著者
中田(北出) 薫
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.241-253, 2006 (Released:2006-08-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では,自分の感情に向き合いしみじみと体験するような感情体験のあり方を「豊かな感情体験」とし,それをイラショナル・ビリーフとの関連から論じていくことを目的とした.その際,イラショナル・ビリーフ傾向が高い者ほど「豊かな感情体験」の程度が低いという仮説が立てられた.予備調査では,97名の大学生のデータを元に個人の特性的な「豊かな感情体験」の程度を捉える尺度(FES)が作成され,「感情に対する統制可能感」「感情に対する尊重性」「感情の優位性」の3因子が見出された.本調査では,126名の大学生を対象とし,FESとイラショナル・ビリーフテストとの間に低い程度の有意な負の相関が得られた.特に,自己否定的なイラショナル・ビリーフ傾向が強い者ほど感情の統制の取れなさが高いことがうかがえた.研究全体を通じて,感情に巻き込まれ混乱したり,逆に過度に抑制するような両極に陥らず,その中間で抱える体験様式の重要性について論じた.
著者
飯島 婦佐子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.50-64, 1997-10-09 (Released:2017-07-24)

本研究の目的は, 父親の性役割観, 母親からみた父親のソーシャルサポート, 母性意識と幼児の自己(自己抑制, 自己主張・実現)の発達の関係をみることである. 東京の304名の両親が参加した. 方法は質問紙法を用いた. 自己尺度は保育者によって評定された. 女子の場合には, 父親が家事・育児に参加するようになり, 性役割分業観も変化していることを反映して, 家事・育児共有観が実質的サポートを高め, それが専業主婦の母親の母性の受容を高めた. しかし, 母性の受容と子どもの自己の発達の間には何らの関係もなかった. ここに, 何らかの媒介変数を考慮する必要がある. 男子の場合には, 父親の家事・育児への参加の考えは母親の母性の受容を低下した. 別のモデルを考えるべきである.
著者
永井 智
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.3.4, (Released:2020-02-05)
参考文献数
20

This study investigated the effect of adult attachment on altruistic behavior and the mediating role of empathy. Nine hundred students answered an online survey, in which they were asked about adult attachment, empathy, and altruistic behavior towards family members, friends, and other people. The results of structural equation modeling indicated that while empathic concern mediated negative effects of attachment avoidance and positive effects of attachment anxiety on altruistic behavior, personal distress mediated negative effects of attachment anxiety on altruistic behavior.
著者
小塩 真司 西野 拓朗 速水 敏彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.250-260, 2009
被引用文献数
2 3

本研究の目的は,他者軽視および顕在的自尊感情と,潜在連合テスト (Implicit Association Test; IAT) によって測定された潜在的自尊感情との関連を検討することによって,仮想的有能感の特徴を明らかにすることであった。研究1では大学生119名に対し,紙筆版の潜在連合テストによって潜在的自尊感情を測定し,顕在的自尊感情尺度,他者軽視に基づく仮想的有能感尺度を実施した。また研究2では,大学生155名を対象に,パーソナルコンピュータ上の潜在連合テストによって潜在的自尊感情を測定し,顕在的自尊感情尺度,仮想的有能感尺度を実施した。2つの研究ではほぼ同じ結果が再現された。まず第1に,仮想的有能感は顕在的自尊感情とは有意な関連がみられないが,潜在的自尊感情とは有意な正の相関関係にあった。また第2に,顕在的自尊感情が低く潜在的自尊感情が高い者が,もっとも他者軽視を行う傾向にあることが示された。
著者
外山 美樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.168-181, 2009-03-01 (Released:2009-04-08)
参考文献数
45
被引用文献数
2 1

本研究の目的は,中学生812名を対象とし,生徒の学業成績に影響を及ぼす社会的比較の因果プロセスについて検討することであった。本研究の結果より,自分より優れた他者と比較する社会的比較には,学業成績の高さに結びつくプロセスと,逆に学業成績の低下につながるプロセスの両者があることが示された。そして,両者のプロセスには,社会的比較に伴う感情と,その後に行われる行動が媒介していることがわかった。すなわち,社会的比較が行われた際に意欲感情が喚起されると,学習活動に対する努力行動へとつながり,その結果,学業成績につながるというプロセスが支持された。一方,社会的比較の結果,自己評価が脅威にさらされるようなネガティブな感情(卑下感情,憤慨感情)が喚起されると,学習活動に対する回避行動が行われやすく,学業成績の低さに導くというプロセスが確認された。
著者
湯 立 外山 美樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.182-185, 2019-11-01 (Released:2019-11-03)
参考文献数
11

Based on the main theories of motivation, Miele and Scholer (2017) provided a comprehensive taxonomy of motivational regulation strategies for different types of motivation. The present study aimed to develop a new scale for assessing motivational regulation strategies from a theoretical perspective suggested by Miele and Scholer (2017), and to examine its reliability and validity. Using exploratory factor analysis, five motivational regulation strategies were extracted. Reliability was assessed using Cronbach’s α. Significant relationships between academic-learning motivation, regulatory focus, self-efficacy, and different types of regulation strategies provided evidence for the construct validity.
著者
登張 真稲
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.228-239, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
47
被引用文献数
2 4

社会的望ましさ尺度を用いた社会的望ましさ修正法の妥当性と有効性を検討する研究の結果を展望した。社会的望ましさ尺度は社会的望ましさ反応による回答の歪みを見破ることができるが,社会的望ましさ尺度を用いた社会的望ましさ修正法で前提とされている回答の歪みと社会的望ましさ尺度との間の直線的な関係は,一部の性格因子においてのみ示唆されるにとどまった。社会的望ましさ尺度を用いて個々の得点を修正する方法は,集合レベルではある程度の効果をもつが,個々のレベルで見ると個人の修正得点を正直得点に近似させる効果をもたないこと,部分相関や偏相関を用いた社会的望ましさ修正法は,パーソナリティ検査の妥当性を高める効果をもたないことが明らかとなった。社会的望ましさ尺度を用いた従来の修正法は,社会的望ましさ尺度が何を測定しているかという問題と関連づけて再検討する必要がある。
著者
閻 琳 堀内 孝
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.99-108, 2017-11-01 (Released:2017-11-04)
参考文献数
17

本研究の目的は,自己決定理論に立脚することにより,在日外国人留学生を対象としたアルバイト動機づけ尺度を作成することである。本調査Iでは,予備調査で選定された40項目に対して,在日外国人留学生に回答を求めた。因子分析の結果,アルバイト動機づけ尺度は「内発的調整」「統合的調整」「同一化的調整」「取り入れ的調整」「外的調整」の5つの下位因子から構成されることが示された。また,因子間相関から,理論的に近い動機づけタイプどうしの方が,相関係数が高いことが確認された。さらに,職務満足度尺度との相関係数は,自己決定性の高い動機づけの方が高い値を示した。本調査IIでは,再検査信頼性も一定の水準であることが示された。以上の結果は,本研究で作成した尺度が一定の信頼性と妥当性を有し,職務満足度を予測することを示すものである。
著者
堀井 美里 長谷 川晃
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.283-286, 2018-03-01 (Released:2018-03-06)
参考文献数
7

Undergraduate students (N=363) completed the Empathic-Affective Response Scale, and measures of affect, prosocial behaviors, and aggressive behaviors. Confirmatory factor analyses, based on the item composition of Sakurai et al. (2011), indicated that empathic affective responses toward the positive affect of others cannot be divided between sharing the positive affect of others and having good feelings about the positive affect of others. All aspects of empathic-affective responses were positively correlated with the frequency of prosocial behaviors, even after controlling the effects of positive and negative affect. Empathic affective responses toward the positive affect of others were found to have partial negative correlations with the frequency of aggressive behaviors.
著者
砂田 安秀 杉浦 義典 伊藤 義徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.150-159, 2019
被引用文献数
2

<p>近年,倫理を伴ってマインドフルネスの訓練を行う重要性が指摘されている。本研究では,マインドフルネスと無執着・視点取得の関連に対する倫理の調整効果を検討することを目的として,一般成人193名を対象としたウェブ調査を実施した。階層的重回帰分析の結果,倫理観が強い場合,マインドフルネスが高いほど,無執着が高かった。一方で,倫理観が弱い場合,マインドフルネスが高いほど,無執着が低かった。また,倫理観が弱い場合,マインドフルネスが高いほど,視点取得が低かった。以上の結果から,マインドフルネスは倫理を伴って機能することで有益な結果をもたらし,倫理が欠如した中では有益な結果につながらない可能性が示唆された。</p>
著者
井川 純一 中西 大輔
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.210-220, 2019
被引用文献数
2

<p>本研究では,グリット(Grit:根気・一貫性)とバーンアウト傾向(情緒的消耗感・脱人格化・個人的達成化の低下)及び社会的地位との関係について,対人援助専門職(医師,看護師,介護福祉士(男性233名,女性217名))を対象に検討した。Gritと社会的地位に関連が認められるのであれば,職業威信スコアの最も高い医師のGrit得点が最も高くなると予測したが,Gritの間に職種間の差異は認められなかった。一方,管理職と非管理職を比較したところ,一貫性において管理職のほうが高い値を示した。また,Gritがバーンアウト傾向に与える影響について検討したところ,根気は脱人格化及び個人的達成感の低下,一貫性は情緒的消耗感及び脱人格化を抑制していた。分位点回帰分析を用いた検討では,これらのGritのバーンアウト傾向抑制パタンは症状の増悪に伴って変化するものの,どのパーセンタイルでもバーンアウトを増加させる要因にはならないことが明らかとなった。</p>
著者
砂田 安秀 杉浦 義典 伊藤 義徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
2019
被引用文献数
2

<p>近年,倫理を伴ってマインドフルネスの訓練を行う重要性が指摘されている。本研究では,マインドフルネスと無執着・視点取得の関連に対する倫理の調整効果を検討することを目的として,一般成人193名を対象としたウェブ調査を実施した。階層的重回帰分析の結果,倫理観が強い場合,マインドフルネスが高いほど,無執着が高かった。一方で,倫理観が弱い場合,マインドフルネスが高いほど,無執着が低かった。また,倫理観が弱い場合,マインドフルネスが高いほど,視点取得が低かった。以上の結果から,マインドフルネスは倫理を伴って機能することで有益な結果をもたらし,倫理が欠如した中では有益な結果につながらない可能性が示唆された。</p>
著者
嘉瀬 貴祥 上野 雄己
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.175-178, 2019-11-01 (Released:2019-11-03)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The present study investigated the cross-sectional and longitudinal predictability of mental health using Sense of Coherence (SOC) through a linear regression model (LRM) and generalized additive model (GAM). The estimation using LRM and GAM showed that SOC predicted mental health in both cross-sectional and longitudinal data. Moreover, the model fit index and analysis of deviance showed that the GAM fitted better with both data compared to LRM. These results suggest that SOC can be used as a predictor of the current and future states of mental health as well as the continuous and gradual changes in mental health.
著者
磯部 美良 菱沼 悠紀
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.290-300, 2007 (Released:2007-07-07)
参考文献数
25
被引用文献数
7 8

本研究では,大学生を対象に,自らの攻撃性の高低によって,他者に対する印象形成に違いが見られるのかどうかを検討した。また外顕性攻撃と関係性攻撃の2種類の攻撃タイプを取り上げ,自分自身が示しやすい攻撃タイプや仮想人物の示す攻撃タイプが,その仮想人物に対する印象や評価に関係するかどうかも検討した。研究1では,大学生132名を調査対象に,外顕性攻撃と関係性攻撃の自己報告尺度を作成した。研究2では,大学生245名を調査対象に,攻撃性の質問紙調査と印象形成課題を1週間の間隔をおいて実施した。その結果,攻撃性の高い個人は,自分と類似の攻撃を示す人物をポジティブに,自分とは異なる攻撃を示す人物をネガティブに捉える傾向を示した。しかし外顕性攻撃と関係性攻撃の両高群は,関係性攻撃を示す人物の敵意性を高く評定するとともに,怒りや抑うつを強く感じており,総じて関係性攻撃を示す人物をネガティブな方向に捉える傾向を示した。