著者
佐々木 甚一
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13471112)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.145-156, 2006
被引用文献数
1
著者
斉藤 まなぶ 足立 匡基 中村 和彦 大里 絢子 栗林 理人 高橋 芳雄 吉田 恵心 安田 小響
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

発達障害の有病率及び併存率の推定:平成26年4月から平成28年10月までに健診に参加した全5才児3804名(月齢平均:63カ月)を解析の対象とした。一次スクリーニングは2923名(76.8%)から回答を得た。二次検診の対象児は607名(20.8%)であった。最終的に希望者31名を含む440名が二次健診に参加した。ASDの診断については、さらに補助診断検査としてASD診断を受けた対象者に後日ADI-RまたはADOSを施行した。その結果、自閉症スペクトラム障害(ASD)が3.30%、注意欠如・多動性障害(ADHD)が4.95%、発達性協調運動障害(DCD)が5.54%、知的障害/境界知能(ID/BIF)が3.33%であった。また、ASDではADHD合併が60.0%、DCDの合併が61.1%、ID/BIFの合併が40.0%であった。疫学調査における使用尺度の妥当性の検討:AD/HD-RSの内的整合性(N Takayanagi, et al. 2016)、ASSQ短縮版の5歳児適用における妥当性(足立ら、2016)を検証した。リスク因子の検討:得られた疫学データからロジスティック回帰分析を行い、ASDのリスク因子は出生体重2500g未満と父親の高齢が有意な結果となった。バイオマーカーの検討:ASD群でIGF-1、VLDL-Cho、VLDL-TGに有意な性差があった。バイオマーカーとASD、ADHD症状との関連性はIGF-1が実行機能の問題、VLDL-Choが相互的対人関係の問題、VLDL-TGが社会性、想像力、対人関係の問題と負の相関があったGazefinderを用いた注視点検査では、5歳のASD児は興味のある映像への注視は長く、興味のない映像への注視は短いことが確認された。
著者
中根 明夫 浅野 クリスナ
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

脂肪組織由来間葉系幹細胞(ASCs: adipose tissue-derived mesenchymal stem cells)を用い致死的細菌感染症の治療法としての有用性を検討したところ、致死的ブドウ球菌エンテロトキシンショックマウスモデルに対し、著明な致死率低下効果を示した。この効果は、ASCs投与による炎症性サイトカインの産生抑制によるものであることが明らかとなった。本研究により、ASCsは致死的細菌感染症の予防・治療に応用できる可能性が示唆された。
著者
松本 敏治 安藤 房治 飯田 かおり
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.187-196, 2002-03

弘前市「つがるLDを考える会」および青森市LD親の会「こんぺいとう」の保護者に対して,1.子どもの実体,2.現状,3.教育的ニーズ,4.家族関係を明らかにすることを目的にアンケートを実施した。結果は,1)子どもの約4分の1のみがLD/ADHDとの医学的診断をうけているにすぎない,2)ADHDの医学的診断と教育的判定の間に大きな乗離が見られる,3)多くの子どもが,集中力および対人関係上の問題を抱える,4)保護者の6割が,担任は子どもの問題を理解しているととらえているが,そのうち特別の配慮がなされているとしたものは6割である,5)子どもの対人関係は,非常に狭い範囲に限られている,6)学校への要望としては,教員の理解を求めるものがもっとも多い, 7)保護者は,子どもにとって適切な環境として"通常学級での特別な支援''を考えている,8)地域に不足している支援機関として"LD/ADHDの教育相談機関""LD/ADHDの医療機関"が挙げられた,9)家族の中にも子どもの状態を正確に把握し得ていないものがいるとの回答が約半数で見られた,ことを示した。
著者
冨山 誠彦
出版者
弘前大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

筋萎縮性側索硬化症(ALS)における運動ニューロンの選択的脆弱性とグルタミン酸による興奮毒性の関係を,脊髄神経細胞におけるグルタミン酸受容体発現の違いの観点から検討した.グルタミン酸受容体は代謝型受容体とイオンチャネル型受容体に大別されるが,代謝型受容体の1-5型(mGluR1-5)mRNAの発現ををヒト正常脊髄で,イオンチャネル型受容体のうちAMPA型受容体サブユニット(GluR1-4)mRNAの発現を正常者とALS患者の脊髄で,in situ hybridization法を用いて検討した.代謝型受容体の正常脊髄での検討では,mGluR1とmGluR5 mRNAの発現が脊髄後角に豊富で,運動ニューロンでは低いことが示された.mGluR1とmGluR5に選択性のある作動薬は脊髄運動ニューロンに対し保護作用があることが示されている.従って,運動ニューロンにおけるmGluR1とmGluR5 mRNAの発現が相対的に低いことは,運動ニューロンは他の脊髄神経細胞に比べmGluR1とmGluR5を介した神経保護作用が少ない可能性を示しており,運動ニューロンの選択的脆弱性と関係しているかもしれない.一方,正常者とALS患者の脊髄でAMPA受容体サブユニットmRNAの発現をflip型,flop型を別個に検討した.Flip型は遅い再分極を,flop型は速い再分極を有するAMPA受容体を形成することが知られている.Flip型は後角に優位に分布し,flop型は灰白質にびまん性に分布していた.ALSの前角では正常者に比べ,flop型のmRNAの減少が著明に認められ,Flip型のmRNAは保たれていた.この結果はALSの前角においてはFlip型AMPA受容体が相対的に増加している可能性を示し,ALSの運動ニューロンは正常者の運動ニューロンに比べ再分極の遅いAMPA受容体をより多く有していることを示唆している.再分極の遅いAMPA受容体は作動薬に対してより強い毒性を介するとされている.従って,今回の研究の結果は,AMPA受容体刺激に対して,ALSの運動ニューロンは正常者の運動ニューロンよりも脆弱であることを示している.
著者
戸次 英二
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

生籾の減圧乾燥における乾燥速度と胴割れ発生率との関係を明らかにするため、透明な真空容器内に生籾を脱ぷした玄米を入れ、それをガラス窓付き恒温・恒湿器内に収め、外部から玄米粒表面の状態変化を観察できるようにした。実験は圧力と温度と相対湿度の三つのパラメータを適宜組み合わせて行った。この結果を籾に関連づけるため、生籾を供試した実験も部分的に併行させた。1.設定絶対圧力5,40,75,101kPa(常圧)(ゲージ圧:-96,-61,-26,0kPa)のうち、5kPaで乾燥速度は著しく高まった。2.真空容器を加熱して内部温度を25,35,45℃に高めると、35℃までは効果は低いが、45℃では著しく高まった。減圧には加温併用が必要である。3.真空容器内の相対湿度はエア.リーク時(真空ポンプoff)に低湿の周囲空気が侵入して降下し、周囲湿度が低いほど乾燥速度を多少ではあるが高めた。減圧度が大きいほど効果があった。4.全胴割れ率は乾燥速度が高まると上昇した。玄米では特有の表面割れが多く現われたが、内部胴割れ率は軽で低かった。籾では逆に表面割れが少なく、内部胴割れ率が高くなった。5.玄米は表皮が薄い膜であるから機械的な摩擦や空気圧変化で損傷し易く、また遠心式籾摺機で脱ぷすると肉眼で観察できない微細な傷が薄い皮膜につき、それを減圧乾燥すると発達して肉眼で見えるようになった。減圧解除時の時間は表面割れに関連しなかった。玄米の減圧乾燥は表面割れを防げないから無理であり、籾の状態では可能である。6.乾燥速度と胴割れに関する品種間差異は、常圧下の熱風乾燥と同様に認められた。玄米で長粒種は中粒種に比べ内部胴割れは少ないが、表面割れは多かった。結局、この生籾の減圧乾燥では、圧力を5kPa程度まで下げ、温度を35〜40℃、真空容器周辺の相対湿度を低い状熊にすると、乾燥速度及び多少の表面割れを含めた全胴割れ率は常圧下の熱風乾燥なみとなる。
著者
松岡 教理
出版者
弘前大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.日本産ヒトデ科の普通種である5属5種(キヒトデ、エゾヒトデ、ニッポンヒトデ、ヤツデヒトデ、タコヒトデ)の系統類縁関係をタンパク電気泳動法により調査した。15酵素の分析から31遺伝子座が得られ、各遺伝子座における対立遺伝子頻度のデータより、遺伝的距離を計算し、分子系統樹を作成した。その結果、(1)5種は系統的に大きく3つのグループに分かれる。(2)5種の中で最も近縁関係にあるのがキヒトデとタコヒトデである。(3)次に近縁関係にあるのが、エゾヒトデとニッポンヒトデである(4)一方、ヤツデヒトデは5種の中で最も遠い関係にある。これらの結果は、酵素の抗体を用いた免疫学的研究とよく一致するが、形態学的研究に基づくFisher等の分類体系は支持しなかった。また、分子系統樹より5種の進化のプロセスを推定すると、ヤツデヒトデが最も祖先形に近い種であり、一方、キヒトデとタコヒトデは新しい進化学的起源を有する種であると推定される。また、多腕で特異な形態を示すタコヒトデが、5腕の標準的な外部形態を持つキヒトデータイプのヒトデから進化してきた可能性も示唆された。2.サンショウウニ科2属4種の系統関係を同様の方法により調査した。16酵素30遺伝子座から遺伝距離を求め、分子系統樹を作成した。その結果、(1)サンショウウニとハリサンショウウニが最も近縁である。(2)キタサンショウウニは上記2種とかなり遺伝的に分化している。(3)コシダカウニは最も遠縁である。これらの知見は動物地理学的証拠とよく一致する。3.北日本にごく普通に見られるキタムラサキウニとイトマキヒトデの陸奥湾の浅虫集団と日本海側の深浦集団の計4集団について、2地域集団間の遺伝距離を同様の方法で求めた。その結果、浅虫集団と深浦集団間の遺伝距離から推定した分岐年代は、陸奥湾と津軽海峡の形成時期とほぼ一致した。
著者
松岡 教理
出版者
弘前大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.沖縄産ナガウニには、棘の色や習性等の違いにより4つの異なるタイプ(AーDタイプ)が存在している。これら4タイプの系統進化学的関係を蛋白質電気泳動法により調査した。その結果、検出された15酵素28遺伝子座の内、7遺伝子座において、4タイプで異なる対立遺伝子が固定されていた。これは、4タイプが互いに生殖的に隔離された別種であることを示している。また4タイプ間の遺伝的距離は、D=0.115ー0.224であり、他動物の近縁種間で観察される値であった。また遺伝距離から作成した分子系統樹から、AタイプとCタイプ、BタイプとDタイプが近縁であることが判明した。そして、これら4タイプの祖先型は現在のC・Dタイプのようなナガウニであると推定された。2.棘皮動物門4綱:ウニ、ヒトデ、ナマコ、クモヒトデ類の系統類縁関係については諸説が提案されており、極めて不明な点が多い。申請者はこれら4綱の系統類縁関係を解明するため従来にない新たな分子的手法を試みた。即ち、4群からグルコ-ス6リン酸脱水素酵素(G6PD)を精製し、それらの酵素学的性質を比較し、その類似性を定量化した。その結果得られた分子系統樹から以下のことが示唆された。(1)最も近縁関係にあるのはヒトデとナマコである。(2)次にこのグル-プに近縁なのは、クモヒトデである。(3)ウニは4群の中で最も遠い関係にある。(4)ヒトデとナマコは進化的に新しい棘皮動物群である。(5)一方、ウニは4綱の中では最も古い起源を持つ原始的な棘皮動物である。(6)分子系統樹から棘皮動物の進化の方向性を推定すると、堅い骨格(殻)を持つ防御を主体とするもの(ウニ)から、徐々に骨格を無くし、筋肉系を発達させたもの(ヒトデ、ナマコ)が進化してきたと推測された。
著者
川合 安
出版者
弘前大学
雑誌
文経論叢. 人文学科篇 (ISSN:03854191)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.69-94, 1993
著者
蝦名 敦子
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

一年目の研究として、子ども達の実践的考察を次の二つの観点から行う。一つは学校教育における図画工作の表現である、造形遊びと絵や立体・工作について。二つ目は学校外で実施した展覧会である。一つ目は、これまでの実践から、子どもの造形活動と空間の問題を振り返った。子どもは自らの身体感覚を働かせながら,造形空間を感じ取り認識していく。造形遊びではそれが顕著で,場所の空間を確かめながら,より大きな造形空間が把握されている。絵や立体・工作では,主題に応じて造形空間が作品とともに見出されていく。共同製作ではさらに充実した展開を見せた。同じ造形活動によって意識される「空間」であっても,そのプロセスに異なった方向性が見られる(「子どもの造形活動による空間把握の特性―実践的考察を通して―」「弘前大学教育学部研究紀要クロスロード」第22号に掲載)。二つ目の学校外での実践では、2017年8/4~6にかけて開催した「みんなでつくる形と空間」展の内容について、これまで実施した展覧会と対比的に考察した。課題を明確にし、次の展覧会に向けての方向性を探った。「空間」について定義づけながら、これまで筆者が先に行った3つの展覧会と比較して、本展覧会の成果と課題について考察したが、特に子どもの造形活動と空間の問題に注目して、造形空間と展示空間が論点となる。その切り口からそれぞれの展覧会の特徴について整理すると、本展覧会は遊具を設置した展示空間でありながら、光と影の造形空間を創り出すことができた点が特徴的である。今後は「形をつくる」方向をさらに強め、イメージの問題に関連づける。造形遊びからよりイメージに訴え、仕掛けによる展示空間を準備しながら、その空間を造形空間として創っていくような場が課題となる(「『みんなでつくる形と空間』展の成果と課題―ワークショップ型展覧会の比較考察を通して―」「芸術文化」第22号に掲載)。
著者
安野 眞幸
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.63-74, 2002-03

中世の富士大宮は次の三者からなっていた。①宗教上の中心「富士浅間神社」,②社会・経済上の中心「駿州中道往還」の宿場町「神田宿」とその市場「神田市場」,③政治・軍事上の中心「大宮城」。「神田市場」や「神田橋開」では今川氏の任命した小領主たちが徴税を請け負っていた。大宮司の富士氏は当時,国人領主としても発展し「大宮城」の城代をも兼ねていた。今川氏の発布した「富士大宮楽市令」は,市場からの小領主の排除と「諸役」の停止を内容としており,富士氏側が今川氏に譲歩を迫り,勝ち取ったものであった。