著者
桂 紹隆 稲見 正浩 小川 英世
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、ディグナーガの主著『集量論自注』(Pramanasamuccaya-vrtti)の第5章「アポーハ論」の詳細な和訳研究にあった。そのため、上記の研究組織に、原田和宗・本田義央の両氏をくわえて、同書の読書会を定期的に開催した。その際、従来十分に利用されてきたとは言いがたいジネーンドラブディの『復注』(Tika)の重要性に着目し、その和訳研究にも並行して取り組んできた。その結果、次の様な重要な方法論的問題を自覚するようになった。すなわち、大変不完全な2種のチベット語訳しか存在しない『自注』の解釈にあたっては、従来の研究者が試みてきたように、出来るかぎりのサンスクリット断片テキストを収集して、原型としてのサンスクリット・テキストを想定した上で理解するのが最も有効な方法である。我々の研究グループにおいても、既に原田氏によって、ジャンブヴィジャヤ師の梵文還元の試みに基づく、貴重な還元サンスクリット・テキストが完成されている。また、それに基づく和訳も原田氏のものと、研究代表取者桂のものが、準備されつつある。いずれ近い将来に公刊の機会を得たいと願っている。他方、比較的良好なチベット訳が1本存在する『復注』の場合は、必ずしも『自注』と同じ方法論が適用できないことが判明した。勿論、ジャンブヴィジャヤ師は、常に還梵テキストの提示を試み、成功してきたのであるが、以下の我々の和訳研究が示唆するように、『量評釈自注』(Pramanavarttika-Svavrtti)などの引用を除いて、サンスクリット断片が極端に少ない『復注』の場合還梵テキストの提示は必ずしも容易ではないし、また、あまり実りの多いものとは言えない。むしろ、かつてシュタイケルナ-が提案した、断片テキストの階層的処理というプラマーナ・テキスト研究の方法論を積極的に適用すべきである。
著者
近藤 俊明
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

新たに開発した花粉一粒の直接遺伝解析を用いて、個々の訪花昆虫に付着した花粉一粒ごとの遺伝的組成を評価することで、東南アジア熱帯雨林の一斉開花現象における送粉システムの解明を試みた。その結果、東南アジアの熱帯雨林では、アザミウマを中心とした食物連鎖網に基盤をなす他殖種子の生産によって森林の更新が行われていることが明らかとなった。
著者
長澤 和也 DANNY Tang
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

わが国では近年,気温の上昇ばかりでなく,周辺海域における海水温の上昇が観測されており,地球温暖化が現実のものとなりつつある。水産分野で早急に対処しなければならないのは,地球温暖化による漁業生産への影響評価である。本研究では,1)沖縄産亜熱帯性魚類に寄生するカイアシ類の分類学・生態学的特性を明らかにするとともに,2)地球温暖化に伴う彼らの本土侵入を予測し,わが国の水産養殖業における病害虫としての彼らの影響を評価することを目的とする。本年度も,昨年度に引き続き現地での標本採集を行って同定するとともに,地球温暖化に伴って本土に侵入する種を推測した。得られた知見は以下のとおり。(1)沖縄県沿岸・近海で漁獲された海水魚を入手して寄生虫学的検査を行い,得られた寄生性カイアシ類の同定を行った。大きな研究成果として,アマダイ類の鰓に寄生するカイアシ類を新科Pseudohatschekiidaeとして認め,記載した。(2)人工飼育下(水産研究機関・水族館)の海水魚を調べ,寄生性カイアシ類の同定を行った。ハタ類からレペオフテイルス属の1種,ジンベエザメからプロシーテス属の1種が採集された。後者の分類・同定には混乱が見られたので,形態を詳細に観察して,この問題を解決した。また,前者は亜熱帯性で,水産養殖上重要なハタ類に特異的に寄生し,重度寄生の場合には宿主の斃死を招くほど病害性が高いことが判明した。
著者
楯 真一
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

酵母基本転写因子 Tfa2 を対象として,Mediator サブユニット Gal11 結合を担うintrinsically disordered (ID)領域(Tfa2-mbd: Tfa2 mediator binding domain)の立体構造解析を,13C 検知および 1H 検知多次元 NMR スペクトルにより行った.ID 領域特有のNMR シグナルの重なりを,シグナルの分散の良い 13Cおよび 15N の化学シフト軸で展開する 3D スペクトルを用いることで効率的にシグナル帰属をすすめた.その結果,Tfa2-mbd は,(1)過渡的に低存在率の3本の helix からなる構造を取ること,(2)この過渡的立体構造形成は,ホモ二量体構造形成と連動すること,(3)さらに,過渡的に形成される Tfa2-mbd は,Gal11 との結合に不可欠であることを明らかにした.今回の研究を通して,Tfa2 の ID 領域が過渡的に形成する低存在率構造が,Gal11 を介した基本転写因子のリクルートメントに関わることを示した. ID 領域の過渡的構造形成を利用する機能制御機構という新しい機能的側面を明らかできた.
著者
下村 義治 吉田 博行 吉田 直亮 桐谷 道雄
出版者
広島大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

前年度迄に開発製作した極低温中性子照射した金属試料の電子顕微鏡用の4.2Kクライオ・トランスファー・ホルダーを改良して現在9K迄試料装填部の温度を下げる事に成功し4.2Kに今一歩に迫る性能向上をはたした。更に本年度はこのホルダーの先端試料部にクライオ・トランスファー時に取り付ける真空チェンバーの製作を完了した。これらホルダーおよび真空チェンバーを装備して中性子照射済の試料を中性子極低温照射用クライオスタットからホルダーに極低温にて移し変えてクライオ・トランスファー・チェンバーで真空引きしたままのせて電子顕微鏡試料室まで移動するための車およびそれに関連する装置も完成した。回転ターゲット核融合中性子源(RTNS-【II】)にて照射のための装置を総て開発完了後,日米科学技術協力事業(核融合)の実験の実施のため本試験研究にて開発した装置は昭和61年4月米国ローレンス・リバモア国立研究所に送り昭和61年6月及び昭和62年1月の二度にわたり本研究代表者らが派遣されて極低温核融合中性子照射した金属試料の極低温クライオ・トランスファー電子顕微鏡観察法による中性子照射損傷の基本単位である変位カスケード損傷欠陥の形成直後の観察に成功して、損傷過程の基礎過程の解明に大きく寄与した。核分裂中性子による極低温照射した試料のクライオ・トランスファーのための試料クライオ移送室の開発も考え方の点ではほぼ終了しているが、一部装置の製作を経費不足の点で残している。現在米国より送り返されているクライオ・トランスファー装置の日本への致着を待って残りの装置の製作を完了して京都大学原子炉実験所にて核分裂中性子照射実験をスタートする予定である。また重イオンによる低温照射した電子顕微鏡試料の極低温クライオ・トランスファー電子顕微鏡観察可能な照射試料室も今後製作して変位カスケード損傷過程の研究を行うよう続いて計画している。
著者
高須 深雪 田中 信弘 坂井 晃 粟井 和夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

多発性骨髄腫と対照間で骨梁幅、骨異方性度、フラクタル次元に有意差を検出した。胃切除後症例と対照間、および肝動脈塞栓療法除後症例と対照間で続発性骨粗鬆症有病率、骨梁パラメータおよび有限要素解析による破壊荷重、スティフネスに有意差を検出した。横断的検討では多発性骨髄腫骨折群と非骨折群間で、骨梁パラメータおよび機械特性に有意差を検出した。平成23年度よりcalibration phantomを用い、CTによる体積骨密度および組織骨密度で評価している。上述の各検討において組織骨密度に有意差を検出している。
著者
黒川 隆志 上田 毅 黒坂 志穂
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

持久走中の生理学的特性や運動学的特性,走者の意識から生涯体育につながる持久走の指導法を検討した.小学5年生男子30名(1,000m),中学2年生男子57名(2,000m),高校2年生男子27名(3,000m)を対象に,①最大努力の全力法,②「ややきつい」感じのRPE法,③走能力により走距離を選択する内回り法の3つの持久走を実施した.中学生と高校生の全力法では走速度と心拍数の経時的低下から,高い運動強度による疲労感や痛みが持久走嫌いを助長した.RPE法と内回り法では持久走中,走速度と心拍数が維持された.RPE法が最も好まれた方法であった.小学生では,3種類の持久走間に顕著な差はなかった.
著者
唐川 修平
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、患者由来iPS細胞を用いることで、十分量の顆粒球系細胞が入手できないという従来の問題点を克服し、好中球減少に至る分子病態のの基盤を明らかにすることを目的としている。健常者コントロール、SCN(重症先天性好中球減少症)由来、CyN(周期性好中球減少症)由来のiPS細胞を樹立し、血清および支持細胞フリーでのiPS細胞から血液細胞、さらに顆粒球系細胞への分化誘導法を確立した。SCN-iPSにおいてはCD34陽性細胞のコロニー形成能や細胞増殖能が不良であり、早い分化段階からの障害が好中球減少の重症化を引き起こすことが示唆された。
著者
草原 和博 棚橋 健治 溝口 和宏 桑原 敏典 鴛原 進 橋本 康弘 山田 秀和 渡部 竜也 藤本 将人 田中 伸 田口 紘子 後藤 賢次郎 小川 正人 川口 広美
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,社会科教育研究の日米比較を通して,それぞれの学界で確立されてきた研究方法論を抽出し,再構成することで,国際的な研究交流にたえうる「研究法ハンドブック」を開発しようとした。米国の研究者を招いたシンポジウムでの討論と聞き取り調査,ならびに文献調査を踏まえて,効果が期待される以下3つの方法論を導出し,論文作成の手続きを定式化することができた。(1)規範的・原理的な提言(2)実験的・実践的な開発(3)実証的・経験的な研究。
著者
升島 努 津山 尚宏 水野 初 原田 隆範
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

細胞1ヶ生きた様子を見ながら、変化の瞬間、その細胞1ヶの中見たい所を吸引し、10分以内にその分子群を質量分析で網羅的に検出する事に世界で初めて成功した。本手法をアレルギー細胞の細胞質と小器官の一つ顆粒内の分子分布・代謝解析、神経分化細胞の分化時の分子変化、植物の光応答や機能分子生成、薬物の肝臓細胞での代謝直接分析、その超微量性を生かして、汗腺一滴の分子分析に応用し、その豊かな可能性を検証した。
著者
市川 貴子
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

中学校技術家庭科技術分野(以降、中学校技術科)において、身近な機構の学習内容を通して、技術的なものの見方・考え方を育てる授業について検討し、実践を行った。学習指導要領の改訂により、中学校技術科では、技術を適切に評価・活用する能力と態度を育成することが重視されるようになった。技術を評価する力を育成するためには、技術に関する基礎的な知識に加えて、技術的な評価の視点をもつことが必要である。そこで、ロボット製作など機構の学習において重要である強度設計や機能設計の学習内容を検討すると同時に、エネルギーや開発コスト、製品寿命等のトレードオフについても発展的に学習できる教材を開発することを目的とし、実践した。授業実践では、傘や文房具など身近な道具に使われている機構を予想し、解析することを通して、運動を変換する機構や、効率的に力を伝える機構の学習を行った。また、模型の製作を通して、同じ仕事をする道具にも複数の機構があることに気がつかせた。例えば、穴あけパンチの場合、紙の差し込む位置がレバーの手前からものと、向こうからのものがある。より多くの紙に穴をあけられるものは、ハンドルが長く力が増幅されやすいが、刃をまっすぐ下ろすためのパーツが多いなどである。自分の考えた機構模型と、製品とを比べることで、道具が製品化されるまでには、より効率のよい機構が検討され、材料の強度やコスト、生産性なども合わせて考えられていることを理解させた。その結果、身近な機構の学習を通して、生徒に状況に応じた最適解の概念や製品を多面的に評価する視点をもたせることができた。授業後の生徒のアンケートによると、「製品と自分たちの模型は全然違った。」「他のものも見てみたい。」のような好意的な意見もあり、生活の中に存在するいろいろな機構を評価する意欲ももたせることはできたと考える。この実践が、生徒自身の製作活動時のみならず、既製品を購入する際にも、製品の特徴や利点、欠点など技術的な視点をもって評価し、最適なものを決定する力を育てるきっかけになったと考える。
著者
篠田 英朗
出版者
広島大学
雑誌
広島平和科学 (ISSN:03863565)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.215-239, 2004

This paper aims to illuminate how the rule of law is understood in international peace-building activities by looking at the case of Bosnia and Herzegovina. The case is selected since the European countries and the United States that are leading peace-building in Bosnia and Herzegovina have a distinct tendency to emphasize the rule of law in the context of peace-building. While there are more various international rganizations that are given peace-building tasks by the Dayton Peace Agreement of 1995, the paper focuses on the Office of High Representative, the Organization of Security and Cooperation in Europe, the UN's and EU's police missions, as they have leading roles in rule-of-law related activities. The paper finds that the rule of law is now recognized more important than before. The paper argues that it is because democracy has lost importance as a peace-building strategy. In Bosnia and Herzegovina where ethnicity-based forces have kept power through the post-conflict elections, democracy does not appear to be an effective tool for peace-building. The rule of law is understood as a strategy to develop the remedies which democracy may fail to create and is expected to pave the way for more solid peace.
著者
一ノ瀬 孝恵
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

生物多様性条約第10回締約国会議(2010年10月名古屋)が開催され,SATOYAMAイニシアティブを含む持続可能な利用,バイオ燃料,農業,森林,海洋など各生態系における生物多様性の保全及び持続可能な利用に関わる決定の採択などがなされた。人と自然との共生を考える取組みが今こそ社会レベルでも生活レベルでも実践されなければならない。そこで本研究では,世界最古の薬学書「神農本草経」に記述され薬効のある食材「小豆」を切り口に,家庭科からESDへのアプローチを試みた。具体的には,コスタリカを訪問し,多様な自然環境を体験するとともに,豆を使用したコスタリカの代表料理ガジョピントの調理方法を現地の方から学ぶなど,環境に配慮した生活や食生活についての資料収集を行った。また,有志生徒と本校グランド横にある広い荒地を開墾し,小規模ではあるが有機の畑を作った後,小豆や十六ささげ,じゃがいも,だいこんなどの栽培を行なったり,農家に出向いて作物の収穫体験をすることで,都市部での生活において自然を上手に利用する方法や自給食材を使用したバリアフリーな料理を考えさせた。さらに「豆食文化と未来の食卓」と題し,切り口の小豆をはじめ,コスタリカで取材したフリーホール豆やガジョピントなどの資料を組み込み,マメ科植物に共生する根粒菌の力について荒地開墾を熱心に行う生徒に調査発表させたり,家庭とも連携を取りながら,豆を知り,豆を極め,豆を活かす授業実践を試みた。豆は乾燥することで長期の保存ができるため,世界中で利用されており,多くの個性豊かな豆料理や加工食品がある。豆を中心にした栽培を体験させ,世界のさまざまな国の人々が培ってきた豆食文化を理解させることにより,人と自然との共生とは,未来の食卓のあり方とはどうあるべきかを考えさせることができた。
著者
前川 功一 TEE Kian Heng PINTO Dos Santos 小滝 光博 倉田 博史 久松 博之 福地 純一郎 北岡 孝義
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、非定常・非線型時系列回帰モデルの統計理論的及び応用的研究に関するものである。これまでの成果は(1)非定常性と非線形性を同時に扱う研究、(2)非定常性のみを扱う研究、(3)その他この二つの基礎となる回帰分析の基礎理論研究を並行して行ってきた。(1)に関しては前川とティー・キャン・ヘンが担当し、わが国のGDPのようなトレンドをもち単位根を持つ可能性のある経済時系列に対して単位根検定及び未知の構造変化時点の推定を研究した。その結果は2000年の日本統計学会でと題して報告された。それによると我々の提案した構造変化時点の推定方法は先行研究(畠中・山田(1999))で示された方法よりも優れていることがモンテカルロ実験で示された。(2)に関しては、前川・久松が非定常な説明変数を持つSURモデルにおける代表的な推定方法の優劣の比較を理論的及びモンテカルロ実験を通して行った。その結果、定常時系列回帰の場合と同様に単純な最小2乗法より一般化最小2乗法のほうが推定効率が良いことが示された。また前川・何は単位根がある複数の無関係な時系列の間には見せかけ上のGranger因果性が検出される確率が高いことを理論的計算およびモンテカルロ実験で示した。そしてアメリカの生産統計とマネーサプライ統計の間の因果性はこの見せかけの因果性である可能性があることを示した。小滝は共和分関係が存在する場合のGranger因果性検定の方法を提案しその理論的性質を研究した。(3)に関しては、倉田がSURモデルにおける推定法の理論的比較を、また福地は時系列回帰に対するSubsampling法の有効性を研究し、共に(1)及び(2)に対する基礎的研究を行った。なお、本研究の応用面で不可欠な株価日次データ収集のためにピント・ドス・サントスは、NHK文字放送から株価日次データを採取・分析するシステムを導入した。また、シンガポール国立大学金融工学センターで非定常時系列モデルの金融データの応用に関する研究成果発表を行うとともに、同センターの副所長Yuk Tse教授らと金融時系列の非線形・非定常モデルについて意見交換を行った。
著者
高橋 嘉夫 狩野 彰弘
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

様々なバクテリア細胞表面への吸着のREE分配パターンには特異な重希土類(HREE)の濃集がみられ、これはEXAFS法によりは多座のリン酸サイトとの錯生成によることが明らかになった。また(リン酸サイト)/(カルボキシル基)比はpHと共に減少し、[REE]/[バクテリア]比の増大と共にカルボキシル基の寄与が増加した。HREEの濃集は天然のバイオフィルムやバクテリア由来の水酸化鉄にも見られると共に、同様の特徴が先カンブリア時代の縞状鉄鉱床(BIF)にも見られ、REEパターンがバクテリア活動の指標となることが分かった。
著者
岡野 説子
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域 (ISSN:13465554)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.483-490, 2003-03-28

The piano works of Claude Achille Debussy (1862-1918) as well as the works of Beethoven, Schumann, Chopin, Liszt constitute an important repertoire for the pianists. What is common among their works would be that they were composed in consideration for almost all the functions of pianos that had been improved by leaps and bounds since the latter half of the eighteenth century. Debussy is generally called an "impressionist" composer. As everyone knows, this word as well as "baroque" is a historical word of music borrowed from the history of art. Therefore, it is needless to say that having knowledge about impressionist painters is necessary in playing the piano works of Debussy. Then I wonder what kind of relationship there is between them. I wonder what it is like if there is a relationship. It is the purpose of this article to give a concrete consideration on the way of playing the piano, taking up his piano works in order to approach these tasks. Piano techniques were used to create a certain definite "form" to perfection with melody and vigor in the piano works of Beethoven, Schumann, Chopin, Liszt whereas in those of Debussy, it can be said that they were used to show, so to speak, "impressionistic" expressive spirit, representing a world of sound whose "form" is vague. One of the great features is seen in the use of soft pedal.
著者
小池 源吾 志々田 まなみ
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.11-19, 2005-03-28

The purpose of this paper is to clarify the actual conditions of "perspective transformation" brought about by study, and to consider the state of study supports. We observed the learning activities of adults over one year, and analyzed the aspects of their study in detail. Consequently, the four followings became clear. 1) The pattern of "perspective transformaion" can be classified into four. 2) Those who reached "discourse dilemma" stage have checked only 7.9% among all students. It is very difficult to enter "discourse dilemma" by study. 3) When student comes into "discourse dilemma" stage, the mental support by facilitator is indispensable. 4) Activity of self-expression such as writing or talking, affect "reflective learning" and "perspective learning."
著者
日高 洋 米田 成一 安東 淳一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本年度は,前年度に引き続き,以下について行った。1、gas-rich隕石の分析:多量にガス成分を含んでいる隕石(Kapoeta,Cook101,NWA801,SaU290)について,Sm,Gd同位体,希ガス同位体,の分析を行い,これらの宇宙線照射履歴の詳細について解析した。これらの隕石は銀河宇宙線の他に,低エネルギーの宇宙線による照射の影響を著しく受けている可能性が示唆された。2.炭素質コンドライトのバリウム同位体分析:タイプの異なる6種類の炭素質コンドライト隙石(Orgueil,Mighei,Murray,Efremovka,Kainsaz,Karoonda)について酸による連続溶出実験を行い,得られた各々のフラクションのバリウム同位体分析を行った。特に,3種類のCM隕石から得られた同位体変動を総合的に解析し,原始太陽系の同位体不均一に影響を及ぼす要因としてs-過程,r-過程の原子核合成成分以外に消滅核種^<135>Csの存在の可能性を検証した。3.原始惑星における水質変成:水質変成を激しく受けている形跡のある狭山隕石(CM2)について,その組織からコンドリュールを採取し,個々のコンドリュール粒子についてバリウム同位体測定を行った結果,^<135>Cs-^<135>Ba壊変系の著しい乱れを示すデータを得た。本研究結果は同位体化学的見地から水質変成の存在を示唆する有意義な証拠となり得た。
著者
三浦 郁夫
出版者
広島大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

生殖腺の性差構築の遺伝的仕組みには、動物間で著しい多様性が存在する。本研究は、性決定様式(XY型とZW型)、性染色体の分化、性ホルモンに対する感受性において、地域集団で多様性を示すツチガエルを用いて、生殖腺における性分化関連遺伝子の時間・空間的発現プロフィールを比較解析し、生殖腺の性差構築における多様性と普遍性の分子基盤の解明を目的として行った。昨年度、ZW雌の生殖腺では、Cyp19遺伝子の発現が性ホルモン処理でも変化しないことから、その高発現の維持が性転換に抵抗性を示す仕組みの一つと予想された。そこで、本年度は、Cyp19遺伝子の制御遺伝子候補として、未分化生殖腺でCyp19の雌雄差発現開始より早い時期に雌雄差発現を示す性連鎖遺伝子Sox3遺伝子の機能解析を行った。Sox3コンストラクトを受精卵に導入したF0の2個体からF1を作成して、生殖腺の表現型と遺伝子発現を調べた。その結果、Sox3が導入されたZZ幼生(受精後30日)の生殖腺は精巣構造を維持していたが、本来、卵巣で高い発現を示すFoxl2遺伝子の発現が有意に上昇した。さらに、変態後にはZZ個体においてCyp19の発現の上昇と精母細胞の欠如が観察された。同様の実験について、XY幼生(30日)で調べたところ、Foxl2に加え、Cyp19も有意に上昇し、20個体中1個体では卵巣様の構造も観察された。一方、Sox3遺伝子の翻訳を阻害するMorpholinoを作成し、受精卵に導入したところ、13個体のZW幼生(30日)のうち、5個体では精巣構造が観察された。ただし、生殖腺特異的遺伝子の発現に変化は見られたなかった。以上の結果は、ZW集団では性連鎖遺伝子Sox3がCyp19やFoxl2遺伝子の発現制御を通じて卵巣分化を誘導しており、その構成的発現が性ホルモンに対する生殖腺性分化の感受性に影響していることが示唆された。