著者
津田谷 公利
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

標準宇宙モデルとして知られているフリードマン・ロバートソン・ウォーカー時空における非線形波動について考察する.フリードマン・ロバートソン・ウォーカー時空の計量は一般相対性理論に登場するアインシュタイン方程式の厳密解の一つで,一様等方的な物質分布のもとで膨張または収縮する宇宙モデルを表す.本研究の目的は,解の爆発の条件,爆発解の存在時間の評価を明らかにし,さらに平坦な時空であるミンコフスキー空間の場合での既知の結果と比較することによって,宇宙膨張速度を表すスケール因子が非線形波動に及ぼす影響を解明することである.本年度もまず,非線形項が未知関数の冪乗であるタイプの波動方程式について研究を行った.昨年度得られた爆発条件は,減速膨張宇宙に対してであった.本年度は等速膨張あるいは加速膨張する場合について研究を行い,解の爆発および爆発解の存在時間の評価を示すことに成功した.1より大きい任意の冪乗で解の爆発が起こるという結果である.さらに,未知関数の偏導関数の冪乗タイプである方程式についても考察した.その結果,減速膨張,等速膨張,加速膨張に対して,いずれも解の爆発条件および爆発解の存在時間の評価を得ることができた.非線形項の偏導関数が時間変数についての場合と空間変数についての場合とで比較してみると,解の爆発条件および爆発解の存在時間の評価が異なり,興味深い結果が得られた.ミンコフスキー空間の場合と比べて解の爆発が起こりやすいということが明らかになった.
著者
加藤 陽治 伊藤 聖子 渡辺 敏幸
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.91-96, 2001-10
被引用文献数
3

果実類11品種(キウイ,イチゴ,モモ,カキ,アボカド,プルーン,リンゴ,イチジク,バナナ,パイナップルおよびミカン)の水不溶性食物繊維の多糖組成比較を行った。各果実の可食部から水不溶性細胞壁画分を調製,これを乾燥させ,糖組成分析と糖結合様式分析に供した。さらに,水不溶性細胞壁画分はペクチン様物質,-ミセルロース画分およびセルロース画分に分画し,それぞれの画分の糖組成分析を行った。水不溶性細胞壁多糖はいずれの果実も,ペクチン様物質画分はおもに中性糖を含むラムノガラクツロナン,-ミセルロース(ⅠおよびⅡ)画分はおもにキシラン系多糖,ガラクタン系多糖およびキシログルカン,そしてセルロース画分はセルロースから構成されており,これらの比率はキウイで28:19:53,イチゴで38:15:47,モモで25:22:53,カキで16:14:70,アボカドで28:35:37,プルーンで26:32:42,リンゴで30:20:50,イチジクで38:15:47,バナナで24:31:45,パイナップルで19:44:37,ミカンで26:15:59であった。
著者
梅村 周香
出版者
弘前大学
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.p286-299, 1975-06
著者
庄司 優 保嶋 稔
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

遺伝子多型の分布には人種差があり高血圧連鎖連関研究への影響が無視できない。すなわち、研究対象によりその病態的意義が異なる可能性がある。その理由として遺伝子・遺伝子や遺伝子・生活習慣の間の相互関係の差の関与が推察されているが、この問題にいかにアプローチしていくかについてこれまで明確な方向性は打ち出されていない。一方、分子人類学におけるヒト系統樹マーカーの研究が進んでいる。特にミトコンドリアとY染色体の多型が各々母系と父系のマーカーとして重視されている。本邦においてはY染色体Alu反復多型(YAP)Alu挿入が縄文系由来を、Alu欠失が弥生系由来を示唆すると考えられている。ある集団のある遺伝子多型に片寄りを認める場合、ヒト系統樹マーカーと連鎖している可能性が仮定できる。そこで本研究では青森県下16市町村より無作為に抽出し本研究に同意の得られた男性303例を対象とし、この仮説を検証した。YAP Alu挿入型は対象の約38%で、本州の他の地域の報告と差は認められなかった。高血圧感受性マーカーとして重要な遺伝子多型とYAPの連鎖の有無について検討したところ、YAPのAlu挿入型とAlu欠失型において、15遺伝子多型中3遺伝子多型(内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型、アルデヒド脱水素酵素-2 Glu487Lys多型、ミトコンドリアC16223T多型)の遺伝子型で分布の差が認められた。さらに、香港大学との協同研究を行い、香港男性ではYAPのAlu欠失型が殆どであることと、内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型のa対立遺伝子が偏在していることを確認した。また、YAP自体と高血圧とは連関を認めなかったが、内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型とはYAPのAlu挿入型でのみ連関を示した。今回の研究では3つの遺伝子多型がYAPと連鎖不平衡を示した。これらの多型は、YAPが出現した以降に発生しYAPと歩みを共にしてきた可能性が示唆される。また、ヒト系統樹マーカーによる対象集団の層別化が実現すると、連鎖連関研究の臨床的意義が一層明確になる可能性が期待される。
著者
千葉 満
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

NASHは不可逆的な病態である肝硬変や肝癌への進展リスクがあり,初期の段階での発見が病態進展予防に不可欠であるが,これまで炎症による肝細胞傷害や線維化の兆候を同時に捉えることのできる初期NASHの診断に有用なバイオマーカーはいまだ開発されていない。エクソソームは血中にも存在しており,様々なリボ核酸を内部に安定的に保持しているため様々な病態のバイオマーカーとして注目されている。本研究課題では血中エクソソームに着目し,肝硬変への進展リスクのあるNASHを初期状態で発見できる新たなRNA診断バイオマーカーの発見を目指す。
著者
工藤 隆司 木村 太 二階堂 義和 竹川 大貴 冨田 哲
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

うつ病は自殺、就労不能などの社会的損失が莫大であり、さらに3割が治療抵抗性を示すなど、非常に大きな問題となっている。近年、麻酔薬ケタミンのうつ病への効果が報告され、2019年5月よりアメリカ食品医薬品局でうつ病への使用が認可された。しかしその作用機序が不明であり、長期使用による有害事象が懸念されている。そこで、本研究ではケタミンの抗うつ作用を解明すべく、難治性うつ病患者へのケタミン投与前後のうつ病評価および作用機序に関連している可能性がある各種候補バイオマーカー測定、比較し、その結果からケタミンの抗うつ作用機序解明に迫る。
著者
渡辺 俊三 豊嶋 秋彦 大場 昭一 飯塚 稔 植本 雅治 森山 成彬 小泉 明 一之瀬 正興 寺田 光徳 RICHARDOT Dominique 大西 守 浜田 秀伯 藤谷 興一
出版者
弘前大学
雑誌
弘前醫學 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.167-175, 1984-03

フランスP市の日本人小・中学校児童の外国文化への適応について検討を加えた.対象は日本人学校児童122名(男71,女51)であった.今回のアンケート調査は32項目よりなり,外国文化への適応の評価と印象,外国語能力の自己評価,日本とフランスの関係についての評価などよりなる. このアンケートを統計数理学的方法で検討を加えた.結果は,外国文化への適応の評価は概ね比較的良好であった. さらに,適応への重要な因子として,外国語の能力があげられ,外国語学習への積極的態度が観察された.
著者
野呂 徳治
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は,第二言語(外国語)を用いて自発的にコミュニケーションを行おうとする意志(L2WTC)と外国語学習不安(FLA)が,どのような相互作用のもとで,どのように生起・変動し,それが学習者の言語使用にどのような影響を与えるのかについて,特に,力学系理論(DST)をその理論的基盤として明らかにすることを目的とするものである。研究4年目となる平成30年度は, L2WTCとFLAの相互作用に関して,本研究で概念構成を行い,それに基づいて仮設構成概念モデルとして構築したL2WTC-FLAアトラクター(attractor)モデルに基づいて,人間のパーソナリティの発達をとらえる際の時間尺度としてDSTにおいて提案されている3つの時間尺度であるミクロ発達(microdevelopment),メソ発達(mesodevelopment),マクロ発達(macrodevelopment)に従って,L2WTC-外国語学習不安アトラクターがどのような相転移を経て,どのようなアトラクター状態に至るのかについて探索的に解明することを目標とした。英語圏における短期,長期留学経験のある日本人大学生を対象に質問紙調査並びにインタビューを実施し,そのデータを分析した。その結果,短期留学経験者は,留学期間中に,L2WTC-FLAアトラクターの相転移が短い周期で,極端な変動を報告し,ミクロ発達からメソ発達が生起していること,一方,長期留学経験者の報告からは,滞在期間が長くなるにつれて,アトラクター相転移の周期も長くなり,その変動幅も縮小する傾向がうかがわれ,マクロ発達の生起が示唆された。さらに,短期,長期留学経験者とも,会話場面における認知的及び情意的な対処方略の使用の有無が,L2WTC-FLAアトラクターの相転移及びアトラクター状態に影響を与える媒介規定要因の一つとなっている可能性が示された。
著者
川合 安
出版者
弘前大学
雑誌
文経論叢 (ISSN:03854191)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.p245-271, 1992
著者
仁平 政人
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、1920年代の日本のモダニズム文学における「東洋」や「伝統」に関する言説について、他の芸術や学問領域との関係を視野に入れて調査・分析を行った。モダニズムを「都市文化」や「西洋近代への志向」と結びつける通説に反して、日本のモダニズム文学においては、「東洋」や「伝統」を価値化する言説が数多く存在する。この研究では、文芸雑誌や同人誌などの幅広い調査を通して、こうした言説の実態を把握し、個々の事例について、その論理と同時代的な意義を検討した。