著者
平山 良克 下地 勉 大城 元 澤岻 安教 普久原 浩 中村 浩明 兼島 洋 伊良部 勇栄 下地 克佳 橘川 桂三 重野 芳輝 斎藤 厚 伊藤 悦男
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.61-66, 1991-01-25

我々は, 進行性肺癌の大量喀血例に対して, α-シアノアクリレートモノマー(以下アロンアルファA^[○!R])の気管支内注入による止血操作を試み, 効果が認められたので報告する。症例は54歳の女性で, 切除不能の肺癌で入院中に大量喀血をきたした。気管支動脈塞栓術bronchial artery embolization(以下BAE)を試みたが, 成功しなかった。流血部である右上幹内腔の閉塞を目的として, アロンアルファA^[○!R]を気管支ファイバーを用いて同部へ注入した。操作終了後は出血量の低下がみられた。剖検では, アロンアルファA^[○!R]が気管支内で凝固し, 内腔が閉塞されているのが確認された。本例のような手術不能の大量喀血例において, BAEをはじめとした他の止血操作が困難な症例に対しては, アロンアルファA^[○!R]の気管支内注入は考慮すべき一つの方法と考えられる。
著者
小林 裕康 田口 修 安井 浩樹 小林 哲 吉田 正道 ガバザ エステバン
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.94-97, 1997-03-25
被引用文献数
1

気管支鏡検査後に生じる発熱の病態把握の一助として検査後の末梢血白血球数の経時的変化を胃内視鏡検査例と比較し検討した。対象は当科入院中で気道感染のない気管支鏡施行患者15名と胃内視鏡施行患者10名である。方法は検査施行直前, 直後, 2時間後, 4時間後, および8時間後に体温と末梢血白血球数を測定し, 4時間後には咽頭ぬぐい液と静脈血培養を施行した。その結果, 胃内視鏡検査施行群では体温の上昇や, 白血球数の増加が認められなかったのに対し, 気管支鏡施行群では両者ともに上昇, 増加が認められた。しかし, 静脈血培養では細菌は検出されなかった。また, 気管支鏡検査時の処置内容による相違は認められず, 発熱の原因として気道へのファイバー挿入そのものによると考えられた。
著者
内藤 淳 於保 健吉 斎藤 宏 坪井 正博 高橋 英介 輿石 晴也 沖津 宏 永井 完治 雨宮 隆太 澤柳 久嘉 赤田 荘一 阿部 公彦 河内 堯 河村 一太
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.176-181, 1991-03-25

低線量率もしくは高線量率気管気管支腔内照射療法は, 手術適応のない気管気管支悪性腫瘍に対する補助療法として, 近年脚光を浴びてきた。また, Nd-YAG Laser治療と気管気管支腔内照射療法との合併療法も注目されている。今回, 我々は気管右主気管支に広範に発育した腺様嚢胞癌に対し, 内視鏡的Nd-YAG Laser療法による気道開大とfull doseのLinac外照射療法後に, ^<60>Co気管気管支高線量率腔内照射療法(腔内照射)を追加し, 腔内照射終了後約10日目に, 内視鏡的に腫瘍の消失を認めた。しかし, この症例は腔内照射終了後5カ月目に喀血死した。剖検により, 喀血の原因は, 喀血3週間前に挿入されたY-T tube先端による, 右主気管支壁の圧迫壊死に伴う肺動脈気管支瘻であることが確認された。しかし, 腺様嚢胞癌の遺残は認めなかった。以上より, 腔内照射が, 気管気管支腺様嚢胞癌に対する合併療法の一つとして, 有用であることが示唆された。
著者
田中 春仁 中原 康治 味元 宏道 富田 良照 山岸 亜紀 澤 祥幸
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.159-164, 1991-03-25

62歳, 男性。1989年9月から出現した湿性咳嗽で近医を受診した。胸部X線上は閉塞性肺炎像を示していた。気管支鏡で, 肺癌が疑われ転院した。再度気管支鏡が施行され, 中間幹が黄白色で光沢をもつ多結節性隆起型腫瘤で狭窄していた。腫瘤に可動性はなく, 表面には血管怒張, 壊死などの変化は認めなかった。また, 周辺粘膜に軽度の発赤を伴っていたが浮腫は強くなく, 縦走襞には所見はなかった。腫瘤が硬く生検は困難であったが, 組織学的には扁平上皮化生で, 細胞診はclass IIであった。以上より肺癌は否定的であった。1990年1月, 当院で気管支鏡下Nd-YAGレーザー治療を施行, ピスタチオの殻を摘出した。腫瘤は, 扁平上皮化生を伴う異物性炎症性ポリープと考えられた。
著者
濱田 薫 長 澄人 藤村 昌史 福岡 和也 堅田 均 澤木 政好 成田 亘啓 渡辺 裕之 今井 照彦 大石 元 東口 隆一 西浦 公章
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.249-258, 1991-05-25

気管支鏡を用いた内視鏡的治療法の一つとして, 気管, 気管支の腫瘍性狭窄, 閉塞に対して99.5%エタノール(純エタノール)局注療法を試みた。対象は肺癌7例, 転移性肺癌, 気管癌, 多発性気管乳頭腫各1例の計10例であった。有効症例は10例中6例(60%)であり, 肺癌症例のうち1例は有効, 3例は一時有効で, 他3例は無効であった。転移性肺癌症例は無効であったが, 気管癌, 気管乳頭腫症例では有効であった。有効例での腫瘍の発育は主にポリープ状であり, 無効例では浸潤性狭窄を呈していた。副作用は軽度の咳嗽以外認められなかった。以上から, 気管支鏡下純エタノール局注療法は, 適応をある程度限定すれば, 他療法の制限をともなう悪性腫瘍症例においても姑息的, 対症的治療法としてQOLの改善に有用であると考えた。
著者
福岡 和也 堅田 均 長 澄人 濱田 薫 藤村 昌史 鴻池 義純 澤木 政好 成田 亘啓 今井 照彦 渡辺 裕之 大石 元 飯岡 壮吾 北村 惣一郎
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.31-37, 1992-01-25

症例は57歳, 男性。主訴は喘鳴と労作時呼吸困難。右上葉の肺結核合併肺扁平上皮癌cT_1N_1M_0 stage IIの診断で昭和63年10月3日右上葉およびS^6a部分切除術を施行した。平成元年2月下旬より喘鳴と労作時呼吸困難が出現したため5月1日再入院。胸部X線写真では右中葉の含気は低下し, 気管支鏡検査では右中間気管支幹と中葉支は著明に狭窄し底幹入口部には表面平滑な隆起を認めた。気管支造影, 肺動脈造影および換気・血流シンチグラフィ, エロソール吸入シンチグラフィの結果から残存気管支の変形, 狭窄により右肺に広汎で強い換気, 血流障害の生じていることが示されたため, 7月17日右中下葉切除術を施行した。本例では右上葉およびS^6a部分切除により中葉が上後方へと牽引され中葉支が屈曲し著明な狭窄をきたしたとともに, 下葉枝の上方伸展および下方屈曲により底幹入口部付近で気管支軟骨が折り畳まれ隆起を生じたものと考えられた。
著者
加藤 俊哉 橋爪 一光 笠松 紀雄 冨田 和宏 半澤 儁 籾木 茂 佐々木 一義 玉地 義弘 岡本 一也
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.22-27, 1996-01-25
参考文献数
10
被引用文献数
1

胸部X線写真, 胸部CTにて空洞性病変を疑い, 気管支鏡で空洞を直視し得た肺扁平上皮癌の2例を経験した。空洞形成機序を含め, 若干の文献的考察を加えて報告する。症例1は60歳, 男性。両上肺野に巨大嚢胞が認められ, 喀痰細胞診にて扁平上皮癌の診断を得た。気管支鏡検査にて左上葉支入口部より空洞内腔を直視した。症例2は63歳, 男性。胸部異常陰影の精査のため気管支鏡検査施行, 右上葉支入口部より空洞内腔を直視し, 気管支と空洞の交通部から中枢側に癌の直接浸潤が認められた。検査後の喀痰細胞診にて扁平上皮癌の診断を得た。剖検では両症例とも空洞壁及びそれに交通する気管支に広範な壊死を伴う癌の浸潤が認められた。両症例とも嚢胞壁に癌が発生し, これが増大, 周囲に浸潤し, 壊死を生じて, 気管支に開通したものと考えられた。
著者
木下 明敏 渡辺 講一 山住 輝和 石野 徹 神田 哲郎 原 耕平
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.382-386, 1989-08-05
被引用文献数
3

症例は74歳女性。8年前に直腸癌の手術を受け, 外来にて経過観察中にCEA値の上昇と胸部異常陰影を認め, 精査の目的にて入院した。胸部X線では, 左S^3bに胸膜嵌入を伴った腫瘤陰影があり, 気管支鏡検査にて左上区枝の入口部をほぼ閉塞する形で黄色の柔らかな半球状のわずかな膨隆を認めた。病理組織学的には, 壊死組織にまじって, 有節性Y字状を呈する菌糸が多数認められ, 培養でもaspergillusが確認された。また経気管支的肺生検(TBLB)による腫瘤の病理組織は, ラクトフェリン染色陰性の高分化型腺癌で, 直腸癌の転移と考えられた。本症例は転移性肺腫瘍で抗癌剤使用中の患者で, 転移巣の流注気管支内腔にアスペルギローマが形成された1例であった。今後, 気管支鏡検査法の普及と抗癌剤などの使用の増加につれてこのような症例が増加してくるものと思われ, 症例の集積により菌球の形成過程の機序が解明されることを期待して, これを報告した。
著者
須甲 憲明 山本 宏司 藤田 雅章 鈴木 章彦 井上 幹朗
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.372-374, 1996-05-25
参考文献数
8
被引用文献数
5

症例は55歳, 男性。小児期および30歳頃に肺炎の既往あり。平成7年6月20日頃より微熱, 咳嗽, 全身倦怠感が続き, 6月26日咳嗽とともに血痰が出現したため当科を受診。胸部レ線および胸部CT上, 左下肺野に炎症後変化を認めた。気管支鏡にて左B^<10>入口部を横断する橋様構造物を認め, 気管支mucosal bridgeと診断した。既往歴及び画像所見から, 過去の気管支炎, 肺炎に由来する気管支mucosal bridgeと考えられた。
著者
長坂 不二夫 大森 一光 北村 一雄 並木 義夫 村松 高 西村 理 羽賀 直樹 古賀 守 四万村 三恵 瀬在 幸安 楠美 嘉晃
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.400-404, 1997-07-25
被引用文献数
5

症例は79歳男性で, 30年前に左膿胸で手術を受け, 1994年6月肺癌で右下葉切除術後, 50Gyの放射線療法を施行された。右膿胸, 慢性呼吸不全で2度入院し, 以後, 在宅酸素療法を受けていた。1996年8月17日, 心肺停止の状態で当院に搬送され, 心拍動は再開したが脳死状態で人工呼吸器管理となり, 8月26日第2-3気管軟骨輪で気管切開を施行した。気管切開後第87日の11月18日, 口腔内より突然大量出血した。気管カニューレのカフ内圧を上げることにより一時的に止血できたが, 21日再び大量出血して死亡した。剖検所見では気管切開孔より1.8cm末梢で気管と腕頭動脈との間に瘻を形成していた。自験例を含めて検索しえた文献的報告例は29例で, 出血機序による検討では"extratracheal type"が5例, "endotracheal type"が21例であった。従来, 予後不良であったが最近では救命例の報告が増加している。
著者
小林 英夫 中野 実 河村 文夫 須藤 至
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.423-429, 1993-07-25

急性呼吸不全症例に対して, 標準的治療にサーファクタント(PSF)注入を併用することの有用性を, prospectiveに検討した。人工呼吸開始より平均27時間後に, 気管支鏡を用いてPSF 600mg/bodyを, 8例に注入した。同時に, TBLBとBALを施行し, 診断の確定に努めた。施行症例は, IIPの急性増悪2例, acute interstitial pneumonia 2例, 細菌性肺炎2例, RA肺1例, Goodpasture症候群1例であった。注入72時間後のPaO_2/F_IO_2とX線所見は有意な改善を認めた。予後は3例が死亡, 5例が生存退院した。PSF注入に関連する副作用は認めなかった。PSF注入による呼吸不全の改善は顕著ではなかったが, 満足すべき治療法の確立していない現況では, 救命率向上に寄与する可能性について, 今後の症例の蓄積が望まれる。
著者
新津 望 中田 正幸
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.545-550, 1994-09-25
被引用文献数
3

胸部X線写真上異常を認めた造血器悪性腫瘍30例に対し気管支鏡検査を施行し, その原因検索を行った。胸部異常陰影に対する原因の検出率は30例中26例(86.7%)で, びまん性間質性陰影, 限局性肺胞充実性陰影および結節性陰影で診断率が高かった。疾患別では急性白血病では出血が多く, 白血病細胞, 真菌および細菌がそれぞれ12例中2例であった。慢性骨髄性白血病では結核菌が66.7%と多くみられ, 悪性リンパ腫では真菌が46.2%(6/13), 結核菌15.4%(2/13), 細菌15.4%(2/13)であった。造血器悪性疾患は免疫不全を伴っており, 肺合併症を多く認め致死的なものも少なくない。そのため, 早期診断治療が予後を左右するが, 高度の血小板減少やDICの合併により気管支鏡検査が行いにくい症例もある。よって, 症例を選んで気管支鏡検査を行えば早期診断及び治療に有用であると考えられた。
著者
谷尾 昇 門倉 光隆 野中 誠 山本 滋 片岡 大輔 高場 利博
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.215-218, 1997-05-25
参考文献数
10

症例は66歳の女性。昭和48年より慢性関節リウマチで薬物療法を受けており, プレドニゾロン3mg/日の内服をしていた。平成6年7月6日, 整形外科で全身麻酔下に左人工股関節置換術を受けた。術後上半身に著明な皮下気腫と呼吸苦が出現し, 7月8日ICU管理となった。気管支鏡検査を施行し気管上部膜様部に裂創を認めた。16Gエラスターを前胸部皮下に留置して間欠的に低圧吸引し, 保存的に経過を観たが, 皮下気腫は改善しないため, 7月11日気管裂傷部直接縫合閉鎖, 肋間筋弁縫着術を行った。
著者
長瀬 啓介 長谷川 鎭雄
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.321-326, 1995-05-25

目的;病歴上に記録された, 気管支鏡検査前に行われた説明の現状を明らかにする。方法;筑波大学付属病院呼吸器内科診療グループで1991年4月1日より1992年3月31日に施行された気管支鏡検査例の病歴119例を調査の対象とした。病歴上の, 気管支鏡検査前に行われた検査に関する説明の記録の存否と, 目的, 手技, リスク, 代替方法に関する記録の内容を調査した。結果;説明に関する記録は全検査例の63.0%にあたる75例にみられた。目的・手技・リスクの3領域について説明が記録されていた例は, 35例であった。記録された説明項目は一定ではなかった。考察;説明の質を維持する目的では, 説明の記録率は必ずしも十分とはいえないと考えられた。記録内容の不均質を改善し説明の質を向上するために, 説明内容と記録の標準化が必要であると考えられた。