著者
森脇 愛子 坂本 真士 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.12-23, 2002-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
2 3

本研究では,どのように開示するかを測定するための「適切な自己開示尺度」および「不適切な自己開示尺度」を作成し,その因子構造,信頼性および妥当性を検討した.さらに,被開示者の反応を測定するための「聞き手の受容的反応尺度」および「聞き手の拒絶的反応尺度」を作成し,因子構造,尺度の信頼性および妥当性について検討した.研究1では,適切な自己開示尺度および不適切な自己開示尺度についてそれぞれ3因子,4因子を採用した.聞き手の受容的反応尺度および拒絶的反応尺度については,それぞれ4因子を採用した.内的整合性がよく,再検査信頼性が高かった.研究2では,これらの尺度の併存的妥当性がある程度示された.今後はさらに,サンプル等を配慮して検討していきたい.
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.261-269, 2009-05-01 (Released:2009-07-04)
参考文献数
40
被引用文献数
3 2

Trapnell & Campbell (1999) によれば,私的自己意識は反芻と省察に分けられ,前者は抑うつと関連する非適応的な自己意識,後者は精神衛生に貢献する適応的な自己意識とされている。本研究では,これらの2つの私的自己意識と抑うつ,およびストレスの因果関係を探るため,大学生を対象に,素因ストレスモデルに基づいて縦断調査を行なった。階層的重回帰分析の結果,反芻の主効果および反芻とストレスの交互作用が2週間後の抑うつを有意に予測した。このことから,反芻は抑うつの脆弱性要因であると考えられる。一方の省察は,私的自己意識の一種でありながら抑うつとの関連が見られなかった。この結果は省察が適応的な自己注目であることを積極的に支持するものではないが,省察のようなある種の自己注目により,否定的な感情を強めることなく自己制御が可能であることを示していると考えられる。
著者
三田村 仰 松見 淳子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.220-232, 2010
被引用文献数
4

本稿の目的は,適用範囲が広く,かつ適切性の基準をもつ機能的アサーションという新たな概念を提唱することであった。機能的アサーションの提唱に当たって,本稿では,アサーションの適用場面の限定性と,アサーションと攻撃的行動との弁別という2つの課題およびその解決方法を検討した。最終的に本稿は,話し手における課題の達成と,聞き手にとっての適切さという2つの機能でアサーションを捉える,機能的アサーションの概念を提唱した。また,機能的アサーションによる新たな適用場面への応用可能性も示唆した。機能的アサーションとは,話し手と聞き手双方の視点に注目した対人コミュニケーションとして定義される。
著者
原田 宗忠 中井 大介 黒川 雅幸
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.50-60, 2020-08-04 (Released:2020-08-04)
参考文献数
20
被引用文献数
2

これまでの研究では,いじめ被害と自己像の不安定性がいじめ加害と関係する可能性が示唆されているものの,いじめ被害と自己像の不安定性の因果関係は示されてこなかった。そこで,本研究では3時点の縦断調査によってこれらの関係を示すことが主な目的であった。調査対象者は,小学校5, 6年生420名,中学校1, 2, 3年生942名の計1,362名であり,1年間において3回の質問紙調査を実施した。質問紙では,自己像の不安定性,いじめ被害経験,いじめ加害経験の測定を行った。いじめ被害経験と加害経験については,1回目の調査では現在の学年になってから,2, 3回目の調査では前の調査からのことを尋ねた。交差遅延モデルによる分析の結果,一部有意な傾向のパスを含むが,中学生においてのみ,自己像の不安定性が高いことがいじめ被害経験を高め,いじめ被害経験がいじめ加害経験を予測することが示唆された。
著者
下司 忠大 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.2.3, (Released:2019-08-14)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究の目的はDark Triad (マキャベリアニズム,自己愛傾向,サイコパシー傾向)と他者操作方略(寺島・小玉,2004)との関連を検討することであった。大学生210名がDark Triad尺度と他者操作方略尺度を含む質問紙に回答を行った。共分散構造分析の結果,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向は自己優越的行動操作に加えて,自己卑下的行動操作や各感情操作に対して正の影響を示した。また,自己愛傾向は自己優越的感情操作のみに正の影響が示された。本研究の結果はDark Triad尺度の妥当性を示すとともに,Dark Triadが高い者は自己優越的行動操作だけでなく,自己卑下的行動操作や感情操作を用いる傾向にあることを示すものであった。
著者
永井 智 坂 征拓 田中 真理 設楽 紗英子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.72-75, 2010-08-31 (Released:2010-08-18)
参考文献数
14

This study investigated the relationships between four attachment styles and emotional suppression. College students (N=416) completed a questionnaire which assessed attachment style and emotional suppression. The results of the analyses indicated that both dismissing and avoidant people expressed their negative emotions less than secure and preoccupied people. Although avoidant people suppressed emotional expression in social situations, dismissing people did not.
著者
浅井 智久 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.56-65, 2007 (Released:2007-10-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2 4

本研究の目的は,自己主体感の生起メカニズムを考察し,それに対する学習の効果を検討することであった。自己主体感とは,ある行為を自分自身でしている,という感覚のことである。フォワードモデルでは,自己主体感は「実際の結果」が「結果の予想」に合致するときに生起されるとしている。本研究では,キー押しをすると音が鳴る,という仕組みを用いた。その結果,「時間差知覚」と「自己主体感」は同じものではないことが示された。これはフォワードモデルを支持 するものであった。また学習の結果,より高い自己主体感を報告するようになったが,時間差知覚には学習の効果はなかった。これは学習によって「実際の結 果」ではなく,「結果の予想」が変わったために,その結果として自己主体感が変わったと示唆するものであった。本研究はフォワードモデルによる自己主体感の生起モデルの妥当性と,学習が自己主体感に影響をあたえることを示した。
著者
相良 麻里
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.61-63, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
11

The purpose of the present study was to investigate age differences in narcissistic tendency during adolescence. Narcissistic tendency of 489 participants, junior and senior high school students and college undergraduates, was measured with Narcissistic Personality Inventory, Short Version (NPI-S). Results showed an increase in the tendency along with the age, but no significant difference was found between boys and girls. However, detailed examination revealed different patterns of developmental changes over time in subscales of NPI-S, and therefore further examination of age differences in them appeared to be necessary.
著者
岡田 涼
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.27-30, 2020-05-07 (Released:2020-05-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2

The purpose of this study was to examine pre-service teachers’ perceived utility of autonomy support for motivation and academic performance. Undergraduates from a teacher training course (N=235) participated in the questionnaire-based study operated in a two-by-two between-subjects factorial design. The results showed that pre-service teachers perceived the autonomy support as more useful for motivation than academic performance and for elementary than junior high school children. Additionally, pre-service teachers with autonomous motivation perceived higher levels of utility of autonomy support. The congruence between empirical findings and pre-service teachers’ naive belief about motivation theory is discussed.
著者
小國 龍治 小林 正法 大竹 恵子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.20-22, 2020-04-27 (Released:2020-04-27)
参考文献数
8

We investigated the effects of imagining (episodic simulation) helping behavior on helping efficacy. Participants were asked to imagine (imagine condition) and remember (remember condition) helping behavior, and make a headline (headline condition) in response to sentences describing a person in need. Then, they rated their helping efficacy and helping intention regarding the person. The results showed that helping efficacy and helping intention in the imagine and remember conditions were significantly higher than in the headline condition. Thus, it is suggested that helping efficacy is enhanced by imagining helping situations without actual behavior.
著者
内山 有美
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.247-249, 2020-03-01 (Released:2020-03-13)
参考文献数
9
被引用文献数
1

This study developed a scale for evaluating the self-expression styles of university students and then verified its reliability and validity. Participants were 186 university students who were asked to complete a questionnaire containing questions about self-expression, shyness, aggressiveness, and assertion. The factor analysis revealed a scale consisting of four factors: assertive, aggressive, submissive, and indirect. Internal consistency was found to be sufficient, and partial validity was confirmed. These results indicate that the scale is useful for measuring the tendencies of an individual’s self-expression.
著者
長峯 聖人 外山 美樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.198-207, 2020-03-01 (Released:2020-03-13)
参考文献数
28
被引用文献数
1

ノスタルジアは過去の自分についての情報を示し,現在の自分と過去の自分が類似しているという自己連続性の感覚を高めるものとされる。しかし,過去の自己と現在の自己の連続性にはそうした安定性に特徴づけられるものだけでなく,ある出来事を経験したことが現在の自分に大きな影響を与えているという感覚(自己–出来事関連性)もあり,ノスタルジアは自己–出来事関連性にも関係している可能性があると考えられる。そこで本研究では,その可能性を検討するために実験研究を行った。その際,ノスタルジアと自己–出来事関連性の関係を媒介する要因として心理的成長感および社会的つながりを取り上げた。本研究の結果,大きく2つの知見が提示された。第1に,ノスタルジックな出来事は自己–出来事関連性が高いと認知されやすいことが実証的に示された。第2に,ノスタルジックな出来事における自己–出来事関連性の高さは心理的成長感によって媒介されることが明らかになった。最後に,本研究の課題と展望について議論が行われた。
著者
田辺 雄一 岸田 広平 佐田久 真貴
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.160-163, 2019-11-01 (Released:2019-11-03)
参考文献数
14

本研究の目的は,日本の小学校教師の抑うつ症状に対する教師ストレッサー及び自動思考の影響を検討することであった。日本の小学校教師164名を対象として,教師ストレッサー,自動思考,抑うつ症状について質問紙調査を行った。構造方程式モデリングにより,教師ストレッサーはネガティブな自動思考を介して抑うつ症状に正の影響を与えることが示された。さらに,ポジティブな自動思考は,抑うつ症状に負の影響を与えることが示された。最後に,日本の小学校教師の抑うつ症状に対する今後の研究と実践の課題が議論された。