体の遷移状態の構造とエネルギーを求めるものである。計算の結果は大環状アリルエーテル中のジエンの幾何異性の違いによる不斉転写反応による選択的なアルコール体への変換をよく説明できる事が明かとなった。
著者
松尾 千秋
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域 (ISSN:13465554)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.319-325, 2005-03-28

The purpose of this study is to explore the conduct of Japanese folk dance in physical education, on the image through audio-visual aids, videotapes. One of them is "Soran-bushi", the other is "Hanagasa-ondo" by several productions. The subjects of this study are 118 university students. The results of this study are as follows: 1. They are tend to have heavy, dark, irregular, tender, strong and difficult image from the words "Japanese Folk Dance". 2. Though "Soran-bushi" and "Hanagasa-ondo" belong to the same Japanese folk dance, the images from each of them are diffrerent becouse of the specific characeristics of a region and a way of life. 3. Though the same number "Soran-bushi", the different arrange of music give birth to the different coreograghy and the different image. 4. The newer the videotape, the more beautiful, light, strong, difficult and large the image. Because of the change of the image of Japanese folk dance through audio-visual aids, videotapes, we can organize the new knowledge for Japanese folk dance in physical education. And to the folklore and the recreat of Japanese folk dance we must explore into teaching material agreeable to the learners' rhythm of the age.
著者
石附 実
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.183-200, 1982-12
著者
吉川 峰加 栢下 淳 津賀 一弘 木村 浩彰 吉田 光由
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

背景:本研究では,全身の機能と口腔機能との関連を横断調査で確認し,希望した者に栄養指導または口腔リハビリテーションを8週間実施することで,半年毎に平成31年秋まで全身・口腔機能に変化があるか否かを確認することを目的とした.方法:対象者は自分の歯または義歯等で咬合の安定している41名(男性17名,女性24名,68-90歳)とした.全身疾患,服薬状況,日常生活に関する質問票,MMSE,EAT-10,MNA-SF,口腔機能評価としてディアドコキネシス,最長発声持続時間,3オンステスト,口腔湿潤度,咬合力検査,舌圧検査,咀嚼能率検査を実施した.また握力,歩行速度,膝伸展力を計測し,栄養調査とINBODYによる体組成調査を行った.結果:協力者は皆高血圧等の全身疾患を有するものの自立して日常生活を送っていた.前向き調査へ参加できている者は,対照群18名(男性9名,女性9名),栄養指導群13名(男性6名,女性7名),口腔リハ群8名(男性3名,女性5名)であった.第一回目の調査結果より,MNA-SFで低栄養の疑いのあった者は8名(男性2名,女性6名),サルコペニアの者は7名(男性3名,女性4名)であった.これら低栄養やサルコペニアを呈する者は舌圧やEAT-10との相関が認められなかった.また舌圧が20kPa未満の者において,EAT-10 の錠剤服用困難感の項目で関連を認めた.加えて,女性において舌圧と膝伸展力に有意な相関を認めた.まとめ:本研究協力者は日常生活を自立して送る,健康に自信のある者が大多数であったものの,サルコペニアやオーラルフレイルを有する者が存在した.また栄養調査より,高齢者の栄養や運動に関する知識に偏りを認め,今後我が国の健康寿命延伸の上で,大きな課題が浮き彫りとなった.
著者
横山 知子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

2007~2008年に広島・長崎放射線影響研究所において行った、原爆被爆者の緑内障調査の全データを解析した結果、原爆被爆者において、正常眼圧緑内障と被爆線量には有意な正の相関を認めることがわかった。正常眼圧緑内障の発症メカニズムはいまだ不明であるが、循環障害の関与が疑われている。そこで、眼局所の循環障害に関連すると考えられる網膜細動脈硬化と、被爆線量との関連を調べたが、有意な相関を認めなかった。
著者
金仙 煕
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域 (ISSN:13465554)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.281-289, 2002-02-28

Korean envoys were sent on 12 occasions to the Tokugawa administration during the Edo period. Today, They are considered as a model of "good neighborly friendship". However, the written transcripts between these people do not give this image. Hayashi Razan had relations with the first Korean Envoy until the 6th Korean envoy. In this paper, through the transcripts betweem Hayashi Razan and the Korean envoys, I hope to establish what images they had of eadh other before and after their meetings.
著者
内海 兆郎
出版者
広島大学
雑誌
広島大学医学雑誌 (ISSN:00182087)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.145-153, 2002-12-28

日本中毒学会「分析のあり方検討委員会(現分析委員会)」による,分析結果が治療に有用とされる15品目の中毒起因物質のうち,テオフィリンを除外した14品目について,臨床現場で得られる少量の生体試料からどれだけ迅速に何種類の検査が可能であるかについて検討した。本システムを構築するにあたり,生体試料を分析対象とした検査法のなかった有機リン系農薬,アセトアミノフェンは独自に開発し,環境検査用に市販されている検出キット(メタノール,青酸化合物,ヒ素化合物)は,生体試料に適用できるよう検討した。その結果,市販されていた5種のキット,独自に間発した2種の検出キットと2種の反応系によって,試料(尿および血清)1mlから14品目の中毒起因物質を1名の検査者が2時間で推定できた。また,実際の中毒4例に本システムを用いたところ,中毒起因物質の推定が可能であった。それぞれの検査法は注意点や改良点がいくつかあるが,臨床現場で得られる少量の試料から中毒起因物質の推定が可能となり,治療方針を決定するうえで有用であることが示唆された。
著者
神薗 紀幸 黒川 正流 坂田 桐子
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.93-104, 1996-12-28

Through this research, we studied how love affairs affect the self identity and mental health of young people. We classified 109 male and 193 female undergraduate students into people in love and people not in love based on questionnaires completed by the students. As a results of comparing both groups, those who were in love reported high self-esteem, fullness scores and low depression scores in comparison with those who not in love. Those who were in love continuously tended to mark high brightness, friendliness, honesty, sensitivity, and the opposite sex role scores in comparison with those who were not in love. We discussed about the characteristics of young people in progress of personal relationships.
著者
福本 景太
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションおよび相互関係における障害と、限定的な反復行動等の行動異常を有する神経発達障害である。我々は以前、ASD様行動を示すモデルマウスに共通して、大脳皮質のスパイン動態に異常があることを明らかにした。しかしこれまで、ASDにおいてスパイン動態の異常を誘引する分子メカニズムは明らかになっていない。そこで我々はASD患者において頻繁にみられるヒト染色体15q11-13領域の重複を模したモデルマウス、patDp/+マウスを用いてスパイン動態へ影響する分子の探索を行った。本重複領域には4種類の父性染色体由来発現遺伝子、Mkrn3、Ndn、Magel2、Snrpnが存在するが、これらがスパインへ及ぼす影響は不明であった。最初に、大脳皮質第II/III層の錐体細胞へ4つの標的遺伝子を各々過剰発現し、生後3週齢でスパイン動態の計測を行った。その結果、Ndn過剰発現群ではスパイン形成が促進され、逆にNdn KOマウスではスパイン形成が阻害されていた。次にスパインを形態的に分類した結果、Ndn過剰発現群では未成熟なスパインが増加しており、Ndn KOでは逆の影響がみられた。さらに電気生理学的解析から、Ndn過剰発現群ではmEPSPの振幅と頻度の減少がみられた。次にpatDp/+マウスの大脳皮質を用い、シナプトソームのプロテオミクス解析を行った。その結果、patDp/+マウスにおいて数十種類の蛋白質が変動しており、その中でもStau1とTom1に関しては、 Ndn KOマウスの大脳皮質において、遺伝子発現量が変動していた。以上の結果から、NdnはStau1やTom1などの分子を制御し、未成熟なスパインを増加することで正常なシナプス形成を阻害すること、その結果、神経の電気活動に影響を及ぼすことで、ASD発症に関与している可能性が示唆された。