著者
北原 啓司
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東日本大震災からの復興を広域的に支援する拠点として設置した「きたかみ震災復興ステーション」における実践を通して、復興まちづくりにおける多様な課題を整理し、次に発生する可能性の高い南海・東南海地震における災害復興に向けた重要な論点を抽出することができた。また、「きたかみ震災復興ステーション」のように、専門家と行政、そして地域活動団体が連携する形での広域後方支援拠点が、広範囲の災害からの復興において如何に重要であるかを明らかにした。
著者
安野 眞幸
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.1-17, 1999-10

日本・朝鮮・ベトナムは中国の周辺にある国として「冊封体制」と云う共通した歴史的条件の下にあった。しかし10世紀以降において,朝鮮・ベトナムが中国の強い模倣強制の下にあったのに対して,日本は中国の模倣強制の圧力の外にあり,独自な歴史を歩み出していた。その端的な現れが「かな文字」の発明であり,民族宗教である「神道」の発展である。その原因には,日本が貨幣商品である「金・銀・銅」の輸出国として,中国に対して経済的に優位にあったこと,特に元蓮以降は日本が東シナ海の制海権を握り,中国に対して軍事的に優位にあったことの二点が考えられる。
著者
木村 宣美
出版者
弘前大学
雑誌
人文社会論叢. 人文科学篇 (ISSN:13450255)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.31-46, 2005
著者
井岡 聖一郎 藤井 光
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

浅層地盤を対象に地盤の見かけ熱伝導率の変動メカニズムの解明とその変動の結果もたらされる熱交換資源量評価を目的として,長さ約8mの地中熱交換器を設置し熱応答試験を実施した。浅層地盤の見かけ熱伝導率の変動を引き起こす要素として地下水面深度の違いを想定し,地下水面深度が異なる5月と9月に熱応答試験を実施した。その結果,地下水面深度が深い9月の試験結果は,熱交換量が少なく熱応答試験の出口温度が5月より高い値を示した。したがって,本研究で対象とした浅層地盤の見かけ熱伝導率変動メカニズムの要因として,地下水面深度の変動が重要であり,地下水面深度が深くなれば,熱交換資源量が小さくなることが示された。
著者
大沢 武志
出版者
弘前大学
雑誌
弘前醫學 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.31-44, 2001
著者
澤村 大輔 会津 隆幸 中島 康爾
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

先天的に掌蹠の過角化をきたす遺伝性掌蹠角化症は数多くあり,その原因遺伝子がいまだ不明なものや遺伝子異常から掌蹠の過角化至る機序が不明のものも少なくない.近年, 申請者のグループは遺伝性掌蹠角化症の研究を精力的に行ってきた。オルムステット病は,脱毛,口囲や肛囲の角化性紅斑,激痒を特徴する遺伝性掌蹠角化症であり,Ca2+チャネルであるTRPV3遺伝子の異常で発症することが解明された.今回の研究では, 遺伝性掌蹠角化症の遺伝子変異の解析を行い, 本症の角化機構との比較を行った。さらに, モデルマウスのおけるTRPV3の機能解析と症状の検討も行った。
著者
加来 和子 WENZ Sharon GREGORY Barb KENDALL Robb 松下 清子 豊嶋 秋彦 KENDALL-MELTON Robbie 安藤 房治 DONALD F. De ROBBIE M. Ke
出版者
弘前大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

(1)早期療育とトランジション制度(進路選択の保障制度)を中心とした日米の比較研究-テネシー大学マーチン校(UTM)の早期療育センター長であるSharon L.Wenzは,日本の早期療育制度について次のような勧告をした。全国的な早期療育システムの確立に既存の公衆衛生制度を充実させて教育と医学の連携をはかること,障害の判定基準を明確にして対象者の選定を妥当なものとすること,子どもの障害発見のための広報活動を活発化し,照会手続きをわかりやすいものにすること,家庭が専門家の助言を受けられるセンターの設置等である。Dr.Barbara A.Gregoryは,UTMでは学習障害のある学生に対する総合的支援プログラム(P.A.C.E.)を作成し,学生,両親、高校及び大学のトランジション専門職員等が協力して実施していること,また自分の障害の理解や学習への影響の理解能力,必要な設備の認識,法律上の市民権の知識,職場や学習の場で自分に必要なものを伝える技能,等の4つの適切な基礎的トランジションの技能は,特に学習障害の学生には重要であることを紹介した。また,これら4つの基礎技能が14歳以前の早い段階で指導されることが高校卒業後の成功にも結び付くと述べた。(2)統合教育と体育指導-松下は障害児の障害の種類や程度の影響をなるべく少なくした一種の「スポーツテスト」として静的動作20種目を選択編成し,弘前市内2つの養護学校の協力を得て,児童生徒に実施した。アメリカでの障害児調査は,様々な理由から困難だったため,UTMと弘前大学の学生を対象にほとんど同じ種目による自己評価方式で静的動作調査を行い,日米比較を行った。(3)統合教育に関する日米の教員の意識・態度調査.及び知識・技能の自己評価調査の結果の検討と提案-平成5年度に日米の大学,及び附属学校の教官を対象に行った統合教育に対する意識及び自己効力調査の結果が次のとおりである。Dr.Kendallの意識調査の比較では,米国の教師の方が日本の教師より,統合教育に好意的であり,事務量や仕事が増えるが,障害児の地域社会や普通の子ども達との交流を援助し,公立学校では通常学級で障害児を教育すべきだと考えている。自己評価調査の結果,日本の多くの教師は障害児に関する知識や技能を身につけたいと考えており,行政職も含めた現職教育の必要性を示している。また自己効力の
著者
佐藤 裕之
出版者
弘前大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

(1)バルクナノメタルのマクロな残留応力の評価:残留応力と残留ひずみの評価方法について検討した。バルクナノメタルのように小型の試験材を対象として残留応力を測定する方法を検討するため,X線を用いた残留応力の測定方法について,東北大学の協力を得つつ,2D-XRD法の適用可能性について検討し,測定した。また,穿孔法によるひずみ-残留応力測定法についても実験した。提供を受けたバルクナノメタルの残留応力テンソルの測定を試み,残留応力の主応力と主軸の評価を行い次の結果を得た。ARB法により作成したバルクナノメタルの残留応力の主軸は,圧延方向と一致しており,熱処理によって主応力の大きさは変化するものの主軸の方向は変化しない。残留応力から見積もられるひずみは,バルクナノメタルの作成方法にも依存する。(2)マクロな変調組織を持つ合金の強化法の検討結晶粒径や硬度に分布や変調構造を作り込む方法として複合負荷による方法を実験的に検討し,室温強度と高温強度とマクロ組織の様相との関係を検討した。アルミニウム合金では,室温強度と高温強度(クリープ強度)を同時に改善できる場合のあることを見いだした。ホールペッチの関係やいわゆるDornの式からは,結晶粒の微細化による強度変化は,室温と高温では相反する依存性を持ち,広い温度範囲で強度を改善することは困難と予想されるが,組織の不均一さを積極的に生かすことによる室温強度と高温強度の同時改善の可能性を示した。高温強度の評価法として,代表者が提唱している「ひずみ加速指数」を用いる方法を改善して用いた。
著者
児玉 安正 佐藤 尚毅 二宮 洸三 川村 隆一 二宮 洸三 川村 隆一 吉兼 隆生
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

亜熱帯域には3つの顕著な降水帯(亜熱帯収束帯)があり,梅雨前線帯はそのひとつである.本研究では,各収束帯の生成メカニズムについて研究した.SACZ(南大西洋収束帯)について,ブラジル高原の影響をデータ解析と数値実験の両面から調べた.亜熱帯ジェット気流の役割に関連して,ジェット気流に伴う対流圏中層の暖気移流と降水の関係を論じたSampe and Xie(2010)仮説が梅雨前線帯だけでなく,SACZとSPCZ(南太平洋収束帯)にも当てはまることを示した.梅雨前線帯が南半球の収束帯に比べて向きや緯度が異なることについて,黒潮の影響を論じた.
著者
飯倉 善和
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

光学センサで取得された衛星画像から、大気および地形の影響を補正するために必要となる要素技術として、(1)衛星画像の精密な幾何補正とその評価方法、(2)ヘイズや巻雲など水平方向の大気変動を補正する簡便な方法、(3)天空光や照返し光による影響を画素ごとに求める厳密な陰影補正方法と、それに基づいた太陽高度が高い場合の簡略化法などを開発した。
著者
今井 民子
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.95-105, 1993-07

本稿は,ラモーの和声理論の特質と後継者たちによるその後の和声理論の展開を検証したものである。まず,初期の画期的な理論書、「Traite de l'harmoie」以来,彼が生涯にわたり追求したその和声理論の基本的概念を概観した。ここでは,根音バスとその転回を中心に,和音の生成,オクターブの同一性,Suppositionなどをとりあげ,さらに根音バスの概念確立に彼が大きな示唆を得た通奏低音法の規則である「オクターブの法則」についても述べた。次に当時のドイツの通奏低音法とラモーの和声理論を比較し,両者の本質的相違を明らかにした。最後にラモーの後継者たちによる和声理論の展開として,キルンベルガーとマールプルクの理論を中心にとりあげた。彼らは,不協和音をより明確に理論づけ(本有的不協和音と偶有的不協和音),ラモーにおいて不十分であった高次のレヴェルからの和声分析を確立し,これはその後の和声分析のモデルとなった。
著者
今井 民子
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.65-71, 1997-10

イギリスの音楽史家,Cノヤーニーの『ヨーロッパ音楽紀行』は,主著である『音楽通史』執筆の資料収集を目的に企てた大陸旅行の見聞録である。本稿では,この旅行記に基づき,彼が見聞した教会,劇場,私的コンサートにおける音楽活動の実態と,その他,大道の音楽,楽器,楽譜について,主にイタリアを中心に検討する。まず,イタリアの教会音楽では,世俗化の著しい祝日の音楽と,平日の素朴で古風な聖歌との対照が指摘される。オペラ劇場では,貴族と一般市民からなる聴衆,音楽家の生活支援のための劇場コンサートが,また,私的コンサートでは,教養豊かなディレッタントによる良質のコンサート(アッカデーミア)の様子が言及される。バロックの教会,劇場,室内という音楽様式の3つの区分はあいまい化し,相互の融合,類似化が窺える。その他,野趣に富む大道の民謡,後年,『音楽通史』に結実する楽器や楽譜の資料収集に関する記述がある。
著者
大沢 義介
出版者
弘前大学
雑誌
文化紀要 (ISSN:04408624)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.20-36, 1971
著者
山下 祐介
出版者
弘前大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究では「創発性」の概念をめぐって、次のような形でその明瞭化を試みた。まず理論研究として、社会学における「創発」概念の取り扱いについて、おもにG.H.Meadの理論に依拠しながら吟味を行った。人間的な意識発生のプロセスそのものに、そもそも創発性の契機が内存していること、またそうした個人の中からわき出てくる創発性が、社会の創発性にどのようにしてつながっていくのかを検討していった。またこうした理論的吟味と並行しながら、実態調査として、いくつかのネットワーク型組織を調査した。(1)長崎県雲仙普賢岳噴火災害・阪神淡路大震災のそれぞれの災害における災害ボランティアの活動から、非日常時のネットワーク組織を、(2)過疎地域・都市地域での地域づくりグループの活動から、日常時のネットワーク組織を、という形で、ネットワーク団体の形成・発展・解消の過程を比較検討していった。以上の研究を通じて、「創発性」概念が、社会を考察する上できわめて重要な位置を占めていることを確認した。と同時に、この「創発性」の社会学を、これまで社会学が主に手がけてきた「共同性」の社会学と接続していく必要であるとの感触もえた。とくに問題解決プロセスの中で、社会の「創発性」および「共同性」がいかに位置づけられるか、に注目すべきである。両概念の接続により、社会学の理論研究および実証研究のさらなる進展が見込まれるが、本研究ではこの点の指摘にとどまった。
著者
竹内 健悟
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.21-36, 2005
被引用文献数
2

岩木川下流部のヨシ原は、絶滅危惧種であるオオセッカをはじめとする野生鳥類の繁殖地であり、また地域の人によって古くからヨシ産業が行われてきた場所でもある。そのため、ヨシ原では毎年採取作業や火入れが行われている。このような攪乱は野生鳥類の繁殖を脅かすものとして危惧されているが、このヨシ原はオオセッカの繁殖地として約30年間持続してきた。そこで、この偶然成立していたといえる共存を計画的なものに転換することを目的に、オオセッカの繁殖とヨシ産業の実態、並びに両者の関わりを調査し、ヨシ原管理のあり方を検討した。調査は2002年から行い、オオセッカは多い年で300羽ほどの生息が推定された。オオセッカは、繁殖初期には非火入れ区に分布し、ヨシが生長するにつれて火入れ区にも拡がっていくこと、当初利用した非火入れ区は多くの個体によって利用され続ける傾向があることなどがわかった。また、先行研究と同じような植生の選択も確認され、植生・地形的要因と人為的要因によるオオセッカの繁殖への影響が明らかになった。中里町の岩木川沿いの地域では、武田堤防保護組合によるヨシ産業が行われている。ヨシ産業の場と形態は、岩木川河口部の治水・干拓事業によって大きな変化を遂げ、ヨシ採取の方法も集落総出の作業から業者委託へと転換していったこと、ヨシ原は今なおタイトな規範を有するコモンズとして受け継がれていることがわかった。以上から、今後ヨシ原管理をするにあたっては、自然科学的知見と社会システムの実態をふまえた保全と利用の調整、柔軟な管理を行える「順応的管理」が望ましいと考えられ、そのためのゾーニングモデルを作成した。