著者
関村 誠
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

プロティノスにおけるアイステーシスの機能の明確化とその意味づけに努め、アイステーシス論が哲学的思索の中に組み込まれていることを示した。感性的な諸局面の議論に関して、プロティノスがプラトン思想をいかに解釈して引き継ぎ、あるいはいかに独自展開しているかを、両哲学者のテクスト批判を遂行して見極めることを試みた。その結果、アイステーシスのある種の働きが「判断」に連係して哲学構造に組み込まれて、感性と知性とを結びつける積極的な面をもつことを示すことができた。
著者
岩根 典之
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

デジタル教材への書込みを利用してクイズを生成し,eラーニングシステムで出題することで繰り返される学習(書込み学習)を自動支援することの可能性について調査した.そのような学習環境を実現するための枠組みと基本機能について検討し,書込み学習の効果を書込みの変化や意識から確かめた結果,書込み学習による個別学習支援の可能性が示唆された.
著者
岩城 敏 谷口 和弘 池田 徹志
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

生活・介護支援ロボットへの応用を念頭に、PC内アイコンと実物体両者へアクセス可能なインタフェースを開発した.頭部動作でパンチルトアクチュエータ上に搭載されたレーザポインタの方向を制御することで実物体ポインティングするシステムを開発した.さらに,TOF(Time Of Flight)型レーザセンサを用いて,実物体を「クリック(3D位置測定)」「ドラッグアンドドロップ」する方式を開発した.最後に,PC画面上レーザスポット位置に人工的なマーカを重畳表示することで,その視認性を改善する方式を開発した.以上3つの方式に対して,複数被験者による性能評価実験を行った結果,提案手法の有効性を確認した.
著者
齋藤 夏雄
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度はこれまで行ってきた標数2および3の体上における3次元Calabi-Yau多様体の研究をさらに進め、その構造を完全に解明することを目指した。我々の構成したCalabi-Yau多様体は,標数0への非リフト性や一般ファイバーが特異であるようなファイブレーションが存在することなど,正標数特有の病的な性質を有することが前年度までの研究ですでに明らかになっている。ただし基礎体の標数が2であるとき,2つの準楕円曲面のファイバー積上に生じる複雑な特異点の計算が残されていた。本年度はこれを準楕円曲面のタイプごとに徹底的に調べ,それぞれの場合について特異点の状況を完全に確定させた。この結果,この3年間の研究の中心テーマであったCalabi-Yati多様体の構造が明らかになったので,廣門正行氏・伊藤浩行氏との共著論文として2編にまとめ発表した。一方,上に記した特異点の計算を行う中で,有理二重点の変形空間におけるeauisingularな空間が次元を持っていることも明らかになった。これは標数0の体上では起こり得ないことが証明されており,正標数特有の現象であるといえる。低標数においては有理二重点はもはやディンキン図形から方程式が一意に決定されず,いくつかのタイプに分裂することが知られているが,我々は各タイプに対して局所的な計算を行い,変形空間におけるeiuisingularな空間の次元とその空間を与える式を決定することに成功した。これについては,現在論文を準備中である.なお研究にあたっては,国内外の研究者との議論および情報収集を行うことを目的として,研究集会やセミナーに積極的に参加した。2007年9月には慶應義塾大学で行われた研究集会で研究成果を発表した他,群馬県の玉原で行われたセミナーや城崎シンポジウム,さらに高知大学で行われた研究集会にも参加し,研究者と活発な議論を行った.
著者
加治屋 健司 池上 裕子 牧口 千夏 粟田 大輔
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

オーラル・ヒストリーの方法を用いて、1960年代の日本における前衛美術に関する研究を再構築した。地方の美術活動を視野に入れながら、合計47名の美術関係者(美術家、デザイナー、写真家、建築家、音楽家、美術評論家、画廊主、団体職員など)に90回の聞き取り調査を行った。戦後日本の前衛美術運動は、地方の文化や社会、ジェンダーの問題、国内外の他芸術の動向と深く関係しながら、多様な考えと形態を伴って展開したことを明らかにした。
著者
伊東 敏光
出版者
広島市立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

「不在」とは、「本来その場所に在るべきものがそこに無い状態」を意味するが、本研究に於いてはその「不在」の概念が、いかに美術家の制作意欲の源となり表現に可能性を与えて来たか、また鑑賞者には共通の意識として作品との交点を提供して来たか、という二つの観点から20世紀後半に活躍した美術家の作品および関連資料の調査を行ってきた。今年度の研究では昨年の研究対象作家の中から、アントニー・ゴームリー/Antony Gormiey、ルイーズ・ブルジョア/Louise Bourgeois、ヤン・ファーブル/Jan Fabreの3名に焦点を絞り、彼等の生い立ちや経験と、作品との関係についてさらに分析をおこなった。また今年度特に注目した作家は、1970年代の現代美術界においてカリスマ的存在であったドイツ人彫刻家ヨセフ・ボイス/Joseth Beuysである。ボイスは第二次世界大戦参戦中にクリミアで撃墜され、猛吹雪による寒さで生死の境をさまよっている時に現地の遊牧民に救われた体験を持つ。帰還後彼は、獣脂やフェルト等自身にその体験を喚起させる材料を使って、彫刻制作やパフォーマンスをおこなった。ボイスは生涯の芸術活動を通して、我々の社会に欠けている見えない存在を具現化しようと試みた作家であるが、その創造性とそれが社会に受け入れられた背景に「不在」という認識で本研究者が捉えている概念が大きく関わっている。さらに1933年のソ連邦生まれのイリア・カバコフ/Ilya Kavakovや、1950年イタリア生まれのエンゾ・クッキ/Enzo Cuoohi、その他ヤニス・クネリス/Jannis Kounellisu、ブルース・ナウマン/Bruce Nauman、日本の村岡三郎等の作家についても調査、研究をおこない、冒頭に記した二つの観点から考察をおこなっている。また本研究における「不在」という概念そのものについても意味と領域について考察を続けている。なお本研究においては、「不在」をテーマとした実験的作品制作を合わせておこなっており、平成11年度中に公開展示する予定である。
著者
石光 俊介 牧山 清
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本は高齢化社会に向かっている.その影響もあり,高齢者に多い発声機能障害者も毎年増加している.障害者の多くは代用発声を用いるが,不明瞭である.そこで本課題では発声時の体内伝導信号を用いた発声支援システムを提案した.このシステムでは音節などのサブワード単位での認識を用いて明瞭音声と障害者音声間の伝達関数を利用して明瞭化を図っている.このシステムの有効性を聴感実験や特徴解析などにより確認した.
著者
串田 淳一
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Differential Evolution (DE)は進化計算に分類される,個体群による確率的な多点探索手法であり,実数値関数を対象とした最適化手法である.本研究では,DEの組合せ最適化への適用を目的とし,決定変数が離散値となる問題を扱うためのDEのアルゴリズムを提案する.また,並列コンピューティングに適する進化モデルである島モデルを拡張し,効率的に複数の個体群を進化させるための超多点DEを開発する.勤務表作成問題のベンチマーク問題を用いた数値実験を通して,開発手法が多目的・多重制約性を有するにおいて短時間で実用的な勤務表を作成できることを示す.
著者
小野 貴彦
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

救急車による傷病者の搬送では,迅速性(病院に早く到着すること)と安全性(振動や加速度の影響で病態を悪化させないこと)が求められるが,これらはトレードオフの関係にある.本課題では,この2つの要求をバランス良く達成させるために,傷病者の病態や緊急性に応じて,搬送経路を最適に選択する方法を検討した.広島市の実際の道路情報に基づいて,経路を探索したところ,迅速性または安全性を優先させる場合で,それぞれ異なる経路が導出されるケースを確認した.このことから,特に,道路網が発達している都市部では,搬送経路の最適化によって,より高度な救急搬送サービスの実現が可能であることが示唆された.
著者
吉田 彰顕 西 正博 新 浩一
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,地上ディジタルテレビ放送の近隣圏混信問題について,オーバーリーチ電波干渉に着目し,高層大気の電波屈折率との関連に取り組んだ。広島市立大学,広島大学(盆地),阿蘇山(山岳地)に観測系を構築し,3年間テレビ放送波の受信品質を観測した。その結果,上空数kmに電波ダクトが発生した場合,電波混信となること,またFM放送波の受信レベル変動の同時観測からその混信源を特定できることを明らかにした。
著者
馬場 雅志
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

画像を撮影するカメラとCG画像を作成するカメラモデルとの対応付けをとるカメラキャリブレーションとカメラモデルに基づく画像生成について研究を行い、以下の成果を得た。(1)ぼけと幾何特徴の統合カメラキャリブレーションについては、キャリブレーションに用いる各特徴点でのぼけ幅の計測において、空間フィルタリングの手法を適用し閾値処理によりぼけ幅を求めることで高速な処理が可能となった。(2)カメラキャリブレーションに基づく画像生成については、通常のCG画像の生成に使用されるピンホールカメラモデルとは異なるカメラモデルによる画像生成の手法を複数提案した。また、カメラキャリブレーションに基づく画像生成の応用として、広島原爆によるきのこ雲の写真からの高さ推定を行った。
著者
伊東 敏光 藤井 匡 靍田 茜
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、世界的にも作例の乏しい風景をモチーフとした彫刻を制作にするために何が必要であるかという観点から、「風景彫刻」を成立させるための造形理論と実験制作よる研究を並行しておこなった。理論研究では、日本国内の庭園、工芸等に見られる風景表現を実地調査し、また古代から現代までの絵画表現の変遷や様々な透視図法や遠近法等の調査を通じて、それらの表現方法の彫刻への応用等に付いての考察を重ねた。実験制作では「広島」や「対馬」といった特定の地域を限定した上での、「風景彫刻」の実験制作をおこなった。本研究の成果として特徴的なことは、実験制作によって彫刻による多様な風景表現の可能性を示すことが出来た点にある。
著者
加藤 博一
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.正方形マーカーを用いたインタフェース方式の改良小型カメラを2台内蔵したHMDを用い,ステレオカメラ方式での拡張現実感システムを構築した.これにより精度・安定性を向上させた.また,カメラのレンズ歪みモデルにも改良を加え,カメラキャリブレーション手法のユーザビリティの改善を図った.2.評価実験の実施上述のシステムを用いて,3次元拡張現実感インタフェースの評価実験を行った.特に複数人での共同作業場面における有効性の確認や問題点の発見に注目した.ステレオ表示の有効性が確認され,また,現実世界と仮想物体の逆隠蔽問題による指差し行為の妨害効果なども確認できた.3.平面対象物の位置姿勢計測アルゴリズムの開発テンプレートマッチングに基づき平面対象物の位置姿勢をリアルタイムに検出する手法を開発した.対象画像からトラッキングに有効と思われる複数の特徴点を自動的に検出し,それを用いて特徴点を自動登録する.トラッキング中は,利用可能な特徴点の中から位置姿勢計算に有利な4点を動的に選択しテンプレートマッチングによりトラッキングを行う.4.屋内環境でのリアルタイム位置合わせ手法を開発屋内環境を平面近似によりモデル化し,そのモデルに基づく屋内環境でのリアルタイム位置合わせ手法を開発した.3の手法を応用し,多少の凸凹のある物体に対しての位置合わせを実現した.5.仮想物体表示における実世界シーンへのシャドウイングアルゴリズムの開発仮想物体を実世界映像上に重畳表示する際に,仮想物体の影を実世界シーンに投影するリアルタイム表示アルゴリズムを開発した.6.本・定規・カップ・サイコロによるインタラクション方式の考案と実装本,定規といった日常的道具を用いたインタラクション手法を考案した.それぞれの道具の有するアフォーダンスを有効に利用することで,ユーザが直感的に理解しやすいインタラクション方式を実現した.
著者
池田 寛子
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の最大の成果は『ヌーラ・ニゴーノル詩集』と『イェイツとアイリッシュ・フォークロア』の出版である。アイルランドで入手した資料を活用し、アイルランド語文学に焦点を当てつつ、英語文学との相関関係の解明に力を入れた。この研究が一貫して明らかにしてきたのは、アイルランド語は少数民族言語ではあるが、英語というグローバル言語による文学と密接にかかわりつつ独自性を持った文学で世界に貢献していることである。
著者
リナート キャロル 小林 ひろ江
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、過去の研究に基づき構築された「言語間のライティング能力双向性モデル」が多言語学習者によるテキスト構築を説明できるかどうかを検証した。ケース・スタディの方法を使い、母語を含む3カ国語による29篇の作文、思考発想法プロトコール、インタビューデータを収集し、分析した結果、このライティング・モデルの有効性を確認し、また多言語学習者が既習言語知識をテキスト構築プロセスに使うライティング方略も明らかにした。
著者
甲本 卓也
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

2元線形ブロック符号のトップダウン(適応)型再帰的最尤および準最尤復号法を考案し、アルゴリズムの有効性を計算機シミュレーションにより示した。従来、最尤復号法の効率的なアルゴリズムとしてはトレリスダイアグラムを用いるヴィタビ復号法が広く知られていたが、実行に際して必要な加算、比較といった演算の回数と記憶容量の問題から、構造がよく知られた2元線形ブロック符号においても符号長64程度までしか計算機シミュレーションによる誤り特性の解析ができなかった。本研究では符号の持つ再起構造に着目し、従来法には無い、次に示す改善を具現化可能なアルゴリズムを考案した。第一に加算に関して、再利用される可能性のある加算結果をメモリに格納し、必要に応じて計算済み結果を再利用し、加算に関する重複計算を完全に除去した。この改善点の実現に伴い、メモリ使用量は増加するが、適応型アルゴリズムとして実現しているため、従来法に比較しても総合的には大きな問題にはなっていない。第二に比較演算に関して、従来法では同じ比較演算が複数の箇所に散在していることが多く、演算の種類が加算の結果の種類の概ね2乗に達するため、比較演算が同一かどうかの判定が簡単ではない。そめため、重複した比較演算が従来法には多数含まれていたが、提案アルゴリズムでは、符号の構造に関する情報を利用することにより、比較演算の重複箇所そのものを理論的に特定し、可能な限り共有することにより、従来法で大きな問題となっていた比較演算の数を劇的に削減することに成功した。第三に、従来法では最適化問題の解法をまじめな総当り的手法によって実現しているため、加算、比較といった演算の回数は、入力系列に無関係に固定的な数値となっていた。提案アルゴリズムでは、枝刈りの手法を最大限活用することにより、入力系列に加えられている雑音の大きさに応じて計算量が変化するようにしている。つまり、雑音が小さな入力系列に対する復号は早く停止するため、平均計算量の低減が可能となっている。以上のような改善に関するコンセプトを実現した最尤復号法および最小重み探索を用いる準最尤復号法のアルゴリズムとして考案し、ソフトウエア実装した。最尤復号法に関しては、よく知られたいくつかの符号として、(128,64,16)RM符号、(128,64,22)拡大BCH符号に関して数値演算シミュレーションにより、精度の高い誤り制御特性を初めて得るとともに、平均的計算量に関して、ヴィタビ復号法などの従来法と比較して劇的な低減が実現されることを示した。また準最尤復号法に関しては、いくつかの符号長256および512のRM符号に関して、優れた誤り制御特性と小さな平均計算量を実現する優れた復号法であることを示した。
著者
倉科 一希
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、1960年代のケネディおよびジョンソン政権に着目し、アメリカの対西ヨーロッパ政策を、通商問題を中心にしつつ、政治・安全保障問題との関係にも注意を払いながら検討した。当該時期には、ヨーロッパ統合をめぐって西ヨーロッパ諸国が対立していたこともあり、通商政策が大きく動いたとは言えない。その一方で、アメリカの政治・安全保障政策とヨーロッパ統合との密接な関係が確認された。
著者
篠田 知和基 松村 一男 丸山 顕徳 目崎 茂和 不破 有理 廣田 律子 服部 等作 荻原 真子 栗原 成郎 吉田 敦彦 諏訪 春雄 栗原 成郎 三原 幸久 中根 千絵 鷹巣 純 目崎 茂和 後藤 明 丸山 顕徳 依田 千百子 松村 一男 岡本 久美子 立川 武蔵 小松 和彦 百田 弥栄子 小南 一郎 鈴木 正崇 門田 真知子 蔵持 不三也 不破 有理 服部 等作 広田 律子 荻原 真子 木村 武史 宮本 正興 クネヒト ペトロ 水野 知昭 中堀 正洋
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

「ユーラシアの神話の道」「海洋神話」につづき、主として天空の神話を世界神話においてしらべて比較し、そこから各文化の世界観、すなわちコスモロジーを究明した。天空神話としては日月、風、星辰、それに「天界」の神話をとりあげた。
著者
井上 泰浩
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、日本の外務省でパブリック・ディプロマシーをつかさどる文化広報部、イギリス政府(内閣府、外務省=FCOなど)、ならびに英外務省のシンクタンクである外交政策研究所(Foreign Policy Centre)、また、東京のアメリカ大使館など政府機関において調査を実施するとともに、メディアではロンドンのBBCとアラブ首長国連邦のドバイに本部を置く中東の衛星テレビ局、アル・アラビアなどで調査を実施した。外交というものが、外交官や政治家、国家代表団による密室協議で方向づけられ、決定される時代は既に終わっているということを、米英の外務省は十分認識していることが調査から分かった。国際ニュースを世界に伝えるCNNやBBCの役割はいうまでもなく、特に大衆文化レベルのコンテンツは一般市民に対する対外国意識形成において非常に大きな影響力を持っていること、また、政治家や外交官のレベルでの「外交」においても、時として非常に重要な決定要因足りえることが分かった。例えば、日本のアニメが放送される国において日本イメージ形成に与える影響では、人びとの日本に対する好感度を高めるばかりか、実際に日本語学習を始めるという行動面への影響もある。しかし、米英の外務省と比べると、日本の外務省においてはパブリックディプロマシーの重要性の認識は多分にリップサービス的な部分が多く、果たしてキャリア外交官の多くが本当に重要性を認識し、取り組んできるかについては大きな疑問があることが調査の結果わかった。もはや経済力や軍事力だけで、ある国の「価値」や強さを示すことは時代遅れであり、国家ブランディングと合わせてパブリックディプロマシーに国家事業として取り組んでいく必要があるというのが、本調査の結論である。
著者
宮原 哲浩 内田 智之 久保山 哲二 廣渡 栄寿
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

知識発見と情報融合を実現するため,半構造データからのデータマイニングと機械学習について研究した.厳密には定義されていない構造を持つデータを半構造データという.主に,半構造データとして木構造で表される糖鎖データを対象とし,その構造的特徴を表す木構造パターンを獲得する機械学習手法を提案した.手法として,木構造などの構造的表現を扱うことのできる進化的最適解探索手法である遺伝的プログラミングを用いた.