著者
榛葉 繁紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

肥満ならびにメタボリックシンドローム患者数急増の原因は多種多様であり、シフトワークもその一つとして考えられる。シフトワークによるメタボリックシンドローム発症のメカニズムは明らかではないが、体内時計の乱れがその一つとして疑われている。そこで本研究では、体内時計システムのマスターレギュレーターであるBMAL1の機能とメタボリックシンドロームとの関係を明らかにする目的でBMAL1欠損(KO)マウスを作製し、その解析を行った。全身性BMAL1 KOマウスは、低体重、脂質異常症、高コレステロール血症、空腹時血糖の上昇ならびに各組織への著しい脂質の蓄積を示した。また高脂肪食負荷により著しい体重増加を示した。さらにBMAL1欠損は耐糖能の低下を生じ、その原因として膵ラ氏島の矮小化とそれに伴うインスリン分泌不全が示された。これらの結果は、臓器間クロストークにBMAL1(すなわち体内時計システム)が関与する事を示すとともに、全身の体内時計システムの調和が乱れることによりメタボリックシンドロームが発症することを示唆している。
著者
波多野 哲朗
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.5-14, 2005

日系キューバ移民については、その存在にたいする注目度が極めて低く、研究者の数も極めて少ない。これは日系キューバ移民のほとんどが、日本から直接キューバに向かった移民ではなくて、それまでは他国で働いていて、1920年代の砂糖産業全盛期に再移住した人たちだからである。したがってその全体的な把握がむずかしい上に、移民としての流動性も極めて高い。とくに1929年の恐慌で砂糖ブームが終ると、人びとはさまざまな仕事に離散して、相互の関係が稀薄になってしまう。すなわちキューバ移民は、日系としてのアイデンティティが弱く、独自のコミュニティを形成することがなかった。しかしこのことが、移民研究一般ではとかくマイナス的な評価をうける。しかし本論では、日系キューバ移民の現地文化への溶解度をかえって高く評価し、歴史の闇に埋没する離散者たち、ディアスポラの存在に照明をあてる。
著者
小林 直弥
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
no.42, pp.15-27, 2005

日本の芸能、とりわけ歌舞伎における舞踊作品の中に、「ちょぼくれ」なる節を駆使した芸態がある。この「ちょぼくれ」とは、江戸時代における乞食坊主「願人坊主」と、それから派生した大道の雑芸より出たもので、大坂では「ちょんがれ」と呼ばれ、その後「浪花節」や「浪曲」の根源をなすものでもある。歌舞伎舞踊においては、特に門付芸として存在した「阿保蛇羅経読み」や「まかしょ」など、大道の雑芸人を描いたものや、「ちょぼくれ」の軽快な節回しを駆使した『偲儡師』や『喜撰』、『吉原雀』といった曲が現存し、現代にまでも当時の風情を伝えている。また、各地の民俗芸能として伝承されたものもある。本研究は、江戸期において大流行し、その後多くの芸能に影響を与えた「ちょぼくれ」を題材に、流行性と芸能における関係作用の研究の一つとして、まとめたものである。
著者
木村 政司 渡辺 政隆 荒俣 宏 長谷川 善和 石川 良輔 マルセル グンタート クロード クーン DR. ジョージ マクガヴァン
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

科学がすべての人にひらかれ、科学を「楽しむ」「伝える」「考える」「共有する」から、「関わる」「つながる」「広がる」ことへと日本の科学コミュニケーションのあり方が変化してきたことに貢献した。「科学する心」を育て、人生を豊かにする智の創造に大きく貢献し、個人の幸福を考えるだけでなく持続可能な社会の幸福を考えることができる科学の絆が、子どもたちに託せる未来を築くことが可能になる。その答えが、欧米の博物館の科学と芸術が融合した文化にあった。
著者
伊藤・山谷 紘子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

植物に含有される、機能性含硫化合物を高めるためには、植物のイオウ吸収機構および代謝機構を解明することが重要である。そのためには、元来イオウ含有量が多く、機能性の高い植物(作物)を選抜して、代謝や遺伝子発現などを比較生理学的に調べる必要がある。そこで本研究では、機能性含硫化合物を高い濃度で含有している可能性の高いアブラナ科伝統野菜を供試作物として選び、根域イオウ濃度が生育、イオウ含量、イオウ吸収に関与する遺伝子発現量、イオウ同化に関わる酵素活性に及ぼす影響を調べた。研究結果はSoil Science and Plant Nutritionに掲載された。

5 0 0 0 OA 御定書百箇条

出版者
日本大学
巻号頁・発行日
1905
著者
青柳 寛
出版者
日本大学
雑誌
産業経営研究 (ISSN:02874539)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.43-58, 1996-03

As part of a research In industrial management, this paper discusses the role played by character business in the sociocultural construction of "Asian-Pacificism"--an idea which currently happens to be the theme of the Asia Pacific Economic Cooperation Conference (APEC). More specifically, this study will explicate the meaning of Asian community and its public organization through the analysis of the currently prominent genre of audiovisual performance engaging young popular talents known as "idols." Asian idols and their industries contribute to the realization of an Asian community by virtue of their ability to saturate, the public with symbolic identity. This peculiar method of leadership exhibits a fashion quite different from the types of control practiced by politicians and bureaucrats. By emphasizing the realm of symbolism in industrial organization, this paper also attempts to point to the role cultural hermeneutics plays in business research methods.
著者
藤原 成一
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.67-81, 2004-07-30

日本の住空間は「締」「縁」「間」「奥」「離」の五つの基本原理によって形成されてきた。これら五つのキーワードは空間構成の原理であるばかりでなく、文芸や芸術・芸能にあっても重要な思考枠であり、かつ作法・方法でありつづけてきた。日本人の発想、表現方法はこの五つの原理で明快に解明しうる、という仮説の提起である。本稿はそのうち「奥」という概念をとりあげ、奥とか奥行きという感性や思考がいかに深く日本人にしみ込んでいるかを、主として住空間の面から実証しようとするものである。イエにおけるクチからオクヘの構造、社寺にみる下-中-上という奥行き構成、村落や都市におけるオモテからオクヘの空間原理など、一貫するのは奥志向であった。その感性と思考はものの見方、生活のしかたから文化全般にまで通底しており、奥の思想は日本文化の基礎であった。奥を大事とする考えや感性に日本美学の本質と独創があった。
著者
古川 安
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

喜多源逸は京都帝国大学工学部に在任中、工業化学における「京都学派」を創始し、ノーベル化学賞受賞者を含む多くの逸材を育てた。彼の学風は、基礎研究重視の工業化研究、物理学などの他分野を摂取する柔軟なスタンス、産業界との積極的な連携などの特徴をもっていた。京都学派が手掛けた合成石油、繊維、合成ゴムの研究開発は戦後継承されるとともに、その学風は触媒化学、高分子化学、量子化学などの関連基礎分野の発展に寄与した。
著者
糸井 充穂 宇田川 誠一 田近 謙一 田代 健治 大竹 伸一 阿部 建之
出版者
日本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、医学教育に必要でありながらカリキュラムの改正や削減で十分に時間を割くことができない理数系の基礎科目を一般教育で強化・充実をはかるために、物理学・数学及び生物学分野を融合した、視覚的・実質的な数理複合教材を開発した。具体的には、ハイスピードカメラを用いた物理学実験の試行やJAVAシミュレーションの視覚補助教材効果の検証と医学教育と関連した物理学実習項目の強化を行った。またこれらの教材の教育効果を追跡するため、研究期間を通してアンケート調査を行った。
著者
橋口 泰一 大嶽 真人
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本課題研究は,ブラインドサッカーおけるコーラーの言語教示およびシュートシーンの分析を通して,ブラインドサッカーの強化,発展における基礎的資料を得ることを目的とした.これまで得られなかったブラインドサッカー選手の個人およびチームにおける課題や周囲への要望,国内リーグにおけるコーラーの発言や国際大会におけるシュートシーンの実態について,様々な角度からブラインドサッカーの強化・発展のための基礎的資料を得ることができた.今後の競技力向上および研究に可能性を示すものであると考えられる.
著者
上保 国良 佐々木 隆爾 上保 国良
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果は,「幕末・明治期における民謡・流行歌を通じてみた外国文化摂取の歴史的研究」,および「幕末〜明治初期,長崎における外国音楽摂取の時代的背景」の二編からなる報告書にまとめた。第一部では,『長崎新聞』『西海新聞』を主要な資料として,次の結論を得た。長崎を事例とする研究で明白になったことは,第一に身分解放令後も芸妓は娼妓と同様激しい差別に晒されていたが,1879年半ばより彼女らの清楽を中心とする演奏が高く評価されるに至り工尺譜が普及し,第二に,この直後から開始された文部省の唱歌教育が五線譜の浸透力不足のため軽視される中で,清楽師範として人気の高かった長原梅園が明治22(1889)年,工尺譜『月琴・俗曲今様手習草』を発刊し,文部省唱歌を12曲紹介し民衆の問で愛唱される大きな契機をつくり,第三に,スコットランド民謡「あさひのひかり」(のちの「蛍の光」),ルソーを発端とする「みわたせば」(のちの「結んで開いて」),モーツアルト『魔笛』のアリアのメロディーを転用した「仁は人の道」(原曲パパゲーノのアリア)等が定着したことを明らかにした。第二部では,長崎県『学務課教育掛事務簿』,『r長崎県会日誌』r明治十二年六月,米国前大統領来港接待記事』等の精査をもとに,第一に,得られた主な資料を,その歴史的背景を説明しながら紹介し,第二に『活水学院百年史』等を参照しつつ分析し,義務教育における音楽教育は難渋しつつも,俗曲が,その担い手であった芸妓に対する差別的観念と相侯って,文部省の狙い通り零落したことを明らかにし,第三に小学校における唱歌教育が童謡をもとに,生徒の健康増進を実際上の目的として進められたことを解明し,第四に活水学院の前身では発足当初から高度の西洋音楽の教授が重視され,長崎県下の子どもに西洋音楽を定着させる有力な途を開いたことなどを明らかにできた。
著者
紅野 謙介 藤森 清 関 礼子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、近代日本において女性/男性の差異と境界が文学言説においていかに構成されたかを探る動態的なジェンダー研究を目的としてスタートし、そこでわたしたちは共時的な観測をおこなうとともに通時的な観点からの考察を行ってきた。最終年度の研究成果は以下のようになっている。藤森清は、1910年前後の文芸雑誌や文芸記事を精査するかたわら、男性作家が女性を表象する際のバイアス、また男性ジェンダーの構成のありようを探り、具体的には夏目漱石や森鴎外の小説を分析することを通して同性愛嫌悪と女性嫌悪の痕跡を見いだした。また関礼子は、1890年から1910年にかけての女性表現者の文体を調査するかたわら、草創期『青鞜』を細かく分析することを通して、擬古文から言文一致にいたる文体にあらわれた「ジェンダーの闘争」を摘出した。紅野謙介は、1920年前後の雑誌メディアを調査し、なかでも与謝野晶子の批評活動をとらえ、その批評にジェンダーの枠組みを越える可能性を発見するとともに、菊池寛とは異なる「文学の社会化」のコースを見いだした。また本研究の研究協力者である金井景子によって、教科書教材に見られるジェンダー偏差が指摘され、ジェンダー規範からの解放を目指す教育の方法論が提起された。補助金の支出に際しては、ひきつづき図書資料の購入や各種図書館・文学館での貴重資料のコピーのデータ整理を行った。また数回にわたり、収集と整理の結果を報告する研究会を都内で開催した。研究会にはほかに常時10入程度の研究者の参加があった。3年間の研究をへて、近代文学研究とジェンダー研究のクロスする領域がはっきりと見えてきた。これらの成果をふまえ、2001年5月には日本近代文学会春季大会において「ヘテロセクシズムの機構」と題されたシンポジウムが開催され、藤森清が司会を、金井景子が発表を担当し、ほかにも本研究会の参加メンバーが運営に関わった。その内容は岩波書店から刊行された「文学」2002年2月号に掲載されている。